セイア「やれやれ、困ったものだね。まさか2日続けて悪夢を見る事になるとは」
夢の中でそう呟いても返事はない。やはり最近よく見る淑女と何かしらの共鳴をしているのかもしれないな、と考えながら悪夢が始まるその時を待った。数分経過した頃に視界が暗転して始まった……と思っていると視界に映し出されたのは小さな寂れた学校だった。トリニティとは比べ物にならない程質素なその学校の校門には『アビドス高等学校』と刻まれている。
セイア「アビドス?こんな辺境にある時期に砂に塗れて消えるような学校の夢を何故みているのだろうか?」
不思議と好奇心を抑えられずにはいられなくなり、いつの間にかとある一室の目の前まで吸い寄せられるように近寄っていた。その部屋の扉を開けるとそこに居たのは顔も知らない1人の女性。虚を見るような瞳で何かを呟いている彼女の言葉に耳を傾けてもあまりにも小さな声なのでほとんど聞き取れない。
セイア「……わ…しが……になろ……したか…?すまない、なんて言っているかわからな……」
視線を外して考えた後に再度視線を戻した時に既に彼女の姿はなかった。彼女は一体なんだったのだろうか。淑女と関わりがあるのか?
セイア「分からない事だらけだけど……目覚めないって事はまだ続きがあるんだろう?」
そう言ったのとほぼ同時に目の前に扉が生成された。ドアノブに手をかけて扉を開けた先に広がっているのは一面の焼け野原。昨日見たトリニティの阿鼻叫喚に近い光景ではあるが明確な違いがあるとすれば……淑女がいる事だ。それも逃げ回る生徒を弄ぶように銃で命を奪い回っている。……妙だ。キヴォトスの人間が銃を1発撃たれた程度で死ぬ筈がない。だが実際に目の前で虐殺をしている淑女を見て「そんな筈はない」という否定が出来なくなってしまう。まるで『ヘイローを破壊する』事に特化しているようにも見えるが……
しばらくその光景を眺めていると1人の大人を見つけた。スーツを着た肌?が黒い男だ。その男は桃色の髪の少女を庇うように淑女の弾丸を脇腹に喰らいその場に倒れ込んだ。少女の方は数秒静止した後、包帯を取り出して応急処置をしようとするがその男が目覚める事はなかった。
「無様な最期ですねぇ。そっちの虫ケラもあの世に送って……!?」
セイア「……あれは……なんだ?」
少女は泣いて叫ぶ。そのあまりにも悲しみに満ちた叫びを聞いて胸が痛むがそれ以上に気になるのは少女の身体だ。ヘイローは黒く染まり身体は宇宙のような色と白で構成された姿に変わった。その神々しさと正体不明の恐怖が混ざったような存在に目が離さないまま眺めていると後ろから「セイア」と名前を呼ばれた。
セイア「……はっ」
マエストロ「何故道端で寝ていたのだ?」
目覚めてしまった。しかしそんな事は些細な問題だ。今夢で見たものは何なのだろうか。淑女が絡んでいる以上『起こり得る可能性』がある未来を見てしまったのか、あるいは……
セイア「(だとしても……あんな姿に変身する生徒なんて私は知らない。放っておいたら危険かもしれない。しかし淑女と敵対しているようにも見えた……ダメだ、情報が少なすぎる。唯一わかる事は彼女がアビドスの制服を着ていた事、だろうか……)」
マエストロ「おいセイア、聞いているのか?」
セイア「あ、ああ……すまない、考え事をしていて聞いてなかった」
マエストロ「はぁ……仕方のないやつだ。それで、どんな夢を見たんだ?」
セイア「何故それを……」
マエストロ「お前の様子を見れば分かる」
セイア「流石先生だね。……ただ正直自分でも夢の中で見た光景が信じられなくてね。どう説明をしたらいいのか……先に結論から言おうか。……アビドスには危険人物がいる。下手をしたら淑女以上に手に負えない」