一般日本人が転生する話。   作:あうん

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ないなら作るしかない。己のために。

「イズナ。イズナ。起きなさい」

「うーん」

 

母の声。熟睡してしまった。やっぱ疲れてたのかな。膝枕が極上すぎる。起きたくない……。

 

「お夕飯の時間ですよ」

「ご飯!」

 

俺は起き上がった。

 

「おはようございます」

「おはようございます母上!」

 

母は微笑んでいる。俺も笑顔を返す。

母は俺を一度抱きしめて、名残惜しそうに体を離した。

 

「また明日、お待ちしていますからね」

「はい母上!また明日!」

 

俺は部屋を出た。正面にマダラ。うわびっくりした。

 

「兄さん!?何してんの」

「あぁ、イズナ……いや、お前を呼びに。父上が」

「ふーん」

 

一手マダラは遅かったらしい。マダラが呼びにくる前に俺は部屋から出たから。俺の勝ち!ありがとう母。

マダラは俺越しに部屋をちらりと見た。襖はもう閉まっている。自動ドアなのだ。ほっとくと勝手に閉まる。謎技術!

 

「兄さんご飯!早く行こ」

「あ、あぁ」

 

なんだ?修行で疲れてんのか?ぼんやりしているような。

俺はマダラの手を掴んだ。行くぞ!キリキリ歩け!

 

「行くよ〜!!」

「……ああ」

 

夕飯。

タジマがいなかった。いないならいないでまあまあ寂しい気も……しないわ!あんなやつ!いなくて結構!!

新参だ。待望の卵焼きがある!!綺麗な黄色である。すげえ形が整いすぎでは?いただきま!

……なんか繊細な味わい。

なんで妙に高級感出してくるかな?いや美味しいけど。もっと庶民的な感じの砂糖とか醤油とかぶち込んだ王道の卵焼きをお出ししてくれない?ちょっと焦げ目ついてていいからさ。形崩れてる方が可愛げがあっていいってもんよ。なぁ?

うーん、思ってたんと違ったなぁ〜。

まあ卵がこの世にあると知れただけで僥倖である。卵を入手して自分好みの卵料理を作ればいいのだ。俺の未来は明るい!

 

今日のおやつは桜餅だった。お、春っぽいじゃん。

もちっ。うーん。美味いっす。

桜餅の桜要素ってピンクなこと以外あるの?桜の味ってよくわかんねーんだよな。あとこの葉っぱって食べていい?食べちゃうよ勿体ないから。……葉っぱだなぁ。

この葉っぱと餅の要素を一緒に食べると、どうしても葉っぱを噛みちぎり損ねることがある。そのまま全部食べて餅だけ残っちゃってさ。残念な気持ちになる。

文句ばっかだ。脳死で飯を美味い美味い言ってた俺は一体どこに行っちまったんだ。

……俺、食事あんま楽しめてない?

 

……。

 

……ああ、いや、そうか。俺、八歳になったら、戦いに行かなきゃいけないんだもんな。ジワジワと足先から不安が這い上って。自覚すると途端に息苦しくなってくる。

タジマのせいだ。

 

あーあ。

 

 

ごちそうさまをして。風呂に向かう。マダラを引っ張る。

ずっと上の空だ。おやつの時も話しかけてこなかった。風呂に入れても大丈夫か?

 

「兄さん」

「……」

「兄さん!!」

「!、っぁなんだ?」

「眠いの!?」

「い、いや……」

「……」

 

風呂に入れないほうがいいな。修行で汗かいてるだろうからマダラを丸洗いしたらさっさと出ることにしよう。

 

マダラの頭を洗う。シャンプーとリンスが欲しい。石鹸の質が悪い。泡立ちにくい。毎度の事ながらキレそう。

 

この時代妥協の連続でしかない。日本並みの生活に戻りたい。水洗トイレの重要性を痛感している。コンビニもない。欲しい物が手に入らない。

だめだ。タジマのせいでこの世界の不満がどんどん出てきてしまった。なんかこの世で良いとこない?

……チャクラとか面白いもんはあるけど、生活面が……。前世に劣る要素しかない。比べてしまうとどうしてもね。

 

マダラの頭にお湯をかける。何度かかけて、石鹸が取れたか確認する。……うーんぬめってはないから取れたんかな。ゴワゴワする。サラサラにならないこの時代の髪……。不潔すぎる。やだぁ……。

あんまりお湯を使うと浴槽が寂しいことになる。お湯継ぎ足し機能がないのもさぁ。

 

無限にお湯を使えた前世の贅沢さが身に染みる。贅沢と思ったことなんてなかったのに。なんでこんな生活しなくっちゃいけないんだ。

 

 

風呂にほとんど浸からずにさっさと出る。後はマダラを歯磨きさせたら終わりだ。

 

木の歯ブラシとも言えぬなんかで歯を磨く。これを歯ブラシと呼ぶの歯ブラシへの冒涜だろ。

細かいところを綺麗にできている気が全然しない。歯と歯の間に届いてない。ほんとありえない。こんなんで歯磨きとかふざけてんのか?歯茎にダメージ凄そうなんですけど。柔らかくて丈夫な現代の歯ブラシってすごかったんだな。つらい。

 

 

早急に歯ブラシについては改善していきたい。八歳で死ぬにしても。口内の不満だけは解決してみせる。

 

 

マダラを見る。こいつ全然手を動かしてない……!歯ブラシ口に突っ込んでるだけじゃ歯は磨けねぇぞ……!!?

俺は口をゆすいだ後、マダラの胸ぐらを掴んだ。さらに咥えたままの木を引き抜く。

 

「!?」

「ここに直れ!」

 

地べたに座って自分の膝を指差す。

 

「え、あ、ぉう……」

 

マダラは大人しく俺の膝に頭を乗せた。

 

「口開けろ!」

「……ぁ」

「今日だけな!」

 

マダラの歯を磨いてやる。んも〜!!

五歳児って自分でまだ磨くの難しい年だっけ?覚えてない。一人立ちできるまで俺が面倒見てやるしかないのか?タジマは役に立たないし。母も部屋でニートだし。まあマダラの歯の健康を守ると誓ったのだ。このぐらいやってやらないと……。

奥歯が見えないので口の中に手を突っ込む。

マダラの涎が手についてうざい。きもい。最悪!ゴム手袋はないのか!?歯医者さんってすげぇわ!!

ここの歯の間にある汚れがとれね〜!!ブラシが絶望的に届かない!!爪じゃ隙間に入らない!!

ああ糸ようじが欲しい!歯の隙間の汚れを駆逐したい!今から母のとこ行ってもらってくるか!?

 

……。

 

ハッとする。気付きを得てしまった。

チャクラ糸でいけないかな!?

写輪眼を使う。

 

「!?んぅ」

「動くなじっとしてろ」

 

びくつくマダラを抑えてチャクラを練る。

手にチャクラを出す。

針に通せるレベルの糸を。俺なら、きっとできる。

細くは、できた。これをマダラの歯の間に……。

ぶつり。

歯に通る前にちぎれてしまった。耐久力がない。どうしたらいいんだ?

前世の使っていた糸ようじを思い出す。何回か使うと糸が何本かちぎれてた。……つまり糸ようじは糸を束ねられて使うもの。

じゃあチャクラ糸を何本も用意して、か。大変だなぁ。

 

やるしかない。

 

「ぉ、おい……」

「黙ってて。集中してる」

「ぅ……」

 

俺は今真剣なんだ。邪魔しないでもらえるか!?

額から汗が垂れる。目の端に入ってしみる。だが、それがどうした。これを成功させれば俺は毎日糸ようじで快適な口内環境で過ごせるのだ。一秒でも早く身につけたい……!

細くしたチャクラ糸。塊の状態から細くした糸を伸ばしているので、チャクラは余っている。こいつから何本も糸を生やしていく。

とりあえず四本。

これを束ねて……。

 

!?

 

な、なんだとっ……!?

 

糸が、くっつきやがった……!!?

 

「クソッ!」

「……」

 

せっかく細くしたのに!

くっついてんじゃ意味ないだろ!

 

き、キレそう……。

 

束ねる作戦はダメか。ならば次だ。次は、そうだな……。

 

密度だ。

密度を上げて丈夫な糸を作る。

密度に関しては写輪眼で見るとよくわかる。チャクラが多くある手のひらの塊の方は濃く青白く見えるが、チャクラ糸はうっすらとしか見えないからだ。

できるか?

このチャクラの塊を丸ごと使った高密度のチャクラ糸を。

 

……否、否!やらねば俺に明日は来ないッ!

 

やるんだ!俺は天才だぞ!?できないことはないんだッ!

 

細くしながらもチャクラを絞らない。つまり圧縮。それも針の穴に通せるレベルの細さまで。

すごい難しい。力がいる。頭の血管が切れそうだ。奥歯を噛み締める。汗が頬を伝ってマダラに落ちる。

がんばれ。がんばれ!がんばれッ!!俺ェ!!!!

 

 

「で、できたッ……!!」

「……」

 

最初に練ったチャクラ。それがこの一本に全て凝縮されている。

引っ張ってもちぎれる様子はない。

約二十cm。

糸ようじには、十分なはずだ。

 

「待たせたな。マダラ……」

「っ……!?」

 

マダラは律儀に口を開けている。なんだその顔は随分と怯えているようだ。糸ようじは初めてか?大丈夫だ。最初は血が出るかもしれないけど、時期に、慣れる。

 

「ククク……今、綺麗にしてやるよ」

「ァ!ぅ!?」

 

マダラの歯をキレイキレイした。

そして俺はチャクラ切れで気絶した。




毎日風呂入れるだけでもこの時代贅沢だと思います。
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