一般日本人が転生する話。 作:あうん
「おやすみなさ〜い」
俺は寝た。
寝れなかった。
すんごい目が冴えている!!
布団から体を起こす。
「寝れません!」
「でしょうね」
でしょうね!?
背中を向けているタジマ。筆を持って何か作業中。お仕事?
もう夜ですよ。社畜タジマ。
「兵糧丸の効能のせいですね」
「ヒョウロウガンってなんなんですか!?」
「戦の時に用いる保存食です」
!?
「本当になんてもの食わせてんだお前ぇー!!」
「そこまで嫌がりますか」
背中越しのタジマからくっと笑い声が聞こえた。何も面白くない。
「これいつ眠くなります!?」
「半日ですかね」
満腹中枢を破壊されたのと同じ効果時間!
「今日寝れないじゃないですか!?」
「そうですね。だからここで見ることにしました」
こいつっ!!!
俺は布団に転がった。
クソマズ栄養食かと思ったら激ヤバエナドリの類だった。翼をさずけるどころじゃない。
掛布団を蹴る。
「子供に食わせていいもんじゃないでしょ!」
「お前に与えたのは子供用ですよ」
子供用のエナドリ……?意味わかんないんだが……?
「大人用がよかったですか?お前なら一週間は効きそうです」
「……結構です!!」
ごろっと寝転がる。目が冴え渡りすぎる。頭が熱い。心臓がずっとうるさく鳴ってる。それが不快な感覚じゃなかった。
タジマと話すのが楽しい。
酩酊感。気分が良かった。今ならなんでもできる気がした。
そんなわけない。
最悪。
変な薬絶対入ってるじゃん……。
これは寝れそうにない。
部屋が薄暗い。薄明るい?
夜なのにタジマの部屋の蝋燭が眩しい。
蝋燭って、蝋が溶けるんだった。どんどん短くなって。
当たり前のことなのに、忘れていた。なんでだっけ。
「父上〜」
「何ですか」
「母上の部屋の蝋燭って何で溶けないんですかね〜」
「……あれは幻術です」
幻術か〜。いい思い出がない……。
「幻術ってすごいんですね〜」
「普通の幻術ではああもいきません」
「ふ〜ん。じゃあ母上すごいんだ〜」
「そうですね」
……。
「母上のこと好きじゃないんですか〜?」
「……なんですか急に」
「母上は父上のこと大好きって言ってましたよ〜」
「……」
「全部好きって〜」
暇なので逆立ちをした。
やっぱりこの体は身軽だ。思うように動く。
何よりヒョウロウガンのせいでハイ状態だ。
この身体能力を活かしてなにかしたい。
縄跳びとかどうかな!?
今なら二重跳びどころか三重跳びも余裕でできそうである。
やるか。チャクラを練る。
「揶揄っているつもりですか?マダラのようにはいきませんよ」
「からかってないですよ。ほんとーです」
「いい加減くどいですね」
ため息が聞こえた。信用がないな。
両手に一本のチャクラ糸。
足で糸の真ん中を踏みつけた。長さの調整が楽で良い。やっぱチャクラ便利。
「父上だって、母上のこと好きでしょ」
「まだ続けるんですか?」
勿論。ヒョウロウガンで眠れない分。お前に責任持って時間潰しに付き合ってもらう。
試運転。一回跳ぶ。チャクラ縄跳び。成功。
良い感じ良い感じ。
「好きだから四人も子供作ったんでしょ」
熱々じゃないか。
一人死んでしまっているが。
「……」
「ですよね?」
足踏みをしながら縄跳びをする。
少しずつ早く。
「……愛などなくとも子は作れます」
引っかかった。
じゃあどうやって子供って作るんですか!?って。
これはマダラが起きている時にとっておこう。楽しみが増えたな。
タジマを見る。やはり背中を向けていた。
蝋燭の火が揺れている。
視線を元に戻した。
「ふ〜ん。母上かわいそ〜」
「……」
交差とび。全然できる。
懐かしいなぁ。
顔が綻ぶ。
「じゃあ俺のことも愛してないんだ」
どうでも良いけど、
そろそろ二重跳びに取りかかるとしようか。
「なぜそのようなことを聞くんですか」
「別に〜」
「イズナ」
タジマがこちらを見ていた。
近付いてくる。
見下ろされる。蝋燭を背に。顔が暗くてよく見えない。
「何をしているんですか」
「縄跳び」
「……」
ため息。
「チャクラを使ってすることがそれですか」
「楽しいですよ。父上もやる?」
「やりません」
つれないやつ。
「言わなくても分かるでしょう」
「?」
「愛しているかどうかです」
「……」
その話まだ続けるの?もういいよ。
俺はニヤリと笑った。
「言葉の裏の裏を読むってあるじゃないですか」
「そうですね」
「まずは言ってもらわないと。読めないですよ」
「言っても分からないお前にですか?無理な話でしたね」
「無理じゃないですから!」
「そういうことにしておきます」
タジマは俺の頭をぽんと撫でた後、また仕事に戻ってしまった。
つれないやつだ。本当に。
「……」
二重跳びをした。一回。
まさかの成功を遂げる。
めちゃくちゃ嬉しい。
連続跳びはいけるだろうか。
二回、三回、四回目で引っかかる。
二重跳び特有の風きり音。
もう一回やろう。十回連続を目標にした。
俺は天才なので半日で二重跳びを十回連続で跳べるようになった。
つまりもう朝だった。
蝋燭よりも明るい光が障子を白くした。
鳥のさえずりが聞こえる。
タジマは結局寝ていなかった。こいつもヒョウロウガンキメてんの?
「父上寝ないんですか」
「風呂が壊されていなければ、寝れていたかもしれないですね」
「……」
俺は聞かなかったことにした。
タジマの布団に侵入した。
目が合う。
マダラは起きていた。
「おはよう兄さん!」
「……」
まだご飯には早い。お腹もまだ空いてない。
寝ぼけ眼のマダラに糸を手渡した。
「兄さんも縄跳びする〜?」
「……いい」
なんで!?つれねぇやつしかいねぇ!!
糸を押しのけられる。
マダラはもぞりと枕に顔を埋めてしまった。
二度寝を決め込むつもりらしい。
俺は全然眠くないのに見せつけやがって……。
仕方ないので今度ははやぶさをする。
とんとんと数回跳ねて。手を交差させて跳ぶ。
普通に回すのと、交差して回すのを交互に。
それを一回のジャンプで潜り抜けなければならない。
さぁ頑張るぞ〜。
……。
「タジマ様。失礼いたします」
お、女中さんの声。
部屋に女中さんが入ってくる。
……無視女さん!一人分の食事を置いてさっさと出ていってしまった。
「父上ここでご飯食べてるの?」
「そうですよ」
「朝ご飯一緒に食べないの〜?」
「風呂が壊されていなければ、食べれていたかもしれませんね」
「……」
俺は聞かなかったことにした。
「イズナ。早く食事を摂りに行きなさい。その後はモミジのところですよ。分かっていますね」
「勿論です〜」
あんまりお腹空いてないんだけどな。
糸を消した。はやぶさはいずれできるようになってみせる。
タジマの布団を剥がした。
マダラは寝ていた。
「今度こそおはよう兄さん」
「……」
「ご飯だよ!行こう!!」
「……」
完全に寝ていた。
……。
一人で食事部屋に行く。
元気が有り余っている。
縄跳びを出す。駆け足。
それに合わせて縄跳びをする。
ゴーゴー!
さぁ朝ごはんだ。ワクワクするね。嘘。全くしない。
お腹空いてないだけでここまでご飯に魅力感じないのもすごい。
これなら粥にして飲み込んだ方がマシだった。
粥に屈しそう。
いやいや。やっぱ食感は大事だから。
中々喉を通っていかない。米を無限に噛む。
……もう実質粥では?
そんなバカな。認めるわけにはいかない……。
僅かばかりの甘みを噛み締める。
粥をお茶で流し込んだ。
こんな食べ方してたらお茶が足りなくなるな。
水遁・お茶の術とかない?ないかぁ。
口からお茶吐き出してそれ飲むわけ?やだなぁ。そもそも出した分脱水してない?
くだらねぇ……。
気を紛らわせた。
「ごちそうさまでした」
全くご馳走感はなかったが。
頑張って完食した。本当に俺って偉いと思う。
残したらバチが当たるからね。
お米一粒に神様が宿っている。
……神様ね。
馬鹿馬鹿しい。
俺は笑った。
歯を磨きに行かないとね。
「母上〜お邪魔しま〜す」
「お待ちしていましたよ。イズナ」
母に駆け寄ろうとした。急に力が抜けた。へたり込む。
足が痺れて立てない。ずくずくと脈打っていた。
畳に水が落ちた。雨?な訳ない。汗だ。こんなに汗をかいていただろうか。冷たい。
気付かなかった。
なんで?
「イズナ?」
母が来てくれた。抱っこしてくれる。
足が揺れる。ちらりと見えた。
薄暗くても分かった。肌色じゃない。
縄跳びで引っかかったところ。何度も。何度も引っかかった。
なんで気付かなかったんだろう。普通痛くなるのに。
眠い。
目を閉じた。