1人の少女は罪を背負った。例え操られていたとしてもそれは言い訳に過ぎない。何人もの人を不幸にした少女は許される事はないだろう。
ミカ「………」
目の前に居る自分が誘拐して神秘を吸い取られ続けているゲヘナの生徒。その拘束具を壊していき次々と解放していく。
やがて全員の拘束具を破壊し終えると介抱して意識が戻るのを待った。
許されなくても誠心誠意謝罪をする為。蔑まれても仕方がない。これでゲヘナとトリニティの溝が深まってしまっても。
ミカ「全部私が悪いんだから……」
淑女「ええ。全てミカの責任です。ゲヘナばかり誘拐したのも解放してしまった事もね」
いつの間にか背後に淑女が居たようだ。しかし動揺する事もなく振り返って元凶に向き直る。その表情に迷いはない。
ミカ「うん。貴女に操られた弱い私が悪いんだ。だから……貴女を倒して償う」
淑女「所詮生徒とは身勝手な存在。いずれこうなる事は理解していましたよ。ですがこのまま戦っても面白くないですね……そうだ、こうしましょう」
彼女を周りをユスティナ聖徒会とヒエロニムスの複製体である
『アンブロジウス』が囲んでいる。逃げ場は完全に塞がれたようだ。
淑女「ミカは何分持つでしょうか?もし膝をついてしまったら神秘を吸い取ったゴミ共々始末されるでしょうね。精々頑張ってください」
言いたい事を一方的に言い淑女は去っていった。
この状況は絶望的だ。それでも彼女は1人戦う決意をして引き金を引いた。
あれから何分が経過しただろう。亡霊達を数百体は倒したのにまるで無限に湧いてくるようだ。
ミカ「……大丈夫。まだ戦える。全部を出し切るんだ」
少し前の自分は何かと理由をつけて逃げようとしただろう。自分は悪くないと言い訳をして拗らせていたかもしれない。それでも今回は、今回だけは逃げる事も言い訳する事もしないと決めたのだ。
気力を振り絞るように戦闘態勢に入り敵を攻撃する。その姿が意識を取り戻したゲヘナ生達に見られている事にも気づかずに戦い続ける。
しかし限界はきてしまうもので、一回り大きい亡霊に右腕を撃たれた際に銃を落としてしまった。そしてそのまま集中砲火を受け意識が朦朧としてくる。
ミカ「(……もう、駄目かな。やっぱり私には何も守れないんだね」
力無く仰向けに倒れ天井を眺める。朽ちて亀裂が入った隙間から見える月に照らされて少し安心した。
ミカ「迷惑ばかりかける悪い子でごめんね」
マエストロ「全くその通りだ。本当にお前は手が掛かる生徒だな」
ミカ「えっ……」
突然周囲の敵を蹴散らすように砲撃が放たれている。そんな中突如現れた先生に抱き抱えられて「よく頑張ったな」と告げられた。
ミカ「頑張ってないよ……私はただ自分が誘拐しちゃったゲヘナの子達を守ろうとして……」
マエストロ「お前は私の生徒に恥じない行為をしたのだ。だがもう充分だ。後は私達に任せてもらおう。そこのゲヘナの生徒達よ、私の大事な生徒を頼んだ」
ゲヘナ生A「はい!」
ミカ「……ごめんね。私は貴女達に酷いことを……」
ゲヘナ生B「確かに私達は貴女に連れられて監禁されていましたが……先程まで命を張って守っていた姿を見ていたら憎しみなんて些細な事なんて忘れました」
ゲヘナ生C「それに私達の母もこう言うでしょう。『笑って水に流す』と」
ゲヘナ生A「そういう事ですので貴女の罪を許します。罪を背負う必要はないんですよ」
ミカ「でも……それだと私が私自身を許せないよ……」
ゲヘナ生A「……ではお名前を教えてくれませんか?それだけで構いません」
ミカ「……聖園ミカ」
ゲヘナ生A「トリニティの『聖園ミカ』さんですね。今後忙しくなるかもしれませんがよろしくお願いします!」
ミカ「えっ……えっ?」
マエストロ「あっちは大丈夫そうだな。……さて、2人とも覚悟はいいか?」
セイア「当然だよ」
ナギサ「ええ。準備は出来ております」
マエストロ「私の芸術品を傷つけた対価を支払ってもらうとしよう」
合図と共に再度砲撃が放たれて亡霊達を浄化していく。数分もかからないうちに残されたのは二体のみだった。それも既に瀕死の状態であり、ナギサとセイアが放った銃弾であっさりと消えていった。
マエストロ「所詮は概念の複製。その弱点は私が1番理解しているつもりだ」
ナギサ「ええ。簡単な事でしたね」
セイア「この後は淑女を倒しに行くのかい?」
マエストロ「いや、それは私の役目ではない。ミカを治療しなければならないからな」
ーーー
淑女「……やはり貴女が此処に来るのですね。もう1人の私よ」
ベアトリーチェ「ええ。決着をつけましょう」