一般日本人が転生する話。 作:あうん
タジマから解放された俺は座布団に顔を埋めた。
座布団を殴る。ボスボスと気の抜ける音を出して余計むかついた。
「う、うぅ。うぇぇん!!」
「マダラ早く食べてしまいなさい」
「え、でも!イズナが……」
「いいから食えよ!!バカあぁ!!」
「イズナ……」
早くこの地獄の時間を終わらせてほしい。味噌汁のいい匂いがするのに……!!
こんなこと許されていいはずがない。
タジマにはいずれ鉄槌を食らわせてやる!!
俺は復讐を誓った。
……お腹空いた。のぼせたせいもあって頭がくらくらする。
苦しい。つらい。悲しい。
ああああクソが!
転生していいこと何もない!なんだこれ!!おもんないわ!!
こんな扱い受けてなんで生きなきゃいけないんだろう?
八歳を待たずに死んでやろうかな!?
生きてても意味ないし!!
ケーキ食べたい!スイパラ行きたい!!
でも絶対この世界にないもん!!!!
また死んだら日本に帰れたりしないかな!?
……そうだよ。それがいい!転生したんだから次もまた転生するんじゃないの!?
よし。死のう。
できるだけ苦しくない方法を探してさっさと死んでしまおう。
いや。十分今が苦しいから。早急に死ねる方法でパッとやってパッと転生したらいいじゃん。時間が惜しい。
苦無があったな。タンスの中に。首を掻っ切って死なない人間はいない。絶対死ねる。
タンスは触るの禁止されてるけど、死ぬんだから。別にね。後のことなんかどうでもいい。
下段にあったから開けるのにマダラもいらないし。チャクラもぎり残ってる。
部屋戻ろ。
座布団から顔を上げて、立ち上がった。
「い、イズナ!」
「……」
マダラに呼び止められた。無視して廊下に向かう。
手を掴まれた。振り解こうとする。力が強すぎる。解けない。
あぁうざい!うざい!うざい!
「離せよ!!」
「イズナ!これ!」
「!!」
目の前に団子。三色団子が。
「ほら、食えって。な?」
「……いらない」
どうせ死ぬんだから。
それにどうせ日本の方が美味しいものいっぱいあるし。
「腹空いてるだろ」
「……」
団子を口に押し付けられる。甘い匂いがした。
空いてるよ。何もかもに飢えてる。食べ物だけじゃない。全てに。
スマホもテレビもないし、音楽も聞けない。漫画もないしゲームもない。何もない。欲しいものはたくさんあるのに全部、どこを探してもないんだよ。
飢えて飢えて。苦しくてたまらないから。
帰るんだ。今から、故郷に。
団子を押し除ける。マダラは団子を取り落とした。
床に落ちる。
「……食わないと、死んじまうだろ?」
「死んでもいい」
「んなこと、言うなよ!!」
マダラが怒った。
怒ったのに、泣きそうな顔をしている。
あーあ。
何やってんだろう俺って。ガキ相手に。
何やってんだろう。本当に。
俺は床に落ちた団子を拾った。
3秒ルールってね。
一口食べる。
うっま!!!!
空腹だったら何でも美味いわ。
「美味しい〜!」
「イズナ……」
「兄さんこれ、すごい美味しい!天下取れるよ!」
俺は笑った。
マダラもつられてヘラりと笑った。
「んだそれ……」
「いやほんとなんだって!」
団子の美味しさに免じて。
もうちょっと生きてもいいかなって思った。
死ぬなんていつでもできるからね!
「これ、兄さん食べた?」
「いや」
「えーごめん!こんなに美味しいのに!全部食べちゃった……」
「いいって。まだ何本か残ってる」
罅の入った机を見る。確かに残っていた。マダラの席に残り二本。
タジマの席にも三本。俺のとこにも三本。
「あれ、父上は?」
「もう行っちまった」
じゃあなんで団子残ってんの?あいついつもお残ししないじゃん。団子苦手とか?
……まあいいか!
「父上団子食べんの忘れたんだ〜!魚以下の知能だね〜!俺が全部もらっちゃうから!」
「ひでぇなあ……」
「事実だもんね!」
俺はマダラに団子を一本返して、タジマの分合わせて更に五本の団子を堪能した。
うまあじ!!
美味しい美味しい団子を食べて。歯を磨きに行く道中。
「あ、兄さん」
「何だ?」
「さっき、死んでもいいって俺、言ったと思うんだけど」
「……あぁ」
マダラの眉が下がる。
本気で死ぬつもりだった、って言ったら。泣いちゃうかな?
想像するだけで愉快な気持ちになる。
俺は笑顔を向けた。
「あれ、冗談だから!兄さんって本当に騙されやすいよね!!」
「んなっ」
マダラの驚いた顔。
ああほんと面白い!
「兄さんのばーか!あはは!」
「お前なぁ!ひどいだろ!?」
「簡単に騙されるのが悪いんだよね〜!」
本当にからかい甲斐のあるやつである。
マダラの足が止まる。俺も止まらざるを得ない。
顔を見る。
マダラの真剣そうな表情に死にたくなった。
「あんな冗談二度と言うなよ!」
「はいはい。二度と言わないって」
お前の前じゃ言わないようにするよ。
「絶対だからな」
「絶対ね。何なら指切りする?」
「指切り?」
知らないの?
小指をマダラに向ける。
子供騙しのおまじないだ。
ガキを納得させるには十分だろう。
「嘘ついたら針千本飲む約束をするんだよ」
「何だよそれ……」
「俺も針飲みたくないから効果は抜群だよ」
嘘ついても針千本とか飲む気ゼロ。
そんな目に遭うくらいならその前に死んでやる。
マダラは怖気付いた。まあ普通に怖いよな。まじでやるとしたら。
「意味わかんねぇ」
「やるの?やらないの?」
俺は早く歯を磨きたい。
「やる」
「じゃあ小指出して」
「ん」
小指を絡めた。
「指切りげんまん 嘘ついたら針千本飲〜ます 指切った!」
「何だその歌……」
「指切りげんまん」
「そのまんまじゃねぇか」
「分かりやすくていいでしょ」
「……そうだな」
指を解いて、また歩き出す。
マダラは立ち止まったままだ。
おい行くぞこら!俺をマダラの手を引っ張った。
う、動かない……。体幹どうなってんの……。
俺の力が弱いだけ……?
「じゃあイズナは死ぬなよ」
「え?」
そうゆう約束だったっけ?
「俺が守るから死ぬなよ」
えぇ……?無理だと思う……。
すぐ自棄になるもん俺。
明日にはまた病んで首吊ってるかもね。
「そう言うなら、さっきのお風呂で父上から俺を守ってほしかったな」
「そ、それは……次から守るさ!」
ふ〜ん。
またマダラを引っ張った。やっと歩き始めた。やれやれ。
期待はまるでしないが、マダラを持ち上げておくことにする。
「頼りにしてるわ〜兄さん〜」
「おい茶化すなよっ」
「兄さんかっこいい〜」
「おい!」
「あはは」
歯を磨いて。
チャクラ糸をマダラに手渡す。
「はいこれ」
「……」
「?どうしたの。糸ようじだよ。早くやんなよ」
「やんなきゃダメか……?」
「……」
マダラを縛って糸ようじをしてやった。
心を鬼にしてってやつ?俺ってほんと優しい!
布団に潜る。
今日は疲れた。毎日疲れてるかも。
主に心が。
急に眠気が襲ってくる。
「おやすみ〜」
「……なあイズナ」
「何?」
眠いんだが?
マダラは枕に顔を埋めていた。
「今日、初めてだったんだ」
「?」
「母上に、褒められるの」
「えぇ……?」
そうなの……?母もうちょっとマダラに構ってやったら……?
「それに、父上と初めて風呂に入った」
「そう……。よかったね」
おやすみしてもいいか?
これいつものおやつタイムの駄べりターン入ってる?明日にしてくんない??
「お前のおかげだ」
そんなことないと思うけど。
「俺。イズナがこっち来てから、毎日楽しいんだ」
どれだけ彩りのない生活してた訳??
「だからイズナ」
枕から顔を出したマダラ。暗がりの中でも顔が赤くなっているのが分かった。こうゆう、改めて言うのって恥ずいよな。分かるぜ。でも俺眠過ぎてさ……。
もう目を開けるのにも必死だ。
許せ。マダラ……。
「これからもよろしくな」
「……」
俺は寝た。
朝。
おはようございま〜す!いやぁ今日は暖かいですねぇ!
マダラを叩き起こす。
「兄さんおはよう!」
「ん、はよ……」
布団を剥がして外の障子を開ける。日差しが差し込んできた。暖か〜!そよかぜが気持ちいい!!
春って感じだ。
今日も、頑張ろう。
食卓につく。
机は罅が入ったままだった。昨日は一体何があったんだろうねぇ……。俺は都合の悪いことを忘れた。
朝ごはんを食べる。ほんと美味しい。
昨日は団子で何とか食い繋いだが、やっぱり米がないとなぁ!!人生始まんないよね!
そんなこんな食事を味わっていると。
障子の開く音。
タジマが来た。朝ごはんは一緒に食べないの?
「マダラ、食事を摂ったら私の部屋に来なさい」
「は、はい!」
「父上、俺は?」
「お前はモミジのところに行って修行です」
「は〜い」
タジマはすぐに行ってしまった。何だあいつ。
マダラだけ呼び出し?
「兄さんなんかやった?」
「イズナじゃねぇんだから……」
「何だと!?」