例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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誤解と現実

ヒナ「……嘘つき」

 

朝日が差し込んでくる時間帯になっても母の姿はない。用事を済ませたらすぐに戻ると言っていたのにも関わらず。こんな事は母と出会ってからは初めてだった。そんな不安からか1つの考えが過ってしまう。

 

ヒナ「私……嫌われちゃったのかな……」

 

思えばずっと母に甘えてばかりだった。数年経ってもずっとそのような生活だったので愛想を尽かされてしまったのかもしれない。

 

ヒナ「……ううん、そんなはずはない。用事が終わってないだけだよね」

 

何度か深呼吸をして冷静に考えるとそう簡単に嫌われるはずがないという簡単な事にようやく気づけた。だからこの寂しさも一時的なもの……そう考えて身支度を整え始めた。

 

ーーー

 

ベアトリーチェ「もう……朝ですか。ヒナはもう起きている頃でしょうか……あの子には申し訳ない事をしてしまいましたね……」

 

ヒナはとても寂しがり屋だ。たかが1日と思うかもしれないが数時間離れただけで部屋で泣くような子なのだ。今すぐ帰って抱きしめながら撫でたい……けれど行方不明の生徒を探さなければいけない。彼女にとってはヒナだけではなく全生徒が大事なのだ。

 

ベアトリーチェ「しかし……少々徹夜しただけでこんなにも疲弊してしまうとは……私も歳でしょうか」

 

そう自虐気味に呟きつつ壁に寄りかかるように座り朝日を眺めている。

 

「ご機嫌よう」

 

隣から聞いた事があるような声でそう挨拶をされた。「ええ、ご機嫌よう」と挨拶を返し声がした方向へ顔を向けると……自分の姿が視界に映った。

 

ベアトリーチェ「……マエストロの複製ですか?全く、私は忙しいというのに……」

 

淑女「いえ、私は複製体などではありませんよ、マダム」

 

ベアトリーチェ「複製でないのであれば貴女は誰なのですか?」

 

淑女「私も貴女と同じ『ベアトリーチェ』ですよ」

 

ベアトリーチェ「……それで同じ存在である私に何の用でしょうか?」

 

淑女「受け入れるのが早いですね。ですが説明の手間が省けて好都合です。どうでしょう、私と手を組むつもりはありませんか?」

 

ベアトリーチェ「手を組む?」

 

淑女「ええ。同じ人間が2人いるのです。他の奴らよりも信用できる最高の相棒にもなり得るでしょう」

 

ベアトリーチェ「……確かに同じ人間であれば目的や思想も必然的に同じになる……理想の関係とも言えますね」

 

淑女「どうやら交渉成立のようですね」

 

ベアトリーチェ「はい。貴女と手を組みましょう」

 

淑女「素晴らしいですね。流石は私。それでは一緒に作るとしましょうか」

 

ベアトリーチェ「そうですね。私達の目指す理想郷……」

 

淑女「大人が子供から搾取する世界を」

ベアトリーチェ「全ての子供達が幸せになれる世界を」

 

淑女「……今なんと仰ったのです?つまらない冗談はやめていただけませんか?」

 

ベアトリーチェ「それはこちらの台詞です。まだ子供から搾取だなんて幼稚な考えを持っているとは思いませんでしたよ」

 

淑女「何ですって……?よくもまあ、私にそんな口を叩けますね」

 

ベアトリーチェ「どうやら私達は相容れない関係のようです」

 

淑女「ええ、非常に残念です。……ミカ、やりなさい」

 

ミカ「おっけー☆」

 

ーーー

 

ヒナ「まだ帰ってこない……何かあったのかな……」

 

残された彼女は1人母を想い帰りを待つ。その時、何かが割れるような音が部屋に響く。音がした方を見ると机の上に置いてあったコップが半分に割れていた。それを見て何故か胸騒ぎがしてくる。

 

ヒナ「……やっぱり探しに行こうかな」

 

ーーー

 

淑女「ミカ、もう結構です」

 

ミカ「えー?もっと叩きのめした方がよくない?ゲヘナの先生なんだよ?」

 

淑女「彼女には恨みがありませんので。……それにしても情けない限りですよ。まさか変身すら出来なくなっているとは」

 

ベアトリーチェ「………」

 

淑女「猶予を与えます。貴女が私と同じ思想を取り戻して良き協力者になってくれる事を期待していますよ。……ただしまた同じような事を仰った際には殺しますがね」

 

ミカ「結局見逃しちゃうの?ま、いっか」

 

淑女「はい。本日はまだ接触しなければならない人が居ますからね。このような価値のない人間に時間を浪費してはいられませんから」

 

ミカ「それもそうだね。ゲヘナの先生だし」

 

転移のようなものを使い淑女とミカはその場を後にした。取り残された母はどのような状況であっても生徒に暴力を振るわなかった事に誇りを持ち、生徒を利用してその手を汚させている淑女に対して怒りが湧き、何も出来なかった無力感に襲われていた。

 

ベアトリーチェ「せめて……あの子に……『貴女の綺麗な手を汚してほしくない』と伝えたかったですね……」

 

意識が朦朧としてくる中、愛しい子供達を想い、心から謝罪をする。『弱くて情けない母で申し訳なかった』と。そう心の中で呟いた偉大なる母は血だまりの中で長い眠りについた。

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