例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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愛の為の抗い

トリニティでの虐殺が行われているのと同時刻。早瀬ユウカは珍しくセミナーの様子を見に行く為にミレニアムへと向かって歩いていた。…決して可愛い後輩に会いたくなったとかそういうのではない、と心の中で言い訳しつつ校舎に入ろうとしたところ後ろから声を掛けられる。

 

「"やあユウカ、おはよう"」

 

それはあの女狐に盗まれた先生だった。振り返ると多少黒くなっている箇所が見受けられるも優しい声と姿は先生そのものであった。

 

「せ、先生!? どうしてミレニアムに来てくれたんですか!?」

 

「"ユウカに会いたかったから、かな"」

 

「なっ…!! それを言うなら私だって先生に…」

 

「"私に?"」

 

「な、なんでもありません!!」

 

自分も貴方に会いたかった、なんて恥ずかしい言葉を言う前に飲み込んだ。コホンと咳ばらいをしてから先生の方を見ると彼は私の耳を塞ぐように抱きしめてきた。

 

「な、ななな先生!?」

 

「"ユウカは可愛いね"」

 

「かわっ!?」

 

突然の誉め言葉に彼女の頭は演算処理が追い付かなくなっていた。恋の因数分解は苦手なようで顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。

 

「"この後セミナーに行こうと思ってたんだけど…もしかしてユウカもセミナーに?"」

 

「あっはい。結構留守にしちゃってたので様子を見に行こうと思ってまして。一緒に行きますか?」

 

「"そうだね。いこうか"」

 

優しく微笑む彼の顔が直視出来ず後ろを向いて歩きだした。緊張しているのか足がおぼつかない。頭も痛い。…なんだかおかしい。

 

「"じゃあね"」

 

不意に先生がそう言っていたのを聞いた。然しその言葉の真意が分かることもなくその場に倒れこんで意識が薄れていった。最後に見たのはミレニアムの白い床が赤黒い血で染まっていく光景。…そこからはゲームの電源が落ちたかのように命が失われた。

 

 

 

 

「コーユーキーちゃん、今日はもうお仕事中断して遊ぼうよ~★」

 

「良いですね!! と言いたいんですが…下の方が騒がしくて気になってるんですよね」

 

「また何か変な発明品が暴走してるのかな? それなら私の拳で黙らせて来るよ?」

 

「うーん、一応監視カメラの映像を確認してみ……」

 

「? どうしたの? 何か面白いものでも映って「見ないでください!!」えっ」

 

監視カメラに写った映像は血だまりの中に倒れている先輩の姿。…それはセミナーに向かう為のエレベーターがある通りだ。下の騒ぎは殺人事件が起きたから…? いやいや、これはドッキリだろう。これが現実な筈がない。これが現実なら…耐えられない。

 

「"やあ"」

 

入口から声を掛けられて咄嗟にミカを庇うように立ち武器を構えて様子を伺う。…その人物はユウカ先輩が夢中になっていたシャーレの先生に似ている。ただ決定的に違うのは目。心を失って感情がなくなっているかのように闇が深い瞳。…直観で理解した、この人がユウカ先輩を殺したのだと。受け入れたくない現実に目をそらしたくなるが必死に思考を巡らせてミカに「逃げてください」と伝える。

 

「えっなんで? あの人そんなに悪い人じゃなさそうだよ?」

 

「"そうだよコユキ。私はただ様子を見に来ただけだよ"」

 

そういって近寄ってくる大人に対し思わず威嚇射撃を行ってしまった。「私とミカさんに近づくな!!」と怒りの混じった声で忠告もしつつ。

 

「"撃ったね。じゃあ正当防衛ってことで"」

 

撃たれた事に愉悦を浮かべ胸ポケットから大人のカードを取り出す。すると人の形をした二つの黒い塊が襲ってくる。

 

「コユキちゃん!!」

 

背後で見ていたミカはコユキが狙われている事を理解したのか黒い塊をぶっ飛ばし、今度は自身が庇うように先生の前に立ちふさがった。

 

「"うーん、やっぱり爆弾の範囲から外れちゃってたかぁ…まあ、もう一個あるんだけどね"」

 

懐から不思議な爆弾を取り出しミカに向けて投げる。彼女の目の前で爆発したそれは体に何も以上は見受けられない…と思っていたが彼女の頭上にあるヘイローが失われていた。

 

「"これは私の友人が開発したヘイローの機能を消失させる爆弾だよ。これを使われたミカはただの可愛い女の子になるってわけ"」

 

「…それでユウカ先輩を殺したんですか?」

 

「"無防備だったからね。わざわざ密着して耳を塞いでいたから大爆発音も聞こえなかったみたいで"」

 

それを聞いたコユキは怒りよりも『こいつを野放しにしていたら被害が増える』と考え彼の心臓に向けて銃弾をひたすら打ち込んだ。

 

「ミカさん、逃げてください!!」

 

「で、でも!!」

 

「早く!!」

 

「"友達想いなのは相変わらずだねコユキ。いいよ、今だけはミカを見逃してあげる。元々トリニティの生徒は私の担当じゃないからね"」

 

「…その言葉に嘘はありませんね?」

 

「"勿論。生きる時間が多少伸びる程度だけどね"」

 

大人のカードをポケットにしまい腕を組んでこちらを見ている先生から目を離さずミカを緊急離脱用のヘリがある屋上に向かわせた。その際「コユキちゃん…大丈夫だよね?」と聞いてくるミカに対して「大丈夫ですよ!!」と笑顔で返した。

 

「"別れの挨拶は済んだかな?"」

 

「はい。…最後に一つ言ってもいいですか?」

 

「"何かな?"」

 

「大事な人を守って死ぬって…最高な生き様だと思いませんか?」

 

「"…大丈夫だよ。ミカもすぐに君の元に送ってあげるからね"」

 

再度大人のカードを取り出して二つの黒い塊を呼び出す先生と銃と爆弾を構えて徹底的に戦おうとするコユキ。両者の争いは一時間以上の熾烈な戦いになった。

 

 

 

 

 

 

「"もしもしマエストロ? そっちはどう、片付いた? …それはよかった。こっちもそろそろ片付くよ。君から貰った複製体が使いやすくてね。…次はゲヘナ? 分かった、合流して行こうか"」

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