一般日本人が転生する話。   作:あうん

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新術開発。

母とまったりしていると。

 

「母上!イズナ!」

「お」

 

マダラの声。

振り返るとやはりマダラ。

びしょ濡れの上にびしょ濡れの風呂敷を抱えている。

更に言うならゲコゲコうるさい。

 

「カエル!とってきました!」

 

にこーっとしているマダラ。部屋に入ってくる。濡れる畳。泥もつく。

俺は知らないふりをした。

母はカエル風呂敷を受け取った。うわ。風呂敷越しにうぞうぞしている。きもい〜。

見たくないものを見てしまった……。

 

「ありがとうございます。頑張りましたね」

 

母はマダラの頭を撫でた。

 

「へへっ」

 

嬉しそうなマダラ。良かったね。どんだけ捕まえてきたの??

母は恐ろしき風呂敷を隣の部屋に持っていってしまった。

少しカエルの声が小さくなった。助かる。

 

マダラがびしょなので、さっさと風呂に入れてしまおう。

 

母が戻ってきた。

俺は立った。

 

「母上〜」

「はい」

「今日はこれでお暇します!」

「あら、そうですか……」

「また明日!」

「はい。また明日。お待ちしておりますよ」

 

母に抱き着いて、バイバイした。

濡れたマダラの手を取る。

 

「行くよ〜」

「っ!」

 

引っ張る。マダラが動かない。

母といたいのかな?濡れてなかったらそれでもいいんだけどね。

マダラは俺の手を振り解いた。

へぇ!?

 

「……」

「……あー、兄さん?」

 

困惑。唐突に反抗期来るじゃん……。

マダラの表情は険しい。

一歩二歩。後ろに下がった。

 

「誰だ……?」

「え……」

 

頭が真っ白になった。

 

「イズナですよ」

「え!?」

 

母の一声。

マダラは目を見開いた。

俺を上から下まで見る。

再度俺の顔を確認して。

 

「い、イズナ!?」

「……」

 

そういえば女の子の格好してたわ。

 

 

服をまともな服に着替えた。危ない危ない。外に日向さんの改造服を晒すところだった。

見る人はマダラと女中さんとタジマ。

タジマに見られたら憤死ものだな。

残念がる母を尻目に部屋を出た。

早く風呂に入って顔を洗いたい。

顔面がこなこなしている。

何もしてなくても口紅が微妙に口に入ってくる。ヤダァ。

 

雨が降ってる。やはり床はマダラの足跡で泥水が。あーあー。

 

「兄さん。外から回ってお風呂まで行ってね」

「あ、あぁ……」

 

賢い俺は泥遊びを選択しなかった。

 

「俺はこっちから行くから。よーいドン!」

「!!」

 

競走に弱いマダラ。犬のようである。

忠犬マダラは瞬時に雨の中に駆けて行った。

俺も行くとしよう。

今回は口八丁で勝つわけじゃない。正面から勝ってやる。

賢い俺は走るなど原始的な真似はしない。そもそもマダラに足で勝てると思ってない。勝てる勝負しかしないのだ俺は。

腹でチャクラを練る。

風呂への道。曲がり角までチャクラ糸を伸ばして柱の高い位置に引っ掛けた。

それを一気に縮める。体が浮く。柱まで体が引っ張られる。

柱にぶつかるより前。糸を外す。

シュタッ。華麗に着地。

いいね。

これを素早くやれば、走るよりもずっと早い。

気分はスパイダーマッだった。

楽しい〜!!

 

風呂場に着いた。

マダラはいない。

俺の勝ち。

気分が良い。完全勝利だった。

俺の詰めは甘くない。風呂に浸かりながら勝利の美酒を味わうとしよう。

服を脱いで浴室に入った。

 

マダラがいた。

がーん!!

笑顔で俺を煽るマダラ。

 

「俺の勝ちだな!」

「……」

 

俺は黙って風呂に入った。冷たいっ!?

怯んでいる場合じゃない。

 

「違うね!俺の勝ちだから!!」

「はぁ!?」

「お風呂に入った人の勝ち!!」

「んなこと言ってなかったじゃねえか!!」

 

言ってない。が、言ったことにする。

 

「言う前に行っちゃったんだもん!聞いてない兄さんが悪い!!」

「……」

 

俺は風呂から出た。水風呂だった。勢いで入ったがマナー違反だ。

いつもより早い時間。お湯沸かす人が間に合っていなかった?

 

「兄さん」

「……」

「お風呂、火遁で温められない?」

「……ハァ?」

「お風呂冷たかった……」

「……バカだろ」

 

……。

 

「バカじゃないし!俺は賢い!!」

「あー分かったって!」

 

分かったならいいのだ。

閑話休題。

 

「火遁・湯沸かしの術!とか!」

 

火遁・追い焚きの術でもいい。

 

「ねぇよ!んなもん!」

「えぇ〜!!」

 

そこをなんとか!!

 

「なんかいい感じの術覚えてないの!?」

「……豪火球の術?」

「……もっと優しい術ない??」

「優しいってなんだよ……」

 

殺意のない感じの。

 

「他に覚えてる術ないの」

「ねぇ」

 

使えねぇ……。

俺の視線にマダラは狼狽えた。

 

「い、イズナだってそうだろ!」

 

は!?

 

「そんなことないし!?」

 

やばい反射的に!!

マダラの疑わしい眼差し。

 

「なんだよ。糸ようじは術じゃないっつってたよな」

「……もちろん。糸ようじのことじゃないっ」

 

やべー。

なんかないかなんか……。

適当に印組んだら術発動しないかな?そんな当てずっぽうな……。

実は豪火球の術の印もあんまり覚えてない。使わないと忘れるもんだよね。

 

「……術って、印を組んだら出るんだよね?」

「あぁ」

「……」

 

術の定義の再確認。印を組んで術を発動する。

つまり、印っぽくして何か起こせば術である。

……。

俺は桶に水を汲んだ。

 

「火遁じゃなくてもいい?」

「?本当にできんのか」

「……威力は期待しないでね」

 

本当にしょうもないのだ。

でもマダラなら騙されてくれそう。アホだから。

 

「あ、あぁ」

 

術には五属性あった気がする。

タジマの子守唄がここで役立つとはな。

桶の中の水に手を突っ込む。

印を組む。

 

「巳……!」

 

マダラが印の名前を言った。

み。蛇?だったかな。

両手のひらの内側に水を忍ばせて。

印を組んだ手を口に当てる。

別に口元に寄せる意味はないんだけど、豪火球も口から出すからね。形が大事。

 

「そら行くぞー」

「……!」

 

固唾を呑むマダラ。

術を発動した。

手のひらの水を押し潰す。水が一直線飛んでいった。

ビシャっと壁に当たる。

 

水鉄砲。お風呂で遊ぼうシリーズ。

 

くだんね〜。

 

 

だが、マダラには効果覿面だったようだ。

 

「すげぇ!!」

「まぁね」

「何て術なんだ!?」

「え?えーと。水遁・水鉄砲の術、かな?」

「おお……!!」

 

まんまだな。

大興奮のマダラ。

俺は顔を洗った。

 

マダラは巳の印を組む練習をしている。

 

「……出ねぇ」

 

そりゃそう。水のないところで出るわけがない。

 

「どうやんだ?」

「んー」

 

教えてやってもいいけど。そしたら術じゃないのがバレる。

 

俺は天才的な閃きをした。

ニヤリとマダラに笑いかける。

 

「糸ようじ、覚えたら教えてあげるよ」

「……!」

「頑張ろうね」

「あぁ!」

 

冥土の土産ってやつだ。

 

 

いい加減寒くて震えてきた。

今日は別に寒い日じゃないけど、水風呂に浸かったのはまずかったなぁ。

マダラも濡れているはずなのに全然寒そうじゃないのは本当になんなんだろう。

やっぱ中身が子供と大人じゃ色々違ってくるのか?まさかぁ。

 

「兄さん。やっぱ豪火球使ってくんない?」

「ん?いいのか」

「いいよいいよ」

 

物は使いよう。術も使いようだ。寒すぎて人殺しうんぬん言う前に俺が凍え死ぬ!

マダラは風呂に向かって火球を吐いた。

でっか。

俺は初めて見た時の大きさを想像していたのに。

タジマよか小さいけど。

そこまででかくしろとは言ってない!?

 

「うぶっ」

 

爆発。

蒸気。熱気。

火球分によって内側から破壊された浴槽。マダラにしがみつく。

そこそこ温まったお湯がぶち当たる。

開いていた脱衣所にお湯が流れていくのが見えた。

木片が足にこつりと当たる。

 

「……」

「……」

 

バカとハサミは使いよう。

俺はマダラを使いこなせなかった。

 

 

……。

 

 

「兄さん」

「……」

「上がろっか」

「そ、そうだな……」

 

上がった。

足元が濡れている。

気にしないことにした。

着替える。

 

「あれ……」

 

着替えがない。

いつもならあるのに!

俺は体を拭いて、さっき脱いだ服を着直した。

マダラはそうはいかない。

 

「兄さん、服持ってくるから。髪乾かして待ってて!!」

「あ、おいっ!」

 

部屋に駆ける。

障子を開けた。

部屋の中。

 

「あ!!」

「……」

 

無視女さん!

 

 

無視女さんは畳を張り替えていた。カエルに汚染された畳を。

タンスも定位置に戻っている。

も、申し訳ない……。

 

「本日はお隣のお部屋をお使いください」

「あ、はい」

 

ちらりとこちらを見て、すぐに畳に視線を戻す。

無視女さんはそっけなくそう言った。

 

「……あの」

「……」

「手伝いまーー」

「結構です」

「す……」

 

冷たい!!

 

「……何かご用事がございますか」

「あ、ええと。兄さんの着替えーー」

「どうぞ」

「を!?」

 

目の前に急に現れる服。と無視女さん。

押し付けられて、受け取った。

ありがとうを言う前に。

障子がピシャリと閉じられた。

 

「……」

 

……冷たすぎる……。

ちょっと泣きそうになった。

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