一般日本人が転生する話。 作:あうん
「母上〜お邪魔〜」
「イズナ。お待ちしていましたよ」
母が微笑んでいる。
母に抱きつく。受け止めてくれる母。頭も撫でてくれる。癒しすぎる。
昨日は大変だったんだよ〜。
「ってことがありましてぇ!!」
「そうでしたか。タジマ様には困ったものですね」
「でしょう!」
母に告げ口をした。
タジマには母にいっぱい叱られてもらうのだ。
いい気味であるククク……。
「ですが、あまりタジマ様を責めても仕方のないかもしれません」
そんな!
「あの男を庇うのですか!?」
「いえ……男はやはり子育てができないのでしょうねぇ、と」
えぇ……。
唐突な男女差別発言。反応に困る。
「そ、そんなことないと思いますよ……?」
何だかんだ構ってくれるし……。
不器用なだけなんじゃないです……?
「あら、今度はイズナがタジマ様を庇うのですか?」
んなわけないでしょうが!あいつはカスです!!父親失格のダメ野郎!
「ち、違います!」
「ふふふ」
母は微笑んでいる。俺は話題を逸らした。
「それよりも、昨日の続きをしましょうよ!」
「ええそうですね」
母は兄貴の服を俺に手渡した。針と糸も一緒に。
さあ後片手分。がんばろ!
縫い縫い。
「できました!」
「頑張りましたね」
手を叩いて母は褒めてくれる。
母は褒め上手だ。自己肯定感が上がる〜!
これを後でマダラにあげればミッションコンプリートだ。あいつが無様に嬉し泣く姿が目に浮かぶようだぜ。
……いやどうかな。もっと綺麗に縫えたかな。そもそも縫い目入れること自体、嫌じゃない?
……。
まあ、いっか!
許さん死ねって言われたら死んでやろ!
「では次は裾を短くしましょうね」
「あ、はい」
母が兄貴の服の裾を折っていく。
コツを掴んだのであっさりと縫い終わってしまった。単純作業だもの。
「これで完成ですね。素晴らしい出来栄えです」
「えへへ」
頭を撫でられる。一生撫でてほしい。
「今度はこの子の産着を縫ってみますか?」
「ウブギ?」
母は腹を撫でた。少し出てきたかなってぐらい。
その中に弟か妹がいる。
「この子の着る服ですよ」
「ほうほう」
やってみるか。
母はいつの間に用意していたのか大量の布を隣の部屋から持ってきた。
指示された通りに布を裁って、縫い合わせていく。
縫い縫い。
「イズナ」
「何です?」
縫うのに慣れてきた。今日は話す余裕がある。
「わたくしは、裁縫を娘に教えるのが夢だったのです」
「ふ〜ん」
「だから、こうしてお前に教えることができて、本当に嬉しい」
夢を叶えてくれてありがとう。
顔を上げる。
母は微笑んでいた。
「俺、娘じゃないんですけど」
「些細なことですよ」
そうかな?
俺は笑った。
「母の夢を叶えられてよかったです!」
「ええ。お前は本当に親孝行者です」
母は瞬きを一つして。
「イズナには夢はありますか?」
「夢?」
「ええ」
三歳児らしい夢って、消防車とか、サッカー選手とかそんな感じかな。ユーチューバーもある?
でもこっちにはないし。
……個人的には。日本に帰ること?
つまり死ぬこと。
でも、そう言うのも憚られるよなぁ。
この世界でもぎり叶えられそうな夢。
「美味しいものをいっぱい食べることです」
「そうですか。確かにお前の食に対する熱意は凄まじいですものね」
「当然です!」
母は頭を下げた。
「粥ばかり食べさせてしまって申し訳なかったです」
「本当にね!?」
「ふふふ。これからはわたくしも色々と手を尽くしましょう。イズナの夢を叶える手伝いをさせてくださいね」
「母上大好き!!」
母に抱きつく。
母の協力を得た。これから俺の美味しい飯無双が始まるのか!?最高!!
母とお喋りしながら縫ものを続けていた。
「イズナ様。お食事のご用意ができました」
「もうこんな時間でしたか。お夕飯ですね。イズナ。また明日」
「は〜い。また明日!」
母に縫かけの布を渡して。
頑張って直した兄貴の服を持って部屋から出た。
目の前に女中さん。
「あれ、兄さんは?」
「……」
女中さんはお辞儀をしてから、黙って行ってしまった。
どうして無視するの……?
流石に傷ついちゃうよ……?
いつもの食事部屋に戻る。
「?」
誰もいない。食事が俺の分しかない。
何だ今度は二人が食事抜きっていうあれ?超絶面白いじゃん。
めちゃくちゃ煽りながらご飯食べちゃおう。
……。
タジマの部屋に向かう。
誰ともすれ違わない。いつもそうだった。別に気にしたことはなかったけど。今は何だかすごく。
部屋に着く。
障子を開ける。いない。
どこ行っちゃったんだよ。
厨房に駆け込んだ。
戸を開いた音で女中さんが来てくれる。
ドッペルさんだ。
「イズナ様。いかがいたしましたか?お食事は先ほど運ばれたと思うのですが」
「に、兄さんと父上、どこにいますか!?」
「え?頭領と、……マダラ様のことですか」
「そう!」
ドッペルさんはきょとりとした。
「何かご用事が?」
「ないけど!一緒にご飯食べたいじゃないですか」
「?」
何なんだ話が噛み合ってない!?
ドッペルさんは困った顔をした。
「今お二人はいらっしゃいませんよ」
「え!?じゃあどこに!」
「今頃、戦に向かわれています」
「え?」
いくさって言った?いくさって、戦のこと?
戦に向かった。って、言ったの?
ドッペルさんはしゃがんで俺と目線を合わせた。
「急なお話でしたので、イズナ様はご存知なかったのですね」
「……」
「梁山一族が急にうちは領地に侵入して来たそうです」
「……?」
「先日千手に敗退した一族と聞き及んでいます。その戦で梁山の頭領と、跡取りが討たれたとのことです。
恐らくその後に一族ごと逃げて来たのではないでしょうか。
それでたまたまうちは領地に入ってしまった。ということでしょう」
ドッペルさんは噛み砕いて説明してくれた。
でも、そういうことを聞いてるんじゃないよ。
そんな話を聞きたいわけじゃない。
俺の顔を見てドッペルさんは笑った。
「大丈夫ですよ!うちははとても強いですからね。梁山一族なんてすぐに追い返して帰ってきますよ!」
「……」
意味わかんない。
俺は部屋に戻った。マダラもタジマもいない。
食事は冷めてしまっていた。
食事を摂る。
美味しくない。
冷めたご飯は食べにくい。
吐いてしまいそうだった。
歯を磨いた。風呂に向かう。
体を洗って。風呂に入った。
肩まで浸かった。
熱い。
のぼせても、誰も気付かない。
目を閉じた。
……。
マダラのことを思い出す。
せっかく縫った服。プレゼントできてない。
目を開けて。
風呂から上がった。
布団に潜る。
目を閉じた。
心臓が痛いくらい打っていてうるさい。
深呼吸しても息が詰まったような感じがする。肺に空気が入りきらない。息を吐いても喉がいやに細くて。ちょっとずつしか空気が出ていかなくて。
ずっと苦しい。頭の中でずっと嫌なことを考えてしまう。
枕に顔を埋めた。
この苦しい思いから逃げたかった。
どうやったら寝れる?寝たらあっという間に時間が過ぎて、二人は帰ってきてくれているかもしれない。
そうだよはやく寝ないと。寝不足は体に悪い。
でもこんなんで寝るなんて無理だよなぁ。
どうしよう。
ーーああ。そうだ気絶なら。
チャクラ切れなら。いける。
チャクラを腹で練る。練って、練って、練って。ぎゅうぎゅうにして。
これ以上ないくらいに。
よーしできた!
せっかくならこいつで遊びたいよなぁ!?
手のひらで飴玉みたいに小さくして転がした。暗いとかなり眩しく見える。
歯ブラシでも作ってみるか!
手のひらサイズに細長くして、先っぽに大量に糸を生やすだけで完成である。見た目はね。
自分の歯を磨いてみる。うん。全然ダメ。
問題は固さだよなぁ。形はできても所詮糸。歯には引っかかるまい。しかもすぐ糸同士がくっつく。ヘニョヘニョ。土台部分も、形はいけても触ると簡単に変形してしまう。
固定化、ってムズイか。チャクラは液体みたいなもんだ。どうにもそのイメージがある。
そうだなぁ。
水なら凍らせれば。冷凍庫に突っ込んだら固まるかな?
チャクラは人肌だ。まあ俺の体から出て来てるんだしそれはそう。
でも冷蔵庫はないので〜!!
冷やすってのは、あれだろ。分子が動かなくなると冷えるんだろ。逆に分子がめちゃくちゃ動くと熱が出る。多分。
それで気体とか固体になるんだ。俺は頭がいいので当然知っている。
じゃあそれができるの?って言うとまあ……。
「ふぎぎぎ」
気合いだ。やればできないことはない。
チャクラよ止まれ!!
……お?何だかちょっぴり冷たくなってきた感じ?
いややっぱ気のせいかも……。
そんなことをしていたら朝になっていた。
「まじか……」
障子の隙間から日差しが入ってくる。
いや俺徹夜するつもりなかったんだけど……。
やばいちゃんと寝ないと発育に影響が……!
別にそこまで長生きするつもりもないし。いいか……?
見た目だけのチャクラ歯ブラシを消す。
「あ」
チャクラ切れになった俺は気を失うように寝た。
梁山一族
千手とうちはにボコられるためだけに用意されたオリジナル一族。
自来也の系譜にしようかと考えましたがこの設定を活かす日は来ないので大丈夫です。