一般日本人が転生する話。 作:あうん
母と涙ながらの別れをして、部屋を出た。
目の前に無視女さん。
相変わらず無愛想。
表情がない。目を伏せて俺と目を合わそうともしない。
「女中さん!」
「……」
やっぱり返事は返ってこない。俺を呼んでくれてるんだから耳は聞こえてるはず、だよね?
お辞儀をして去ろうとする。腕を掴んだ。
セクハラか?三歳児だから許して!
「……!」
「なんで無視するんですかぁ!?」
「……」
「ちょっと!聞いてます!?」
「……イズナ様」
お、喋った。
「女子に気安く触れては、なりません。……穢れます」
え、俺汚いって言われた?
直球の悪口につい手の力が弱まったところをするりと抜けられた。
「……」
女中さんが再びお辞儀をして、足早に去っていった。
……き、傷付く〜!!
身だしなみには気をつけよう……。
ご飯部屋の前に着く。今日もまた一人かぁ。
食事母んとこ持って行って食べちゃだめかな?
障子を開けた。
!!
「父上!!」
「イズナ」
タジマが。
いた。
生きてる!
マダラは!?
見渡す。
いない。
頭がクラりとした。
「兄さんは……」
「部屋で寝ています」
なーんだ!!
「そうでしたか!お帰りなさい!!」
タジマは一つ頷いて。
「はい。ただいま帰りました」
俺は笑顔になった。
「いつ帰ってきたんですか!?」
「先程です」
「急にいなくなるなんて酷いです!!一言ぐらいあってもいいじゃないですか!」
俺はタジマに駆け寄った。怪我はないように見える。
タジマは茶を啜った。
「お前に言ってどうするんですか?」
「えっ」
「何もできないでしょう」
「……」
そりゃ、そうなんだけど……。
タジマは目を細めた。
「お前は心配性ですね」
「違いますけど!?!?」
「そうですか」
頭を撫でられる。う、ウザイ……。
母と違ってぎこちない。
母に撫でてもらった分が吸い取られてる感じがする。やめろー!!
しかし俺は大人なので大人しく撫でられてやることにした。
「……」
「……」
撫でられるだけの時間。何だこれ。
無性に恥ずかしくなってきた。
「怪我とか、なかったですか?」
タジマはそっぽを向いて口を手で押えた。
「フ……」
「何笑ってんだこらぁ!」
こっちは真剣なんだが!?
「いいえ。何でもありません」
キリッとこちらに顔を向けるタジマ。ウザすぎる!
「何人かは負傷してしまいましたが、大した傷ではありません。直に治るでしょう」
「?」
他のうちはさんの話かな?
「そうじゃなくて、父上と兄さんの話です!」
「見て分かりませんか?」
タジマを見る。さっきも確認してけど、いつもの何ら変わらない。戦して来たとか言われても分からない。普段通り。
「……兄さんは?」
「怪我一つ負っていませんよ」
よかった〜!
「梁山一族は強かったですか?」
「大したことはありませんでした」
「楽勝でしたか!」
「はい。それよりも梁山を口実に侵入してきた者共の対処が面倒でしたね」
口実?
「どういうことですか?」
「梁山を追い立ててわざとこちら側に入り込もうとしてきたんですよ。全く、面倒でした」
タジマはため息をついた。
説明してくれたけどよく分かんなかった。
「なんでわざと入ってくるんですか?」
「どさくさに紛れて攫おうとでもしたのでしょう」
「攫う?誰を?」
タジマは俺をビシリと指さした。
「お前のような、危機感の無い子を!」
「ひええ」
怖ぁい!治安悪い!俺は後ずさった。
「いいですか。ここではいざ知らず、集落から一歩でも出ればいつでも命を狙われていると思いなさい」
真面目な顔で言うタジマ。
ガチなの?何それやばすぎない?
「は、はーい」
「……お前に言っても無駄かもしれませんがね」
またタジマはため息をついた。
失礼な!
「ちゃんと分かってます!」
まあ山に散策に行って飯の開拓はするかもしれないけど。松茸とか探したいじゃん。
あと海!海行きたいな!!
マグロ!サーモン!タコ!貝!ウニ!寿司!海の幸!!
醤油はあるんだよね。あとは刺身とわさびがあれば完璧だ!
「……」
うっ。タジマが疑わしそうに俺を見ている。
は、話を逸らそう。それしかない。
「戦ってどのくらいの頻度であるんですか?」
「……大規模なものは、年に二、三回ほどですかね。小規模含めれば二十……でしょうか」
多いのか少ないのか分かんねぇ……!
「今回のはどのくらいの戦だったんですか?」
「戦としても数えたくないですね」
タジマは再びため息をついた。
「依頼でもないのに無駄な労力は使いたくないものです」
「?」
「……子供のお前には難しいかもしれませんが」
「子供扱いしないでください!!」
タジマは俺をじとりと見た。何だよ。
「……まあ、いいでしょう。戦、と言っても大名などからの依頼があって初めて成り立つのですが」
「ほんほん」
雇われてんのね。
「今回はそうではありませんでした」
「ええとつまり……?」
タジマはため息をついた。うんざりとした表情だった。
「一銭も得られぬ無駄骨。ということです」
……。
「最悪じゃないですか!」
タジマは驚きに目を見開く。
「そうです。まさか理解できるとは。お前は頭が良いのか悪いのかよく分かりませんね」
俺のディスり挟むのやめてくんない!?
「怪我人も出てるのに!酷い!」
「全く。その通りです」
タジマは眉をしかめた。
「最近の千手にはしてやられてばかりです」
「千手……」
タジマの筋肉ライバル改め、タジマの弟とその子供を殺った千手一族。
梁山一族に勝って。うちはの人に怪我人が出た。
「わざわざこのような回りくどいことをせずとも、相手をしてやるというのに」
「……回りくどいことですか?」
タジマは険しい顔のまま答えた。
「梁山を追い立てた者共は千手ではありません」
じゃあ千手関係ないんじゃないの?
「ですが、千手に類する物が死体から見つかりましてね」
「え!」
「私たちを挑発しているんですよ。こちらから戦を仕掛ければ、大義名分はあちらにありますからね。襲われたのを渋々応戦した。……そういうことにしたいのでしょう」
全く。陰湿な。
タジマはため息をつく。
「……千手一族って性格悪いんですね」
「以前はそうでもなかったはずです。実直というか、暑くるしいというか……」
えええ?
タジマって弟家族殺されてるんじゃなかったっけ?
「庇うの!?」
「そんなことは。昔は確かにそうだったので……。事実を言ったまでです」
「……じゃあその暑くるしい千手がなんで嫌がらせしてくるんですか?」
「知りません」
えぇ……?
「何かきっかけとかないんですか?」
「……いいえ。思い当たる節は、ありません」
えええ??
「いつからですか?その時期に何かありませんでした?」
「いえ……。ですが、そうですね……」
タジマは何か思案するかのように顎に手をあてた。
そしてぽつりと。
「マダラが、生まれた頃から」
千手は突然、うちはに敵対し始めたのだ。と。
「兄さんは疫病神か何かですか?」
「まさか。たまたまその頃からというだけです。マダラにそのようなことは絶対言わないように」
「言いませんよ〜。冗談!」
泣いちゃうからね。マダラが。
タジマはため息をついた。
「お前の冗談はつまらないですね」
「……」
ストレートに傷付くこと言わないでほしい。
タジマは話を切り上げた。
「早く食事を摂ってしまいなさい」
「……はーい」
ご飯は冷めていた。タジマが長話するからだ。許せぬ。
でも、昨日よりも、朝食べたご飯よりも。何だか美味しく感じられた。フシギダネ。
食事を食べ終わるまでタジマは黙って俺を見ていた。
おやつは、何これ?果物?……柿?
齧る。柿……?のような違うような……。味が……何とも……。ほんと何コレ??
種でかっ。
「父上〜」
「どうかしましたか」
「これ、何ですか?」
「枇杷です」
知らねぇ〜!でも、美味しいかも!!
アリだな!
ビワなるものを食して。
「父上お風呂は〜?」
「もう入りました。マダラもです」
俺抜きで二人で仲良くお風呂入ったの!?ズルい!
タジマは相変わらず髪が濡れていない。ほんとに入ったのか??
ドライヤーあったりする?ないよね?
「お前も早く入って寝なさい」
「はーい」
タジマと別れて。歯を磨いて。
一人のお風呂。
肩まで浸かる。
何だか昨日よりも温い、訳でもないが。すごい熱いけど。ほんとにめちゃくちゃ熱いんだけれども。
悪くない気分だった。
一般千手と一般うちはの所感
千手「梁山に勝った!酒酒〜!どんちゃんどんちゃん」
うちは「梁山こっちきたんだけど何してくれるん!?」
千手「知らんが?たまたまじゃないの〜?酒うめ〜」
うちは「は??」ピキキ