一般日本人が転生する話。   作:あうん

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生き物へのリスペクトの気持ちはあります。許してください。


家庭科の授業。

「う〜ん」

 

よく寝た。寝返りをうつ。

いつもの部屋。変わらない蝋燭。幻術だったらしい。

なんでそんなことしてんの。

 

「イズナ。おはようございます」

「おはようございます母上」

 

母が頭を撫でてくれる。

 

「起きれますか?」

「ん〜……」

 

起きたくない。

 

「お昼にしましょうか」

「ご飯!!」

 

起きた。

お腹が空いてきた。

ヒョウロウガンの効果が切れたらしい。

戻ってきた感覚に何だか感動。

おかえり……食欲。

 

微笑む母は俺に粥を差し出してきた。

またかよ!

渋々食べる。

 

「……」

 

知っている味。

鳥肉味。

カエル粥だった。

美味しいのが心底悔しかった。

気にしないようにしていたが隣の部屋からカエルの声が聞こえる。

 

「ごちそうさまでした……」

 

母に椀を返した。

懐にしまう母。どこにしまってんだよ。

母は微笑んでいる。

 

「イズナ。今日から新しいことを覚えましょう」

「はい?」

「今日は布の裁断を覚えてもらいます」

 

母は布を差し出してきた。

受け取る。

母の手にはハサミ。

俺の持っている布をジョキリと半分にした。

 

「これをチャクラでできるようになってもらいます」

「ほう」

「優秀なイズナのことです。すぐにできるようになりますよ」

 

針の糸通しの次はハサミか。

 

「なんでそんなことを?」

「いつ何時布を裁ちたい時が来るか分からないでしょう?」

 

来ないと思う。

 

「ハサミでいいじゃないですか」

「イズナ……」

 

母は頭を振った。

 

「常に鋏を持ち合わせていると限りませんよ。破損していることもままあります。

目の前に欲しい布がある。その瞬間に鋏がないからと諦めるのですか?」

 

諦めていいと思う。窃盗は良くない。器物損壊でもある。

 

「イズナにはそんな後悔はしてほしくないのです」

 

そんな後悔はしないと思う。

うんうんと母の話を聞いていると。

母の手の延長。チャクラが光っている。鋭い。

 

「このようにしてチャクラを刃とするのです」

「おお!」

 

半分こにした布にチャクラが通る。

更に半分になった。スッパリ。

 

「すごいです母上!!」

「さぁイズナ。やってみましょう」

「はい!」

 

チャクラを練る。手に集める。

鋭く。先端を鋭利にして。

うーん。

 

「どうですか?」

「これで試してみましょう」

 

懐から母がカエルを取り出した。

ゲコっと鳴いた。

 

「……布じゃないんですか」

「折角なので蛙の捌き方も教えようかと思いまして」

「えぇ……」

 

や、やだぁ……。

目の前にカエル。近い。鳴き声が不快。

受け取らないわけにもいかない。

触りたくないのでカエルをチャクラで覆った。

バタバタ暴れてる。む、無理……。

 

「まずはここに刺してみてください」

 

母はカエルの背中をトントンと指で叩いた。

 

「これ、どうしてもやらないといけないですか……?」

「美味しいご飯のためですよ」

 

それを言われると弱い。

いやいや。カエル以外の美味しいご飯はいくらでもあるんですけど。

 

「カエルじゃなくてもよくないですか」

「わたくしの作る料理で一番美味しかったとのことでしたから」

「……」

 

確かに言ったけど……!!

 

カエル捌くって。親子の初めての調理実習がカエル?化学の実験の間違いかな?

やりたくないよ〜。

 

「イズナ」

「……」

「お前ならきっとできますよ」

 

できるできないの話じゃなくて、やりたくないんだっての。

 

「わたくしとタジマ様の子ですもの」

 

それ言って俺がやる気になると思ってるわけ?

タジマへの一方的な愛。母が不憫に思えてきた。

カエル捌ける嫁とかタジマ的に無理だったのかもしれない。俺も無理。

やっぱ不憫じゃないわ。

渋る俺に微笑む母が言葉を重ねた。

 

「例えば……。この世にカエルしか食べるものがなかった時、イズナはそれでもやりたくないと言いますか?」

「極論すぎる!?」

「飢えて死ぬのか、カエルを捌いて食べて生き延びるのか、どちらが良いですか」

「えぇ……」

 

どっちも嫌です……。

でも、でも。どちらかといえば。

 

「飢え死には嫌です……」

 

死ぬならもっと別の方法で。

 

「そうですか。では、頑張りましょうね」

「はい……」

 

がっくり。

俺は諦めた。母はこうと言ったら曲げてくれない。母がやれと言うなら俺はやるしかないのだった。

繭に覆われているカエル。ジタバタ暴れている。

恨むなら母を恨んでくれ。

南無三!

母の指し示す場所にチャクラ包丁をサクリ。簡単に刺さった。

動かなくなった。

 

「綺麗に脊髄を絶てましたね」

「……」

 

頭を撫でられる。

 

「血抜きをするともっと美味しくなるのですが、時間がかかります。今日は戦場を想定しておきましょう」

「どういう想定ですか!?」

「そうですね……。戦に巻き込まれずに布を回収するために一週間ほど潜伏し続けるとします」

 

そんなことをするのは母だけだろ。仮定するな。

 

「一歩でも動けば気付かれてしまいます。ですので身を潜めて。目の前を横切った蛙をこっそりといただくのです」

 

いただくのですじゃないんだわ。

 

「いつかこの経験がイズナの役に立つことがあるかもしれません」

 

一生役に立たないでくれ……。

 

 

母は繭をひっくり返した。

カエルの腹に指を滑らせた。

 

「ここを切って、皮を剥ぎましょう」

「えぇ……」

「頑張りましょうね」

「あい……」

 

はいはい。

言われた通りに刃を入れた。

 

「あら」

 

切れ味が良すぎる。刃が奥まで入ってしまった。

刃を抜く。一緒に中身が零れた。

嫌なにおいがした。

 

「表面の皮だけを切るのですよ。これは、もう駄目ですね」

「……」

 

母はカエルを懐にしまいこんだ。

また新しいカエルを取り出す。

ゲコ。

 

「失敗は誰にでもあることです。落ち込む必要はありませんよ。次はきっと良くなります」

「……」

 

つらい。

 

今度は上手くいった。薄く切って。暗がりにピンク色が見えた。

お肉の色。

 

「では剥いでみましょう。見せた方が早いですね。このようにするのですよ」

 

母は懐からまたゲコゲコを取り出して。パッと蛙を刺し殺したと思えば皮を剥いでいた。鮮やかなお手並み。カエル解体業者さんか?

剥ぐって触んなきゃだよね。やだ〜ネチョッとしてるもん……。

母を見る。微笑んでいる。

 

……。

 

ええい。ままよ!

見様見真似でやった。というか写輪眼で見るとやり方を勝手に覚える。やば。

皮を剥いで。緑がピンクになった。

もう実質鳥肉だった。足だけ見れば手羽先と言っても過言じゃなかった。

 

「上手ですねイズナ」

「まぁ、写輪眼あるんで……」

 

母は微笑んでいる。

 

「では次はワタを取り出してみましょう」

「ワタ?」

(はらわた)のことですよ」

 

内臓ね。

母カエルの真似をして。お腹を裂いて。ご開帳である。グロい。

 

母が中身を取り出しながら名前を一つずつ教えてくれた。知ってる知ってる。

心臓。肺。胃腸。肝臓。肝臓って二つあるの!?し、知らなかった……。

 

「多少の差はありますが生き物の腹には大抵これらが詰まっています」

「ふ〜ん」

「さぁイズナもやってみましょう」

「はーい……」

 

これも素手でやんなきゃだめ……?

蝋燭の火を反射してテラテラとしている中身。母は平然と触っていたけど。気持ち悪い〜。

母はやっぱり微笑んでいるので俺は屈した。

早く終わらせて手を洗おうそうしよう。

 

ぺっぺっと中身を取り出した。拭くものはないですか。布を触ろうとしたらさりげなく遠ざけられた。おい!

 

解体された故カエル。

母は懐からまたゲコと鳴る生き物を取り出した。

 

「ではもう一度やってみましょう」

「え!?」

「チャクラの精度を上げていきましょうね」

 

母は裂いた腹の断面を指さした。

 

「でもけっこういい感じに切れてますよ!」

「布を裁つにはまだまだです」

「……」

 

まじかよ……。

ひたすらカエルを捌く。雑にやるとすぐバレた。

確かに俺よりも母の捌いたカエルの方が綺麗に腹が切られてる。いやでもわざわざカエルでやらせるかな?

 

もう手がヌルヌルだった。汚れちまった……。悲しみ……。

 

作業感。キモイという思いも続けていれば薄れていく。

 

母が懐に手を入れた。

 

「あら、もうなくなってしまいました」

「お疲れ様でした!」

「頑張りましたね」

 

やっと終わった。手が疲れた。はーやれはれ。

俺もカエル解体業者の端くれになってしまった。十秒もあればカエルを剥げる。

母は微笑みながら頷いた。

 

「ではこれらを調理しましょうか」

「へ」

 

まだあんの……。

 

母は懐から椀を取り出した。

解体したカエルをその中に入れる。

握り潰した。

 

「え、えぇ〜!?」

「どうしましたか?」

「なんで!?」

「何がでしょうか」

 

手の隙間から肉片が椀に落ちていく。何度も握って細切れになる。

母は微笑んでいる。首を傾げていた。

 

「にぎ、なんで??何で手で潰したんですか?」

「何で……ですか?食べやすくするためですが」

「うーん……?」

 

母が平然と言うものだからそういうものかと納得しそうになる。

いやいや。もっと方法があると思う……。

 

「さぁやってみましょう」

「できるかぁ!」

「そうですか?」

 

俺にそんな荒技できるはずないだろ。俺は三歳児だぞ!!

手の大きさがまずカエルより小さいし。そんな握力は俺にはない。

 

「イズナ。写輪眼で良くみていてくださいね」

「……はあ」

 

写輪眼で見た。手にチャクラが集中している。

母はまたカエルを握り潰した。ひどい……。

でも、何を言いたいかは分かった。

チャクラでなんかしているから。母の細腕でカエルをミンチにできているらしい。

 

「イズナも物を壊す時は良くやっていたでしょう」

「……」

 

知らない……。

別の人と勘違いしてるんじゃないですかね……。

 

「きっとできるはずです。頑張りましょう」

「……へーい」

 

椀をもらう。ミンチカエルがてらっている。

チャクラを練る。手に集めた。

両手でカエルを持つ。グッと力を入れた。

つるんと手から滑り落ちた。

 

「あら」

 

普通生肉を握ったらそうなる。当然だった。

 

「イズナ。手のひらにこうしてチャクラを纏わせてみなさい」

「今度はなんですか?」

 

母の手を見る。カエルが乗っている。手のひらを下にした。

カエルが落っこちない。

手にくっついたままだ。

 

「えぇ〜!?どうなってるんですか!?」

「チャクラで吸いつけているんですよ」

「何それ!?すごい!!」

「ふふ。やってごらんなさい」

「はい!!」

 

やった。手にピッタリ。カエルがくっついている。逆さにしてもそのまま。お、面白すぎる……。

 

「これ、何でもできるんですか!」

「えぇ。勿論です」

 

チャクラすごい!

逆さになったカエルの足がぶらりと揺れた。

……。

 

食べ物で遊ぶのは良くないよな。反省。

 

全部ミンチにしてハンバーグでも作ってもらおう。

カエルを両手で掴んで。

潰した。

簡単だった。

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