一般日本人が転生する話。 作:あうん
夕飯を平らげる。ごちそうさまでした!!!!
は〜美味かった!空腹に勝るスパイスはないってほんとだよな〜。余は満足じゃ〜。
女中が皿を下げていくのを尻目に茶を啜る。マダラはソワソワしている。
女中が去った。
「イズナ!」
ほらきた。
マダラの話に相槌を打ちながら羊羹を齧る。甘くて美味しい。ツルッとした舌触りがたまらん。食後のデザートっていいよね。
ゆっくり味わっていたものの、終わりは訪れる。羊羹なくなっちゃった。いやマダラの話が長いだけか?
タジマの方を見ると、奴は羊羹を食べ切っていた。それどころかいつの間にか部屋からいなくなっている。くそ、意地汚い奴め。そもタジマはご飯を食べるのが早過ぎである。いただきますした後、タジマの方を見ると既に食べ終わっているもんだから思わず二度見したわ。もっと味わえ!
口の中を舌で舐める。食べるもんも食べたし、歯磨きしたい……。この世界現代日本よりも劣化しているので、歯ブラシも木とかである。うーん不快。
この時代、虫歯になったら抜くぐらいしかできないだろうから、なるべく歯を大事にしていきたい。フッ素ってあるのかな?塩って効き目あんの?
「イズナ、俺のも食べるか?」
喋るのに夢中で碌に羊羹に手をつけていなかったマダラ。俺が羊羹を食べ終わったのに気付いて、自分のを差し出してきた。何っ!?お前、聖人か!?
思わず手を伸ばしそうになったが、踏みとどまる。
いやいや。いやいやいや。俺は子供からおやつを取り上げるほど卑しい奴じゃないよ。
「兄さん。気持ちは嬉しいけど、これは兄さんの分だから」
「でも、イズナ食べたいだろ?」
「それは……!そうだけど」
「じゃあいいじゃねえか」
くっ……!論破される!こんな子供に!
ええい!子供の優しさにつけ込む俺ではないわ!!
「に、兄さん。あのね……」
「遠慮すんなって」
それは俺のセリフだ!
「兄さんと羊羹の美味しさを、共有できたらな、って!」
「共有……?」
「ね!だから食べて!」
マダラは渋々皿を戻して羊羹を一切れ食べた。そうだ。それでいい。
そして破顔。
「うまいな!」
「だよね!!」
俺もにっこり笑顔で同意する。
この勝負、俺の勝ちだ。
マダラと一緒にお風呂である。熱め。俺はぬるま湯で長時間入り浸っていたい派だからちょいきつい。
「聞いてなかったな。今日は何したんだ?」
「ん〜」
何したっけ?夫婦喧嘩を見る前、昼寝前って……。
「あ!父上に火遁、見せてもらったかな」
「そ、うか。平気だったか?」
マダラが怯んだ。そういえばマダラのせいで気絶したもんな。トラウマになってる?気にしなくていいのに。
「うん。父上の火遁すごかったよ。こう、どかーんって」
手を大きく広げて大きさを表現する。俺の短い手では全くサイズが足りない。俺十人横に並んでも全員丸焼きにできるサイズだったもんな。過剰火力すぎるだろ。
マダラも俺の様子を見て肩の力を抜いたようだった。
「そうか」
「そんで、父上から火遁の印教えてもらったんだよ」
「へぇ。印は覚えてるか?テストしてやる」
兄貴風を急に吹かせたマダラ。しょうがないな……。えーと。
教わった印を一個ずつやってみる。もた……もた……。
「で、とら〜」
口から火を吹いた。
「「!?」」
ジュッ。と音を立てて湯船に沈む火球。ブワリと湯気が視界を塞いだ。
風呂の温度が急激に上がった。
「あっつ!?」
「うおお!?」
マダラは俊敏に俺を掴んで浴槽から飛び出た。
「イズナ大丈夫か!?」
「うーん」
そうだ。タジマの時、火遁が飛び出て、ビビって気を失ったんだった。俺だせー。思い出しても時すでに遅しすぎる。
熱い風呂に入っていたはずなのに、何故か急速に手足が冷たくなる感覚がある。高速湯冷めか?冗談はさておき。これは、そうだね。
俺は気絶した。
おはよう!今日は曇り!だけど俺の心は晴れ晴れです。
いや〜昨日は何だか色々と、散々だったな!日に二回も気絶するって。母曰くの病弱ってのも案外嘘じゃなかったかもね!
三寒四温。今日は肌寒い。
布団は暖か、外ひんやりのこの空気感かなり好き。布団から出たくないな〜。寝返りを一つ。
「ん〜、ん?……ひっ!?」
タジマが枕元に座っていた。うわびっくりした。お化けかと思ったじゃん。
慌てて布団から飛び出て姿勢を正す。
「おはようございます。イズナ」
「お、おおはようございます父上」
「体調はどうですか。空腹かどうかではないですよ」
「超元気です!」
タジマはじっと俺を見つめている。
「マダラから聞きましたよ、教えた術を風呂場で使ったそうですね」
「……はい」
「お前が気絶した原因は、恐らくチャクラ切れによるものでしょう」
「ほ、ほう……」
チャクラって何です?
「普通、印を結ぶだけでは術は発動しないはずなのですが」
……やだ、俺って‘’異端‘’って、コト!?
「チャクラを無意識に練ることができるのは才能があると誉めてやりたいところですが……お前はまだチャクラが少ない。しばらく術を使うのは禁止とします」
あ、はい。
「……」
「……」
それだけ……?
「……イズナ。母の元で暮らしたいですか」
「へ」
タジマは苦々しい表情で言葉を続けた。
「母親の手前、ああは言いましたが、日も跨がずまた気絶するようでは……」
タジマは頭を抱えてため息をついた。
なんかすいません……。
「せ、成長と共に丈夫になると思います……!」
日の光を浴びて生きていきたい。
「そうだといいのですが」
またため息。それからタジマは懐をゴソゴソし出した。
そして巻物と書物を取り出した。なんでそこにしまってるの……?
「今日はひとまず、部屋で休んでいなさい。読み物も置いておきますので暇にはならないでしょう。」
わーい。合法的に二度寝ができる!
「食事はここに運ばせるように伝えてあります」
センキュー!
タジマは去った。
「……さて」
布団を被る。うーん若干冷たい。お布団冷えちゃった。この残念感。布団に戻らない方が良かったまである。おのれタジマ……。
ということで布団から這い出る。だが、別に起きるわけじゃない。二度寝する気しかない。暖かな布団で寝たいというワガママな俺の欲求を満たすため、策を巡らせる。
俺は賢いので暖かい布団の算段はすぐについた。
「にいさ〜ん」
布団貸して〜。
「……」
あれ、返事がない。まだ寝てるのかな。時計があれば何時かわかるんだけどねぇ。ないからさあ。
勝手にマダラの布団に潜る。あったけえ……。これは二度寝不可避。
すやぁ。
タジマはマダラから報告を受けてからずっとイズナの枕元で待機してました。