宇佐見蓮子は覚を詠む ~memory read 作:フロウリバー
夏コミも終わったことで、少しだけ気の抜けてグダっとしていた私に好奇心を植え付け、行動に移させたのはあるネットサイトの興味深い話だった。
『旧相武病院の怪異』
サイトにはそう書かれていた。内容は以下のとおりだ
『サマーランド裏病院とも呼ばれるこの病院は女性の霊に首を絞められる、という証言があったり、病院内に目玉の描かれている部屋があり、それを見てしまったら終わり、とも言われている。改修工事を何度か試みたようだが、その度に誰かが怪我をするので中断されるということだ。怪我をした人の中には、半身不随になってしまった人もいるようだ。とにかく危険なのでなるべく近づかないことを推奨する』
なるほど、危険度が高く、近づくとまずいため、近づいてはならないのか・・・まぁ確かに自分の身は大事だし、万一しくじりでもしたら収集がつかない事態になりそうだしな・・・しかし、だからこそ行きたいんじゃあないか。コレは新しい同人漫画のネタになりそうだ。ネタ厚めのためにも行くしかない!!
そんなわけで今回京都から八王子までやってきたわけだが、今週が三連休で本当に良かったよ。おかげで小旅行も兼ねたリアリティを追求することができる。と、まあ、そんな気持ちで旧相武病院にたどり着いた。だが、病院の前に立っただけで、病院の入口から溢れんばかりのただならぬ雰囲気を感じた。この気配は・・・前回行った大和田刑場跡よりも一層強い気配だ。まるで病院自体が怨霊と化してしまったような・・・そんな気配だ。入るのはまずい。引き返すべきだ。そんな本能的な警告が頭の中に流れてくる。しかし、好奇心には抗えず、私は旧相武病院の内部に突入することにした。
「・・・にしても、異様な雰囲気ね。背筋ががゾクゾクとするわ」
旧相武病院内部に入ってから数分後、私は病院内の異様な雰囲気に包まれながら病院内を歩き回っていた。360°どこからも見られているような感じすらする。
(なんらかの錯覚か?気配が敏感になりすぎているだけなのか?)
そんな私の予想を安易に打ち砕いたのは、病院内に漂う異様な雰囲気の正体に関する予想を立ててからまもなくのことだった。突然、院内のガラス窓が音を立てて割れていく。しかも廊下の奥の方の窓ガラスから順番に。まずい。なにか・・・くる!
「ヘブンズ・ドアー!!」
私は反射的に能力を発動していた。私は割れていく鏡の元へヘブンズ・ドアーを向かわせ、観察させる。すると、女の霊が自身の拳で鏡を割って回っている姿が写った。
「ッ!?」
その光景にさしもの私も唖然としていた。しかし、ハッと我に返ると、自分でも驚くほど速くヘブンズ・ドアーを操作し、女を本に変えようとする。しかし、その瞬間、女にヘブンズ・ドアーの腕を掴まれてしまった。
「なッ!こいつッ、私のヘブンズ・ドアーが視えているのか!?」
私が驚愕していると、女はヘブンズ・ドアーを掴んだまま、私の方へダッシュで近づいてくる。
「戻れ!ヘブンズ・ドアー!!」
ヘブンズ・ドアーを一旦引っ込め、女を待ち構える。女は今、前方70m。静かにヘブンズ・ドアーを作動し、私は自分自身に命令を書き込んだ。
『10分間、身体能力とパワーが通常時の10倍になる』
これで暫くは逃走劇を行うことができる。そう思っていると、女は既に前方20mにまで迫ってきていた。女の足音を合図に、私は足を踏み出し、走り出す。GO
瞬間、私の体はとてつもない速さで突き動かされた。ヘブンズ・ドアーで後方の女を確認する。女との距離はおおよそ50m。逃げ切れるハズ!そう思っていたが、突然女が後ろから消えたと思いきや、私の前方1m以内に佇んでいた。
「ッ!?」
驚きの声を上げる間もなく、私は女に首を絞め上げられた。
「〜〜〜〜〜ッ!」
息ができなくなってくる。なんてパワーだ・・・しかし!!
「、、、、ェ・・ヘブン・・・ズ・・・・・ドァー・・・!!」
息も絶え絶えながら、ようやくヘブンズ・ドアーを出すことができた。そしてヘブンズ・ドアーで、私の首を絞めている女の腕を本に変え、女に腕の力が入らなくなるように仕向ける。するとみるみる女の腕から力が抜け、私の首も開放される。
「・・・ふぅ・・・全く・・・」
そう呟きながら、私は女の顔も本に変え、女の意識を落とすと、女の記憶を読み始める。
「こいつはやはり病院に住み着く怨霊だったのか・・・しかもこの病院にいる幽霊の中でダントツに強いのか・・・こいつの記憶を読む限りこいつが病院内でかなり強い方だという記述がある・・・こいつをこのままにしておくのは危険だ」
私は女に命令を書き込む。
『強制的に成仏する』
すると女の霊体は瞬く間に光の粒子となって消えていってしまった。
「ネタ集めもあらかた終わったし・・・帰るか・・・」
私は二階への階段に続く廊下に背を向け、玄関へと歩いていった。
この『旧相武病院』は、あまりにも危険だ。ここに近寄った人間は死ぬ。ヘブンズ・ドアーを持っていたから対処できたが、もし私が能力を持っていなかったら確実に死んでいた。ここには二度と訪れてはならない。セミの鳴く赤い空の下、私は一人そう考えていた。
to be continued
今回は八王子市内の心霊スポット『旧相武病院』での噂をもとに物語を作りました。流石に窓ガラスが割れるなんてことはないと思いますが、女の霊に首を絞められた、なんて噂もありますから安易に近づかないのが得策です。では、今回は以上です。