一般日本人が転生する話。   作:あうん

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ちょっとホラー要素あります。


歯磨きは何よりも優先される。

風呂から上がって。マダラにおぶさって廊下を進む。

 

「う、うう……」

「お前ほんといい加減にしろよな……」

 

こうなったのも全部お前のせいじゃん……。俺は悪くない!

 

「ハゲ……」

「落とすぞコラ!」

 

ひーん。マダラがいじめる!

 

……お腹空いたな。

 

そういや、朝は吐いて、気絶して。夕飯また吐いて。

俺一日何も食べてなくない!?死んでしまう!!

 

「お腹すいた!」

「ああ!?」

「ご飯食べたい!」

「……」

「ご飯ご飯ご飯!!」

「わかったから耳元で叫ぶな!」

 

マダラは方向転換した。ふふ、ついでに厨房の位置もわかるな。俺ってば策士。

マダラの髪を掴む。

 

「マダラ号はっしーん」

「マジで落とすぞ!?」

 

冗談じゃん〜。全くこれだから冗談の通じないやつは……。

 

 

来るは厨房。美味しいご飯を作ってくれている場所!

マダラ(と背負われている俺)は厨房の中に入った。

ガラガラ。お邪魔!

お味噌汁のいい匂いがしますな。お腹がさらに空いてきた!!

 

「あら、マダラ様。と、イズナ様!いかがされましたか」

 

音に気付いた女中がこっちに来てくれた。

 

!?

おまんじゅうくれた女中さんと激似なんですけどぉ!?

 

「イズナが腹減ったって。何かあるか?」

「あら、そうでしたか。少々お待ちくださいね」

「ああ」

 

女中さんは奥に引っ込んでしまった。

えええ?

 

「兄さん……」

「少し待ってろって言ってたろ。ちったあ我慢しろって」

「そうじゃなくて……あの女中さん、双子とかだったりする?」

「は……?いや、違うんじゃねーの」

 

じゃあ母にぶっ殺されてたあの女中さんは何だったの……!?

 

「お化け……?」

「変なこと言うなって……」

 

冗談はともかく。女中さんは多分、他人の空似だろう。うちはの人顔立ち似てるからなぁ。

マダラの顔を伺う。ちょっと青褪めていた。今の話でビビったのかな?ウケる。ちょっとからかってやろう。

前世知識チート発動!

声を潜めて話しかける。

 

「兄さん、ドッペルゲンガーって知ってる?」

「どっぺる?」

「自分と全く同じ見た目のお化けでね。お化けは自分の知らないところで色々イタズラとかして」

「ふーん……」

「それでね、そのお化けがやったことを全部自分のせいにされちゃうんだよ」

「は?なんでだよ」

「他の人からしたら見分けがつかないからね。やりたい放題だよ。でも、怒られるのは自分なんだ。自分じゃないって言っても信じてもらえない」

「最悪じゃねーか」

「うん。だからね悪いことしてる偽物を探して、捕まえないといけないんだ」

「そうだな」

「でも、捕まえられると思う?」

「?」

「自分と全く同じ足の速さで、同じ体力で逃げる偽物を捕まえられると思う?」

「……」

 

考え込むマダラ。

 

「でも、捕まえねぇといけねえんだろ?」

「そうだね。でもさ、もしも。もしも捕まえられなかったらどうなると思う?」

「捕まえられなかったら……?」

「そう」

「……わかんねぇ。どうなるんだ」

「それはね……」

 

ククク……。マダラにおんぶされていて良かった。俺の顔がニヤついているのがバレずに済む。

 

「頑張って探して、探して、それでもダメで、疲れてヘトヘトになって、お家に帰るでしょ?」

「?ああ」

「ご飯を食べようと部屋に行くとね、」

「……」

「いるんだよ。自分の、偽物が。家族と皆で」

「……!」

「それで、偽物が言うんだ。自分を指差して『偽物が出たぞ!俺の言ったことは嘘じゃなかったろ!』って」

「え……」

「本物は家を追い出されて、偽物が立場を乗っ取っちゃうんだよ。自分は外で、皆がご飯を美味しそうに食べてる様子を見るだけ」

 

自分で言っててなんだが、だいぶ怖いなこの話……。

マダラはいい感じにビビっている。愉快愉快。

マダラは何か言おうとした。

 

「……それじゃあ、」

「お待たせいたしました〜」

 

女中さんがおにぎりをいくつか持ってきてくれた。うわ〜!美味しそ〜!!

 

「ありがとうございます!」

 

女中さんから一つ受け取る。よだれがやばい。早く食べなきゃ!口を開ける。

 

「い、イズナ!」

 

何!?

マダラが俺の食事を邪魔する。おい揺らすな!おにぎり落としそうになったじゃん!

 

「そうなっちまったら、本物はどうしたらいい……!?」

 

その話後じゃだめ?めんどくさくなってきた。

 

「知らな〜い」

「はあ!?」

「死んじゃうんじゃないの?」

 

おにぎりをパクリ。

……!!

空腹におにぎりが沁み渡る〜!塩加減!優勝!

 

「ん〜!美味しすぎる!!」

 

俺の喜び満面の様子に女中さんがにっこりと笑いながら話しかけてきた。

 

「そんなに美味しいですか?」

「世界一美味しいです……!」

 

あらあらうふふ。女中さんはニコニコだ。俺もニコニコ。ハッピー空間だ。

 

「イズナ様がお変わりないようで、安心しましたよ」

「?」

「以前、おまんじゅうを差し上げたこと。覚えていませんか?」

「……」

 

首を折られて、血塗れになった姿が頭によぎった。

苦痛に歪んでいた顔と同じ顔で。こちらに笑いかけている。

 

……。

 

ドッペルゲンガーだー!!!!!

俺はゲロった。

 

 

「しくしく」

「泣くなよ……」

「泣いてない!!」

「わかった!泣いてないんだな!」

 

風呂に出戻りである。もうほんとなんなの。お化けがいる世界とか聞いてないんだけど。

結局、マダラは二人分の服を洗う羽目になっている。

貴重なお米が……。もったいない……。食べ物を粗末にするやつは許されない。ああ俺は地獄に落ちる……。

 

「すみません……」

「……吐いちまったもんはしょうがねーだろ」

 

優しい……。マダラお前は優しすぎる……。ちょっとくらい怒ってもいいんだよ……?

 

「なあ」

「何?」

「さっきの話の続きだけどよ……ドッペルゲンガー、を捕まえられたら、消えるのか?」

 

あー。それね。

 

「捕まえられねぇと死んじまうんだろ?」

 

うーん。どうだったかな?俺別にドッペルゲンガー博士じゃないし。

 

「……確か、殺す、とかだったかな?」

「……殺す、?」

「まあぶっちゃけ全部作り話だから流していいよ」

「おい!?」

「兄さんは騙されやすいね〜」

「お前なぁ!」

「あはは」

 

 

おんぶで部屋に戻ってきた。部屋の中におかゆが置いてある。女中さん……!

 

「ぐすっ……おいしい……!」

「……」

 

原点回帰。俺のオリジン。一周回っておかゆが1番美味いのでは?母は正しかった……?

空っぽのお腹に染み渡る温かさ。

 

「ごちそうさまでした……」

 

手を合わせる。やっと腹が満たされた。

ああ、なんか急に眠気が……。

 

「もう寝ろ」

 

うつらうつらしてたら、マダラが俺を布団に押し込んだ。

俺は抵抗する。

 

「歯を……みがかなくては……」

「明日したらいいだろ!」

「虫歯になったらどう責任とってくれんのっ……!?」

「い い か ら 寝 ろ!!」

 

い、いやだ!口はゆすいだけど吐いた後に歯磨きしないとかありえないんだけど!?歯が胃酸で溶けちゃう!やだ〜!!

マダラは俺を羽交い締めした。目が勝手に閉じていく。抗えない……!

バカマダラ……。覚えとけ……。

俺は寝た。

 

 

おはよう!今日は、雨かぁ。でも俺は超絶元気だぜ!よく寝た!!

でも布団から出た顔面が寒い。

 

「う〜ん」

 

ゴロリと寝返りを打つ。うっ!?壁にぶつかった。

違う。マダラだった。

 

「おはよう兄さん」

「おう」

 

あったけ〜。ぎゅーと抱きつく。しばらくくっついていたい。マダラも俺を抱きしめ返してくれる。

ふむ。名誉抱き枕に認定してやろう。

しかし。

俺はマダラから離れ、布団から這い出た。

 

「歯磨き……!!」

「おぉ……」

 

布団に留まるマダラ。

俺はマダラから布団を取り上げた。

何のんきしてんだお前はぁ!

 

「おいっ何すんだっ」

「歯磨きしに行くんだよ!」

「一人で行けばいいだろ!」

「兄さんは歯磨きしないつもり!?」

 

マダラはめんどくさがった。

 

「あとでいいだろ……」

 

お前さぁ!びしり。マダラを指差した。

 

「不潔。不潔だよ!兄さん!」

「不潔!?」

「口が厠以下だよ!」

「そこまで言うか!?」

 

俺は語った。口の中がいかに汚いか。虫歯になったらどうなるか。虫歯を放置したらどうなるか。

乳歯の時点で甘えたことやってると将来悲惨になるぞ……!

どんどん青ざめていくマダラ。

 

「ーーと言う訳で。歯磨き、行くよ」

「そ、そうだな……」

 

歯を磨いた。いや〜すっきり。

散々マダラをビビらせたので昨日の歯磨きの件は許した。俺って寛大すぎない?




五歳児の語彙ってどんなもんですかね。マダラしっかりしすぎ感。
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