一般日本人が転生する話。 作:あうん
女中さんからご飯の呼び出しを食らった。
さっき食べてからあんまり時間経ってないんだけどなぁ。
「イズナ。食事とお風呂を済ませたらまたこちらに来なさい」
「え、いいんですか」
「えぇ。たまには一緒に眠りましょう」
母は微笑んでいる。
「母上!!大好きです!!」
「わたくしも愛していますよ」
俺はウキウキで部屋から出た。
目の前に女中さん。俺を無視する女中さんだ!
「こんにちは!!」
「……」
お辞儀をして去っていってしまった。
俺嫌われてるのかなぁ……?
あんまり空いていないのでもそもそとご飯を食べた。
空腹のスパイスがないとやっぱり味気ないや。
おやつの金平糖を丸呑みして。歯を磨いた。
風呂もさーっと入って。
「母上〜!お邪魔するよ〜!」
「はい。いらっしゃい。待っていましたよ」
母の隣には懐かしの布団が敷かれていた。
飛び込む俺。
母に注文に注文を重ねた至高の逸品である。前世並みの寝心地なのだ!
やっぱこれだよね。
いい感じに沈み込む枕。ああ最高……。
「これ、あっちに持っていっちゃ駄目なんですか」
「それはできません」
けち……。
俺は大好きな母の元で寝た。
夜更かしのせいで寝付けないかと思ったが、布団が至高の一品すぎてそんなこと関係なかった。
俺が寝ている間、母が俺を採寸しまくっている気がしたが、気にしないこととする。
「うーん」
「イズナ。朝ですよ」
よく寝たなぁ。この枕ほんと手放したくないんだけど。
母は裁縫をしていた。まじで他の一族の作り直してるの……?何着やるつもり……?
母は微笑んでいる。
「朝ごはんを食べてきなさいな」
「は〜い」
部屋をでる。陽気な天気だ。
いい天気だな。
二人はどうしてるんだろう。まだ戦ってる?ご飯は食べれてるのかな。寝れたのかな。
「はぁ」
ため息が出る。これじゃタジマだ。
幸せが逃げてしまう。良くない。
まあ俺の現状に幸せがあるかと言われると、甚だ疑問だが。
布団が最高だったので幸せか?
俺は今幸せです!
よし!
幸せな俺はたいして美味くない飯を平らげ、歯を磨いて母の元まで戻った。
「母上〜」
「いらっしゃい。お待ちしていましたよ」
母に抱きつく。うふふ。いい匂い。
合法的に女に抱き着ける機会なんて早々ないからな。俺はやっぱり幸せ者だ。
母の髪はサラサラだ。美しい。
マダラとは大違いだ。
……。
「母上ぇ」
「どうしましたか?」
「髪の毛ってサラサラにするにはどうしたらいいですか」
「髪ですか?」
「はい」
母は髪を触った。引っかかることもなく、流れていく様はとても綺麗だと思う。
俺もこんな女嫁にしてぇなぁ。
タジマにムカついてきた。爆発しろ!!
「そうですねぇ昔はお米のとぎ汁を使っていましたね」
「はぇぇ」
お米ねぇ。
やっぱり米なんだ!この世は!米が世界を救うってわけね!!
「厨房でもらえると思いますから、試してみなさいな」
「はい!ありがとう母上!」
「ふふふ」
頭を撫でられる。
「昨日はできませんでしたが、産着の続きをしましょうね」
「はい!」
縫い縫い。
俺が縫っている間、母は大量の布を俺に当てがっていたが気にしないことにする。
ちらりと。見知った家紋が見えた。
「あ!」
「いかがいたしましたか?」
「それ!」
白と黒の勾玉に模様が色々ついてる。
家紋を指さす。何だっけ名前!?
「日向の家紋、ですか?」
そうだ!日向一族!
「俺、日向さんの家紋好きなんです!カッコよくて!!」
「あら。そうなのですね」
母は微笑んでいる。
「なら、最初に作るのは日向の物にしましょうか」
「やったぁ!」
そういうことになった。
母が日向についての解説を聞きながら縫い物を続ける。
「日向一族は柔拳を用います」
じゅうけん?分かんないけどカッコよさそう!
「近接戦闘に優れ、中々生け捕りにすることが難しかったのです」
「うん?」
「それに縛り上げようにも全身からチャクラを放出する術を持ち合わせているので大変苦労させられました」
「全身からですか!?」
「はい」
俺、手と口からしか出したことない。
日向さんすげぇや!
俺もできるようになりたい!
「死体から取ろうにも、白眼からは逃れられません。日向はありとあらゆるものを見通す目を持っているのです。死体に近付けばすぐにバレてしまいました」
「おぉ」
三大瞳術の人達だもんね!
やっぱ日向さんすげぇ!
「じゃあどうやってこの服は手に入ったんですか?」
母の手直しでまち針の刺されまくった日向の装束を見る。
母は微笑んでいる。
「そうですね……こっそり剥ぐことは難しいことが分かったので。真っ向勝負に出ました。一体一の対決です」
「ええっ勝ったんですか」
「はい。何とか」
母は頷いた。
母の体を見る。着物を着ていてあんまり体格は分からない。
でも、唯一晒されている首と手からは、とても戦えるようには見えなかった。
「どうやって勝ったんですか?」
「気絶させました」
「はあ……?」
「何度も殴ったのです。頭を」
怖……。
「服を汚さぬよう、血が出ぬように調整して何度も殴るのは骨が折れましたねぇ」
「えぇ……?」
母は左腕を持ち上げた。細い腕だ。綺麗な手。
「片手だけで脱がせるのは大変でした」
本当に折ってる!?
「ですが、おかげで上質な日向の装束を得ることができたのです」
確かに母の縫っている服は汚れ一つない。新品のようである。
この服の持ち主。タコ殴りにされて服を脱がされた日向さんを想像した。
日向さん、可哀想……。
「日向さん怒ってないですかね……」
「大丈夫ですよ」
大丈夫な要素ないが?
「証拠は残っていませんからね」
母は微笑んでいる。
完全犯罪って、コト!?
俺は布の塊を指さした。
「ここに証拠が大量にあるじゃないですか!!」
「そうですね。ですが、バレなければよいのです」
やだ母野蛮……。
「俺は?」
「イズナは特別です」
母は人差し指を口に当てた。
「他の皆さんには内緒、ですよ」
「はいぃ……」
「いい子ですね」
頭を撫でられる。
この手で日向さんをぶん殴ってたの……?ヤダァ……。
元ヤンの母にちょっと引いた。いやかなり引いた。
タジマこんなのが好きなの……?
顔か?やはり顔なのか……?
「……他に大変だった一族ってありましたか?」
「そうですね……鬼灯一族でしょうか」
「ホオズキ?」
「体を水に変える術を使うのです。着る物ごと水になるので余程特殊な布を使っているのかと思っていたのですが、鬼灯の秘術が優れているだけだったようで。布自体は大したことがありませんでしたね」
???
何を言ってるのかちょっとよく分からない。
母は鬼灯さんの装束を山から引っ張り出した。
「布に魅力はありませんでしたが、装束は欲しいものです。ですが、殴るにも捕まえるにも水になってしまって。最初はどうしたものかと悩みました」
うーん。頭を殴って気絶させれないってことだよね?
「えぇ?無理じゃないですか」
「ふふ。実はそんなこともなかったのですよ」
「?」
母は微笑んだ。
「水になるので、そこに大量のチャクラを込めてやるのです。術を乱されて肉に戻りますから。コツを掴めば簡単に死にましたよ」
どゆこと?
「ただ、服が血塗れになってしまうので綺麗に装束を回収するのが難しくて……。死体から取ろうにもうちはの男どもはすぐ燃やしてしまいますし……。しかも、鬼灯一族は梅雨時期にしかこちらまで来ないので戦う機会が少なかったのです」
はぁ。
母はため息をついた。
「そのせいで上等な装束を得ることができませんでした。残念です」
「ふ〜ん」
残念がる母。俺はあんまり共感できそうになかった。というか話の内容が理解できていなかった。なんでチャクラ込めたら血まみれになるわけ??チャクラって実はすごく危ない?
母は鬼灯さんの装束らしき物を広げて、茶色の染みをなぞった。
「今は水の国に拠点を移したと聞きました。これはもう二度と手に入らないでしょう」
母とお喋りしながら縫い物を続けた。
こうやって話しているだけで気が紛れる。
母の存在がありがたかった。
言ってることは眉唾物だけど。
「イズナ様。お食事のご用意ができました」
女中さんの声。
「……」
「もうこんな時間でしたか。イズナ。今日もタジマ様が帰っていらっしゃらなかったらこちらに寝に来なさい」
「……は〜い」
母に抱きついて、バイバイして部屋を出た。
ああ今日も一人飯か……。