一般事務員オペレーター 作:オニギリムシ
――とあるトランスポーターの証言
『あの人とは医療オペレーターが来るまで、気を持たせるために応急処置をした後に少し話しただけなんだけど……ちょっとだけ、ごめん嘘ついた、かなり変だよ。痛そうに顔をしかめることはあったけどさ、普通に笑って話してたんだよ?結構酷い怪我だったんだけど、気にしてないみたいでさ。……非戦闘オペレーターとは思えないよ。それに、あたしになんて言ったと思う?『トランスポーターだったわよね、後で荷物を取ってきてくれないかしら。弾むから』だよ?微笑みながらだよ?……これ?あの人から貰った串カツ』
あの事件から数日、彼女は無事に秘書に戻ってきた。
痛みも完全に引いたそうで、ズボンをめくって太ももを見せて、傷跡が無いことを示そうともしてきた。
……流石に、それは止めてもらった。
仕事をしながら、同じように仕事をしている彼女を盗み見る。
そもそもの話、私と彼女は上司と部下であるだけだし、守るにしても私に戦う力は無い。
ならば私の権限で護衛を付けるか?私は出来るだけ彼らに自由であってほしいから、そういうことはしたくはない。
……なら何故、私は彼女を守りたい、なんてことを思った?
それは――
「あの、手が止まっていますが……お疲れですか?」
――思考は彼女の声で止められた。
自身の手を見ると、ペンすら掴んでいなかった。
私は悩んでいることに気づかれないように慌てて誤魔化す。
「す、すまない。そういうわけじゃなくてだな」
「では、何か考え事を?」
しまった、逆に近づいてしまった。私は内心汗まみれになる。
ロドスに来た時から自分でも思っていたが、如何せん私は世間話というのが苦手だ。
聞かれたくないことを誤魔化すのが大変で大変で……
話し上手聞き上手が多いのもあるんだろう。
どうにかして普段の私を演じる――ところで思う。
何故バレてはいけないのだろうか。
そうだ、知られて困ることはないじゃないか、そう思って私は口を開く。
「君をまも……」
そしてすぐさま閉じる。
私は何を言おうとした?君を守りたいと考えていた。
そんなことを言ってみろ、セクハラで訴えられるに決まっている。
今の私は理性がゼロに近い、というかゼロだ。
彼女の顔を見てみると、微笑みながら?を浮かべている。
「まも……?なんですか?」
「え、ええとだな……」
疑問の文に私は返信が思いつかない。戦闘の指揮でしか発揮されない自分の脳に今まで以上の恨みが募る。
「……言いたくないのなら、言わなくてもいいわよ?」
彼女は、
優しいその言葉に甘えそうになるが、それではいけないと我慢する。
何とか口を開こうとする、その時だった。
「あら、メール?すいません確認しますね」
「あ、ああ……」
「……すいません、人事の方で問題が発生して……」
「分かった、行ってもらって大丈夫だ」
「ありがとうございます」
彼女は頭を軽く下げて、駆け足気味に部屋を出ていった。
助かった、そう思った後にまだ助かってないと絶望する。
彼女が帰ってくる前に考えなければならない。言い訳と――
――何故彼女を守りたいと思ったのか。
――とある一般医療オペレーターの証言
『あの人とは、ちょっとだけ長い付き合いなんですけど、怪我した状態で会うことはほとんど無かったんです。あっても、指を切ったくらいで……太ももに大怪我して、打撲も体のあらゆるところに付けて来るなんて思ってませんでした。……それ以上にビックリしたのは、顔ですけど。怪我は無かったんですけど……笑顔、だったんです、あの人。いや、微笑んでたのか。そこで終わったなら、変だけど強い人だな、でまだ終わってたんですけど、……襲われかけたんですよ、性的に。それで笑ってられるなんて、変を通り越して……ちょっと怖いです。でもいい人なんですよ。お皿くれましたし』
結局、時間が掛かったようで彼女は戻って来ず、その日は会うことはなかった。
一応、メールで『おやすみなさい』と言ってくれた。私もおやすみと返した。
言葉も予測変換のようにすぐに出てきたら楽だと思ったが、的外れなものも浮かんでくることを考えると、そこまで変わらないかと笑う。
時計を見ると、既に皆が寝静まっている時間だ。
そういえば、と思い出す。
私は机の中に入れていた、ネックレスを取り出して眺める。
光に透ける黒い石が付いている、綺麗なネックレス。
鉱石病というのもあって、こういうものに嫌悪感を抱くものも少なくない。
「でも、綺麗だ」
だが彼女は言っていた。
これは贋作の名を騙った本物だと。ちっぽけな絆を信じられていなかった、大馬鹿の作品だと。
「ちっぽけな絆を、か……」
お前のことだぞ、と叱られている気分になる。実際どこまで想定しているかは分からないが。
そういえば彼女も付けていたな、と今更ながら思い出す。
「……」
私は待っても待っても来ない眠気のために書類と格闘しようかと思ったが、どうにもやる気が出てこない。
というわけで私はネックレスを付けて散歩に出た。
誰も起こさないように、静かに廊下を歩く。
たまにネックレスを撫でながら、彼女の事を思い出す。
……最近、彼女の事ばかり考える気がする。
というわけも何も、彼女の事を考えたいが為にサボったのではないか。まだ休んじゃ駄目ですよ……
だが今日はそういう気分だ。だからしょうがない。そう心の中のアーミヤに言い訳する。
そんなことを考えながら歩いていると、艦橋に出ていた。
「……涼しいな」
柵に寄りかかると、風が私を撫で、ネックレスを揺らす。
……どこにいても私は彼女や、ネックレスに気を取られる。
何故、だろうか。
出会った時の頃から、思い出す。
彼女が
そういえばいつも彼女は微笑んで、笑っていた。
ああ、私が目の前で吐いた時は目を見開いて助けてくれたな。
とても心配してくれて……
私は、そこで気が付いた。
「いつも、助けられてばかりじゃないか、私は……」
どんな時も、出会った時から彼女はずっと支えてくれていた。
なのに私は何をした?……何も思い出せない。
無いものを思い出せるはずがない。
そうして、彼女は怪我をした。
たまたま運悪く、感染者に襲われた。
彼女のプライベートだとしても、彼女が自ら首を突っ込んだとしても……
私は、何も出来なかった。
「情けないな……」
「あら、よく分かってるじゃない」
後ろから、そう声が聞こえた。
私は勢いよく振り返り、その声の主を探した。
暗闇の少し奥の方、そこに一人の影が見えた。
そしてその者はゆっくりと私の方へ近づく。
銀の髪に、紅い角。全体的に赤と黒が目立つ服装の女性。
「W……」
そこにいたのは、サルカズの傭兵、Wだった。
Wはニヤニヤ笑いながら私の横に立つ。
「四六時中仕事に追われているあのドクター様が、堂々とこんな夜中にサボり?」
「私はそんな風に見られていたのか……サボりではない、とは言えないが、早々に部屋に戻るつもりだ」
私はどうにかしてWから離れようと考えていた。
やはり、どうしても彼女以外と接する回数を減らそうとしてしまう。
良くないことであるというのは理解しているが、それでも自分を覆い隠してしまうため、辛いものがある。
それにWは私のことを嫌っているらしい、お互いのためになるはずだ。
だからもう部屋に戻る、そう言おうとしたが、その前にWが先に口を開いた。
「どうせあの秘書にした女のこと考えてたんでしょ」
周りの音が一瞬、聞こえなかった。
きっとこのバイザーが無ければ、私の間抜けな顔がWに見られていただろう。
声が出ない私に気付いているのかいないのか分からないが、話を続けるW。
「骨抜きにされてるのね、あんた。昔のあんただったら……まあいいわ。今日は一向に売れない喧嘩を売りに来たわけじゃないの」
「……Wなら、結構な量売れていると思ったんだがな」
「あんたには一度も売れてないの。貧乏人かしら?」
「ボキャブラリーが無いという意味ではあってるだろうな」
チッ、と舌打ちをして顔を歪ませるWだが、そんなことを言いに来たわけじゃないと言って話題を逸らす。
……始めたのはそっちだ、なんて言ったら怒るだろうか。怒るか。
「あんた、あいつの事どう思ってる?」
「……強くて、優しい人だと思っている」
「ハッ!あの状態を見てそれを言えるのなら馬鹿にもほどがあるでしょ」
「あの状態とは、怪我をした時のことか?」
確かに、普通なら人間不信や感染者嫌いになりそうなものだが、とは考えたことはあるが。
「それだけで?なんて言いたそうね。まあ、確かにあれだけじゃまだ精神がちょっと強い止まりに見えるわね」
「何が言いたいか分からない。ストレートに教えてくれ」
「あいつ、ロドス……いや、この大陸中でも一番にイかれてるわよ」
そう言って、Wは語り始めた。
一度だけあいつと喋ったことがあるの、私。
あれは私がまだロドスに来たばかりの頃。食堂でだったわね。
あの頃は――今もなんだけど――いろんな奴から睨まれてたわ。
別に私は気にしないタイプだったから食堂で堂々と食べてやったんだけど、丁度あの時混みに混んで、端っこの方で食べてたの。
で、食べてると目の前に一人座ったの。
それがあいつだった。
混んでても、誰も私の近くには座らなかったってのに、あいつだけは気にせず座ったわ。失礼しますなんて言いながら。
私は最初何かしてくる、なんて思ってたけど、何にもしてこなかった。
それどころか興味が無いなんて空気でただただ食ってた。
私はなんとなく、あいつに話しかけてみた。
「目の前に元レユニオン幹部がいるっていうのによくもまあ呑気に食えるわね」
「……あ、私ですか?」
その時は私をイラつかせるためにわざとやってるのかと思ったわ。
ま、あいつは何にも考えてなかっただけだけど。
「あんた以外に誰がいるっていうのよ。私の周りにはあんたしかいないじゃない」
「確かに。その通りですね。……それで、レユニオンがいかがしましたか?」
「……怖くないのって言ってんの。あんた非戦闘員でしょ?」
そう言ったら、あいつは頭に?を浮かべながら
「何故?貴女もご飯を食べているだけじゃないですか」
なんて言ったの。
その時は肝が据わりすぎでしょ、ぐらいにしか思わなかったけど、話していくとヤバい奴ってことが分かったわ。
「……別の質問にするわ。恨んでないの?チェルノボーグであんたの仲間を殺した女よ」
「えーっと、ああ、ドクター救出の時の。Aceさんに、Scoutさん辺りは交友関係は少しありましたが」
「じゃあピンポイントね。Scoutを殺したのは私よ」
その時の私は何故かムキになって、どうにかこいつの澄ました顔を崩してやろうと思ってたの。
だけど無理だった。なんて言ったと思う?
「そうですか」
だけよ。怒ることも無く、悲しむことも無く、感情を隠しているわけでもなく。
その後もどうにかして崩そうとしたけど
「……貴女意外と薄情ね。浮かばれないんじゃない、あいつらも」
「あまり大きな声では言えませんが、殺し殺されをするのは分かってたはずですよ。まあ、ロドスは出来るだけ不殺で行ってるそうですが、それでも殺す時は殺してます。言い方はあれですが、お互い様、というやつです」
無理だった。
逆にこっちが震えてたわ。無理矢理押さえつけなきゃ、無様に泣いてたかもね。
「だから、殺されても、文句は言えないって言いたいの?」
「んー、というよりは。私の考えでは、あらゆる人に正しさがありますので。だから恨むのも間違いではないと思いますし、貴女をロドスに加入させるのは反対、って言うのも間違いではないでしょうし。でも私は、気にしません。それだけです」
そう言って、あいつは食べ終わってたの。分かる?この意味が。
こっちは食べるのを止めて話してたのに、あいつにとっては食事と共に流し込めるものだったのよ。
あいつは「では失礼しました」って言って、立って去ろうとした。
私はそんなあいつを止めて、最後の質問をした。
「もし、あんたが死ぬことになったら、どうするの」
「そうですね……出来るだけ足搔こうとは思いますが、まあ死ぬ時は死にますので。受け入れるしかないわ」
過ぎることや過ぎたことは変えられませんから。そう微笑んで、あいつは去った。
そこまで語った後、Wは遠い地平線を見ていた。
確かに、そこまで言われてしまえば、彼女は異常とも言えるかもしれない。
だが。
「彼女の評価を下げるためだけに、そんな話をしに来たのか?」
彼女がただ薄情なだけじゃないのは知っている。
私が苦しんでいたら助け、見ず知らずの少女が酷い目に遭いかけたら変わり身になる。
彼女が良い人、というのは、私の中では覆らない。
しかしWから返ってきた言葉は、想定外なものだった。
「違うわよ。あいつは、一番死にやすい存在ってこと」
「……は?」
「こんな世の中で生き残りやすい奴は、自分の死を受け入れずに、死に物狂いで生きようとする奴と、とんでもなく強い奴。あいつには、どっちも無いの」
Wの言っていることが一瞬理解出来なかった。
なんとか脳内で処理をした後、Wにどうしてそんなことを言ったのか、聞こうとした。
だが、Wは既に消えていた。
私は訳が分からないまま、Wの言った、死にやすい存在……彼女の事を考えていた。
風は、来た時から変わってはいなかった。
「……何やってるのよ、私」
あいつの事なんか、どうでもいいじゃない。
それに、ドクターの事だっ、て……
「……私の方が、先に
一般事務員オペレーター:多少メンタルが強い。というか少し達観している。普通に人は助けたいと思うし苦しいのは嫌だし人が死ぬのは嫌だけど、復讐とかは別に……してもしなくても大切な人は帰ってこないんだから、したい人はすればいいんじゃない?すっきりするかは知らないけど。くらい。一般人。
一般人に見えて精神が狂人スタイルなキャラが性癖です。戦う力はマジでないし覚醒なんか一生しない。でも死地に行くのは必要があったら別に気にしないタイプが性癖です。腕とか足とか目とか内蔵とか無くなっても無いなったわ、ウケるwくらいで済ませる、どころか義手付けれるやんかっこいいのにしたろ!くらい思えるタイプが性癖です。
でもこの小説の彼女はただの一般人です。
手足が……
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吹っ飛ぶし感染する!
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吹っ飛ばないし感染しない!
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吹っ飛ぶけど感染しない!
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吹っ飛ばないけど感染する!