一般日本人が転生する話。   作:あうん

2 / 44
初めは感動したが既に離乳食には飽きている。

さて、俺はうちはイズナと名付けられた。聞いたことがない苗字だが、世の中そんなものか。

そしてどうやらこの時代は戦国時代真っ只中らしい。殺し殺されの時代に生まれたと知り、今すぐ前世の世界に帰りたい欲求がぶり返している。なんて時代に転生してるのだ俺は。最悪である。日本に帰りたい。しかも男ゆえ戦場に駆り出されるのも時間の問題と思われた。

不味い乳と薄味の離乳食から解放され、美味い飯を食うために早くでかくならなければと言うのに、でかくなれば戦場で殺し合いに参戦である。悩ましい……。

今まではここがどんな世界なのかいまいち分からなかったがなぜ急に知ることができたか、それもこれも兄マダラが初陣を終えたと興奮気味に話しかけてくるからだ。

 

マダラはまだ五歳のはず……。それでもう戦いに行ってるのヤバすぎでは?俺の家頭イカれるのか?これがこの世界の常識?手品師一家ではなくて武士の家だったと。今から農民にジョブチェンできないかな?

マダラいわく、敵を何人殺したとか攻撃をどうこうして避けたとか、仲間の窮地をあれそれして救ったとか……弟にいいとこ見せようと話盛ってない?あと何、かとんで丸焼きにしたって?人を?丸焼きにしたってこと?いやいやそんなわけ苦笑

 

「それで俺は隙を見逃さずにそいつの首を」

「兄さん」

「なんだ?」

「嘘は、よくない」

 

流石に初陣で興奮してるとはいえ、嘘をつくのはどうかと思う。

別に華々しい戦果がなくともマダラが怪我なく帰ってきただけで良いのだ。

五歳児ができることなどたかが知れてる。弟にかっこいいと言ってもらいたいのだろうが、生憎俺は見た目は子供、頭脳は大人だ。これからも戦場に立つのであろうマダラにはなるべく堅実に戦ってもらいたい。否、戦わなくていいから生き残ってほしい。

あと普通に描写がグロいので気分が悪い。やめてほしい。

 

「嘘ってなんだよ」

「丸焼きにするの、嘘でしょ」

「う、嘘じゃないさ!」

 

はいはい。意地っ張りの兄は弟に嘘を看破されて動揺している。俺も数年経てば戦場に立つのに簡単にバレる嘘をつくマダラはまだまだ子供だ。

明らかに嘘だとわかるからまだ可愛い方だ。しかしこれが深刻化するといざ俺が戦場に出たときまずい。

マダラの嘘に足を掬われて死にたくない。いや何があっても死にたくないけど。

 

「来いイズナ!俺が火遁を使えることが嘘じゃねぇって、証明してやる!」

 

マダラは俺を抱えて外に飛び出した。

随分と足の速いマダラに俺は若干酔いながらも初めての外の様子を見れて興奮した。初めは太陽の明るさに目が眩んだが、慣れると外は結構人がいた。

皆マダラのような黒っぽい服を着ているようだった。町のルールで決まってる?暑くない?

それらの情景も一瞬で過ぎ去り、連れてこられたのは広い池。中は透き通って魚が見える綺麗な池だ。

池の美しさにちょっと感動。自然のにおいを肺いっぱいに吸っていい気持ちである。揺さぶられた酔いもこの自然に包まれると薄まっていく感じがする。

嘘をつくことは良くないが、この自然いっぱいの場所に連れてきてくれたことに免じて許そうじゃないか。そうマダラの誤魔化しスキルに関心している最中。

マダラは俺を傍に置いてから一言。

 

「見てろ。火遁 豪火球の術!」

 

マダラの口からでかい火が吐き出された。

池の上を飛んで水面に沈んだ火の塊は、大きな蒸発音と水蒸気を大量に撒き散らしながら消えた。幻覚かと思われたが、目を焼く火炎の眩いまでの光と、肌に当たる熱気が本物であると雄弁に語っている。

 

「どうだイズナ。嘘じゃなかったろ」

 

マダラはニッと笑いながら俺に話しかけてくる。だが俺は返事どころじゃなかった。

なにこれ?魔法の世界なの?昔の日本じゃないの?なんで?なんで口から火が出るの?いや、やっぱり手品師ってこと?

 

「イズナ?」

 

俺は気を失った。

 

その後、マダラは俺が目を覚ますなり、ごめんと大変申し訳なさそうに泣きながら謝ってきた。俺も嘘と決め付けてごめんと謝って仲直りである。

マダラは俺を連れて大慌てで家に帰って、そしてしこたま叱られたらしい。病弱なイズナを外に連れ出して火遁で驚かして、一瞬でも目を離した隙に池に転がり落ちて死んでしまったかもしれないと。

別に病弱な自覚は全くないし、気を失ったのは現実を受け止めきれなかったからなのだが……。しょげて小さくなっているマダラを見ると、むしろこっちが申し訳なくなってくる。

マダラが去った後、母は微笑み顔をしつつ、もう外に出ては行けませんよと俺を軽く叱った。

というか、マダラが叱られたらしいと母から伝調風味に聞いたが絶対叱ったのは母である。だって今までそんなことなかったのにマダラが母にめちゃくちゃビビってたし。

何自分は素知らぬ顔をしているのだろうか。マダラに俺の世話を頼んでどっか行ってた母にだけはマダラを叱る権利はないんじゃないか?俺の世話を頼んでた時、外に連れ出すなって確実に言っていなかった。病弱設定も俺認知してない。

 

……。

 

それはそれとして。俺が気絶した要因。あれは火遁と言うものだそうだ。

火を吐く魔法を使えるなんて実はマダラはすごいのでは?口火傷してないの?平然としてるのがまたすごい。

とりあえずここは俺の元いた日本でないことは確定してしまった。

もしここでマダラが実はタネも仕掛けもありますと油壺を取り出したらぶん殴る自信がある。

俺も五歳になれば火を口から吐き出す奴らが跋扈する戦場に行かなくてはならないのか?ちょっと意味が分からない。

 

丸焦げエピソード等を笑顔で誇らしげに語るマダラにドン引きしてしまったが、落ち着いて考えればそもそもここはそういう世界で。俺自身もそれを誇らしげに語れるようにならなければ、大人達に不信感を与えてしまうに違いない。……まだ五歳だ。子供に植え付ける大人達の血腥い思想に、マダラが染められている様に心が痛んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。