一般日本人が転生する話。 作:あうん
無視女さんからゲットした服を引っ提げて。
風呂場。マダラの元に戻った。
「兄さん。お待たせー」
「……あぁ」
マダラに服を渡す。
ちゃんと髪を拭いたようだ。
背伸びをする。
偉い偉い。頭を撫でてやった。
「何すんだよ」
「まあまあ」
足が濡れっぱなしである。
風呂から流れ込んだお湯。
怒られそうだなぁ。
まぁ今回はマダラも原因なとこあるし。
タジマも許してくれるよな!!
「勿論抜きに決まっているでしょう!」
「えぇーー!!?!」
タジマはため息をついた。
「どうして次から次へと問題を起こすんですか?限度があるでしょう」
「でもっ今回は兄さんも!」
「お前がそそのかしたのでしょう。それ以外考えられません」
「ひどい!」
「お前の頭のことですね。分かっているではないですか」
まじでひどい!!
タジマはマダラの方を向いた。
「マダラ、早く食事を摂ってしまいなさい」
「で、ですが……」
「この大馬鹿者は気にしなくてよろしい」
「……」
マダラは俺のことをチラチラ見ながらも、タジマの言葉に従った。
裏切り者ー!!
「餓死しちゃいます!!栄養失調!!!」
「小難しいことを知っている割に常識がまるで身についていませんね」
「母上の部屋で過ごして常識が身につくかぁ!」
「……」
タジマを論破した。
よし!!
ありがとう母!!
「とにかくご飯抜きはやめてくださいよ!背が伸びなくなります!」
「……仕方ないですね」
お!?
ため息一つ。
タジマは懐から黒い物体を取り出した。
俺に手渡してくる。
見る。ツヤツヤの泥団子のよう。サイズは串団子より小さめ。
「何ですかこれ」
「兵糧丸です」
「ヒョウロウガン……」
なんだそれは。
「これで栄養は問題ないでしょう」
「えっこれ食べ物ですか」
「そうです」
えぇ〜?
においを嗅ぐ。無臭。
謎のヒョウロウガン。栄養豊富?栄養食ってやつ?
「食べていいんですか?」
「はい」
齧る。
パキッと。チョコのコーティングみたいな外側。中が粘土みたいで、噛んだらジャリっとした。
味。最初に感じたのは苦味。次にうっすら塩気と甘みと激烈な辛味。
鼻を突き抜ける薬味のなんとも言えないあれ。
混ぜ合わさってもはやゲロ以下だった。
食に対する冒涜だった。
こんなの食べ物じゃない!!?
俺は吐こうとした。
タジマは俺の口を塞いだ。
「ング!?」
「ちゃんと食べなさい。餓死されては困ります」
「〜〜!!!!」
無理無理!なんだこの滅茶苦茶な味は!舌がバカになる!!
俺は暴れた。タジマの手は剥がれない。
次の手を考える前に鼻をつままれた。
「!!?」
「早く飲み飲んでしまいなさい」
お、お前〜〜!!!!
「うええ!!」
「……」
四つん這い。
吐き気と格闘する。吐き気があるだけで物は出てきそうにない。すっかり胃の中に落ちていってしまった。まさかもう消化吸収してしまったとでも言うのだろうか。
タジマが湯呑みを渡してくる。引ったくって一気飲みした。
舌を火傷した。ふざけんな。
それでもまだ口の中に残っている気がする。
あの強烈な不味さは俺の心に大きな傷を負わせた。
「バカ死ねハゲろ!!」
タジマは口角を上げた。
「こちらの方が効き目があったようですね。今後はよく考えて行動するように」
こいつ……!!
タジマは俺の食いかけのヒョウロウガンを目の前に。
最悪のにおいが鼻に。
「!?」
「返事は?」
「はいぃ!!」
後ずさる。
「よろしい」
ひどすぎる……。
ちょっと食べただけなのに凄まじい満腹感があった。
お腹がいっぱいだと絶望的な悲しみも湧いてこなかった。
ただただヒョウロウガンの凄さに圧倒されるばかりであった。
タジマ許せねぇ……。
俺は座布団に突っ伏した。
女中さんが食器を下げる音が聞こえる。
顔を上げる。
今日のおやつはあられだった。
「……」
どうしよう。全然食べられる気がしない。
満腹感が異常すぎる。
食欲が完全に死んでる……!!
なんだこれ。流石におかしいと思う。
「ち、父上!お腹が、いっぱいすぎるんですけど!!」
「そうでしょうね」
タジマはあられをポリポリ食べている。
「全て食べていれば三日は持つものです」
「三日!?」
「お前の食べた量なら半日程度でしょう」
「……」
や、やば〜。全部食べなくてよかった……。
「なんちゅーもん食わせるんですかぁ!」
「罰には丁度良かったようで何よりです」
「な……!!」
何も良くない!!
早食い競争でもしているのかタジマはもうあられを食べてしまった。
席を立つタジマ。
「イズナ。用が済んだら私の部屋に来なさい。これからは私の部屋で寝てもらいます」
「ハァ!?」
「お前は目を離すとありえないことばかりしでかすようですからね。気休めですがやらないわけにもいかないでしょう」
そう言ってタジマは出ていってしまった。
「……」
「……」
あられを一個食べる。
美味しい。病みつきになる絶妙な塩気。
もう一個。と、手が伸びない。
俺はマダラにあられをあげた。
「俺、お腹空いてないから兄さん食べな〜」
「……」
俺が待たせることはあったけど、マダラが食べ終えるのを待つのは初めてだった。
糸ようじをして、歯を磨いて。
とことこタジマの部屋に向かう。やだな〜。
俺が寝る間際までぐちぐち言ってきそう。
寝れるかな俺〜。
タジマの部屋の前。ついに着いてしまったな。
障子に近づく。
障子に触れない。
マダラが動かないせいだった。
手を離す。マダラが離してくれない。
こいつの握力を超えねば障子を開けられない。
俺の手が引きちぎれるのが先になりそうだ。
マダラはしょんぼりとしている。分かりやすいな。
タジマと寝たくないのかな?俺もだぜ。
「どしたの?父上と寝るのやっぱり嫌?」
「は?」
「え?」
「嫌じゃねぇ」
「……あっそう……」
違ったらしい。
純粋な子供にはタジマの邪悪さが分からないらしい。
タジマに洗脳されてる……。かなしい……。
「じゃあ入ろ」
「……」
動かないマダラ。
嫌じゃないんだよな?喜び勇んで部屋に突撃してくれよ。俺の盾になれ。
ぽそりとマダラが呟く。
「父上は、お前だけ呼んだんだろ」
「?」
そうだったかな?そうだったらなんだと言うのだろう。
俯くマダラ。
どうしたどうした。
「んー」
「……」
お前だけ呼んだ……。お前。お前is俺。
俺だけ……。タジマに呼ばれたのは俺だけ。
マダラは呼ばれてない。
あ、ふーん。
マダラはタジマにハブられたと思っているらしい。
裏の裏の深読みしすぎで勝手に傷付いているマダラ。
あーあタジマのせいでマダラがかわいそう!
まあ、マダラに甘々なタジマがそんなこと思ってる訳ない。
俺との扱いが雲泥の差なのが良い証拠である。
普通のご飯のマダラとヒョウロウガンの俺。おかしくない?
「大丈夫だって。兄さんがお願いしたら一発だよ」
「……何が?」
「父上とお泊まり!」
「お泊まり……?」
マダラが俺を見た。俺はニヤリと笑った。
背伸びをした。マダラの耳元に口を近づける。
コソコソ。
「いい?今から言うことを父上に言ったら、絶対いけるから!」
「……!」
マダラは真剣に耳をすませている。
やれやれ。マダラは世話がやける。
こういうところが面白いんだ。
作戦会議を終えて。
「行くよ!」
「あぁ!」
気合いの入ったマダラの返事。これからの光景が楽しみで仕方なかった。
障子を開ける。
正面にタジマ。仁王立ち。
あっ。
マダラは拘わらず話し出した。
まずいっ!!
「お父様!!俺とーー」
「いいですよ」
「え!」
タジマはマダラの頭を撫でた。
「マダラがここで寝たいなら好きにしなさい」
「父上……!」
タジマは俺の方を見た。マダラに向けていた暖かな眼差しではないのだけは確かだった。
「イズナ……」
「い、いやぁ良かったなぁ兄さんいないと寂しいですもんね〜」
「全て聞こえていましたからね」
地獄耳!
「おかしなことをマダラに吹き込まないように」
「……」
「返事は」
「はーい……」
タジマはため息をついた。
「早く寝てしまいなさい」
「は〜い!」
「はぁ……」
タジマを避けて。
二組ある布団が見えた。
「じゃあ俺こっちで寝ます!」
「そうしてください」
「兄さんあっちで寝てね」
タジマの布団を指差した。
「あっちって……」
「父上と一緒に寝ればいいじゃん〜」
「……!」
タジマと隣なんて嫌だ。マダラには肉盾になってもらう!
「おやすみなさ〜い」
俺は寝た。