一般日本人が転生する話。   作:あうん

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物一つ得るのにも一苦労する。

のぼせる前に風呂から上がる。

自分の部屋に戻って。中に入るとマダラがいた。

寝ている。俺の布団で。お前自分のとこで寝ろよ!マダラの布団が泣いてるよ!?

口角が上がる。

布団に近づいて顔を覗き込んだ。

グースカとしている。

鼻を摘んだ。顔を顰めるマダラ。

 

「んふふ」

 

黙っていなくなった罰だ。今日はこれくらいで勘弁してやるよ。手を離す。穏やかな寝顔に戻った。

頭を撫でる。生乾きだ。ちゃんと乾かせよな。しかもモサモサする。触り心地が悪い。母の言っていた米のとぎ汁を使ったらマシになるのだろうか。しばらく撫でて、満足した。

布団に潜る。マダラに抱きついた。

心臓の音が聞こえる。温かい。心地が良い。

目を閉じる。

 

「おかえり、兄さん」

 

返事はない。寝てるんだから当然。自己満だ。

でも。言うことができて良かった。

心から、そう思えた。

 

 

グッモーニーン!おはようございます!!今日はまた雨!いやですねぇ。梅雨かな!?

鬼灯さんが出没する時期らしいですね!水になるんだって!意味わかんない!でも今は水の国にいるらしいので問題なし!

俺は布団から出て伸びをした。まだスヤスヤのマダラを起こす。

 

「おはよう兄さん!」

「ん〜……」

 

どんだけお寝坊さんなのこいつは!十分寝たろ!

……それとも戦ってそれだけ疲れるものなのだろうか?

 

……。

 

もう少し寝させてやってもいいかもしれない。

 

マダラが起きるまで何してようかな。ご飯にはまだ早いし。

 

あ。そうだ。マダラへのプレゼントがあったじゃないか。

どこにやったっけ??

思い返す。兄貴の服を完成させて。母の部屋から出て、食事部屋に行ったんだ。

それで、誰もいなくて。そこから、そこから……。

食事部屋に向かってみる。

中を覗く。……ないな。昨日の時点でなかったし、タジマの部屋?

 

「父上〜」

「イズナ?どうしましたか」

 

タジマは巻物に何やら書き込んでいた。作業中?

振り返って俺の方を見てくる。

 

「服。ここに落とし物なかったですか」

「服ですか?いいえ……。何かやらかしましたか?」

「何もしてないです!!」

「……」

「では!」

 

タジマの疑わしそうな目線から逃げた。

 

お次は厨房である。

 

「おはようございます〜」

「あら、イズナ様。おはようございます」

 

ドッペルさんだ。いつもここにいるな。無視女と違って愛想がいい。

 

「ここに服を落としてませんでしたか?」

「服ですか?見てませんねぇ」

「そうですか……」

 

肩を落とした俺を見かねたのか、ドッペルさんはありがたい助言をしてくれた。

 

「服が必要であれば、箪笥の中にあるのではないですか?」

「なるほど!」

 

つまりそういうことだった。

 

「また貴様と相見えることになるとはナ……」

 

目の前に鎮座するはタンス。俺の宿敵である。こいつのせいでマダラは人生初の怪我をし、俺は食事を抜かれた。

……全部タジマのせいじゃないの!?許せねぇな!?

 

一応マダラの部屋の方のタンスも物色したが、やっぱり空である。勿論引き出しを戻すことも忘れない。俺は賢いのだ。

 

俺の部屋のタンスに向き直って。

とりあえず、タジマが術を解いているかどうかの確認をする。

小指をピトリ。

……反応なし。

手のひらでタンスに触れる。

……反応、なし……!

 

「よしっ」

 

電気のないタンスなぞ恐るるに足らず。

チャクラ糸を引っ掛けながら上まで登っていく。タンスの上まで来た。ふん。余裕余裕。

上の服は上段に仕舞われていた。マダラの服もそこに仕舞われたに違いない。

とりま一番上から順番に開けていけば見つかるだろう。落ちないように糸を体と引手に括り付けてタンスの引き出しを引っ張った。

 

ガッ。

 

「んん?」

 

開かない。

何度引っ張っても開かない。何というか引っかかってるような。いや、この感覚。覚えがある。

タンスの引き出しを見る。取手の他に穴がついている。鍵穴。

これは、もしや。

 

鍵かけられてる?

 

「……えぇ〜?」

 

 

シンプルに難易度高いな。鍵って。

何でこんな意地悪するのタジマは?とても酷いと思う。

まあ、やるだけやってみるしかないよな。

諦めたらそこで試合終了ですよ。って偉い人も言ってたもの。

 

俺はタンスを開けてみせる……!!

 

チャクラを腹で練る。それを手にずぎゅーんと送り込んで、鍵穴に突っ込んだ。

 

……鍵って何したら開くの?

ピッキングは細長い棒を入れるけど。チャクラは柔らかいから棒にしても無理だし。俺にそんな器用さはない。やり方知らんし。

ぐねぐねとねじ込んだチャクラを動かす。感覚もないのでやはり手探り以下。運ゲーすぎる。

 

……うーん。これの密度を高めて捻ったら開くかな?

とりあえずやってみる。どうかなぁ。わかんねぇ。穴の中はよく見えない。チャクラで光ってて余計無理。まぶい。

 

ううん……。鍵ってさぁ。何か持ち上げるんだろ?鍵の中の、何かを。

だからチャクラを入れまくってぎゅうぎゅうに押し広げて、中のものを持ち上げる。その分すき間ができるはずだから、更にチャクラを詰め込む。そんで捻れば、いける?と思う?分かんね。

 

無理だったら別の方法を考えれば良いのだ!まずはやってみること!それが大事!!

いけぇー!

 

……。

 

反応なし。やっぱダメだったか?

タンスをもう一度引っ張ってみる。

あれ?開いた。

 

「まじか!」

 

よく分からんが開いたぞ!?チャクラ凄ない!?おいおい。こんな簡単に開けちゃっていいの〜!?

 

中を覗く。あった!兄貴の服だ!綺麗に畳まれてる!

服を掴んで勝鬨をあげる。

 

「大勝利!」

「お前は本当に懲りませんね」

「ひぃ!?」

 

背後からタジマの声がした……!!

気のせい、気のせいか……!?

振り返りたくない。

 

服の襟首を掴まれた。感覚。

後ろに引っ張られる。

抵抗しようとするも一瞬のうちにタンスから引き剥がされた。

チャクラ糸がブチリとちぎれる。

俺の頑丈なはずの糸が!なぜこうも易々と!!

顔に影がかかる。上を見上げた。

 

「ちちち、ちちうえ……」

 

宙ぶらりんになった俺をタジマが見下ろしていた。

 

「な……なぜここに……?」

「お前がおかしな質問をしてすぐに逃げたので付いてきました」

 

ストーカー、してたの……!?

 

タジマはニッコリと笑った。

 

「朝食は抜きです」

「そんなぁ!!」

 

俺は泣いた。

 

 

「別に良くないですか!?タンス開けるだけで一々怒らないでくださいよ!心が狭いと思います!!インシツ!インシツです!!最低!クズ!」

「……わざわざ鍵をかけた物をチャクラまで使ってこじ開ける阿呆に、そこまで言われたくないですね」

「アホじゃないです!!」

「馬鹿ですね」

「バカでもないですよ!!」

 

タジマはため息をついた。

 

「……そうでした。愚か者に何を言っても無駄でしたね」

「酷い!!?」

「……今度はなぜ箪笥を開けたんですか?遊びたいなら別のことをしなさい」

「遊んでたわけじゃっ!……いや、ええとですね……。これ……」

 

手に持っている服を見せる。

 

「また着替えたかったと?」

「いやぁ……。そうじゃなくって、……兄さんに」

「マダラにですか?」

 

頷く俺。わかるだろ?言わせんなよ恥ずかしい。

 

「……?」

「……」

 

首を傾げるタジマ。

わかんねぇのかよ!

俺は渋々説明した。

 

「お兄さんのですよ!直したんです。兄さん用に。あげようと思ってっ」

「お兄さん……?」

 

顔が熱い。

なんでこいつに説明しないといかんのだ。

 

「……ムラシのことですか?」

「そーです!ムラシ兄さん!」

 

タジマは俺を畳に降ろした。

地上がいっちゃん安心するよね〜。

 

「……」

「……」

 

唐突に会話終わるじゃん。

顔を上げる。タジマは寝ているマダラを見ていた。

 

「……食事に関しては今回は不問とします」

「え?」

 

飯抜きじゃ無いってこと!?

やったぁ!

 

「マダラを言い訳に飯を抜かれたと言われてはかないませんからね」

「い、言いませんよ!」

「どうだか」

 

タジマは頭を振った。

信用がない。俺は悲しい。

 

「次は無いですからね」

「は〜い」

「……はぁ」

 

ため息一つして、タジマは去った。

なんか変な感じだったな。

 

……。

 

……俺地雷踏んだかな……。故人の話題出すべきじゃなかった……。タジマの最初の子供だし。

うわ、俺ってほんと空気読めない。死んで詫びるか……。

気分が沈む。きつい。

 

俺は持っていた服を脇に置いて布団に戻った。

熟睡中のマダラに引っ付く。

生乾きの匂いがした。最悪……。

ちゃんと髪を乾かさないからだ。バカマダラめ……。

不快な気持ちになりながら俺は二度寝した。




タンスさんの鍵穴が一つ破壊されました。
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