ソードアート・オンライン+D   作:シャザ

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32話 海戦、激戦!

 ……ふと、キリトは物音で目が覚めた。ドルモンが起きたのかと視線を向けてみるが、ぐーぐーと寝息が聞こえる為物音をさせたのはコイツではない。

 

「…………」

 

 ドルモンが起きないようにそーっとベッドから降り、耳を澄ませた。

 

(さっきの音は…多分扉の開閉音だな。……アスナかフローラモンのどっちかが居間にいるのか?)

 

 ドアをゆっくりと開け、居間の様子を確認する。灯りはついていないが、窓から差し込む雪明りが部屋全体をモノトーンに仕上げている。キリトはソファの上で両ひざを抱え丸まっているアスナを見て一瞬迷ったが、ドアを完全に開けて居間に入った。

 アスナはキリトに気づいているはずだが、うつむいたまま身じろぎもしない。

 

「……夜更かしか?キズメルに怒られるぞー?」

 

 キリトはおどけて冗談っぽく言ってみるが、アスナはうつむいたままだ。キリトはアプローチを変えてみることにした。

 

「………寝れないのか?」

 

「………うん。お部屋もベッドも広すぎて…」

 

「あー、わかる…。ベータの時は二階にある十人部屋だったけど、ぎっちぎちで逆の意味で寝れなかったんだよな!」

 

 キリトはソファの反対側に腰掛ける。こんな時あまーいホットミルクでも出せればと思ったキリトだったが、実際のところは牛乳すら持っていない。その代わりに、一つ根拠のない推測を口にしてみた。

 

「来年のこと、考えちゃったのか?」

 

 アスナはうずくまったままビクリと震えた。もう一度頷いてから、彼女は微かな囁き声で答える。

 

「わたし、今までずっと未来のことは考えないようにしてた。今日と明日の攻略の事だけに全力を尽くすんだって、ごまかしてた…。残りの層の数とか、クリアにかかる時間とか…そもそも、この世界でどれだけ生き残れるのかなって、そういうのから全部目を逸らしてたんだ。でも、寝室で外見てたら、なんか…考えちゃった…」

 

 アスナは両膝を抱え込む両腕にぎゅっと力を込めた。

 

「………わたし、来年のクリスマスまで生きて、もう一度この世界で雪が降るところが見たい……」

 

「………っ!」

 

 キリトは彼女の独白に、なんと答えるべきか迷った。君は死なないと安易に言える訳もないのだ、明日をちゃんと生き延びられるのかはキリト自身にもわからないのだから。

 キリトは長い間黙っていたが、やがて(かす)れた声で答える。

 

「……ごめん、俺には何も言えない。きっと、今の俺がなんて慰めても嘘になりかねないから。……俺は、そんなに強くないんだ」

 

 キリトは自分が情けなくて、アスナに失望されたくない一心で寝室に逃げ帰ろうとする。アスナの前を通り過ぎようとしたキリトのシャツの裾を、彼女は引っ掴んだ。

 そのままソファに座らされたキリトに、アスナは思わぬ言葉を口にする。

 

「なら、強くなればいいじゃない」

 

「……へっ?」

 

「強くなってよ。いつかわたしに…じゃなくてもいいからわたしみたいに未来に怯えてる子に、大丈夫って言えるくらい」

 

「…………強く…」

 

 キリトはいつも剣を握っている右手に視線を移す。どれだけレベルを上げればそんな事を言えるようになるのか、というか彼女が言った『強さ』はそういう意味なのかと悶々としている彼に、アスナは身体をもたれかけた。

 

「今は何も言わなくていいから…その代わり、わたしが寝るまでじっとしてて」

 

「………わかった」

 

 アスナは淡い笑みをうかべてまぶたを閉じる。一分も経たず寝息を漏らすアスナだが、このまま離れると眠りの浅い彼女を起こしてしまう危険があると気づき、キリトはため息をついた。

 結局のところ、朝までこの状態でいるしかないということである。

 

「…………ドルモンが起きてきたら謝るか…」

 

 ついでに朝食で出てくるであろうパンも一つくれてやろうかと考えていたキリトは、アスナが小さく身震いしたことに気づく。たしかに雪が降っている夜に薄いチェニック一枚では寒いだろう。

 

「うーん、毛布(もうふ)の代わりになるようなアイテム持ってたかなぁ…」

 

 キリトが心当たりがないなりにストレージ内を探ってみる。

 

「……あ」

 

 彼が取り出したのはフォールンのアジトで自分たちを救ってくれた《アルギロの薄布》だった。小型のゴンドラを覆えるのだからブランケットの代わりには充分。耐久値は少ないものの水辺でない場所で使う分には消耗しないようである。

 広げた薄布にくるまっていると、寒さは遠ざかり眠気が近づいてくる。キリトはアラームをセットしてその誘惑に引っ張られていった。

 

 

 明くる25日、26日はエルフクエスト攻略に費やされた。三層の時のように強力なエリートクラスが敵として出てくることもなく、頼りになるキズメルと一緒なこともあって苦戦らしい苦戦はなかった。

 一日目は連続クエストを消化し、二日目の午後には秘鍵が隠されているダンジョンに突入。湿気で緑青を吹いたデュラハンを軽く捻り、《瑠璃(るり)の秘鍵》を手に入れて夕方ごろにヨフェル城に帰ってきた。

 

「はぁ、どうにか襲撃の前に秘鍵をゲット出来てよかった…。城主様は秘鍵を机の中に閉まってたけど、三層の秘鍵もあの中にあるのかな」

 

「その通りだ。つまり敵に城の五階まで攻められたら秘鍵を奪われるということだ。閣下は細剣の名手だが、病に蝕まれている今の状態ではな……」

 

「…安心してキズメル!五階どころか桟橋にも上げさせないわ!どれだけ来ようが片っ端から撃沈させてやるんだからっ!」

 

 アスナはこの二日間エネルギッシュに戦い抜いた。久しぶりにキズメルと一緒に戦ったのがよほど楽しかったらしい。

 

「ふふ、頼もしい限りだ。………キリト、アスナ、お前たちの船はとてもいいものだな。性能もさることながら、一番嬉しいのは…妹の名前を付けてくれたことだ」

 

 キズメルは微笑みながらティルネル号が停泊する桟橋の方を見た。

 

「……あの子は、幼い頃から水遊びが好きでな。よく一緒に遊覧用の船で遊んだものだ…。あの船を見ていると、懐かしい思い出が蘇ってくるよ」

 

「へー、そうなんだ。…俺も小さい頃手漕ぎの船を妹と一緒に漕いだなぁ…。アイツ、元気にしてるかなぁ…」

 

 キリトはしみじみと妹に思いを馳せる。仲がいいとは言えないがそれでも家族なので心配もある。

 

「ほう、キリトにも妹がいるのか?」

 

「ああ、あんまり仲良くはなかったけどな。……なあキズメル、ちょっと頼みたいことがあるんだ」

 

「いいとも、私にできることならば」

 

「俺たちの《幻書の術》じゃ船みたいに巨大なものは収納できないし、だからと言って担いで行くわけにもいかない。次の五層にティルネル号は持っていけないんだ」

 

 話を静かに聞くキズメルに、今度はアスナが語りかける。

 

「だからね、五層へ上る前にキズメルにティルネル号を預けていきたいの。このヨフェル城の桟橋に泊めておいてくれるだけでいいから…」

 

 NPCのキズメルに船を預けることはできるのか、キリトたちは昨晩時間をかけて話し合った。もし万が一システム的に不可能な頼み事をしてしまったらキズメルにどんな負荷が起こるかわからないからだ。

 基本的にNPCにアイテムは譲渡できないが、船を桟橋に泊めておくだけなら所有権を移動させる必要はない。気持ちのうえで預かってもらえれば…彼女が時々船を見てキリトたちや妹のことを思い出すきっかけになってくれればそれでいい。

 キズメルは柔らかな微笑でキリトたちに向き直った。

 

「………あぁ、もちろんいいとも…っ!お前たちの大切な船は私が責任を持って預かろう。だが、一つ約束をしてくれないか?」

 

「……約束?」

 

 ドルモンが首をかしげる。キズメルは少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて頷いた。

 

「…またいつか、この城にやってきて私をティルネル号に乗せてほしい」

 

「「「もちろん!」」」

 

 

 12月27日、ノルツァーが口にした五日後という刻限に違えることなく、(フォレスト)エルフの軍勢が船に乗ってヨフェル城に進軍してきた。一応三時間前には斥候隊からの状態が本陣に来ていたので迎撃準備は整ってはいたのだが…。

 

「……げっ!?敵船の数予想してたより多いぞ!!」

 

「ひーふーみー…、十六隻はいるわね。たしかこっちの船って八隻だから純粋に倍いるじゃない!」

 

「敵の船、造りたてほやほやだから壊すのも難しいよね?」

 

 ドルモンは不安そうにキリトを見る。キリトは自身の不安を押し殺し、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「大丈夫だ、俺の操船とティルネル号を信じろ!爺さんが造った船があんな連中に負けるか!」

 

「えー、じっちゃんの船は置いといてキリトの操船は不安だなー…。最初壁ガリガリしてたじゃん…」

 

「………そ、それは忘れてくれよ!」

 

 

 ヨフェル城を守る(ダーク)エルフ軍と侵攻してきた(フォレスト)エルフ軍の水上戦が始まった。敵の数は倍、差を埋めるにはティルネル号だけで八隻沈めなければならないだろう。

 最初の激突で味方の船が一隻、敵の船が二隻沈没する。それを見たキリトたちは正面衝突には付き合わず側面から奇襲攻撃を仕掛けた。アスナが頑張ってチクチク補修した《アルギロの薄布》で姿を隠し、敵船が停まったタイミングで衝角を叩き込む。

 

「よし、まずは一つ!!」

 

「キリト君、左からくるよ!」

 

 アスナの声を聞いて、キリトは櫂を左に思い切り倒す。敵船にもかなりデカい衝角が付いており、高級素材を使って耐久が高いティルネル号でも直撃すればただでは済まないからだ。

 

「ぬおおおっ!曲がれぇ!」

 

 敵の大型船は突貫工事で製造されているためスピードはあまり出ないし小回りも効かないが、その分頑丈である。(フォレスト)エルフの船を効率よく沈めるには弱点の船尾に衝角をぶつける必要があるのだ。

 

「死ね人族め!」

 

船に乗っていた(フォレスト)エルフが長槍(スピア)でキリトを貫こうとする。だが、その穂先をドルモンが《ダッシュメタル》で弾き飛ばした。

 

「させるかっ!」

 

「ナイスドルモン!」

 

 キリトはティルネル号を敵の無防備な船尾に回り込ませ、《炎獣の衝角》で貫いた。爆発染みた轟音を放ちながら敵船は後ろ半分が吹き飛んだ。

 あっという間に沈んでいく船にキリトはガッツポーズする。

 

「よっしゃ、二隻目!キズメル、状況はどうなってる?」

 

「味方が六隻、敵が十二隻だ!残念だが、敵の数は倍のままだな…」

 

「うぐ…。み、味方が頼りにならねぇ!」

 

 (ダーク)エルフ軍の士気と練度は敵軍に劣っている。このままではあっけなく押し切られるのも時間の問題だった。

 敵の旗艦のど真ん中で指揮官らしき(フォレスト)エルフが大きな声を張り上げた。

 

「カレス・オーの勇敢なる兵士たちよ!卑劣なダークエルフどもを湖の藻屑へ変えてやれ!!奴らは人族と組み我らの城を攻め落とすための船を造っていたのだ!!その企みは破れ船は我々の物となった、この機を逃すなぁッ!!」

 

「………はぁ!?」

 

 キリトは目を大きく見開いた。彼の言い分はキリトの情報と大きく異なる。フォールンたちが船を組み立て、(フォレスト)エルフたちが受け取ったとばかり思っていたのだが…あの指揮官はそれを知らされていないだけなのだろうか?

 

「キリト君、気づかれたよ!」

 

 キリトは狙っていた敵船の漕手がこちらを睨んでいるのを確認すると、敵の動きを予測しながら必死に櫂を漕ぎまくった。

 敵はキリトを狙って槍で突こうとしてくるが、アスナとキズメルによって阻まれる。そのまま衝角で敵船を破壊し、ティルネル号は新たな獲物を補足するために旋回する。

 主戦場は未だに(ダーク)エルフ側の劣勢であった。湖に落ちていく兵士も味方の方が多く、さらに(フォレスト)エルフの船が三隻城の桟橋に接近してきていた。

 

「これは、まずいな…」

 

 キズメルがそう呟くと、旗艦にいた味方側の指揮官がティルネル号に怒鳴りだす。

 

「そこの小舟!ぐずぐずしてないで敵の別働隊を止めろ!!」

 

「な…っ!そんな言い方ないでしょ!!」

 

 アスナは指揮官に言い返す。あの指揮官は準備中に『お前たちなどアテにしてない』だの『正規兵の邪魔はするな』だの好き勝手言いまくってきたのだ。

 だというのにいざ実戦となると彼は愚直に突進させるだけで、数の差をひっくり返すだけの智謀がない無能であった。

 キズメルが微妙な顔をするのも当然だが、この指示に従わなければ敵の別働隊は容易く城の内部に突入してくるだろう。

 

「くそ、やるしか無いか…!」

 

 キリトは船尾をこちらに向けている別働隊に向けて船を動かす。どの船を破壊するべきか悩むキリトに、キズメルは真ん中の船を指さして叫んだ。

 

「キリト!中央の船に突っ込めッ!!」

 

「了解!い……っけぇえええ!!」

 

 四隻目を潰したティルネル号を退避させようとしたキリトだったが、左右に残る二隻がティルネル号を挟み込む。ガリリッという嫌な音とともにティルネル号の耐久が削れていく。

 

「しまった…!」

 

「キリト、アスナ、ドルモン!左の船に飛び移って敵を叩き落とせ!!右の船は私がやる!!」

 

「わ、わかった!行くよキリト君!」

 

 アスナは軽々とジャンプして敵船に飛び乗る。キリトもそれに続くと、(フォレスト)エルフの槍兵が怒声を放ってきた。

 

「人族め、このまま潰されていればいいものを!」

 

「そうはいくか!」

 

 キリトが《スラント》で敵の槍を真っ二つにすると、ドルモンが間髪入れずに《メタルキャノン》で湖に叩き落とした。その後ろにいた剣兵の剣を、キリトはしっかりとガードする。

 

「浅ましい人族め!」

 

 素直な剣撃をアニール・ブレードで受け止め、弾き返す。フル強化しているとはいえそろそろ限界なので、この戦いが終われば武器の更新をすることになるだろう。

 キリトは単発水平蹴りスキル《水月(スイゲツ)》で敵を吹っ飛ばす。

 

「うわああッ!」

 

 キリトの目の前には船を真横に漕いでティルネル号を潰そうとしている《フォレストエルブン・ロウワー》がいた。そのまま《閃打(センダ)》で船から突き落とす。

 

「よし、戻るぞ」

 

 アスナと一緒にティルネル号に戻ると、ちょうどキズメルも戻ってきていた。

 

「全員湖に叩き落として櫂を破壊したぞ、そっちは?」

 

「とりあえず漕手はいなくなったからもう動かせないはずだ!」

 

 別動隊を壊滅させたことで敵船の数は八隻、味方は六隻。ティルネル号がもっと暴れればなんとかなるくらいの差まで縮めることができた。

 

「よし、次は敵の親玉を沈めてやろう!」

 

 ドルモンの提案に一行は頷いて、船を主戦場の水域まで移動させる。現在、残存している(ダーク)エルフ船と同数の(フォレスト)エルフ船が白兵戦を繰り広げ、その後方では旗艦ともう一隻が高みの見物を決め込んでいた。

 

「……余裕ぶってられるのも今のうちだ…。アルギロで透明化して近づくぞ!」

 

 ゆっくりと敵の旗艦に近づいていく。突進が確実に当たる距離まであと少し…のところで、敵の指揮官が勢いよく抜剣した。

 

(…ッ!?気づかれたか!!?)

 

 キリトとアスナは身体を強張らせ、ドルモンはいつでも狙撃できるように敵を見つめ、キズメルはサーベルの柄に手を置いて警戒する。……だが、指揮官がサーベルを向けたのはティルネル号ではなかった。

 

「今だ、一号船、二号船突撃!!五号船、六号船は道を開けろ!!」

 

 真ん中の船が左右に分かれた先にいたのは、無防備な横腹を晒している(ダーク)エルフの旗艦だった。

 

「………げーーッ!!?」

 

「ま、待ちなさーい!!」

 

 キリトは慌てて布をひっぺり剥がすと突撃を始めた敵船を追いかけるが、両者には二十メートル以上の距離があった。

 

「……これは駄目だな」

 

「だめだねぇ、追いつけないや」

 

 キズメルとドルモンは冷静に、衝角で大穴を開けられる旗艦を見ていた。

 

「おのれおのれ、おぉのれぇええええッ!!!」

 

「何が『おのれぇ』だこの無能指揮官!」

 

 キリトは湖に落ちていく三下指揮官にキレた。グチグチ嫌味をぶつけられたのがそんなに嫌だったのだろうか。

 

「一号船、二号船前進!両船の兵は上陸用意!!」

 

「あわわ、ヤベー事になってるよキリト!あいつら止めないと!」

 

 ティルネル号は桟橋に向かおうとする敵船を追いかけるが、絶望的に距離が離れていた。鬨の声を上げながら、船から降りた(フォレスト)エルフたちが城門へ向かって進軍する。

 城門には六人の(ダーク)エルフ兵しかおらず、破られるのは時間の問題だった。

 

「キズメル!神官たちは助けてくれないの!?色んなまじないが使えるんでしょう!?」

 

「いや、連中に戦闘経験など期待するな!今頃我先にと地下に籠っているだろう!」

 

「そんな……」

 

「城主様と子どもたちは!?神官と一緒に地下に逃げているのか!?」

 

 ショックを受けるアスナと入れ替わりにキリトが質問する。

 

「……それはわからない…。子どもたちは避難していると思いたいが、ヨフェル城の門が破られたことなど一度もなかったからな…。正直、子爵閣下がどんな判断をするかは……」

 

「そ、そうか……」

 

 キリトはこの危機を乗り越えるための方法を考える。……先日、キズメルはヨフィリス子爵を細剣の名手だと言っていたが、このままでは『死に設定』もいいところではないか。

 ……キリトのゲーマー的直感が、ヨフィリス子爵こそが戦況をひっくり返す切り札(ジョーカー)だと告げている。彼はあまりにも謎めいていて、その謎を明かすためのクエストがあってもおかしくない。

 

「アスナ、キズメル!(フォレスト)エルフたちを止めるぞ!」

 

「わかった!」

 

「任せろキリト!」

 

 ティルネル号は少しだけ遅れて桟橋へ到達する。だが、時間が経てば経つほど数の差は広がっていくことは明白であった。

 キリトはこのまま戦うか、直感に従うか悩むが…その逡巡を断ち切って仲間たちに向けて叫んだ。

 

「……二人とも、五分だけ踏ん張ってくれ!」

 

「ちょっと、キリト君何処に行く気!?」

 

「援軍を呼びに行くだけだよ。無理はしなくてもいいから、危ないと思ったら逃げろよ!」

 

 キリトは門番たちと城門に向けて左手に付けたシギルを掲げて叫んだ。

 

「そこを通してくれ!」

 

 槍兵たちが道を開け、城門も少しだけ開かれる。キリトが城内に入ると、戦いが始まる前までは慌ただしくしていたメイドさんやらはいなくなっている。

 

「キリト、何処にいくの?」

 

「……ヨフィリス子爵のいた執務室だ。もし避難してたら無駄足だけど…」

 

「じゃー急ごうか、五分って言っちゃったしね」

 

 キリトは頷いてから五階にある執務室へと走った。

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