例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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こちらはちょっと重い話です


ホシノスワップ(G)#2

ホシノ「……とは思ったけれどまずは学校を見て回ろうかな。先生の自室とか」

 

誰も居ない昼の学校。最近では考えられないほど静寂に包まれた廊下を進み先生の部屋の扉を開ける。

 

ホシノ「あれ、間違えたかな?もう1つ隣の部屋だっけ」

 

しかし隣の教室にも先生の部屋だという痕跡がない。嫌な予感がして思わず呼吸が早くなる。

 

ホシノ「先生の部屋がない……どうして?なんで?なんで……」

 

教室の隅々まで探しても先生が使っている痕跡すらない、ただの砂まみれの教室。思わず頬をつねってみたが痛みを感じる為夢ではない。明らかにおかしい。何か見慣れたものが見たい。でも何処にある?何処に……

 

ホシノ「……旧校舎の中庭」

 

情緒が不安定になりかけている彼女が目指した場所は旧校舎にある中庭。そこで目にしたのは砂が積もった旧校舎と手入れがされておらず荒れ果てている中庭。彼女にとって大切な場所であった所はこんなにも廃れていた。

 

ホシノ「こんなはずが……ありえない……一体どうして?」

 

頭を抱えてその場に倒れ込む彼女は自問自答のようにどうしても呟いている。自分が積み上げてきたものが何1つ見つからないのだから当然とも言えるのだが。

 

ホシノ「……早く先生に会わないと」

 

焦る気持ちを抑え込んで彼女は町に繰り出した。

 

ーーー

 

ホシノ「いつも通り見慣れた町だけど……やっぱりおかしい。この辺りにはもっと人が居たはずなのに」

 

前の見回りより寂れた町を歩きながらそんな事を考える。最近はある程度余裕が出来ていたので皆と協力して自治区の砂掃除等を行っていたのだが……

 

ホシノ「学校の時から思っていたけど……なんだか今日は静かな1日だよね。……ああ、1人だからだ」

 

先生とアビドスの後輩、アリスとケイと開発部の皆。いつの間にか私の周りには誰かが居て騒がしいも言えるほど賑やかだった。

 

ホシノ「ドッキリ……なのかな。皆が私の事を忘れちゃって……いや、それはないよね」

 

不安からかどうしても独り言が多くなってしまう。何処か安心出来る所に行きたい、そう考えてしまうほどに落ち着かない。

 

ホシノ「先生に会いたい。けど何処に居るんだろう……あ、砂漠にある研究所とかに居るかな。町中にいる気配がないし……行ってみよう」

 

彼女は一筋の希望を胸に砂漠へ向かう。彼と初めて出会った場所でもあり、大切な人を失った嫌な記憶がある場所でもある。そんな複雑な心境になる砂漠の入り口はすぐそこに。

 

ーーー

 

慣れ親しんだ砂漠地帯。一歩、また一歩と踏み出していくものの足取りが重い。彼女自身は気がついていないものの精神的に不安定な状態になっている。もし研究所に先生が居なかったらと考えるだけで動悸がする。

 

ホシノ「大丈夫……大丈夫だから」

 

自分にそう言い聞かせるように呟きながら広大な砂漠を1人歩いていく。途中謎の大きな機械の蛇が襲ってきたが苦戦する事もなく撃退した。……そのまま数十分彷徨ってようやく目的地の場所に何も見つからない。まるで最初からそこになかったかのように砂しか視界に映らない。

 

ホシノ「確かこの辺りだったと思うんだけど……あれ……」

 

彼女はいきなり倒れ込んでしまった。大きな怪我を負った訳でもなく身体の疲れでもない。立ちあがろうとしても腕に力が入らない。

 

ホシノ「なくなっちゃった……私の大切なもの……」

 

脳裏によぎっていた受け入れたくない可能性。彼女はそれだけはありえないと受け入れていなかったが現実は残酷だ。記憶が、思い出が消えてしまったのだから。

 

ホシノ「もう……耐えられないよ」

 

無慈悲な世界で彼女の心は硝子のように割れてしまう。……はずだった。遠くから人の声が聞こえてくる。幻聴だと思っていたが次第に声は大きくなっていき、真後ろから聞こえる程の大声で「"ホシノ!"」と叫ばれた。

 

ホシノ「……シャーレの先生……」

 

「"……っ!?ホシノ、泣いて……"」

 

顔を覗き込まれたせいで泣いている姿を見られてしまった。「別に何でもない」と言い終える前に何故か力強く抱きしめられた。

 

ホシノ「何を……してるの?」

 

「"迷惑だったらごめんね。でも……君の事が放っておけないんだ"」

 

ホシノ「分からないよ……なんでこんな所にまで来たの……」

 

「"ホシノが困っていたから"」

 

ホシノ「……何それ。馬鹿みたい」

 

……でも、抱きしめられていると不思議と安心する。先生とは違う優しさに包まれるような感覚になっている。この時、普段はどうしようもないダメな大人である彼が生徒から好かれている理由がほんの少しだけ分かったような気がした。

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