一般日本人が転生する話。 作:あうん
朝四時ごろです。
「う〜ん」
朝。今日は雨らしい。雨音が障子越しに聞こえてくる。
薄暗い。今何時なんだろう。時計がない。不便すぎる。
体を起こす。起こせない。マダラのせいで。
……。
暇だな〜。
マダラに背中を向けて寝ていたせいでタンスが正面に。
本読むか?やる気出ないなぁ。気分じゃない。
二度寝するか……。
ゲコ。
?
ゲコゲコ。
えっ何?
ゲコゲコゲコゲコ。
うるさっ!?
音のする方を見る。俺の頭の方。
カエルが。いっぱい。
目の前に。うぞうぞと。
「ひいい!?」
俺は逃げ出した。しかしマダラにしがみつかられて逃げられなかった!
ちょっとマダラ離して!全然離れない!!本当に無理!何でカエル!?
頭上から無限にカエルの鳴き声が聞こえてくる。ヤダァ!!
布団を頭まで被る。カエルの襲来をこれで防げるか!?いやほんとなんでこんな目にあってるの!?朝から最悪すぎる!!
布団を引っペがされた。ナンデ!?
犯人は。
「イズナ。おはようございます」
「ち、父上……」
なーに普通に挨拶してんだよお前ェェ!!
「かえ、カエルが!父上ぇ!」
「そうですね」
何がそうですね!?なの!?
タジマは普通に返してくる。ひょいとカエルの入ったカゴを俺の前に出してきた。
……カゴ?
カエルはカゴの中にギュウギュウ詰めだった。いや怖い怖い怖いわ。
俺は手で目を覆った。
「ちょっ、見せないでください!!近い!離してぇ!!」
「……」
タジマは背中にカエル入りのカゴを隠してくれた。優しい……。
いや騙されてはいけない。タジマのせいだろこれ!
そもそもなんでカエル!?
胡座をかいた父を見上げる。
「何してくれるんですか朝から!?」
「お前は朝だけでなく四六時中ですけどね」
「そういうの今はいいから!!」
タジマはため息をついた。
「モミジに頼まれたので捕まえてきたんですよ。お前のために」
俺ェ!?!?
「俺のためって何ですか」
「知りません。私は頼まれただけです」
「……」
役に立たない……。
タジマの背中からカエルの大合唱が鳴り響いている。まじでうるさい。
「父上が捕まえてきたんですか?」
「そうです」
「いつ?」
「先程」
夜中に??
「暇なんですか?」
「……」
タジマにじろりと睨まれた。うぅっ。
「あー、何匹くらい捕まえたんですか?」
「三十匹です」
やば!?
「やっぱり暇じゃないですか!?」
「……」
冷たい目線。ヤダァ!
「……ナンデモナイデス」
「そうですか」
ため息。カエルのせいで掻き消されてしまっている。
「お前のせいで昨日は散々でした」
「え、なんでですか……?」
「モミジにあることないこと言ったでしょう」
「……言ってないです!」
言ったかも。
マジで叱られたの?
タジマは俺の言葉を無視した。
「常に監視していろと言われても、私も忙しい身です」
「……」
カエル探しに行く時間はあったのに……?
また睨まれそうなので言わないことにする。俺は賢いのだ。
俺の目をじっと見るタジマ。なんだかくたびれているように見える。どんだけ叱られたのよ。
「ま、まあ母上と仲良く二人きりで良かったじゃないですか!」
タジマは顔をしかめた。
「……仲良く……?本当に面白くない冗談です」
「えっ」
不仲!?!?
いやいやそんなはずないでしょ!?
タジマは話を戻した。大真面目な表情。
「とにかく、お前はもう少し落ち着いて行動しなさい。好きで怪我した訳では無いでしょう」
「……う、うーん」
確約はできない。
返事を濁す。
タジマの目が赤くなった。
「わか、分かりましたぁ!」
「……言ってもどうせ分からないのでしょうけど」
「わ、分かってますって!」
「いつか分かる日が来ることを願います」
タジマはため息をついて立ち上がった。
カエルカゴはそのままだ。
「ち、父上どこに行くんですか!?」
「仕事が残っています。お前のせいで余計な時間を食いました」
人のせいにしないでほしい!
タジマはうるさいカゴを指さして言った。
「これを持ってモミジの修行に行きなさい」
「えぇ……!?」
近付くことすらしたくないのに……!!?
「それと勿論、朝は抜きですからね」
「!?」
文句を言う前にタジマは消えていた。
おいおい。マジか、マジか。最悪。
俺は項垂れた。
「……」
ゲコゲコ。
「…………」
ゲコゲコゲコゲコ。
うるせ〜!!
逃げようにもマダラのせいで動けないし。
耳を塞いでもカエルの合唱が手を貫通してくる。
なんでこんな拷問受けなくちゃいけないわけ!?
タジマ許せねぇ!!
引っぺがされた布団をチャクラ糸で取り戻して頭に被る。全然変わらない。
なんで三十匹も捕まえてくるわけ?どんだけ暇なの?やばいでしょあいつ。カエル大好きかよ。虫取り得意なの?いい歳のくせに。虫取り少年ならぬ虫取り中年??
母がカエル取ってきてって頼まれたって意味分かんない。何に使うんだ?カエルなんか。
ゲコゲコ。
……。
本当にうるさい。
お腹も空いてるのに。
頭おかしくなる。
ちょっと離れて欲しい。俺はチャクラ糸でカゴを遠ざけようとした。
ズルズルと奥の方に。地味に重い……。
せめて部屋の端っこまでどかせばこのうるささも多少は……。気持ち和らぐといいなぁ。
ちょっとずつ動かしていると一瞬。引っかかりが。畳の縁につまづいた。
カゴが浮く。
は?
斜めに倒れるカゴ。
蓋が開く。
は??
カエルが。
「はああ!?!?」
俺は逃げ出した。のに逃げられない!おま、マダラっいい加減起きーー
カエルが目の前を横切る。
「ひいぃ!?」
部屋の中に三十匹のカエルが暴れ散らかしはじめた。布団を被る。遅かった。布団の中に一匹……!!
「ぎゃああ!!」
糸で縛り上げる。布団から叩き出した。滑って糸から外れるカエル。一瞬開けた布団の隙間から第二第三のカエルが侵入してくる!
ふざけんな!!
布団に入ってきたカエルどもを引っ捕らえる。今度は繭のようにグルグル巻きにした。これで抜けれないはず。
外に放り投げたらまたやってくる。こいつらと同居するか!?ありえない……!!
ゲコゲコ。布団の外。四方八方からカエルの声が聞こえる。気が狂う……!!
目を閉じる。耳を塞ぐ。何も意味がなかった。
なんで俺がこんな目に……!!
涙が出てくる。何も変わらなかった。
「うぅ……」
グズグズとしても誰も助けてくれない。
カエルの声が無限に俺を攻めたてる。布団の上にカエルが跳ねた感触が余計俺を苦しませた。
背後のマダラは何なんだよ。温かいだけ。本当に使えない。むしろ俺の邪魔しかしてない。
心臓の音と、呼吸の音が聞こえる。
……。
くそっ。
わかったよ。
蹲ってても、仕方ないんだろ。
深呼吸。
体を動かせないことを言い訳にしても現実は変わらない。役立たずのマダラに期待なんかしない。
俺を守れるのは俺だけなんだ。
戦わなくては。
活路はそこにしかない。
俺は覚悟を決めた。
チャクラを練る。チャクラの練り直しなんかする隙はない。一発勝負。
糸を出す。二十八本。繭になった二本。計三十。アイツらにチャクラが見えるのか謎だが、ギリギリ見えないレベルの強度にする。
ここまで糸を大量に操るのは初めてだ。扱いきれるか?まあ一度に全部捕まえる訳じゃないし。数本使って繭を作って別の糸操作に切り替えるだけだ。全部同時に使うとか頭パンクするわ。
タジマの言うことを信じるのは癪だ。本当に三十匹いるのか?多い?少ないかも。なんでわざわざそんなに捕まえてくるかな!?
タジマのせいで散々だ。許せない!
無限に文句が出てくる。
しかし、考えても仕方ない。
やるしかないのだ。
目を見開く。
写輪眼。
カエルを全て捕まえる……!!
布団を剥がした。
部屋を飛び跳ねるカエル。
こいつらうっすらチャクラをもってやがる!?
見やすくて助かる。が、大量のカエルの動きに酔いそう。
まとめて捕まえるのはやはり無理。
一つ一つ着実に。だ。焦ってもいいことはない。
視界に入る緑色に糸を伸ばす。
写輪眼があってよかった。こいつらの動きを予測するのは困難を極める。
跳ねた先に糸を配置する。ぶつかった瞬間、絡めて縛り上げた。別に糸と言っても本物の糸じゃない。触れたところから変形させて繭にすればいい。
俺はいつになく冷静だった。頭が冴えている。
視界に入るゴミ共を片っ端からひっ捕らえてーー
「くっ!?」
視界外からの攻撃。掠ったような気がする。
目に映らないんじゃどうしようもないじゃないか!
無傷での生還は最早諦めた。
今はとにかく傷を浅くすることだ。
布団から頭と手だけ出してゴミ掃除をする。
視界に映るゴミはなくなった。
今何匹だ……?
一度布団の中に戻った。
繭の数を数える。暗闇の中青白く光っていてよく見える。
中身のカエルが透けてすごい嫌だった。
一、二、三、四……二十匹。残り、十。
まだ十匹もいるの……?
心が折れそう。
布団から顔を出して。
カゴを引き寄せる。
とりあえず捕まえた二十匹をカゴに叩き込んだ。蓋をしっかり閉めておく。
遠ざけようとしたと思ったらこんな近くに……。どうしてこうなるんだ……。
大合唱に鼓膜が破壊されそう。
マダラはスヤスヤだ。ある意味尊敬する。
さあ残り十匹。どこにいる?
マダラのせいであまり見えないが一応見渡す。
……いた。全然いる。
見えるものを回収。残り二匹。
もう後はどこにいるのかさっぱり。
チャクラがあるんだから透けて見える。はずなんだが。……。カゴの中にカエル残ってたりしたのかな……?そしたら絶対三十匹に行かない。
やばい確認忘れたせいで……。蓋開けて、一匹ずつ捕まえて数えるの……?無理……。
真横を通り過ぎるカエル。
まだ生き残りがいたのか!!
生き残りはまだいるに決まってる。そう考えた方がいい。楽観視は死を招く。
残り一匹。仮に一匹カゴに取り残されていたとしたら三十で終了。だった。
即座に縛り上げる。
視界外からの奇襲が辛い。
後は、どこだ。見渡す。
いない。
本当に全部捕まえた?
一度小休止。枕に頭を乗せる。ずっと首だけを上げていたせいでちょっと疲れた。
正面。カゴを見る。その少し先。その少し上。仄かに青い光。チャクラが見えた。
空中に浮いている……?
違う。
中にいる。
ヤツは。
タンスの中に。