ーーーアビドス砂漠
黒服「まさか貴女が私の趣味に付き合いたいと言うとは思いませんでしたよ」
ホシノ「ずっとお世話になってばかりでしたので私も先生の役に立ちたくて……ご迷惑でしたか?」
黒服「とんでもない。むしろその逆です。感謝致します」
ホシノ「〜〜っ!!」
最近ホシノを褒めると不思議な動作をするようになった。これはこれで興味深いのだが今は本来の目的である[遺物]の発見が優先だ。
黒服「あまりはしゃぎすぎるとバテてしまいますよ。今日は数キロ先まで探索に行きますからね」
ホシノ「分かりました。確か遺物ってものを探しに行くんですよね?」
黒服「その通りです。砂の中に埋もれている遺物……超古代文明の遺産と言った方が正しいでしょうか。私はそれに興味がありましてね」
ホシノ「なんだかロマンがありますね。もし値打ちものだった場合はアビドスの借金も…」
黒服「ホシノ。夢を見るのは良いですが大半の遺物には価値がつきません。素人が見てもガラクタにしか見えないものがほとんどですからね」
ホシノ「そうなんですね。一発逆転!みたいな感じのものを想像してました」
黒服「もしかしたらそんな遺物もあるのかもしれませんね……おや、話している間に目標地点に着いたようですね」
ホシノ「どこまで見渡しても砂だらけですね……先程埋まっている遺物を探すと言ってましたけどどうやって見つけるのですか?」
黒服「それはですね……遺物の性質を利用するのですよ」
ホシノ「と言いますと?」
黒服「とある星では特定の物質が放出している電波を受信して座標を特定する、という技術が使われていましてね。それを利用して遺物に反応する装置を開発したのです」
ホシノ「これがその装置ですか?なんだか計測器のような見た目ですが…」
黒服「遺物に近づけば近づくほどメーターが右に傾いていく、といった簡単なものです。これを使って埋まっているであろう場所を掘るのです」
ホシノ「…先生。これってピク……」
黒服「それ以上はいけませんよ」
ホシノ「………」
黒服「……装置を起動させますよ」
誤魔化すように電源を入れるとメーターの針がが中心を指している。どうやらここのポイントは当たりのようだ。
黒服「ホシノ、この辺りに遺物があるようです。忙しくなりますよ」
ホシノ「は、はい!」
遺物を掘る際はどうしても精密かつ丁寧に行う必要がある。もし乱雑に掘り起こそうとして傷が入ったりでもしたら大惨事だ。
黒服「では掘っていきましょう。ホシノは周りの砂が流れ込まないように補強をしてもらえると助かります」
ホシノ「分かりました。先生が集中して掘れるようにサポートしますね」
黒服「頼みましたよ」
普段はとても時間がかかる作業だがホシノの協力もあって早い段階で遺物の一部が姿を現した。昂る感情を抑えて掘り進めていくとそこまで大きいものではなく、あっさりと回収出来た。
黒服「目的は達成した事ですし、戻りましょうかね。ホシノ、穴を埋めて帰りましょう」
ホシノ「見つかったんですね!私にも見せてください!」
黒服「勿論。こちらですよ」
ホシノ「…これって…タブレット端末ですよね?これが遺物なのですか?」
黒服「装置に反応がありますので遺物である事は確実でしょう。持ち帰って解析をしてみましょうか」
ホシノ「了解です。あ、穴は埋めておきましたよ」
黒服「おや、ありがとうございます。では帰りましょう」
ただのタブレット端末にしか見えないこの遺物を解析する。この遺物を理解出来た時にはどのような発見があるのか想像するだけで感情が昂る。
ホシノ「先生?どちらに向かっているのですか?帰り道はこっちですよ」
黒服「いえ、こちらで合っています。解析は実験室で行いますので」
ホシノ「実験室……最初に出会った時に行ったあそこですか?」
黒服「その通りです。あの場所は私の研究室でもありますからね」
ホシノ「そうだったんですね……」
黒服「……ホシノ、何か言いたい事があるのでしたら仰ってください」
ホシノ「その…研究室を学校に移して欲しいなって…」
黒服「ふむ…」
確かにこういう小さめな遺物は学校に持ち帰って解析を行う方が学校と研究室を往復する手間も省けて楽だろう。空き教室を一つ改装すれば簡易的なものなら数分で作れる。
黒服「良い案ですね。今後は遺物の解析等は学校に持ち帰って行うとしましょう。ただし小さいものに限りますが」
ホシノ「!!では急いで学校に戻りましょう!」
黒服「おっと…そんなに急がなくても良いのですよ?」
ホシノ「善は急げって言うじゃないですか!ほらほら行きますよ!」
いつの間にかホシノと手を繋いで引っ張られる形で走っていた。完全に警戒心は解けたのだろう。近いうちに神秘の実験をしてもいいかもしれない。
黒服「(……ですがもうしばらくは付き合ってあげるとしましょうかね)」
ーーーアビドス高等学校 研究室(仮)
ホシノ「先生、もうそろそろ日付変わりますよ?一度中断して休みましょう?」
黒服「お気遣いありがとうございます。もう少しでキリの良い所まで解読出来るのでその後に休みます」
ホシノ「じゃあ終わるまで待ってますね。先生が本当に休むか確認しないといけませんから」
黒服「……仕方ありませんね。本日はここまでとしましょう。貴女も早く寝室に……」
ホシノ「………ZZZ」
黒服「……やれやれ」
眠ってホシノに毛布をかけてソファーに寝かせて解析を再開した。次回からはホシノを眠らせてから作業を行う事にしよう。
ーーー数日後
黒服「ホシノ。遺物の解析が完了しましたよ」
ホシノ「本当ですか!?流石先生です!それでどんなものだったんですか?」
黒服「それがですね…特に遺物らしい要素はなくただのタブレット端末と変わらないのです。強いて言うのであれば充電の必要がないという事でしょうか」
ホシノ「そうなんですね……触ってみてもいいですか?」
黒服「どうぞ。とはいえ目新しいものはないと思いますが…」
ホシノ「どれどれ…確かに普通のタブレットと変わらな…?」
黒服「……ホシノ?」
静かになったと思えばホシノの姿がない。床に落ちた端末の画面にはホシノが映ったアイコンと『転送が完了しました』という無機質な文字だった。
黒服「…ほう。このような機能があったとは…興味深い」
詳しく調べたいがまずはホシノを呼び戻そう。『呼び戻し』ボタンがあったのでそれを押した。
ホシノ「!?一体何が起きたのですか!?」
事態が飲み込めていないホシノを横目にタブレット端末を覗き込むとバッテリーが切れた。どうやら転送機能を使う度にバッテリーを50%消費するらしい。なんて非効率なのだろう。
黒服「……とりあえず充電しますかね」
ホシノ「先生、さっきのは一体!?」
黒服「今から説明しま…ホシノは何故砂まみれなのです?」
ホシノ「いきなり砂漠に飛ばされて……そのタイミングで砂塵が……」
黒服「……説明は着替えてからにしましょうか」
実用性があるかどうかはともかくやはり遺物というものは非常に興味深い。再起動したら再度分析をしましょうかね。
次回でホシノ一年生編を本編では終わらせようと思います。