一般日本人が転生する話。   作:あうん

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主人公口悪いです。


かっこよく死にたい。

女中が朝ごはんを持ってきてくれた。ついでにマダラの分も持ってきてくれたらしい。気が利くなぁ。

マダラはご飯をさっさと食べ終え、気合いが入った様子で修行に行った。がんばえ〜。

さーて。マダラを泣き止ませて、写輪眼の口止めもした。後は部屋でゴロゴロ休むだけ。

だが問題がひとつ残っている。

うう、肩が湿っている。最悪!着替えたい!何なら風呂!

こんな目にあってもマダラのためを思って気付かないふりをするなんて。全く……なんてできた人間なんだ!?俺って……!

 

着替えるために自分の部屋に戻る。

部屋にタンスあったかな?あったわ。

下から開けていく。空。次。何で苦無入ってんの?次。ここじゃないこれも違う。ああもうちびなせいでもう手が届かない。

引き出した棚に足をかけて上の棚によじ登っていく。んもー!どこに入ってんだよ!ここか!?違う!!

というか服探す前に一回服脱いだほうがよかったよな!?肩の湿り気がうざい!何もかもうまくいかなくてイライラしてきた。

そんなこんなでガサガサとやって、五段目ほど。

 

「あった!」

 

やっと見つけた服を引っ掴む。よし。早速着替えよう。俺は棚に腰かけて上を脱いだ。汚れた服はそのまま下にポイである。降りたら拾うさ。

タンスの中に入ったりするの幼少期のロマンの一つだよな〜。すっぽりと棚の中に納まることにちょっとワクワクした。

まあ俺はいい歳した大人なので、用事が終わったらさっさと降りることにする。

 

下を見る。

う、高いな……。1mちょっとの高さでも子供にとってはな……。

下の段にゆっくり降りていく。足先が四段目についた時に、気付く。

あ、ちょっと待って、これ棚戻さないと後で怒られない?

あぶね〜。証拠隠滅せんとな〜!

俺は五段目の棚を押し込もうとした。重っ!固っ!うぎぎ……、おらぁ!!

ズルッ。

 

「は?」

 

空中に身を投げ出された。何で?滑ったからだ。棚の縁に足をかけて思いっきり力を入れたから、足が、外に。

 

え、どうしよう。俺死ぬ?

おい待てよ。こんなのおかしいじゃん。待ってくれ。

 

なんでこんなことになった?原因は?頭がぐるぐるする。

ああくそ。マダラが泣かなかったらこんな目にあってないのに。慰めなきゃよかった。

いや違う、そもそもタジマが俺に火遁の印を教えさえしなければ。それにチャクラ切れとかいう概念を、教えてもらっていたら。きっと、風呂で使ったりしなかった。

 

マダラを、泣かせずにすんだじゃないか!

 

全部タジマが悪いのでは!?おい!母に叱られて当然だ!何もかも説明が足りねぇ!チャクラを練るって何だよ!術を教える前にそっち教えるべきじゃなかったのか!?なーにが代々父が教えることになってるだ!そんで子供が気絶しちゃ世話ないよなぁ!?バカ!?

母も母だ!いきなり突き放しておいて、舌の根の乾かないうちに一緒に暮らしましょう、やっぱ無理でーすって!ふざけんなよ!ハンバーガー食いたくなっちまったじゃねーか!望み薄なのに一瞬希望を見せてくるとかよぉ!ケーキも!パフェも!ラーメンだってこの世で食えるかわからんもん思い出させんなカス!

それにそれに、タジマが母を孕ませなければ、俺はずっとあそこにいれたんじゃないのか!?こんな目に遭うこともなかった!あのクズ!

米もさぁ!ちゃんと白米で食いてえよ!脱穀しろよ!意識高い系の和食ばっか出しやがって!卵焼きはどうした目玉焼きは!?納豆はこの世にあんの!?微妙に日本風なのやめろよ!期待を捨てられないんだよ!

ああ!おにぎりも稲荷寿司もまだ食えてない!昨日も昼食食いそびれた!タジマのせいだ!!昼抜くってふざけんなよ!虐待だろうが!だから気絶しまくるんじゃねえの!?

あぁあぁ!戦国時代に生まれちまうしさぁ!なんでだよ!なんで忍者!?武士はどこ行ったんだよ!?

マダラが、子供が人殺しって、意味わかんねーよ!信じられねぇよ!あんな、あんな優しいガキがだぞ!?俺に向ける笑顔と同じ顔で人を焼き殺したって!

母も、平然と人を殺してた!なんでタジマは普通に接してるんだよ怖くないの!?

火を吐くし、目が赤くなるのもキモイ!暗がりで光るって何だよ化け物め!全員死んじまえ!この世はクソです!日本に帰らせてくれ!

意味わからん。意味わかんないことばっかだ。何でこの世界に生まれたんだ俺は。こんなところで死ぬのか?バカだろ。こんな。

 

散々不満を吐き出した。なのに、まだ俺は死んでない。あまりにもゆっくりと時間が進むものだから、ワンチャン死なないんじゃないかとすら。

走馬灯か。これが?愚痴しか言ってねえ。こんな気持ちで死にたくねえな。ダサすぎる。

 

今のままでは頭から落ちる。この高さだと洒落にならない。何か、できることはないか?体は、動く。

周りを見渡して。タンス、畳、脱いだ服、ちょっと離れて布団、巻物、本。

 

碌な選択肢がねぇ!俺は滑る原因になった、タンスの棚に手を掛けた。

 

 

「はぁ……」

 

生きてる……。まあタンスくらいしか手の届く物なかったからね。引き出しまくっててよかった……。いやそもそも引き出しをしめようとしたのが元凶……。タンス火遁で燃やしても許されない?やつあたりの自覚はある。

そっから慎重に降りて、畳に足をつけた。恋しき地上よ〜。脱力。畳に思わず頬擦りしてしまう。

タンスを掴んで全体重を掛けた肩が痛い。マダラ汁の方だ。呪いかこれは?肉離れとかしてないよな……。

布団で休もう。

立ちあがろうとして。崩れ落ちた。

……視界が治らない。思考と体の動きの差が激しい。走馬灯モード長くない?もういいって。

 

「うぅ」

 

まずい。

気持ち悪い。

迫り上がってくる物を抑えられそうにない。

 

吐いてもいい物は!?ゴミ箱……ない!?普通あるだろ!?

ええい、さっき脱いだ服を掴む。世界が遅い。何だよいい加減にしてくれ!

 

「っ、ぅ……」

 

……ああ最悪。何やってんだろう俺。

体を何とかずらして汚物に顔面から激突することだけは回避した。力が入らない。口の中が酸っぱい。

目を閉じる。ちょっとだけ楽になったかも。

冷や汗でびっしょりだ。すごく寒い。着替えた意味ねーな。

全身が冷えているのに。

頭だけは熱くて。

 

 

 

 

 

 

「う〜ん」

「っイズナ……」

 

寝たなぁ。はあ俺ってば超元気。

布団を剥がして、体を起こす。左肩がずきりと痛んだ。

やっぱ元気じゃないです……。

 

「……」

 

タジマがいた。何だか朝のマダラみたいだ。

何だよ。慰めたりしないぞ。大人なら自分の機嫌は自分で取ってくれよな。

俺は笑顔を見せた。

 

「父上。おはようございます」

「……」

 

無視すんな!

 

「今日は寒いですね!」

「女中が慌てて私を呼ぶので何事かと思いましたが、随分と元気そうですね」

「……」

 

会話のキャッチボールをしろよ!

 

「何があったか話しなさい」

「……」

 

着替えたくて。タンスをひっくり回して。足を滑らして死にかけて。何とかなったけど、気が抜けて吐いて。気を失った。

い、言いたくねえ〜!

ちらっとタンスを見る。きちんとしまわれていた。呪いの服もない。

これは……。

 

「部屋で休んでいなさい。と言ったはずですが?覚えていますか」

「……」

「箪笥で遊んで良いと言いましたか?」

「……」

「返事をしなさい」

 

……うぐう。マダラの次はタジマに説教されるのかよ!なんだよ散々すぎる。くそっ!!

俺は悪くない!!

 

「タンスで遊んじゃいけないとも言われてないが!?」

「!?」

 

タジマは驚いた顔でこちらを見ている。

……ああほんと、何言ってんの俺。タンスで遊んじゃいけないとか、それはそうだろ。バカみたいなこと言って。

 

「……ご、ごめんなさい」

「……」

 

謝るくらいなら最初から言うなってそれー。

 

「……いえ、そうですね。確かに言っていません」

「ええっ」

 

そこ認めるの……?

 

「そう言ったことは全て母親がしつけるものです。ですが、お前は……」

 

まあ、母は、うん……。

 

「あの部屋に、箪笥はありませんでしたね」

「なかったですね」

「はぁ……」

 

またため息ついてる……。

 

「お前の常識の無さと、虚弱さには驚かされます」

 

ひどい!でもぐうの音も出ない。

 

「申し訳ないです……」

「何があったら箪笥で遊んで、気を失うことになるんですか?」

「うう。着替えようと思ってぇ……」

「女中を呼べばよかったでしょうに」

 

その手ぇ!?俺にはなかった発想だ……。金持ちは考えが違うわ。

 

「考えつきませんでした」

「次からそうしなさい」

「はい……」

「よろしい」

 

タジマは厳しい顔のまま続けた。

 

「それで、その後は?」

「……タンスから落っこちて」

「……」

「なんとかなったんですけど、そこで力尽きました……」

「……そうですか。これからは気を付けなさい」

「はいぃ……」

 

タジマの目が冷たい。やだそんな目で見ないで……。

 

「怪我はないですか?」

「左肩が痛いです……」

 

あと顔面。

 

「見せてみなさい」

 

ちょっとだけよ〜?

肩口を見せる。

赤黒くなっていた。ぎゃあ!

 

「……」

「治りますかねぇ……?」

「はあ……」

 

またため息ついた!そろそろ俺も傷つくぞ!

 

「モミジに見せにいきなさい」

「母上ですか?」

「そうです。あれは医療忍術が使えます」

「はあ?」

 

医療と忍術って合体するの?

って、見せにいきなさい?一人で行けってこと?や、やだ〜。

 

「父上は行かないのですか?」

「合わせる顔がありません……」

 

タジマは顔を逸らした。

しゃあねぇなぁ!一人で行ってくるよ!!

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