例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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激怒する母

風紀委員会の部屋で一足早くこたつを出して寝っ転がっているヒナを見ながら仕事をしているとミレニアムのロゴが入ったヘリが付近に着陸したとの報告を受けた。仕事を抜け出す口実としてその場所に赴くと泣きじゃくってうずくまっている女の子が居ることに気づき舌なめずりをしながら近づいていくとそこに居たのはミカだった。

 

「どうしたのですか? 折角のお化粧が台無しですよ」

 

「…おね、おねがっ…こゆきちゃ…助けて…」

 

「…緊急事態ですか?」

 

物凄い勢いで頭を振る彼女を見て目つきが変わった。ゲヘナ生にミカを保護させてヒナに出撃準備、他生徒には近隣警戒の合図を送る。ミレニアムへと駆け出していき途中でヒナと合流し走りながら状況を共有する。

 

「今回の作戦は生徒の保護です。コユキちゃんという生徒を助けて欲しいと頼まれました」

 

「その生徒が生きている保証は?」

 

「最悪死んでしまっている可能性もあります。…場合によってはあの子を頼らざるを得ないかもしれませんね」

 

「あの子って?」

 

「私に仕事を押し付けた連邦生徒会長です。昔あの子の特殊な能力について教えてもらって…なんて今は話している場合ではありませんね。急ぎましょう」

 

「うん」

 

この時ベア先生は殺意という感情に支配されていた。可愛い女の子を泣かせる奴は死んで詫びるべきだ。と自身の手を汚す勢いで走っていく。…そうして到着したミレニアムは死臭に満ちていた。思わずヒナの目を隠し見せないようにするも「大丈夫」と手を払いのけて周囲を見渡す。

 

「…惨いわね」

 

「ええ……後で彼女に話を付けなければならないようです。今はコユキちゃんを助けに行きましょう」

 

花は添える、と誓い神秘の反応を基に居場所を特定する。…場所的にセミナーの部室があるところだ。

 

「ヒナ、上空なので先に確認をして頂いてもよろしいですか?」

 

「任せて」

 

物凄い勢いで空を飛ぶヒナを見送り血だらけで倒れている生徒を見て胸を痛めながら目的地へ向かった。

 

 

 

ヒナが空を飛んで部屋を覗いていくと最上階付近にまだ辛うじて生きている生徒を見つけた。全身から血を流しヘイローが点滅して意識が朦朧としていながらも最後まで戦おうとする子とそれをあざ笑うかのように黒い塊を使って蹴り飛ばし窓に投げ出されてしまっていた。急いで旋回し抱きかかえるように支え至急ミレニアムの保健室へ向かう。

 

「大丈夫…ではないわよね。よく頑張ったわね」

 

「あな…たは…」

 

「事情は理解してる。今は休んで私達に任せて。ミカも無事よ」

 

「…はは…それはよか…った…」

 

最後まで言い終えた彼女は気絶して意識を失っていた。…まだ間に合う。命が失われる前に血止めと止血を行わなければ。

 

 

 

ヒナがコユキの止血を行っている時、丁度ベア先生がセミナーの部室に到着した。

 

「"…どうやらお客さんが来たみたい。大丈夫、片づけて合流するよ"」

 

電話を切ってこちらを向く彼の服には大量の返り血が付着していた。そんな異常事態でありながらも気さくに「"やあ"」と挨拶してくる。

 

「随分と軽い挨拶ですね。…とっくに心が壊れてしまっているのでしょうか?」

 

「"どうだろうね。で、なんでミレニアムに来たのかな、ベア先生?"」

 

「泣いてる生徒に頼まれたんですよ。コユキちゃんを助けてほしいってね。どうやらこの場所には居なさそうですが…返答次第では命はないと思ってください」

 

「"コユキならさっき蹴り飛ばして窓から落としたよ"」

 

「(それならばヒナが回収してくれている筈。…遠慮をする必要はないでしょう)そうですか。じゃあ貴方を殺しますね」

 

「"良いのかな? 殺人なんてしたらヒナに嫌われるかもよ?"」

 

「生徒達の手を汚すよりはマシです」

 

ゆっくりと近づいていくと先生は大人のカードを使い黒い塊二つを呼び出した。それが何なのかを理解し彼らの暴走した理由を理解し、もう少しだけ説得をしてみようと思ったので武器をしまう。

 

「やり直せますよ。今までの殺害も大切な者を失ったのも全て」

 

「"…そうだろうね"」

 

「もう止めましょう。今回の虐殺を許す事は出来ませんが罪を償う手助けはします」

 

「"……"」

 

「全てやり直しになるのは致し方ありませんが…一緒に解決していきましょう。貴方の大切な人もその手を汚す事を望んでいません」

 

「"黙れ"」

 

「っ!?」

 

「"さっきから綺麗事言ってるけどさぁ…そういうのは大事な人を失った経験をしてから言ってくれないかな? そうやって知ったかぶりされると不快なんだよね"」

 

「ですが…!」

 

「"ですがも何もないよ。どん底に落ちた事のないお前に私達の苦しみは理解出来ない、分かり合う事もない。やり直せるからなんだって言うの? やり直せたからと言って大事な生徒の未来を奪った罪は消えないんだ!!"」

 

感情に身を任せて想いをぶちまける先生は正気を完全に失っている。…これ以上彼に何を伝えても無駄なのだろう。それならもう、殺し合いをするしかない。

 

「貴方達に殺された…泣かされた生徒の為にも私はここで貴方の息の根を止めます」

 

「"是非ともやってみてほしいね"」

 

カードを構える先生と拳を構えるベア先生。誰も幸せにならない戦いが始まる…

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