一般日本人が転生する話。   作:あうん

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腹に入れれば同じかもしれないが、味覚を持って生まれた意味を一度考えてほしい。

最近はまともに話せる様になってきたので、そろそろ離乳食からまともな飯にグレードアップを求めようと思う。

 

ので、母が食べている食事を食べたいと主張した。目の前に美味そうな和食がある。美味しそうなんだもん!俺も食べたい!母上ばっかズルい!と我儘を言えば食えると軽く思っていた。が、

 

「分かりました。少し待っていてくださいね」

 

母が微笑んで配膳台を持って、俺が瞬きしたなり、

 

「これならイズナも食べられるでしょう」

 

そう言って俺の前に置かれたものはかつて和食であったもの達全てがドロドロのぐちゃぐちゃになった混合物であった。しかも水増し増しで非常に薄味。

違う、そうじゃない。米と魚と味噌汁と漬物の味が混じりあって何にも形容しがたい匂いと味の液状の物体など。和食とは呼ばない。呼びたくない。

 

米は粒が大量にあってそれを箸で自分の食べれる量を調整しながらおかずと共に食べるのがいいのだ。魚は骨と身を綺麗に分けるのが、頭と尻尾のぱりぱりとか、皮を食べるのが良いのに。味噌汁もネギ、ダイコン、にんじん、が入ってたりなかったりして。それらを一つ一つ箸で選んで、ご飯に乗っけたり、味噌汁で流したり、無限の選択肢が、それが和食のいいところなのに。

全部一緒くたの液体にされたら意味ねーじゃん!くそくそくそ!

 

その日は和食への冒涜を食す羽目になったが俺は偉いので完食した。こんなの食えるか!とだだを重ねたがじゃあ捨てますね。と言われては黙って食べるしかない。飯を粗末にするなぞこの戦国時代、前世よりも余程罪深い。水増し増しだったので腹がたぷたぷである。栄養も和食全盛りなので結構なものだろう。

それからは米だけの離乳食から、和食だった悍ましきものを与えられる様になった。ひどい。

 

何くそ一度失敗した程度で諦める俺ではない。なんだか和食を嫌いになりそうになってきたので早急にまともな和食を口にする必要がある。

 

「母上!」

「いかがいたしましたか」

 

母が着物を縫っている手を止め、微笑みを湛えながらこちらを見てくる。こんな暗いのによく縫い物なんかできるな。

 

「俺も母上と、同じものが食べたいです!」

「?食べているでしょう」

 

腹の中に収まった様は確かに同じかもなぁ!?

 

「そうではなくて、俺も母上と同じように、茶碗をもったりとか!箸をつかったりとか!」

 

匙じゃなくて俺は箸を使いたいんだ!

母は俺の訴えにふむと考え込み、一つ頷く。

 

「わかりました。わたくしと同じ様に食事を摂りたいということですね」

「わかっていただけましたか!」

 

その日から母は俺と同じ最悪の離乳食を食べる様になった。

 

「そうじゃなくってぇ!」

「イズナ見苦しいですよ。ちゃんとなさい」

 

俺は畳の上で手足をばたつかせる。子供にのみ許される究極のだだこねである。精神大人であろうが限界になればなんでもできるのだ。

 

「俺はまともな飯が食いたいの!なんで流動食にすんの!もう歯も生えてきたの母上も知ってるでしょ!流動食食って糸ようじしても何もはさまってないわ!」

「イズナ」

 

びくりとする。怒りが萎んでいく感覚。なんだか母が怖い。表情はいつも通りだが雰囲気が。

 

「仮に、仮にイズナがあの食事を食したとしましょう」

「はい」

「喉を詰まらせてしまったらどうするのですか?」

「……えーと」

 

……背中を叩いてもらう、とか?

 

「わたくしは。イズナ、あなたに死んでほしくないのです」

 

そりゃ俺だって死にたいわけでじゃない。

 

「あなたにはまだ早いのです。もう少し辛抱なさい」

「……」

 

なんだか母の情?圧?に押し切られてしまった。もう少しってどんくらいか聞いても、もう少しはもう少しです。と取り合ってくれないし。

うぎぎ……母は駄目だ。なんとか外に出て飯を確保しなくてはいい加減狂ってしまう。

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