例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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惨状と交渉成立

その光景はとてもこの世のものとは思えなかった。地面には無数の死体が転がり止むことのない血の雨が降っている。片方はただの嫌悪、もう片方は偉大なる母を傷つけられた悲しみと怒り。それが誤解と知らずに学園を破壊し、逃げ惑う生徒も1人残らず命の輝きを失う。平和を訴えるシスターは焼かれ灰となり放課後を満喫していた微笑ましい光景も阿鼻叫喚と化していた。正義実行委員会の委員長が前線にいるので何とか持ち堪えているがそれも僅かな時間を稼ぐに過ぎない。この空間に正義や悪などという概念はない。ただ無駄に争い命を落とすだけ。

 

セイア「見ていられないね……」

 

思わず顔を背けると隣に居たのは紛れもなく『淑女』だった。しかしこちらに気づいている様子はなくただ目の前を光景を眺めているだけ。

 

淑女「私は仇打ちなんて望んでいません……何故こんな……子供達が殺し合わなければならないのですか……」

 

セイア「(……なんだろう、この違和感は。今までの淑女とは違うような……)」

 

淑女「……いえ、絶望するの後でいい。今からでも止めなければ……ッ!?」

 

突如悶える淑女。……無理もない、全身ボロボロなのだから。それでも這って生徒の元に向かっている彼女には執念のようなものを感じた。

 

セイア「(だがあの傷では……死体が1つ増えるだけだろうね)」

 

彼女はその絶望が広がる世界を目が覚めるまで傍観し続ける。やがて火が消える頃にはただ1人、白髪だった髪を返り血で赤く染めて淑女の亡骸に抱きついて泣き崩れている少女しか残らなかった。

 

ーーー

 

ナギサ「……という夢を見たそうです」

 

黒服「現実味がありませんね。ゲヘナとトリニティの相性がよくないとは度々聞いてはいましたがそう簡単に戦争を始める程険悪になるのでしょうか?」

 

ナギサ「仰る通りです。度々生徒同士で争いは起きていましたが規模が小さいものばかりでしたのでいきなり戦争という話をされても……と考えてしまいます」

 

黒服「いくら予知夢とはいえ私はそのセイアなる存在に出会った事がないので信用出来ませんね。それにゲヘナとトリニティでの問題であればアビドスを巻き込まないでいただきたいのですが」

 

ナギサ「私としては万が一に備えておきたいのです。アビドスは戦力としては一流だとマエストロ先生からお伺いしておりますので是非お力添えを……」

 

黒服「お断りします。何故生徒を危険な場所に赴かせなければならないのでしょうか」

 

ナギサ「図々しいのは百も承知です。どうか……どうかお願いします」

 

黒服「……おかしいですね。何故銃を構えているのです?」

 

ナギサ「………」

 

黒服「なるほど。脅しのやり方を変えてきたという事ですか。確かに私はキヴォトスの外から来た人間、銃で撃たれれば死ぬでしょう」

 

ナギサ「……了承して頂けるのであればこの銃はしまいます」

 

黒服「……ふむ。脅しとしては及第点でしょうか。しかしそのやり方はやめた方がいいですよ」

 

ナギサ「ええ。私も人殺しになりたくはありませんので……」

 

黒服「いえ、そうではなく……ああ、もう遅いようです」

 

彼の視界には数100メートルから音速でこちらに向かって走ってくる人影が見えている。桃色の髪を靡かせている彼女こそアビドス高等学校唯一の3年生であり、彼が初めて出会った生徒、『小鳥遊ホシノ』。恋に焦がれて走る乙女は今日も絶好調だ。

 

ナギサ「……何ですかあれは」

 

黒服「ご存知ないのですか?あれが私の生徒です」

 

ナギサ「ミカさんよりも恐ろしいですね……分かりました、銃をしまいますので彼女を止めてください。命の危険を感じましたので」

 

黒服「賢明な判断ですね。……もう大丈夫ですよ、ホシノ」

 

ホシノ「なんだ、それなら走って来なくてもよかったかな。それでそこの羽が生えた人は誰?」

 

ナギサ「お初にお目にかかります。私は桐藤ナギサと申します」

 

ホシノ「そっか。ねえナギサちゃん、さっき先生に向けて銃を構えてたよね?どういうつもりか聞かせてもらえるかな?」

 

ナギサ「ちょっとした交渉をしていまして……」

 

ホシノ「ナギサちゃん、冗談はやめよう?何の為に先生に銃口を向けていたのか、私に教えて?」

 

ナギサ「いえ、ですから……せ、先生。彼女に説明を……」

 

ホシノ「『私の』先生を撃とうとしたんだよね?」

 

ナギサ「いえ、撃つつもりはありませんでした……ただお話を聞いていただきたくて……」

 

黒服「ナギサの言っている事は本当です。それにその銃には弾が入っていない事も知っていましたので」

 

ホシノ「なんだぁ、そうならそうと早く言ってよもぉ〜」

 

ナギサ「(……この生徒さんはなんだか情緒が不安定ですね……アビドスとはこんなにも恐ろしい生徒が居るのですか……)」

 

黒服「とにかく貴女の話はお断りさせていただきますのでお帰りくださ……」

 

シロコ「ん、黒服ちょっと待つべき。私が交渉する」

 

黒服「何処から現れたのです?」

 

ナギサ「虚無から人が……?」

 

シロコ「そこの羽が生えた人。アビドスは貴女に協力する」

 

ホシノ「うぇ」

 

黒服「勝手に決めないでもらえますか?」

 

ナギサ「それは有難いのですが……よろしいのです?」

 

シロコ「ん、満場一致」

 

黒服「そろそろ会話の豪速球をやめませんか?」

 

ナギサ「あ、ありがとうございます……?では詳しい内容ですが……」

 

シロコ「20億」

 

ナギサ「え?」

 

シロコ「1人頭4億。戦闘人数は5人。これを前金として支払ってもらうのが条件」

 

ホシノ「流石にそれは払えないんじゃ……」

 

ナギサ「……もし協力していただけるのであればお支払いします」

 

シロコ「ん、交渉成立。黒服、これで満足したよね」

 

黒服「だから断ると言って……いや……これでいいのかもしれませんね」

 

先程マエストロから聞いた話では私が撃たれたのを見たホシノが覚醒すると言っていた。ならば敢えて危険な場所に赴く事でその条件を満たせるのでは?

 

黒服「気が変わりました。ナギサ、アビドスは貴女に協力しますよ」

 

ナギサ「……感謝致します」

 

ホシノ「………」

 

何故かほんのり顔が赤いナギサとそれを訝しむように睨むホシノ。こうして人知れずトリニティとアビドスの共同戦線が始まる……?




時々なんでこんなものを書いてるんだろうと思う時があります。

その作品は日付が変わった頃に日常辺りに投稿されます
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