一般日本人が転生する話。   作:あうん

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まんじゅう怖い。

はいはい、つかまり立ちを乗り越え完全二足歩行を習得した俺は絶賛うちは邸宅の散策中である。うちは家は金持ちらしく、めちゃくちゃ広い。マダラ事件以来の外である。太陽がやはり眩しい。明るい中にいると自分の肌が病的に白いのがわかって嫌になる。もっと健康的な生活がしたい。

目下俺が探しているのは調理場だ。授乳と離乳食を行ったり来たりしている俺はそろそろ、流石に、ちゃんとした固形物を口にしたかった。乳離れをとっととしたいものの、母の方が乳を与えたがる。もうそろ歯も揃ってきているのでいい加減咀嚼をだな。

飯のいい匂いがするのでここら辺だと思うのだが……。そこの女中に尋ねた方が早いか。

 

「こんにちは!」

「はいこんにちは。あら?見かけない子ですね」

「うちはイズナです!はじめまして!」

「まあ上手なご挨拶ですね……イズナ様!?どうしてここに!?」

「いいにおいがしたから」

 

挨拶は大事。随分な驚きようだが、過保護に育てられているうちはの子息が1人でいたら驚きもするか。

 

「イズナ様。モミジ様はご一緒ではないのですか?」

「ははうえはお昼寝中だよ」

「まあ」

 

モミジとは母の名だ。母が寝てるのは間違いない。俺が逆立ちしようが踊り出そうが横になったまま微動だにしなかった。

母は俺が部屋にいないことに気付けばお叱りは免れない。だが俺は飯が食べたいのだ……!千載一遇のチャンス……ものにして見せる!!

女中は困った顔を見せつつも初めて見るうちはの可愛い次男坊に頬を緩ませている。

 

「おねえちゃん。ボクお腹すいちゃった」

 

上目遣いでうるうると目を潤ませ、眉を下げ切なげな表情を披露する。どうだ幼児のおねだりに耐えられる大人などおるまい。しかして女中のハートを掴んだのか。

 

「ええ。ええ。イズナ様。丁度お菓子を作っていたのです。どうぞお食べください」

「わあ!ありがとう!」

 

俺はできたてのまんじゅうを手に入れた!

 

モミジ様にはくれぐれも内密にと約束し、部屋に戻ってきた。目的のブツとは違うが、これも和の一つだ。構うまい。米やら魚やらはまた次の機会だな。

では、早速。寝入っている母に背中を向けて座り、いただいたまんじゅうを一口。

甘い!母の乳の纏うような甘さとも、離乳食の米特有の淡い甘さとも違う、暴力的なまでの甘さ。否、今まで食した甘みが薄味に過ぎただけだろう。しかしこの強烈な甘さは、人々が甘味を求め菓子コーナーが盛況になるのも頷ける。

美味い。歯を突き立て、大した力を要さずともちぎれる柔かな食感。そう、食感だ。俺は初めて咀嚼している!顎を動かし舌を動かし、餡を口の中で転がすことに俺は涙が止まらない。口に広がる幸せと、やっとまともな食事という行為を行えた喜びに。

食とは喜びのことなのだなぁ……。

俺は文字通り幸せを噛み締めていた。

背後の様子にまるで気付かないまま。

 

 

 

 

 

 

母の隣で女中が倒れている。首が折られていた。

何人もいるどこぞの女中ではない。先日俺にまんじゅうを与えてくれたあの女中が、死んでいた。否違う。殺されたのだ。

母が殺した。

 

「イズナ。約束を破りましたね。」

 

こんこんと俺に説教する母の目は赤かった。目だけではない。着物もところどころ赤に滲んでいた。不気味な模様だった。

母はまんじゅうを俺に手渡した。女中が作ったまんじゅうそっくりだった。いや、完璧に女中の作ったまんじゅうだった。

 

「まだ早いと思っていましたが、仕方ありません。まんじゅうが食べたいのであればわたくしが用意しましょう。どこぞの物を口にしてはいけませんよ?わかりましたね。イズナ」

「はい。母上」

 

そう言うしかなかった。

 

薄々察していたが俺の母はヤンデレ?いや毒親?とにかくやべー母親の元に生まれてきてしまったようだ。乳離れ云々ってレベルじゃなかった。

武士の家だからって人一人あっさり殺して許されるもんなの?この薄暗い部屋は外の様子と隔離されているせいで何も分からない。女中はいつの間にかいなくなっていた。

母は大体において微笑んでいる。唯一無表情だったのはこの前の血塗れ事件のみである。叱られ中、目が赤く光っててホラーかと思った。なんで目が光るわけ?とにかく母には逆らえそうにない。

今日も俺がまんじゅうを食べる姿を微笑みながら見ている。……いやまんじゅうが泣くほど美味かったのは事実だ。故女中のまんじゅうとまるっきり同じ味で再現度が凄すぎるが、こうも毎日毎日出されると流石に飽きが……とはもちろん言えない。

俺の食事は母の乳と、絶望離乳食に、新たに母手製コピーまんじゅうが追加されただけ。イカれてる!

どうにか母には子離れしてもらいたいが……。

マダラによる俺気絶事件のせいで過保護が加速した母は常に俺のそばについて目を離すことがない。だからこの前は珍しく昼寝していた母の目を盗んで飯探しの旅に出たのだ。これからもこっそり外に出ても、あんなことがあったからには誰が俺に食事を与えようか。与えた瞬間そいつは母による処刑が待ってると分かっているなら誰も俺に近付こうとしないだろう。詰んだ……。

 

と思っていたのもつかの間、母はあっさりと俺を束縛から解放した。妊娠が発覚したのだ。母の愛は腹の子に向かった。

ええっまじかよ父親誰だよ!はぁタジマァ!?

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