一般事務員オペレーター   作:オニギリムシ

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第11話

「……」

 

進まない。

仕事が、全く進まない。

その理由はただ一つ、彼女がいないから。

書類の整理、食事の持ち運び、話し相手、何でもござれ。

この言い方をしてしまえば私が部下をこき使う最低な奴に聞こえるが、実際助かっていた。

特に話し相手。

安らいで会話出来るのが彼女だけのため、仕事も捗る。

……何故か最近は話してくれなかったが。

それでも居てくれるだけでとても捗ってたのだが、今日は彼女はいない。

 

「つらい」

 

理性が働かず、口からそんな言葉が零れる。

……そういえばあれがあったな。

やる気の出ない腕で引き出しから薬を取り出す。

禁断の力(理性回復剤)を使おうか、悩む。

よし使おう、そう決めて薬のパッケージを――

 

「すいません、失礼しまーす……」

 

――開けようとした時に、ノック音と声が聞こえたのですぐに仕舞って入るように言う。

入ってきたのは、話したことのない女性。多分、彼女の同僚だろう。

 

「どうした、何か書類が必要になったか?」

「ああ、えっとですね、あいつ、居ますか?」

 

あいつ、というのは彼女の事だろう。

私は首を横に振って伝える。

すると目の前の女性は困ったように首をひねる。

 

「おっかしいな、どこだ……?」

「どうしたんだ?彼女を探してるのか?」

 

今日は休日だから、都市に行ってるんじゃないか?と聞いてみると

 

「いや、もう戻るってあいつから連絡来たんですけど、言われた時間もうとっくに過ぎたんですよ。それで、あいつフランクフルトとかいろいろ買ったしドクターと仲直り出来るって言ってたんで、ドクターのとこに居るのかなって……あっ、これ言っちゃダメな奴か」

 

返ってきた。

私はそれを聞いて、考える。

彼女は決められた時間には必ず為す女性だ。

そんな彼女が時間を守らなかった……?

 

「じゃあ、すいません、失礼しました」

「ああ……」

 

彼女の同僚が執務室を出て行っても、まだ私は考え込んでいた。

そういえば、前も同じようなことがあった。

彼女は怪我をして帰ってきた。

もしかしたら今日も、何か面倒ごとに巻き込まれているんじゃないか。

私は彼女に何かしてしまったかもしれないし、本当は何もないかもしれない。

 

それでも。

 

私は急いで外に出る準備をする。

そうしていると、突然扉が開く。

それに目を向けずに声だけで対応する。

 

「すまない、急用が出来た。話は後にしてくれないか?」

「そう?じゃあ手伝わなくてもいいのね?」

「……W?」

 

入ってきたのはWだった。腕を組んで私を見ている。

驚いて動きが一瞬止まるが、すぐに準備の手を再開する。

 

「手伝いとは何だ」

「あいつを探すの」

「……盗み聞きとは、感心しないな」

「アンタの声が軽すぎて簡単に飛んできたのよ……そんなことはいいの。探しに行くのは自由だけど、もし本当に襲われてたならどうするのよ。戦えないアンタがいても結末は子どもでも分かる」

「……それは」

「アンタが私達で安心できないのは分かってる。でも殺す力は私達にしか無い。なら、どうするかは分かるでしょ」

 

何を言って……その言葉は出てきてくれなかった。

代わりに、頼む、という言葉が風のように、しかし力強く出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

Wはとても優秀な前線オペレーターだ。

一人しかいないとしても、真っ向から戦わなければそこら辺の敵なら完封出来るだろう。

だから、一人で十分だ。

 

「と思っていたんだが……」

「なに?」

「何でもない……」

 

何故かもう二人、増えてしまった。

一人は、プラチナ。

都市に向かうために廊下を歩いていると、たまたま会ってしまい、都市にWに出ると説明すると、何故か無理矢理にでもついてくると言って本当に来てしまった。

そして、もう一人はスズラン。

スズランも廊下で会ってしまい、何処へ行くか聞かれ、仕方なく都市に出ると説明すると、

 

『秘書のお姉さんですか?』

 

と、何故か当てられてしまい、もしお姉さんが困ってるならお手伝いさせてくださいと言われてしまって、またもついてきてしまった。

プラチナは何のこと?という顔をしていた。

 

 

さて、探すにしてもどうするか。

しらみつぶしをやるには広すぎるこの都市で、それをすることは出来ない。

人も多くないため、人海戦術も出来ない。

地道に歩いて探すしかないか、と思い歩く。

外から店の中を見れるところなら、中を覗いて確認する。

しかしそれらしい人影すら見つけられず、ため息を吐くばかり。

 

「はぁ……」

「……そこそこ大きいのに、四人集まったところで見つかるわけないじゃん。諦めて遊ばない?」

 

プラチナは暇そうにそう言うが、私は首を振って続けると宣言する。

 

「はあ?別に私は人探しに付き合うつもりなんて……」

「あらぁ?勝手についてきたのは誰かしらねぇ?」

「け、喧嘩は良くないです……あれ?」

 

喧嘩を止めようとしたスズランが何かを見つけたように立ち止まる。

 

「どうした?」

「いえ、あそこに何か落ちて……」

 

そう言いながら指した場所は路地裏だった。

私は気になって、近付こうとすると、Wに止められ、「私が行くわ」と行ってしまった。

大丈夫だろうかと心配するが、すぐに戻ってきた。

何かを持って。

 

「……これ」

「それって……食べ物?フランクフルトに、色々あるね。踏まれたのかぐちゃぐちゃだけど」

「何だか、勿体ないですね……ドクターさん?」

 

私はそれを見て、思い出す。

 

『――それで、あいつフランクフルトとかいろいろ買ったし――』

 

「……W」

「ええ」

 

嫌な予感が強まる。

 

「行こう」

「路地裏を?なんで?」

「帰ってもいいわよ」

「……はぁ、分かったよ」

「スズランも行けるか?」

「はい、大丈夫です」

 

私達は、路地裏に入っていった。

歩きながらも、私は考える。

この先に仮に連れていかれたとして、連れて行くならどこだ?家や施設があったら見つけるすべは無いが、それでは話が進まないため、一度退ける。となると、暗記した地図で考えれば、人が少なくなるのは……あそこか。

 

「こっちだ」

 

三人を連れて思いついた場所へ向かう。

多分、可能性があるのは――

 

「……廃墟?」

 

――ここだ。

廃墟に加え、入り組んでいて店も無い、人通りはゼロと言ってもいい。

可能性が一番高いのは、ここだ。

100%ではないし、そもそも拐われているとも限らない。

しかし。

 

「誰かいるね」

「隠すなら見張りは逆効果だ。完璧に隠れているならまだしも、な」

 

廃墟の入り口に二人、男が立っていた。

片方はナイフ、もう片方はマチェーテを持っている。

ただの廃墟探索にしては、物騒な見た目だ。

私達は、見えないように遠くの方で身を潜める。

 

「ということは……?」

「彼女とは限らないが、犯罪関係なら見逃せない」

「お人好しね……しっ、何か喋ってるわ」

 

私達は黙って、耳を澄ませて聞く。

 

「はぁ~~~、入り口じゃなくて女の方を見張りたかったぜ……」

「おい、無駄口を叩くな。俺も怒られるんだぞ」

「だってよ、好きに出来るんだぜ?無理矢理突っ込むのが好きなんだよ」

「てめえの趣味とか興味ねえよ」

「でもよ、そこそこいい女だったろ、中の上ぐらいの」

「……それはぁ、そうかもな」

「やっぱ興味あんじゃねえか!どうよ、お前はどうしたい?」

「…………引かないか?」

「おう、いいぜ」

「……甘く、イチャイチャしたい」

「てめえなに言ってんだ?」

 

「……」

「あ、あの、なにも聞こえない……」

「聞こえなくていいことだから」

 

下の話になるとすぐにプラチナがスズランの耳を塞いで、なにも聞こえないようにしていた。

それより、やはり間違いなく誰かが被害に遭っている。

もし彼女ならば、いや、彼女でなくともだがすぐに助け出さなければならない。

私はWとプラチナに二人を落とすように命じる。

二人は素早い動きで、見張りを首を絞めて落とした。

私とスズランは安全になったのを確認して近づく。

 

「ふう、殺せば良かったのに」

「ね。女の敵だったし」

「まだダメだ」

 

スズランがいるし、ロドスとしての正式な行動でもないため大事にはしたくない。

そう説明しながら、見張りを縛る。

縛った後、次の手を考える。

目的は救出で、殲滅じゃない。

 

「入れば基本的に隠密、Wとプラチナは接敵次第倒せ。スズラン、もし三人以上いたら止めてくれ」

「分かったわ」「了解」「はい!」

 

そうして私達は廃墟に入っていった。

 

 

廃墟の中にはかなりの数の敵がいた。

出会えば、通信される前にWとプラチナが格闘で気絶させ、バレそうになればスズランのアーツで動きを止めて気絶させる。

三人ともかなりのオペレーターで、素早く片付ける。

流石と誉めたいが、今は時間が無い。

急いでいろんな部屋を見ていく。

きっと――

 

「おい!いたぞ!」

 

――このようにすぐにバレるだろう。

 

「バレてるじゃない、これも作戦のうち?」

「ああ。出来ればバレないのが理想だったが、無理なのは分かっていた」

「で、作戦は?」

 

そう聞いてくるプラチナに答えようとした瞬間、とある言葉が聞こえてきた。

 

「ロドスだ!奴ら俺達のことを見つけたんだ!」

 

私はそれを聞いた瞬間、作戦をすぐに構築し直し、伝える。

 

「武器を構えろ、建物を壊さない程度になら暴れていい」

「いいの?」

「ああ。奴らの目的が分かった。……被害者も」

 

今すぐ助けに行きたいが、人質を取られている立場だ。

相手の要求を知らなければ対応できない。

私の指示を聞いた三人は敵を次々と倒していく。

スズランが動きを止め、プラチナが撃ち抜き、Wが止めを刺す。

 

「チッ、爆破できないのがムカつく……!」

 

Wがキレながらも言う通りに動いてくれるのは、少し驚く。仕事には真面目ということだろう。

 

「待て!」

 

三十を越えた辺りで、そう声が響いた。

敵の集団の一番後ろに現れた男が放った言葉のようだ。その男がリーダーだろう。

男の言葉に集団は動きを止める。

私は三人も攻撃を止めるように指示をする。

そして、前に出る。

 

「やあ、初めましてだな、ドクター」

「……拐った理由はなんだ」

 

男の挨拶を無視してすぐに理由を聞く。

今すぐ殴りたくなる気持ちを押さえるのは、意外と厳しい。

 

「かの高名なドクターなら、すぐにでも理解しているのでは?」

「ロドスの情報だろう」

「その通り。ああ、抵抗してもらっても構わないが」

 

男はそこまで言って、笑う。

 

「人質が、粉微塵だ」

 

スズランが息を呑んだ音が聞こえる。

やはり、一筋縄ではいかないか。

 

「もし見たくなければ、言うことを聞いてもらおうか」

 

 

 

 

「まずは、縄で縛らせろ、とか?」

 

 

 

 

聞き慣れた、声が聞こえた。

いつも笑っていて、優しく、いたずら好きな――

 

「……え?」  

 

――彼女の声だ。

 

「ドクター!」

 

彼女がドクターの名を叫んだ瞬間、呆気に取られていた私はすぐに三人に叫ぶ。

 

 

 

 

 

枷が無ければ、この有象無象は簡単に蹴散らせた。

元レユニオン幹部に元無冑盟、少対多を何とも思わせない。

全員縛り上げ、リーダーだけは一度ぶん殴る。 

後はロドスが処理してくれるだろう。

 

私はすぐに、戦闘の邪魔にならないように、隠れていた彼女に急いで近づく。

彼女は少し遠くの部屋の中に隠れていたらしい。

彼女の同僚が言っていた、仲直り……そもそも喧嘩をした記憶が無いが、彼女がまた接してくれようとしてるだけで、嬉しい。

 

私は嬉しさに、気づかなかった。

 

彼女の声に聞こえたという嬉しさで。

 

関わってくれるという嬉しさで。

 

「……あ、終わった?」

 

彼女が、怪我――いや、失っている可能性が頭に無かった。

 

「……は?」

「いやー、本当に申し訳ないわ。まさか私が狙われるとは思わなくて」

 

彼女は笑っていた。

にこにこと、なんともないように。

私は声が出ない。

だが、彼女は、楽しそうに話す。

 

「そんなことより、ごめんなさいね?今までちゃんと会話しなくて。実はくだらない理由で」

「な、あ……」

 

無理矢理、私は言葉を捻り出す。

 

「どうしたの?」

「左、腕はどうした……?」

 

ああ、これ?なんて言いながら、彼女は

 

()()()()()()()()()()()()を振りながら、説明する。

 

「腕を拘束されてね?無理に外そうとすると爆発するみたいなの。で、たまたま運良くナイフが近くに落ちてたから切り落としたの。品質は最悪で、刃こぼれまみれで、本当痛かった……関節からならノコギリの要領で――きゃっ!?」

 

私は彼女を抱き締める。

前にWは言っていたじゃないか、私は何を聞いたんだ!

すぐに左腕に応急処置を施し、急いで通信で医療オペレーターを呼ぶ。

 

「眠くないか?」

「……んー、ちょっと、ボーっとしてる……」

「悪いが、まだ起きていてくれ」

 

……ああ、決めた。

私は無理矢理にでも、守らなければ。

でなければ、私は――

 

 

 

 

 

「ドク、ター……!?スズラン来ないで!」

「え?どうしたんですかプラチナお姉さ……」

「いいから!」

「は、はい!」

 

「……チッ、やっぱりあいつ、自分の重要さを分かってないわね……クソっ」

やっぱり既存キャラ多めの方がいい?

  • 出せ♡出せ♡
  • 出すな♡出すな♡(出さなくてもいいよ)
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