一般日本人が転生する話。   作:あうん

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我を忘れる。

ミンチ化完了。

 

「頑張りましたね」

「このぐらい当然です……」

「ふふふ」

 

母が頭を撫でてくる。カエルを触った手で俺に触れるな。

疲れたなぁ。

 

 

「母上!イズナ!」

「お」

 

マダラの到来。

襖を開けてこっちを見ている。

 

「マダラ」

 

母がマダラを手招きした。

部屋に入ってくるマダラ。カエルの皮と臓物溢れる部屋にようこそ。

マダラはつっこまなかった。スルースキルが高い。

寄ってきたマダラに母は耳打ちした。

何〜?内緒話?そう言うのよくないと思うな〜!

 

 

「できますか?」

「はい!」

「頑張るのですよ」

「はい!!」

 

何を言ったのか分からないがマダラは頑張るらしい。頑張れ。応援してるぜ。

 

「では、イズナ。今日はここまでにしておきましょう」

「はーい」

「明日のお昼を楽しみにしていてくださいね」

「……はーい」

 

どうせまたカエルだろ。

鳥肉と思えば、ま、まぁね。……楽しみかも!!

母にバイバイする。手を振り返してくれる母。

カエルの死体蔓延る部屋を出た。

 

「兄さん〜母上と何話してたの?」

「ん?……秘密だ」

 

マダラはニヤリと笑った。

 

「えぇ〜!!」

 

またカエル捕まえてこいとかだろどうせ。俺は風呂敷を手渡されているところをバッチリ目撃している。

 

「ちょっとだけでも教えてよ」

「ダメだ!」

「そんな〜どうしても?」

「どうしても!」

 

母に口止めでもされたのだろうか。

名探偵イズナは名推理をした。

神妙な表情を意識する。

 

「風呂敷が何か関係が?」

「な……!」

 

動揺するマダラ。

面白い。

 

「何か、捕まえてくる……とか」

「っ!!」

 

たじろいだ。カエルそんな捕まえてこなくていいからね。疲れるから。

命が勿体無いってやつだから。

俺はマダラにトドメを刺した。

 

「カエル……でしょ!」

「ちげぇ」

「あれぇ!?」

 

あからさまにほっとした表情。嘘を言って、ないだと!?じゃあ何を捕まえてくるんだ!?

 

「じゃあ答えは!?」

「秘密だ!」

「えぇ〜!!」

 

めちゃくちゃ気になる!!

 

マダラに何度も聞いたが教えてくれなかった。ケチ!

明日の楽しみ。かぁ。美味しい物だといいな。ジンギスカンが食べたい。野生の羊がいるのかしらないけど。マジの手羽先も食べたい。

 

いつもの道を横切る。

 

「どこ行くんだ?」

「ん?先行ってていいよ」

 

俺の手はありえないほどにギトギトである。これでは何も触れない。触れるもの皆ベタベタにしてしまう……。悲しき怪物になってしまった。

 

「手を洗いたくて」

「あぁ」

 

マダラは頷いて付いてきてくれた。

 

風呂場に行った。

水が張ってないどころか風呂自体がない。木片も全て片付けられている。桶が残っているのが哀愁を誘う。

そういえば壊してしまったのだった。マダラの火遁で。

やべー。今日のお風呂はどうなってしまうんだ。まさか無し?ありえない……。

 

そして。より急務の問題。手を洗えない?それこそありえないんだけど。

 

「……どこなら水いっぱい使えるところあるかな」

「うーん」

 

ないのである。この世界には蛇口も水道もないのである。自由に使える水は風呂ぐらいなのである。それすら封印された。マダラの火遁で!!

あーあ!

 

「川、行ってみるか?」

「皮?」

「おう」

 

カエルの皮で拭いてもぬるぬるにぬるぬるが付くだけだぞ。

マダラは俺を抱き上げた。

ピュンと外に出る。

 

「うわ!?」

 

久々に外だった。いろんな人達がいる。やっぱり皆黒い服を着ていた。それぐらいしか見えなかった。

前よりもマダラの足が早い。あっという間に景色が流れていく。

森の中を突っ切って。

 

かわ。

 

あぁ川ね。川。知ってた知ってた。

 

「兄さんありがとう〜」

「あぁ」

 

川のそばに下ろされる。俺裸足なんだけど。足裏に土ついたんだけど。ひんやり。

マダラはいつの間にか草履を履いていた。俺の分は?俺靴履いたことないな……。

久々に自然の中にいる。風が吹いて木が揺れる。葉の擦れる音。虫の声。カエル。またか。一生耳にこびりついている気がする。

岩に乗った。苔が生えている。しゃがみこんだ。

川の中を覗き込む。魚が透けて見えた。

癒される〜。

 

癒されるのもそこそこに。

 

浅いところに手をつける。つめてぇ。

手を洗う。ぬるぬる。全然取れない。石鹸持ってくれば良かった……。づめだい。

 

「うぬぬ……」

「どうだ?」

「まだかかりそう……」

 

マダラが岩に腰掛けて見ている。

冷たすぎる。気を紛らわしたい。

 

「兄さん今日は修行したの?」

 

マダラはニコリと笑った。待ってましたとばかりだった。

 

「父上と修行した!」

 

徹夜してから修行やったのあいつ?すげぇな。

 

「……よかったね〜何したの」

「手裏剣の修行だ」

「ほう」

 

マダラは懐から手裏剣を何枚か取り出した。

俺の知ってる忍者みたいなことやってるじゃん〜。今まで火遁とか水面歩行とか意味分かんないことやってたもんね。

 

「投げるの?」

「あぁ」

「見てみた〜い!」

 

マダラを唆した。

二つ返事でやってくれるマダラ。

マダラが手裏剣を投げる。川の向こうの木に刺さった。ど真ん中。

 

「すご!!」

「へへ」

「もっかい見せて!」

「いいぜ」

 

再び投げられた手裏剣。刺さっていた手裏剣にガツンと当たった音がした。まじで!?

 

「す、すごすぎる……」

「父上はもっとすごいぞ」

 

タジマのことはどうでもいい。

 

「イズナもやってみるか?」

「洗い終わったらやってみてもいい?」

「あぁ」

 

ちょっとワクワクした。俺も投げてみたい。

それからマダラは色々と手裏剣芸を披露してくれた。二つ投げて空中でぶつけたり、ぶつけた手裏剣が跳ね返って木に刺さったり。器用すぎる。

 

マダラが懐に手を突っ込んだ。何も出さない。

手裏剣切れらしい。

 

「拾ってくる」

「いてら」

 

水面歩行で川を素通りするマダラ。めちゃくちゃ便利だなそれ。

頑張ってバシャバシャやる。手がかじかんでいた。も〜カエル最悪。次から手を汚さない捌き方を編み出さなければ……。

チャクラで手袋とか作れないかなぁ……。

カエルのことを考えていたからだろうか。目の前をカエルが横切った。

 

「うわっ」

 

思わず仰け反る。

足を掴まれた。そんな感覚がした。

引き摺りこまれる。ひっくり返って。浅瀬の岩に背中を打った。

 

「いっ」

 

痛みに瞬間的に目を閉じた。

冷たい。

全身が濡れた。

肺まで。

 

「ガボッ」

 

思いっきり吸い込んでしまった。鼻と喉が痛くなる。

一体何が起こった!?カエルの復讐!?

川の端にいたはずだ。遠い。

息ができない。当然。肺にあった空気が吐き出された。

 

やばい。とにかく水から出ないと。足がつかない。もがいた。何かが足に絡みついている。目が滲む。ぼやけた視界に見えた。黒い。なにか。

本当に何!?ワカメ!?こんなに黒かったかな!?ここ川だし!!

 

ふざけている場合じゃなかった。

流れが急だった。手が水面を叩いた。足が引かれる。水底に体が引っ張られた。空が遠い。

冷たい。

目に水が滲みる。開け続けられない。

 

苦しい。

息を吸った。水だけが入ってきた。余計苦しくなった。なんで息ができない?おかしい。

足を動かした。絡んだワカメはまるで引き剥がせそうになかった。

どうしたらいい。

頭が回らない。どうしたらいいのか分からなくない。

怖い。苦しくてたまらない。

 

このままだと死んでしまう。

 

死ぬ?

また?

 

 

嫌だ。

 

 

嫌だ!!

もう死にたくない!

誰か、誰か助けて!!

 

手を掴まれた。

 

目を開ける。

マダラ。

 

口から小さな気泡が零れた。

 

マダラが。俺の手を掴んでいる。

足に掴んでいた何かが解けた。

引き上げられる。

 

「イズナ!!」

「っぅ」

 

息を吸い込もうとして。肺の中いっぱいに入った水が。

 

吐き出した。息を吸いたいのに。すごい苦しい。

息を。

肺が空っぽになってやっと吸い込めた。むせる。それでも苦しいのが少しだけ和らいだ。

寒い。かき氷を食べたみたいだ。頭が痛い。

飲み込んだ水が。お腹が苦しい。口に指を入れた。

胃にある水を吐き出した。

もっと楽になった。

 

吐き出した中に粥の残骸が見えた。

 

あぁ。よかった。

生きてる。

 

マダラが俺を抱き上げた。

目を開けていられなかった。

俺は寝た。

 

 

「う〜ん」

 

朝。いい天気。俺も晴れやかな気分だった。鳥の鳴き声。ピーチクパーチク。

何だかいつもよりぐっすりだった気がする。

睡眠不足は良くない。一日二十四時間睡眠が理想。

寝返り。打てない。マダラが抱きついていた。

あーはいはい。

母直伝の優しい揺さぶりをかける。

 

「マダラ朝ですよ〜」

「……」

「起きて〜」

「……」

「起きろや!!」

 

俺はマダラの足を蹴飛ばした。

 

「ん……」

 

起きた。マダラには母の起こし方ではダメなのだろうか。

 

「イズナっ!」

 

ガバッと身を起こしたマダラ。

 

「グッモーニン兄さん」

「ぐっ……?いや、イズナ。大丈夫か……?」

「何が?」

 

もしや頭の心配された?心外すぎる。

英語とかご存知ない?ないかぁ。言語の壁を感じた。

マダラが心配そうに俺を見ている。

 

「昨日のこと……」

「昨日?」

 

何かあったっけ?

カエルを食べて、母と修行して、お風呂に行って……。

それから。

 

「あ!!」

「!」

 

思い出した!

心配してくれるマダラは優しい。俺は感動した。

 

「昨日さぁほんとひどかったよね!」

「あ、あぁ」

「もう二度とあんなの食べたくないんだけど!!」

「は……?」

 

今も口の中に残っている気がする。あの味を忘れることは生涯ないだろう。

タジマ許せん。あんなクソみたいなもん食わせやがって。

 

「めっちゃお腹空いた!口直しだよ!朝ごはん食べに行こ!」

 

きっと今日のご飯は格別に美味しい。妙にお腹が空いていた。夕飯を抜いたぐらいの空き心地。

あの満腹感は錯覚だったらしい。そりゃあの量を食ったぐらいでお腹いっぱいになるとかおかしいに決まっていた。

やばい薬絶対入ってる。そんなの食わせるとか頭いかれてるよあいつ。

 

ご飯を食べなくては。空腹で死んでしまう。タジマのせいで。

布団から出る。

部屋を出た。振り返る。

マダラが付いて来てくれない。

 

「どうしたの?」

「イズナ……」

 

さっきからマダラの様子がおかしい。どうした。そんなに俺が苦しんでいた姿が堪えたか。

着実にタジマからの洗脳が解けている……?悪くない。

 

「何の話をしているんだ?」

「?ヒョウロウガンの話だけど」

 

昨日、俺がタジマに食わされたゴミの話。

 

「……」

「……」

「あー兄さん?」

 

マダラの表情は、何というか。よく分からなかった。愕然?って感じだった。

 

「どうしたの。俺、またなんかやっちゃいました?」

 

なんつって。

 

「覚えてないのか?」

「んん?」

 

何を?

 

「いや……なんでもない」

「そう?」

 

マダラは頭を振った。

変なマダラ。

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