黒服「まさか本当に来るとは思っていませんでしたよ。ティーパーティーの……」
ナギサ「桐藤ナギサです。こうしてお目にかかるのは初めてですね、黒服先生」
黒服「見知らぬ番号の着信から2人きりで話がしたいと言われた時は何事かと思いましたがね。しかし何故私に連絡を?そちらにはマエストロが居ますよね」
ナギサ「いえ、貴方でなければ意味がないのです」
黒服「……くだらない話でしたらすぐにお帰りいただきますよ」
ナギサ「構いませんよ。……単刀直入に言わせていただきます。貴方の学校、アビドスの力をお貸ししていただきたいのです」
黒服「何故アビドスなのです?他の大規模な学園に依頼した方がいいのでは?」
ナギサ「いえ、規模が小さいからこそ選んだのです。それに誰もこんな片田舎にある学校に興味はないでしょう?」
黒服「まあそうでしょうね。力を貸してほしいとの事ですが具体的に何を要求しているのでしょうか?」
ナギサ「それはまだ言えません。貴方が協力すると宣言してくださったらお教えします」
黒服「内容を教えて頂けないと協力は出来ませんね」
ナギサ「……断っていいのですか?トリニティはゲヘナに並ぶ程の大規模な学園。そこの生徒会長である私に貸しを作れるまたとない機会ですよ?」
黒服「それは魅力的ですが……内容を明かして頂けない内容に生徒を巻き込むのは避けておきたいので」
ナギサ「それは残念ですね。しかし断るという事はトリニティと敵対する意思があると捉えてもいいのでしょうか?」
黒服「……おや、圧を感じますね。交渉する態度には見えませんが」
ナギサ「不安の種は芽吹く前に摘んでおいた方が良いですよね。貴方もそう思いませんか?」
黒服「それは脅しでしょうか?」
ナギサ「そんな野蛮な事はしませんよ。私はただ交渉しに来ただけですので」
黒服「………」
目の前にいる少女は脅しているつもりなのだろうか。それにしては甘すぎる。そういう脅しはもっと相手に効果的なようにしなければ意味がないだろう。特に『悪い大人』である私には。ならば本物を教えてやろう。
黒服「貴女は1人勘違いをしているようですね。何故私が2人きりでの話し合いに応じたのか、分かりますか?」
ナギサ「……何が言いたいのです?」
立ち上がっているナギサをこちらに引き寄せて顔を近づけ、「貴女1人程度今この場で壊す事など容易いのです」と告げる。甘い環境で過ごしてきたであろう彼女にはこの程度で充分だ。これで自分の立場を理解して相応の態度をとるだろう。
ナギサ「……は、はい。貴方の仰る通りです……」
黒服「………」
思っていた反応と違うが立場を弁えたようなので解放した。何故か照れているナギサは座り直して動揺しながらも紅茶を口に含んでいる。
黒服「とにかくトリニティに協力するかどうかは今後の貴女達の対応次第で考えさせてもらいますね」
ナギサ「………」
黒服「聞いていますか?」
ナギサ「……失礼、取り乱してしまいました。貴方が良い判断をしてくださる事を楽しみにしております」
脅した効果だろうか。先程よりも円滑に話が進行してやりやすくなった。もう少し早めに脅しておけばよかったと思える程に。
ナギサ「名残惜しいですがそろそろ時間です。黒服先生、また『2人きり』でお会いしましょうね。それではご機嫌よう」
黒服「ええ。お気をつけてお帰りください」
羽をバサバサと動かしながら何故か『2人きり』という事を強調して帰っていったナギサ。彼女の目的とは一体?