一般日本人が転生する話。 作:あうん
部屋から出て。目の前にマダラ。ぼたぼたと水が滴っている。
床がそこそこ濡れている。しかも足跡の形に泥がついている。……俺は見なかったことにした。
何の修行してた訳……?
雨が止んでいた。ちょっと肌寒い。
さっきまで平気だったのは、母の部屋は常に適温だからだ。不思議空間!
「兄さん!」
「イズナ。なんで上着てねぇんだ?」
「え?」
兄貴の服を置いてきてしまった。
でも持ってきたらきたらで、片方だけ袖が短くなったものを見せることになってしまう……。
「秘密〜」
「はぁ?」
「明日のお楽しみってところかな!」
俺はマダラの手を取る。引っ張って外に出る。冷たっ足が泥だらけだ。
「早くお風呂入りに行こ!外からどう行くの?」
「お、おう……こっちだ」
あっちか。ああ。なるほど大体ルートは分かった。
腹でチャクラを練る。
「競走ね!」
「……!今度は負けねぇ!」
マダラを焚き付けて、さっさと風呂で温まろう。
マダラが駆け出した。このぬかるみの中よく走れるよね。
俺はその背中にチャクラ糸を飛ばした。体が引き寄せられる。伸ばした糸を縮めていく。
「!?」
「マダラ号行け〜!」
マダラの背中に張り付く俺。こんなこともできちゃうんですわ。
そう。チャクラならね。
「おい!ずりぃぞ離れろ!」
「だが断る!」
マダラが俺を引き剥がしにかかる。おいおいそんなことせずに早く行こうぜ!?
写輪眼でマダラの手を避ける。
天才の身体能力には及ばないが、避ける程度、先読みできるならそう難しいことではない。
しかも背中側だ。有利なポジション。勝ったな!
それでもマダラは諦めなかった。無駄無駄ァ!
マダラは絡めた糸を掴んで思いっきり引っ張る。
ちぎるつもりか?それこそ無駄だって!朝証明されてる!!
ぶちんっ。
「何で!?」
「修行の成果だ!」
「んなことある!?」
とか言ってる場合ではない!急に糸がなくなって体のバランスが。後ろに倒れていく。
うわちょ、待、
べちょ。
尻餅をついた。
「……悪ぃ!大丈夫か?」
「……」
マダラが手を差し出してきた。
俺はマダラの手を取る。
ぐいっ。
手を引く。
ぬかるみにいたマダラは簡単に足を滑らせた。
顔面から泥を被るマダラ。
より泥だらけになったので俺の勝ち!
「あはは兄さん、大丈夫〜?」
「お前なぁ!」
「うぶっ!?」
マダラは俺の顔に泥を叩きつけてきた。
最悪っ!!
顔を拭う。
「何すんのさ!」
「そりゃ俺のセリフだ!」
マダラに掴み掛かられる。俺は寸でのところで避けた。泥のせいで動きづらい!
チャクラを練る。
掴んでこようとする手を何とか手の甲ではじく。ギリギリだった。次は無理!
マダラの俊敏な動きに体が追いつかない。目では追えるのに!
掴まれたら終わりだ。
こいつは俺が謝るまでくすぐるのをやめなかった男。あんな屈辱二度とごめんだ!
チャクラ糸をマダラの足に引っ掛けた。
また転ぶマダラ。泥が跳ねる。
「テメェ!」
「あはは!」
距離を取ろうとするが、立ち直りが早い。俺の足も遅すぎる。
走って逃げようにも、背を向けた瞬間捕まって終わりだ。
マダラから目を離せない!物理的に!
マダラが足にかけた糸を引き寄せる。体が引っ張られる。
まずい!
咄嗟にチャクラを消す。が、間に合わず体勢が崩れる。膝をついてしまった。
チャクラの練り直しかよ!
マダラが迫ってくる。立ち上がるよりマダラの方が早い!
這いつくばって避ける。
もう一度足に引っ掛ける。
えっ。
引っ掛からない!?
避けられた!?
「見えてんだよ!」
「まじか!?」
見えてるからって簡単に避けれるもんかな!?やはり天才っ……!
手が振り下ろされる。
それを転がって避ける。もー泥だらけなんだけど!冷たいし!
くそー。どうしよう!ジリ貧だ。今日はあんまりチャクラを使ってない。けどこのまま写輪眼を使い続けたら確実にぶっ倒れる!
その前に決着をつけなくては……!
なのにチャクラ糸が使い物にならなくなってしまった。引っ掛からないし、掴まれて俺に不利に働く。
役に立たねぇ!
……いや、本当にそうか?
マダラは糸が見えているから避けるのだ。
つまり。
ーー見えないようにしたら、分からない。
チャクラの密度を下げる。限りなく薄く。余ったチャクラを手のひらに集める。
これでマダラには見えなくなった。
これを引っ掛けても容易にちぎられて終わる。
だから、マダラの体に絡まる瞬間に。手のひらのチャクラを使って。
一気に密度を上げる!
「何だ!?」
「見えてるんじゃなかったの〜!?」
マダラが倒れ込む。今度は手足にまでくくっているので簡単には逃れられまい。
いずれ引きちぎられる。だが今は時間稼ぎができればそれでいい。
俺は風呂場に駆けた。
「待て!コラァ!!」
「あはは!鬼さんこちら〜手のなる方へ〜!!」
手を叩いてマダラを煽るのを忘れない。
完全に俺の勝ちである。俺強すぎ〜!
前を見ずに走っていたせいで何かにぶつかった。
「いだっ」
尻餅をつくところを掴まれる。
「全く。何をしているんですか……」
ため息が聞こえた。
見上げるとタジマがいた。
タジマが廊下を歩いている。
右手に俺。左手にマダラ。
俺たちはタジマに運ばれていた。
俺は逆さになって足を掴まれた状態。マダラは普通に抱えられている。
「何ですかこの扱いの差は!?」
「心当たりがあるのでは?」
「ないです!全く!!」
「そうですか。聞くだけ無駄でしたね」
「酷い!」
虐待だ!許せない!!
俺は足を掴んでいるタジマの手を剥がそうとして、腹筋が足りずに撃沈した。
筋肉が足りない……!
「離してください〜!」
「廊下が泥まみれになります。だめです」
「せめて兄さんと同じ待遇を!」
「だめです」
「んがァー!」
バタバタ暴れるが無理そう。
「まるで魚ですね」
「俺は人間です!!」
「人間並の知能を得てから言ってほしいものです」
「酷すぎるでしょ!?」
タジマの嫌味が止まらない。ヤダァ!
「兄さんもなんか言ってやってよ!父上ありえないんだけど!!」
「えっ」
マダラは何だか気もそぞろだった。さっきの泥試合で疲れたのか?
「マダラ。イズナの言うことを真剣に聞いてはいけませんよ」
「ちょ」
「は、はい!」
「おい!?」
シクシク。俺は泣いた。何でこんな扱いを受けなきゃいけなんだ……。
「すぐ泣かないでください」
「泣いてないです」
「マダラ。お前はイズナのようになってはいけませんよ」
「はい!」
「兄さん!?」
マダラに裏切られた。すごく悲しい……。
俺は絶望した!
「酷い!酷いよ兄さん!信じてたのに……!」
「えっあ、いや違うんだ!」
マダラは慌てて弁明しようとした。
「マダラ。イズナの言葉に惑わされてはいけません。お前を困らせようとしているだけです」
「んなことないですよ!?」
咄嗟に否定したが図星だった。
マダラはハッとした。
「忍は言葉の裏の裏を読む、ですね……!」
「ほう、よく勉強しているようですね」
「へへ……」
それ俺が教えた言葉じゃん……!!?
何だよお前ら仲良さそうだな俺を除け者にしやがって……!
「ウギギ……」
「……さて、ちゃんと綺麗にするんですよ」
タジマはマダラを降ろして、俺を風呂場に放った。扱いっ!
そのまま浴室の戸を閉めようとする。
「父上は入らないんですかぁ!?」
「……いえ、後で入ります」
タジマの服は俺のタックルとマダラを抱えていたせいで泥がついている。
その状態で後で入るって意味がわからん!
「何でですか!?一緒に入りましょうよ!汚いですよ!」
「……」
「?」
タジマはマダラの方をちらりと見た。
「マダラはどうですか」
「お、俺ですか?」
「はい」
何だ?全員に許可ないと入らない感じ?
マダラはモジモジしている。
「……えっと、い、一緒に入りたい、です」
「そうですか」
タジマはマダラの頭を撫でた。マダラは嬉しそうだった。
なんかよく分からんがヨシ!
風呂だ!