一般日本人が転生する話。   作:あうん

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独自解釈まみれです。


余命残り五年。

「残り五年。それまでの間、誰にも写輪眼を使えることを悟られないよう、気を付けなさい」

 

「これから一年間、モミジの元で医療忍術について教わりにいきなさい」

 

「その後の修行は全て私が見ます。勝手に修行を行わないように」

 

「そして、これから先、お前が健康になるのか分かりませんが。病弱であるように振る舞い続けなさい」

 

 

「できますね?イズナ」

「えっと……」

「返事は」

 

怒涛のタジマの命令に俺は言葉を窮した。

これは決定事項だ。きっと。逃げることはできない。

 

「……はい」

「よろしい」

 

タジマはずっと俺を見ようとしなかった。

 

 

「……」

「……」

 

会話がない。話が終わってしまった。

気まずい……。

 

……。

 

「父上……」

「……」

「暑いです……」

「はい?」

「火鉢が、布団が……」

「……」

 

タジマは火鉢を退けて、布団を剥がしてくれた。一枚。二枚。三枚。四枚……最後の掛け布団を取っ払ってもらって、俺はコロコロと転がった。俺を縛っていた布団から解放される。

芋虫から抜け出すことに成功したのだ!うわー!自由だ!!手足が動かせるって素晴らしい!!

ぴょんぴょんと跳ねて自由を謳歌する。

 

ドカッ。

桶を蹴飛ばした。タジマの布団と畳が水浸しになった。

アワワ……。

 

「……」

「……」

 

沈黙。タジマの目線が突き刺さる。

 

「わ、わざとじゃないですよ!?」

「はぁ……」

 

 

ずいぶん元気になったようで何よりです。片付けはこちらでやっておくので、お前はモミジに医療忍術について教わりにいきなさい。

冷めたおかゆの入ったお椀を持たされて俺は部屋を追い出された。

くすん。あんなところに桶を直置きしているのが悪いのだ。俺は悪くない。

 

母を訪ねて三千里。そこまで距離はないけど、ちょっと遠いところにある。

まったり行こう。

 

今日は昨日の雨と打って変わって、綺麗な青空が見える。良い天気だ。風が汗に当たって、冷たくなって気持ちいい。

汗かいたな〜。

行儀が悪いがおかゆを食べ歩きする。美味しい。すごく美味しい。

……やっぱり俺の好物はおかゆになってしまうのか……?あんなに憎んでいたのに……。

ペロリと平らげて、いったん厨房に寄る。食器を返そう。ついでにお菓子とかもらえないだろうか。

 

ガラガラ。戸を開ける。

 

「ごめんくださ〜い」

「は〜い」

 

奥から女中が顔を出す。昨日のドッペルさんじゃん……。

 

「まあイズナ様。お身体は大丈夫ですか?」

「バッチし」

 

ピースを見せる。ドッペルさんは困り顔である。

 

「そうですか?……今日はどうなさいました?」

「これ。返しにきたんです」

 

お椀を見せる。得心したのか受け取ってもらえた。

 

「わざわざありがとうございます」

「いえいえ」

 

お互いぺこぺことお辞儀し合う。面白くなって顔を見合わせて笑った。

 

「イズナ様、昨日のお煎餅がまだ余っているのですが、お食べになりますか?」

「食べます!」

 

ドッペルさんはうふふと笑った。可愛い。

 

俺はドッペルさんから超美味しい煎餅を三枚ゲットした。バイバイして母の部屋に再度向かう。早く食べたいけど流石に煎餅を食べ歩きして廊下を汚したくない。

……にしても、ドッペルさん普通に親切だな。ドッペルゲンガーといえど、か。いや別にそうと確定しているわけでもないし。

母に聞いてみようかな。この前母が殺した人ってなんだったんですか、って。

 

 

 

 

「ああ。あれは幻術ですよ」

 

ほ、ほーん……。いとも簡単に答えを教わってしまった。

予習済みではあるが、幻術ってあんなくっきりはっきり幻覚を見せてくるの?やば。変な草吸わされてない?

 

「イズナが悪いことをしないように。ちょっぴりおどかしただけです」

 

……えぇ?ちょっぴり?すごい怖かったんですけど。超絶グロだったんですけど。母の感性ズレてる……。

 

「それで、今日はどうなさいましたか?」

「えっとーー」

 

要約。八歳で戦に出ることに決定しました!

医療忍術とチャクラコントロールを教えてください!

 

「そうでしたか。チャクラをもう扱えるのですね。イズナが優秀で母は嬉しいです」

 

母は微笑んでいる。母が嬉しいなら俺も嬉しい!

俺は煎餅を母に一枚あげた。

 

「どうしたのですか、これは?」

「すごく美味しいんです。どうぞ」

「いえ、わたくしはいりません。どうぞイズナがお食べなさい」

「ええ!すごい美味しいんですよ!!」

「お気持ちだけいただきますね」

 

そう?じゃあありがたく食べちゃうよ!

バリバリと食べていると母は布の切れ端を用意し出した。手には針。

母の趣味は裁縫である。俺の着ている服は全部母の手作りだ。

 

「まずは、チャクラコントロールを身につけることからですね。裁縫は女の仕事ですが、よろしいですか?」

「?はい」

 

よくわからない質問にイエスで返す。母は頷いて話し出した。

 

「わたくしは幼い頃からずっと裁縫で遊んでいましてね。他の者の裁縫の仕事をいただくほどに熱中していたのですが、それでも足りず布と糸を無駄にするなとよく叱られまして」

「ほう」

「ですので、裁縫の仕事がない時はチャクラを用いて縫う練習をしていたのです」

「ほう?」

「よく見ていてくださいね」

 

母は俺のそばに寄って、布切れ二枚を重ねて針で縫い始めた。針の穴に糸は通っていない。

なのに布はピッタリと縫い合わされていく。これ、チャクラで縫われてるの!?すげー!!

 

「母上すごいです!」

「ふふ。このぐらいイズナならすぐにできるようになりますよ」

 

ほんとぉ!?

 

「まずは、この縫い針に通せるぐらいの細さのチャクラ糸を作れるようになりましょうね」

「はい!」

 

母から針を受け取ってチャクラを練る。お腹をぐるぐるさせていく。

 

「チャクラを練るのが上手ですね。それをまずは手から出して、霧散させないよう維持してみてください」

「は、はい!」

 

手かぁ。口からならできたけど手はいけるかな?

練ったチャクラを右手に引っ張っていく。

 

全然いけるわ。

 

そのままにゅっと出す。そして、細くしていく。細くして……。

……。

 

「母上」

「どうなさいましたか」

「細くなっているのかいまいちわかりません!」

「写輪眼で見ればよろしいのでは?」

 

写輪眼を使わないとチャクラが全然見えない。

俺、写輪眼使えないことになってるんだけど。母には言ってもいいのかな?タジマちゃんと指示してくれよ!無能がよォ!

俺が返事をしないでいると母が、

 

「目にチャクラを込めてみなさい。きっと使えますから」

「む、無理ですよぉ……」

「そんなことありませんよ。イズナ。以前使っていたではありませんか」

 

ファ!?

 

「そ、そうでしたか?」

「ええ。あれはーー」

 

 

イズナがいつもの癇癪を起こして、わたくしの食事をよこせと駄々を捏ねて。

喉を詰まらせてはいけないと用意したお粥を目にしたその時に。

 

 

「イズナは写輪眼を開眼していましたのよ。もう本当に驚きまして。流石わたくしとタジマ様の子、と思ったものです」

 

くすり。表情を崩さず微笑む母。

 

 

……えー!!

 

 

俺あの時から写輪眼使えるようになってたの……?

……ともあれ。バレているようなので。潔く写輪眼を使う。

手から飛び出たチャクラがよく見える。

母が俺の目を覗き込んできた。

 

「巴が二つに増えていますね。素晴らしいです」

「?そうですか」

 

母が頭を撫でてくる。

ああ。タジマによって傷付けられた心が癒される……。

 

癒されつつ、チャクラを細くしていく。五cmぐらいまで細くなった……でも針を通すには太すぎる。

もっと細く。細く。……細く。

 

 

「そのぐらいで良いでしょう」

 

母の声で、集中力が切れた。糸も消えた。

 

「あ」

「あら」

 

かなり細くできたのに残念である。

もう一度チャクラを練り直す。手にチャクラを送ろうとしたところで、母に止められた。

 

「今日はこのぐらいにして休憩しましょう」

「え!でももうちょっとなんですよ」

「チャクラの量がだいぶ減っています。無理をすると倒れてしまいますよ」

 

そんなぁ!

 

「でもぉ……」

「イズナの気持ちも分かりますよ。わたくしも最初はチャクラ糸での裁縫があまりにも楽しすぎてよく気を失っていましたから」

 

えぇ……?

 

「成長と共にチャクラ量も増えていきますから。焦らず技術を磨いていきましょうね」

「……はい」

 

母と一緒にしないで欲しいけど。気絶はしたくないので諦めた。

 

針と布を片付けて、母は俺に膝枕をしてくれた。頭を撫でてくれる。ママ〜。

 

「少し熱もあるようです。しばらくお休みなさい」

 

微笑む母の手が俺の目を覆い隠した。

 

「はい。おやすみなさい母上」

 

俺は目を閉じた。母の服越しに感じるぬくもりと、柔らかな手に、安堵した。

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