一般日本人が転生する話。   作:あうん

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死ぬ気でやれば人生何とかなる。かも。

朝。天気は、いいか。

体がだるい。寒いし。こりゃ風邪ですね。

マダラにしがみつく。あったかくない。俺の方が熱あるんだ。

使えねぇ!この湯たんぽ!

マダラを叩き起こす。

 

「おはよう!起きた!?」

「お、おはよう。どうした?」

「超絶寒い!死んじゃう!」

「大丈夫か!?」

「大丈夫じゃないから言ってんだろ!」

 

マダラがガバリと起き上がる。布団が捲れた。ちょっとした風すらとんでもなく寒い!?

 

「ウギィさぶいっ」

「あ、悪ぃ!」

 

マダラが布団をかけ直す。だから風ェ!!

オロオロするマダラ。役立たず!

 

「ど、どうしたら……」

「タジマ呼んできてぇ!」

「ち、父上だな!わかった!」

 

マダラは疾風の如く部屋から飛び出した。お前いい加減にしろよなんで走るだけで風が発生すんだよ!?

布団を頭から被る。布団と体にあるちょっとした隙間ですら寒い。転がって布団に包まる。

 

「ブルブル」

「マダラに呼ばれましたが……何をしているんですか?」

 

タジマァ!早いな!?

見ればわかるだろ。

俺は今、芋虫だ。

 

「風邪引きました」

「そうですか。……症状は?」

「寒いです」

「……」

 

タジマが額に手を当てる。冷たい。気持ちいい。マダラよりも役に立つ。流石タジマ。

 

「なるほど。嘘ではないようですね」

「ここで嘘ついてどうすると言うんですかぁ!?」

「昨日のことがあってどの口が……ある意味感心します」

「うう……」

 

嫌味言われた!寝込んでいる時に!いたわれよ!病人だぞ!

 

「懲りずにまた嘘をついたのかと思いましたよ」

「そんなすぐ嘘つくやつに見えます!?」

「そうですね」

「ひどい!」

 

しくしく。俺は泣いた。

 

「泣くと強くなれませんよ」

「根拠は!?泣いたらどうして強くなれないんですか!?」

 

タジマはため息をついた。

 

「全く。口だけは達者ですね」

「うぐ」

 

タジマがいじめてくる……!

マダラが戻ってきた。桶を持っている。

 

「イズナ!」

「兄さん……!父上がひどいことばっかり言うの……!!」

「え!」

「何を言いますか」

 

タジマは俺を包まっている布団ごと持ち上げた。

何!?俺をどうする気!?

 

「わ〜!殺される!助けて兄さん〜!!」

「え、え!」

「バカなことを言わないでください。行きますよマダラ」

「は、はい!」

 

マダラは俺を助けてくれなかった。薄情者!お前にはもう何も期待しない!!

……今バカって言った!?

 

「バカって言った方がバカなんですよ父上!!」

「……」

 

無視しないで!?

そのままタジマは俺を抱えて部屋を移動した。

 

運ばれてきたのは、普通の一室。なんか低めの机があって、布団があって、巻物がいっぱいあって。綺麗に整頓されている。タジマの部屋か?

 

タジマは俺を布団の上に置いた。敷き布団を俺の上に乗せる。二枚、三枚、四枚、五……ちょっと重くない?つ、潰れそう……。

 

「マダラ、そこに桶を置いてください」

「はい!」

 

布団の横に桶を設置するマダラ。水が入っていた。重くなかった?力持ちだね。

タジマは懐から布を取り出した。

水に浸した布を絞って俺の頭に乗せた。冷て〜。

 

「マダラ、食事を摂ったら修行に行ってきなさい」

「は、はい……イズナは?」

「ここで私が見ておきます。安心して行きなさい」

「はい!」

「……」

 

何が安心だよ!?元気に返事するなバカマダラ!

マダラは朝食を食べるために去っていった。

俺のご飯はぁ!?

 

「……」

「さて、イズナ。今日こそは休んでくださいよ」

「……まるで連日休んでいないみたいな言い方ですね」

「違いますか」

「昨日は一日布団にいましたよ!」

「箪笥に触ったでしょう」

「え!」

 

なぜそれを!?

……あっ!閉めるの忘れてたかも!?

とにかく言い訳を……。

 

「……暇で本を読みたくってぇ。それに父上が本を用意してくれたのでは?」

「一昨日は言いましたが、昨日はそんなこと言っていませんよ」

「屁理屈ですか!?」

「一昨日と昨日では状況が違うでしょう」

「う、ううん……?」

 

そうかな。そうかも……?

タジマはため息をついた。

 

「まさか無理矢理開けるとは思いませんでしたよ。術もかけていたと言うのに」

「術!?」

 

めっちゃ危険なことされてない!?術のまとめ本にはやばそうな術しか載っていなかった。

 

「雷遁を用いた術ですよ」

「雷を使ったんですか!?感電死させるつもりですか!」

 

タジマは首を振った。

 

「威力は抑えていたのでそうはなりません。そもそも箪笥で遊ばなければ問題なかったはずです」

「遊んでません!本を読みたかっただけです!」

「本は布団の脇に置いておいたでしょう」

「片付けられていたんです!タンスに!」

「女中にそう言われたんですか?」

 

え。

 

「い、いえ……」

「ならなぜ箪笥に触ろうとするんです」

「しまってそうな場所がそこしかなかったからですけど!?」

「一度触って痛い目を見たはずです。触れてはならないと分かりませんでしたか」

 

……。

 

「分かりませんでしたぁ!!」

「はぁ……」

 

タジマのため息。幸せが逃げていく〜。

 

「箪笥に触れるのは禁止です」

「ええ!?」

「こう言ってもまだ理解できませんか」

 

い、いや……。

 

「り、理解はしてますけど……!?」

「では二度と箪笥に触れないように。いいですね」

「はい……」

 

変な縛りが増えてしまった……。

まあ、次はちゃんと閉めるのを忘れなければバレないでしょ。以後気をつけまーす!

話がひと段落して、タジマは火鉢を持ってきた。

 

「丁度いいので、忍術について話しますか」

「……はあ」

 

タジマは何やら印を組んで、口から火を噴いた。火鉢に火がついた。あったかい。

ええ?便利〜。

 

「これが火遁です。先日も話しましたね」

「はい。まあ」

「他に水遁、土遁、風遁、雷遁があります」

「へぇ……」

 

そこからつらつらと術の授業が始まった。俺一応病人なんですけど……。しかも本で読んだ内容と被ってるかも……。俺は優しいのであえて突っ込まないでやった。

まるで子守唄のよう。俺はいつの間にか寝ていた。

すやり……。

 

 

「……」

 

おはよう。

熱はちょっと下がったみたいだ。寒気がだいぶマシになっている。

みじろぎする。包まった布団と被さりまくった布団のせいで全然動けない。ちょっ。

タジマの方を見る。タジマは背中を向けて机で何か作業中だった。おい。一秒たりとも俺から目を離すなよ!俺は病人だぞ!!

タジマを呼ぶ。

 

「……っ!」

 

声が!喉がカラカラで出ない!喉乾いた!お腹も空いている!!

まずーい!なんだかしょうもないことで死の危険を感じている!髪が汗でへばりついて気持ち悪い!

何か、何かないか!?手も足も全く出ない!布団が重い!火鉢が熱い!

写輪眼とか!?いや目が赤くなっても意味ない!使えねー!!

 

チャクラ、チャクラってどうなの!?

 

火遁を使った時、お腹がぐるぐるして、口から火が飛び出たことと、マダラの水面歩行を思い出す。

術を使う時は印を使うけど、水面歩行の時マダラは何もしてなかった気がする。

チャクラを出す。

どうやって?

腹の中にチャクラがあることは間違いない。ほんとにある?……なんかそれっぽいのがあるような、ないような……?

と、とにかくこいつをなんとかして、なんとかしなくちゃ!具体案?ねーよ!!

マダラは足に出していた。マダラを写輪眼で見た時チャクラは全身に張り巡らされているようだった。が、感覚が掴めない。

腹だ。

俺のチャクラの感覚がわかるのはそこしかない。

チャクラを腹から外に引っ張り出すにはどうしたらいい?

とにかく腹をぐるぐるする感覚。あれを再現してみる。あ、できそう。

ぐるぐる……。

……しばらくぐるぐるしていたが、特に何も起こらない。チャクラを練るってタジマは言ってたけど、これは練れているのか?水をいくらかき混ぜても水は水では?練るには別の物質をぶち込まないと意味ないのでは?片栗粉とかサ……。

でも素材がチャクラしかないのでぇ……。水飴のイメージでやり直してみる。

ぐるぐる……。

あ、なんかいい感じ?ちょっと抵抗感を感じる。練る力を強くしていく。どんどん重くなっていく。これは練れているに違いない……!やはり俺は頭が良い。

じゃあ次だ、こいつをどうする?どこから出して、どう使う?

火遁を思い出す。このぐるぐるが火の玉になったんだよな……。

喉を迫り上がってくる感覚。もう吐き気と言ってもいい。あれで口から火が飛び出たのだ。

じゃあこの練ったチャクラを口まで運んでみよう。

 

 

火は出ないな。いや出たら困るんだけど。タジマが。

写輪眼で見てみる。うわっチャクラが口からニョロって出てる!幽体離脱みたいで怖い!魂抜けないよね!?

色々と動かしてみる。自分の思いのままにチャクラが右往左往する。伸ばしたり縮めたり。

 

おもしろ〜い。

 

 

……俺が今脱水症状で死にかけじゃなかったら、心から楽しめたのに……。くそタジマ!

 

遊んでいる場合じゃない。

このチャクラは物に触れるのか?水面にアレしてたからいけるってことでいいんだろうか。周りを見る。布団布団布団、タジマ、火鉢、桶。でなんとか水を……いや、湯呑に、おかゆ!?俺が今求めているもの!とりあえず水飲みたい!水!水!!

とりあえずこのチャクラをにゅーっと伸ばして湯呑みに……届かない!?

口からこれ以上チャクラが出てこない。腹で練ったチャクラは出尽くしてしまったようだった。あ、ああ……そんな……終わった。

 

 

……いや、いや、諦めてはいけない!こんなしょうもないことが死因とか!芋虫死とか!!

俺は意地汚くとも生き延びてやる!!!

うにょんと伸びたチャクラ。こいつを、そうだ。もっと細くして、細長く……い、いいぞ!これで射程距離に入った!いけェー!

ピトリ。湯呑みにチャクラがくっついた。よし!!後はこっちに引き寄せるだけだ!が、湯呑みが重い。違う。俺のチャクラの粘着力がゴミなのだ。引っ張ると湯呑みからすぐ離れてしまう。

くそ、手間取らせやがって……!

 

ならば、これならどうだ!

チャクラをさらに細長く調整する。そして湯呑みに巻きつける。これならいけるでしょ!

もう限界なのだ。まじで喉が渇きすぎて死ぬ!

湯呑みを思いっきり引っ張った。

 

パシャ……。

 

湯呑みが、倒れた。

 

 

う、うわああああ!!!!

 

 

俺は絶望した。

 

 

「全く。何をしているんですか?」

「!!」

 

タジマが音に気付いてこっちに来てくれた。救世主来たれり……!

 

俺が口を「みず!」と動かすと、察しのいいタジマは、自分の机にあった湯呑みを俺の口に寄せてきた。

俺は迷わず飲んだ。

ごくごく。

 

「はぁ!生き返った!!」

「死んでないでしょう」

「死にかけてたんですけど!?」

 

タジマは机に湯呑みを戻して、すっかり乾いていた、俺の額にあった布をとる。

 

「そんな大袈裟な」

「……」

 

このネグレクト男に何言ってもだめか……。

桶に溜めた水に布を浸して、絞って、また俺の額に乗せられた。つめてぇ。

 

タジマが畳にぶちまけられた水に目を向ける。湯呑みがコロコロと。視界の端を転がっている。

 

「……どうしたんですか。これは」

「あー……」

 

どう説明すればいい?

……見てもらった方が早いかなぁ。

お腹でまたチャクラを練る。一回やったからうんとスムーズだ。

さっきよりも多く練って、準備ok!

口をカパと開けて。

いざ幽体離脱の術〜。

口から出たチャクラを伸ばして転がった湯呑みを掴む。いい感じ。いい感じ。

そのまま自分の真上まで運んで見せた。

 

タジマの顔を見る。驚愕の表情。心霊現象を目の当たりにしてさぞかしビビっているに違いない。後でマダラにもやってやろ。

俺はニヤリとした。

 

「ちちうえーー」

 

ぶつり。「ち」の発言でチャクラを口で噛み切ってしまった。

湯呑みが顔面めがけて降ってくる。ウワー!?

 

「ぶえっ」

「何をやっているんですか。全く……」

「……」

 

湯呑みに残っていた水が顔面にかかった。湯呑みをタジマが掴んでいる。

すげぇ反射神経。マダラの身体能力は父親譲りなんですかね。

タジマは懐から布を取り出して顔を拭いてくれた。優しい。

 

「ありがとうございます」

 

タジマは俺の感謝の言葉を無視した。なんてやつ!

 

「……それはモミジから教わったのですか?」

「え?」

「今のチャクラの使い方を、です」

「いや別に……」

「……」

「俺、天才なので!」

「そのようですね……」

 

ツッコミ待ちだったんだけど……。俺、まじで天才だったんだ……。

……嬉しい!転生無双チートじゃん!俺つええできるってこと!?

 

タジマは頭を抱えている。どったの?

 

「イズナ」

「はい」

「昨日、お前は、マダラに写輪眼について口止めしたと聞きましたが」

 

げっ。

 

「それはなぜですか?」

「……」

 

こ、答えたくない。

黙っていると、タジマはため息をついた。

 

「質問を変えます。お前は戦場に出たいですか?」

「……」

 

うげええ……。

 

「イズナ。答えなさい。嘘をつくのは禁止ですよ」

 

うう。う、ううん。言いたくない。言いたくないけど。タジマは俺の目をじっと見て返事を待っている。

……。

白状する。

タジマの目を見る。

 

「出たくないです」

「……そうですか」

 

はぁ……。

タジマは大きくため息をついて、黙ってしまった。

沈黙が部屋を支配する。

気まずい……。

でも俺から何か言えることはない。と思う。

 

 

「……」

「……」

「八つです」

「?……は、はい?」

 

タジマは急に何かを言い始めた。何?やっつ?

タジマは俺を見ていなかった。目を閉じて、何かを堪えているようだった。

 

「八つになったら戦に出てもらいます」

 

 

はああ……。俺はため息をついた。

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