一般日本人が転生する話。 作:あうん
マダラに謝罪するため廊下を歩いている。
俺の部屋についた。障子を少し開ける。
うわぁ……。テカテカの畳。タンスの下敷きになった布団。カゴだった木片。カエルのアレそれ汁がびしょりと布団に染みているような……。
気分悪くなるわ〜。
俺は障子を閉じた。知らぬが仏ってね。
俺は何も見ていないのだ。
マダラがいないことを確認した。次は食事部屋。
障子を開ける。
マダラがもそもそご飯を食べていた。
おっ美味そうじゃん!俺の分はないんだ!
はー!タジマひどいわ!こんなにも美味しそうなのに!お預けなんてさ!
「兄さん〜」
「!?、イズナッ!!」
マダラは俺に声をかけられるとすぐにこっちに来た。おい、箸をほっぽるな!畳に落ちた!汚い!!
勢いそのままに激突してくるマダラ。
ちょ、あ〜!
押し倒される。床板に頭をごちーんとした。いってぇ!!お前バカかよ!?
「っ〜!!」
マダラは俺の胸にすがりついている。俺の頭打ったの気付いてない。頭をさする。血は出てない。タンコブはできないといいなぁ……。
昨日の手を切ったのより痛い。まじいてぇ……。
「兄さーー」
マダラが泣いている。
泣いちゃった!!
じゃない。ふざけてる場合じゃない。
「ど、どどどうしたの兄さん」
「……イズナ、良かった」
俺の頭強打したことが!?
違う。すぐふざけたくなる。何も良くない。頭痛い。
「いなく、なったと、思った」
そりゃ母のとこ行ってたからね。
「兄貴みたいに……」
「……」
……。
「ごめん〜!兄さん!俺どこにもいかないからさぁ!大丈夫だって〜!!」
「……本当か?」
顔を上げるマダラ。涙と鼻水でぐちゃである。
「本当本当!!」
マダラの曇った表情は晴れない。
「指切りね!ほらほら!」
「……」
小指を差し出した。
マダラもおずおずと指を出してくる。
遅い!俺は無理やり小指を絡めた。
魔法の呪文を唱えて。
「指切った!ほらもう大丈夫でしょ〜!?」
「ん……」
頷くマダラ。よし。これで何とかなったな!
袖で涙を拭ってやる。ついでに鼻水も付いているような気がするが気にしてはいけない。
「母上も泣いちゃだめって言ってたじゃん兄さん〜ほら泣き止んで!」
「泣いてねぇ……」
マダラは維持を張った。
「そ、そっかぁ!さっすが兄さん!兄さんが泣くわけないもんね!」
「……」
鼻をすするマダラ。ティッシュとかないですかね!?ないか〜!!
なんかないか。なんか……。
俺は懐から母から賜った布を取り出した。それでチンさせた。
あ、そうだそうだ。
「兄さんこれ。母上から!」
「?」
「カエル捕まえてきて欲しいんだって!これに入れてって」
今さっき鼻水で汚れた風呂敷を渡す。罪悪感すごい。別のもので鼻かませればよかった。
「……分かった!」
マダラは急に元気を取り戻した。風呂敷を掴んでそのまま外まで出ていってしまう。
「ええ!?兄さん!?」
「すぐ取ってくる!」
笑顔で言うマダラ。
「き、気を付けてねー!?」
「あぁ!」
雨の中にマダラが消えた。足早すぎ。
母の言葉?で一気に明るくなったマダラ。母は偉大であるな……。
そこそこ強い雨が降っている。マダラ大丈夫かなぁ?カエル捕まえられるかなぁ。
裸足で行っちゃってるけど大丈夫?釘踏まない?この時代釘落ちてる?普通に石ころ踏んで泣かないといいけど。
丈夫なマダラなら大丈夫か……?いや丈夫にも限度はある。よな?
ちらりと部屋を見る。
あいつ、飯を残していきやがった……。
ここで俺が去っても、どうせすぐ片付けられてしまうのだろう。捨ててしまうのは勿体ない。俺が処理してやろう。
やれやれ。仕方ない。
そう。
仕方ないのだ!!
落ちた箸を拾う。手でぺっと払う。そんな汚れてはないだろう。
ではでは。
手を合わせる。
いただきます〜!!
もぐもぐ。
ごちそうさまでした〜!
美味しかったです!
「母上〜」
「お待ちしておりましたよ。イズナ」
微笑みの聖母がいる。うーん美しい……。
こんなにも美しい母の何が不満なんだタジマは。
過ぎる粥。
俺は過去の忌まわしき記憶を遠くへ放り投げた。
うん!母は最高だナ!
「イズナ。お着替えしましょうか」
「あ、はい」
俺はマダラの涙と鼻水の服を着替えた。
「……何ですかこれ?」
「日向の装束ですよ。やっと完成したのです」
母はふふふと微笑んでいる。
装束。戦う時に着るやつの。子供バージョンってところか。
にしてもおかしい。俺の認識が間違ってるのか?
バラされる前の日向さんの装束を思い出す。絶対こんな感じじゃなかった。
「すごい動きづらいですよこれ」
「えぇ。わたくしが少し手直しいたしました」
手直し……?
袴のような、着物のような。帯が苦しい。
しかも装飾が。ふりふりがいっぱいついている。
絶対戦わせる気ないじゃん。
???
「娘が生まれれば着せようと考えていたのですが……イズナもまだ幼いので。良かったです」
何も良くないが!?
魔改造がすぎる。こんなの見せたら日向さんぶちギレ不可避でしょ。
「母上はすごいですね」
「うふふ。ありがとうございます」
嫌味なんだよなぁ。
母は懐から櫛を取り出した。俺の髪を梳く。
「ぁいてっ」
「あら」
案の定タンコブができていた。
ぽわっと光ったと思ったら痛みが引く。
「母上本当にすごいです」
「イズナもすぐにできるようになりますよ」
ほんとか〜??
俺の髪をいじる母。
「にしても、目を離した途端にすぐ怪我をして……。やはりずっと目を離さない方が……」
「あ、あー!そんなことないですよ!大丈夫デス!!」
「そうですか……?心配です」
その後、母は懐から簪を取り出した。
いっぱい。
俺の頭にザクザク刺してくる。地味に重い。
「とてもお似合いです」
「そうですか……」
母は懐から更に色々と出してきた。
白い粉。筆。椀。赤いの。
前髪を上げて。
ベタベタと顔に塗りたくられる。
母の微笑みが一層深くなる。
「本当の女の子のようです」
「はぁ……」
懐から手鏡を出した母。自分の顔を見る。
化粧をして髪を結われた俺の顔面。
可愛い。小さい子供なんてみんな可愛いだろ。つまり並だった。可もなく不可もなく。
だが気分は上がった。この格好は紛れもない。
七五三だ!
千歳飴を思い出した。あの細長いのいいよな。普通に食べたい。食べたくなってきた。
ありそうじゃない?丁度今三歳だし。食べたいよなぁ。
「うふふ」
前髪を整えてくれる母。
楽しそうでなにより。カエルの恩もある。
俺は気合を入れた。
小首を傾げる。上目遣い。母のような微笑み。ちょい声高め。
「お母様!わたくし、可愛いですか?」
「!!」
母は手を口で覆った。母の微笑みが覆った。
驚愕。
母は動かなくなった。
反対の方に首を傾げ直す。眉をひそめて、悲しい顔。
「お母様?わたくし、可愛くないですか?」
ハッとする母。
「そんなことありませんよ!嗚呼なんて可愛らしい……!世界一です!」
「えへへ〜」
親バカすぎる。
母は微笑みを超えてニコニコであった。
俺は調子に乗った。
くるっと回ってターン。襖から一回出てモデル歩きで入場。他にもポーズを取ったり。色々やった。ビシバシと。決め決めだ。
母はそれに逐一きゃあきゃあと反応を返してくれる。面白い。
……。
「母上、疲れました」
「……!そ、そうですね。イズナ。少し休みましょうか」
母は正気に戻った。多分。
俺は座った。頭の簪を抜いていく。動き回ったせいでわりと体力使ったな。
母の微笑み。どこか浮ついている。緩みすぎである。
「イズナは優しい子ですね」
「当然です」
母は俺の頭を撫でてくれる。
落ち着きを取り戻した母。櫛で俺の頭を梳いてくれる。
くつろいでいると母が。
「イズナ」
「はい?」
「箪笥で蛙を潰したというお話ですが……」
あ……。
やっぱ嘘だってバレてるよな。
「命は粗末にしてはいけませんよ」
そりゃそうだ。そんなの前世から分かってる。
とんでもない大事故だった。タジマのせいにしておこう。
「すみません……」
「イズナは賢い子です。これから気を付ければ良いのです」
俺は賢くないよ。いや母が言うなら俺は実は賢い……?
……冗談はともかく。母の言う通り、気を付けよう。
気を付けたところで何か変わるかな?……ま、まあとにかく気を付けるのだ!俺は心に誓った。
優しい説教もそこそこに。
母は俺に縫いかけの産着を渡してきた。
「さあ。今日も頑張りましょうね」
「はい!」
縫い縫い。
産着が、完成した?
「どうですかこれ」
「えぇ。十分ですよ頑張りましたね」
母は産着を受け取った。
赤ちゃんの着る服?完成である。母の腹を見る。
「赤ちゃん。いつ生まれてきますか?」
「……そうですね……秋頃、でしょうか」
「へ〜」
母の腹に触った。
「蹴ってきませんね」
「ふふ。大人しい子なのかもしれません」
「ふ〜ん。男の子ですか?女の子ですか?」
「生まれてくるまで分かりませんよ」
不便〜。そんなことも分からないの?
「やっぱり女の子の方がいいですかね」
「無事に生まれてきてくれれば言うことはありません」
聖母だ……。微笑みが神々しく見えてきた。
「早く生まれてくるといいですね」
「……えぇ。そうですね」
母は微笑んでいた。