宇佐見蓮子は覚を詠む ~memory read   作:フロウリバー

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メリーに呼び出され、酒場「バー・オールドアダム」までやってきた蓮子は、メリーに促されるままにイタリアでの「”奇妙な”体験」を語り始める。


第七話:闘技場

 「そういえば蓮子って海外に行ったことある?」

「急に呼び出されてなにかと思えば・・・まぁあることはあるわよ」

 土曜日、蓮子はメリーに「バー・オールドアダム」まで呼び出され、急いで支度し、そこへ向かったのだが、話を聞いてみれば素朴な疑問だったため、少し拍子抜けしてしまった。

「へぇ、どこ行ったの?」

「イタリアのローマよ。貴女と出会う2年前、大学の冬休みのときに行ったの。」

蓮子とメリーは淡々と会話を進めていく。

「で、どうだった?」

メリーが蓮子に問う。

「よかったわよ。ロマンあふれる場所だった。あ、そういえば・・・」

「そういえば・・・なに?」

メリーが問いただす。すると蓮子は

「ローマにはコロッセオっていう闘技場があるでしょう?そこで体験した話があったのを思い出したのよ」

「どんな話よ」

「身の毛もよだつ・・・恐怖の話よ」

蓮子は口の端を少しだけ歪め、話し始めた。

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 「イタリアに滞在したのは7日間だったんだが、イタリアはとても美しい景観でね、3分もその美しい景観に気を取られてしまったよ。で、滞在三日目にローマへ行ったんだ。サンタンジェロ城にも行ったんだが、サンタンジェロ城へ行く道中にあるサンタンジェロ橋も美しいんだ。まさに芸術の街だよ。余談だが、サンタンジェロ城の名前の由来だが、時の教皇グレゴリウス1世が城の頂上で剣を鞘に収める大天使ミカエルを見て、ペスト流行の終焉を意味するとしたことに由来しているそうだ。・・・話を戻そうか。ポポロ広場にある建物もなかなか良くてね、イタリアの建物は芸術的なんだ。そして、ローマへ行くときに絶対に行こうとチェックしておいた場所、ローマのコロッセオへ行ったんだ。コロッセオはローマの街を象徴する円形の闘技場なんだが、私はそこで奇妙なものを見たんだ。」

「奇妙なもの?」

メリーが尋ねる。その問いに蓮子は口を開いて答える。

 「えぇ、奇妙なものよ。私はコロッセオの内部に立ち入って通路を歩いていた。その通路では、なにか変な物音がした。鉄の尖った部分を引きずりながら歩く、そんな感じの物音がね。しかし時間は無尽蔵にあるわけではない。だから私は物音については深く考えず、そのまま通路を通ってハイポジウムという地下施設に入ったんだ。丁度夕方だったかな。そのハイポジウムへ入った時、なにか闘志のようなものを感じた。その闘志に気圧されて少しだけ後退りをしてしまったんだ。その闘志の正体を探るため、私は注意深く部屋の中を観察した。すると驚くことに、熊などの屈強な体格の動物や、剣や斧を持った人間たちが奥の方にいたんだ。なぜこんなところに?と思ったんだが、コロッセオは闘技場、そしてハイポジウムは闘技に出場する戦士たちの待機場だったことを思い出した。多分闘技に出場するために控えている亡霊たちだったのかもしれない。そう考えながら私はハイポジウムに背を向け、そこから立ち去っていったんだ。そして最後にコロッセオの闘技場のところに行った。その闘技場の上の通路の方から私は実際に戦士たちが戦ったであろう格闘場を眺めていた。すると、なんということだろうか。どこからともなく複数の闘士たちが格闘場にあがってきたんだ。そして格闘場に上がってきた彼らはそれぞれの武器を持つと戦いを始めた。血なまぐさい凄惨な殺し合いを始めやがったんだ。私は恐る恐るその光景を眺めていた。しばらくして、一人の男が他の闘士たちを倒し、一人壇上で立っていた。彼の顔は返り血を浴びており、獲物には真っ赤な鮮血がべっとりと付着していた。するとその男は私が上から見ていることに気がついたんだ。そして彼は私の方を向くと、真っ直ぐこちらに向かって歩いてきたんだ。このままでは殺される。そう思った私はすぐさま逃げ出した。暫く後ろから男がイタリア語でなにか叫んでいたが、私は逃げることにだけ集中し、走った。いつの間にか男はいなくなっていたけどね。最後に闘技場の写真を撮ったあと、私は「プロフーモ メゾン ドーテ」というホテルに戻ることにした。午後6時くらいの頃だったかな。帰りの道中、怪しげなことはなかったが、なぜか腕に切り傷が付いていたんだ。そういえばコロッセオで闘士の男から逃げている最中、腕に鋭い痛みを感じたんだ。もしかしたら、知らず知らずのうちに腕を切られていたのかもしれない。・・・おそらくだが、今でもコロッセオには闘士たちの亡霊が彷徨っている。興味本位で闘技場を覗きに行くと、碌な目に会わないと思うよ・・・と、これがイタリアで体験した奇妙な話の内の一つだよ」

 ようやく蓮子はイタリアでの体験を話し終えたのだが、メリーは蓮子の言葉の最後の部分に疑問を覚えた。

「ん?奇妙な話の内の一つ?」

「えぇ、奇妙な話の内の一つよ」

「ちょっと待って・・・ってことは、まだ奇妙な体験があったってこと!?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない。」

「そこんところもっと詳しく教えて!」

「えぇ?・・・まあいいけど」

このあと一時間以上、蓮子のイタリアでの奇妙な体験の話が続くのだった。

 

to be continued




 今回は物語のナレーターを蓮子ではなく、筆者自身にしてみました。なぜかって?そりゃ今回の話は蓮子がイタリアでの体験を語るだけの物語なんですから。さて、今回のイタリアの話はコロッセオでの誰かさんの心霊体験を基盤に構成しています。一度イタリアには行ってみたいものです。それでは今回はこれで。では。
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