一般日本人が転生する話。   作:あうん

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恋のお話、忍とはなんぞや。

「ううーん」

 

寝た。寝て起きるとスッキリする。嫌なことを忘れた気になれた。

もうすっかり昼過ぎだった。

食事部屋に行くと、俺一人分の食事が置かれていた。

もう完全に。疑う余地なく。冷め切っている。

電子レンジ欲しい……。

 

 

遅すぎる食事を摂って、歯を磨いて母の部屋まで来た。

 

「母上〜」

「今日は随分と遅かったですね。何かありましたか?」

 

母の微笑みに救われる思いだった。

抱きついて。顔を肩に埋めた。

いつもの匂い。

 

「兄さんと、父上が、戦に行ったって」

「……そうでしたか」

 

頭を撫でられる。

 

「心配ですか?」

「……はい」

 

顔を見上げた。

母は変わらず微笑んでいた。

 

「タジマ様は誰よりも強いのです。だから大丈夫です。」

「……兄さんは?」

「……マダラは……。丈夫ですから。きっと無事に帰ってきますよ」

「何ですかそれぇ」

 

俺は思わず笑ってしまった。

 

「兄さんの取り柄って丈夫なこと以外なんかないんですか」

「そうですね……」

 

母は考え込んでしまった。

ないの……?

 

「マダラは一度も風邪を引いたこともないですし、怪我も、先日の火傷が初めてでしたから……」

「えぇ……?そうなんですか?」

「はい」

 

それは丈夫だわ……。超健康優良児じゃん。羨ましい……。

そして俺の罪の意識がっ……。初めての怪我って……。

いややっぱタジマのせいです!許しがたい!!

 

「あの丈夫さの幾らかをイズナに分けて欲しいと何度思ったことか……。丈夫に産んであげられずごめんなさい」

「あーいや」

 

遺伝子の半分はタジマだから!

 

「母上のせいじゃないですよ!父上の血も入っているので。きっと父上のせいです!!」

 

ゾゾっと。背筋が凍った。ウヒィ!何!?

母は微笑んでいる。

 

「そんなこと、タジマ様に言ってはなりませんよ」

「は、はい。ゴメンナサイ!」

「分かれば良いのです」

 

母怖ぁ……。

タジマ愛されてんな……。

 

「母上って、父上のこと好きなんですか」

「もちろんです」

 

即答。おおう。

 

「何がいいんですか?」

「全てです」

 

おおおう。

熱々ダァ!!

 

「なり初め!聞きたいです!」

「そんな……大したことではありませんよ?」

「聞きた〜い!」

「そうですか?そうですねぇ……」

 

母の微笑みが何だかいつもと違う。恋する乙女な感じだった。可愛い。俺の嫁にしたい。

こんな綺麗な女を、タジマめ……。許し難し。

それはそれとしてタジマと母の仲良しエピソードは聞きたい。

俺は娯楽に飢えている。

これを聞いて後で帰ってきたタジマを散々からかうのだ。

 

「初めて会ったのは、そうですね……わたくしが六つの時でした」

「ほうほう」

「裁縫が大好きだったわたくしは、うちはの裁縫の仕事を一手に担っていたのですが、それでも足りなかったので、人を襲って布を得る日々でして……」

「待って」

「何ですか?」

 

なんかおかしいこと言ってなかった??

 

「人を襲うって何ですか?」

「そのままの意味ですが」

「?」

「?」

 

……。

 

「話の腰を折ってすみませんでした。続きをドーゾ」

「そうですか?では続けますね。何度も収集を成功させて、少し調子に乗ってしまったわたくしは、戦場に赴きました」

「何でですか!?」

「今から話します。他族特有の装束が見たかったのです。それに、その布も欲しくて」

「な、なるほど……?」

「見て、回収するだけで良かったのですが、戦いに巻き込まれてしまいましてね」

 

そりゃそうでしょうね。

 

「そして、その時に助けてくれたのがタジマ様なのです」

「ほほう」

「タジマ様は颯爽と他族を薙ぎ倒して、わたくしを守ってくださったのです」

 

母の頬がほんのり赤い。

タジマ結構やるんだなぁ……。

母はうっとりとしながら言葉を続けた。

 

「それからタジマ様に常について、タジマ様の倒した者の服を剥ぐ日々でした……」

「えぇ……?」

「あの頃は本当に楽しかったです」

 

左様で……。

 

「それで仲良くなって結婚したんですか」

「……えぇ。そうですよ」

「幾つで結婚したんです?」

 

女の人に年齢聞くのって駄目だっけ。母だからいいかぁ!

 

「……十九の時ですね」

 

若!?

 

「父上は!?同い年ですか!?」

「いえ、七つ違いです。」

 

う、ええ?ううーん。二十六?

マダラが五歳で、兄貴がいたから最低でも今三十路過ぎてんのか。

七歳下の小娘に手を出したのかあいつ。許せんなぁ……。

 

「結婚できて良かったですね!」

「えぇ。本当に」

 

母は俺の頭を撫でた。母は微笑む。

 

「なのでお前が可愛くて、可愛くて仕方ないのです」

「へへへ〜」

 

しばらく頭を撫でられていた。

そして唐突に。母は何かを思い出したように立ち上がった。

 

「そうでした。わたくしには他の夢もあったのですよ」

「はい?」

「我が子にわたくしの作った衣装を着せることです」

「もう叶ってません?」

 

俺の着てある服は全て母手製であるので。

 

「いいえ、いいえ違います。少し待っていてくださいね」

 

母のテンションが高い。楽しそうで俺嬉しいよ。

母は隣の部屋からまた大量の布を持ってきた。

 

「それって、もしかして……」

「えぇそうですよ。わたくしが集めたものです」

 

集めたというか盗んできたんですよね?

 

「これが神月一族、これははがね一族、これが不知火一族、これが……」

 

めちゃくちゃ色んな一族から盗んでる……!!?

大丈夫!?これ恨まれてないかな!?

 

一つずつ紹介していく母。

 

「これがーー」

「あー母上」

「はい?」

「この布が何の夢になるんですか?」

 

母は微笑んでいる。

 

「他族の装束をお前に着せるんですよ」

「……」

 

つまりーー

俺に着せ替え人形になって欲しいって、コト!?

 

「イズナに着せるなら全て仕立て直しが必要です。あぁ忙しくなりそうです」

「……そうですか」

 

俺の前に布を合わせたりして色々測っている。

母は楽しそうだ。めちゃくちゃ。

赤色の布を俺に合わせて、

 

「秋道一族の装束は赤色がとても美しく染められていましてね。体格はうちはには合いませんがわたくしがアレンジしたものを着せてあげますからね。お前の黒髪によく映えるでしょう」

「あ、はい」

「秋道一族の素晴らしいところはあの忍術に耐えられるだけの伸縮性のある布です。この布がどうしても欲しくて本当に本当に苦労したのですよ」

「はぁ」

「戦場ではなかなか服を剥ぐ隙がなく、秋道一族の集落に忍び込んだりもしました」

「何やってんの!?!?」

「猪鹿蝶の目を掻い潜るのは至難の技でしたねぇ。ですが苦労の甲斐あって何とか一着分集められたのです」

「……」

「ついでに山中一族の衣装も手に入ったのは僥倖でしたね。美しいでしょう?この色を出すのはとても難しいのですよ」

 

怖いよ母……。

 

「それでこれは千手一族のものです」

「あ」

 

千手!

 

「千手って、知ってますよ!」

「そうでしたか」

「父上のライバルで、この前梁山一族に勝ったらしいです」

「……ライバルですか?タジマ様が?」

「筋肉がすごいって聞きました!」

「……確かに筋肉はうちはの男よりもありますが」

 

母は微笑んだ。

 

「千手は、敵です。タジマ様の弟君と、その子息を殺した一族ですよ」

「え……?」

 

母は話を続けた。

 

「この千手の衣装は正礼装です」

「……」

「忍装束は面白みのない一族ですが。正礼装はうちはと打って変わって白を基調としていましてね」

「はぁ……」

 

母は変わらず微笑み続けている。

 

「戦うのであればもっと皆見た目には気を遣った方が良いと思うのです」

 

……そうかなぁ?

 

「うちはは独特の忍装束がありますが、いかんせん色合いが地味でして……。もっと明るい色を取り入れたいのですが、これが中々……」

「……」

 

ぶつぶつと不満をこぼしまくる母。

なんか別の話を聞きたい……。

 

「母上〜」

「はい?」

「梁山一族はぁ?」

「あれは論外です」

 

バッサリと言う母。

 

「えぇ?」

「忍装束も普段の着付けもまるで普通。存在する価値なしです」

「そこまで言う……?」

「もちろんです」

「……」

 

母過激すぎる……。

母は俺の話に首を傾げた。

 

「ですが、なぜ梁山一族の話を?……そういえば、先日千手に負けたと言いましたね」

「今兄さん達が戦ってる相手なんですって。強いんですか?」

「そうだったのですね。とても手強く恐ろしい一族ですよ」

 

心臓がどきりとした。

 

「ええ!?じゃあやばいですか!?」

「そうですね」

 

母は頷いた。

 

「梁山一族は針を飛ばす攻撃を得意としています。布を穴だらけにする世にも悍ましい一族です」

 

何だよ服の話かよ!?

 

「強そう!でもそういうことではなくてですね!!」

「安心なさい。うちはの敵ではありませんよ。……それにしても不思議です。普段戦う相手ではないのですが。住む場所が随分と離れていますからね」

「千手に負けて逃げてきたって言ってましたよ。うちはの集落に」

 

母は微笑んでいる。

 

「それでは、梁山一族は凋落したも同然ですね」

「チョウラク?」

「滅びかけている、ということですよ」

「……」

「タジマ様もきっとすぐに帰ってきます」

 

俺の頭を撫でる母。

なんか色々聞いてよくわかんなくなっちゃったな。

俺は考えるのをやめた。

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