アストルティアを我が手に!   作:劣白

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 注意事項です。
 作者はドラクエⅩプレイ済みですが全ての設定を把握している訳ではありません。アストルティアの歴史は複雑すぎるうえに、未だに不明な点も多いので、独自設定とタグに載せてあります。また意図せずに設定改変をしてしまう可能性もあります。
 それとネタバレ注意です。version5までのネタバレが主に出てくると思います。


プロローグ『転生ですかね?』

 皆さんは前世というものを信じるだろうか?

 ふん、くだらん。非ぃ科学的だッ! と思われるかもしれないが落ち着いて聞いて欲しい。

 

 前世は存在する。以上。

 

 理由としては、まあ単純に私がそうだからだ。

 私は前世の記憶を持っている。が、それは酷く漠然としたものであり、前世の自分が一体何をしていたのか、名前は何なのか、性別、家族、何も覚えていない。以前は心にぽっかりと穴が空いたような、空虚感を覚えていたが今ではすっかり慣れてしまったものだ。

 

 では、どうして前世の記憶があると断言できるのか?

 

 それは唯一憶えている『ドラゴンクエスト』というゲームのことだ。ある程度の知識があることから前世の私はそれを好んでプレイしていたのだろう。あのブラウン管テレビから流れるピコピコ音、カニ歩き、おお勇者よしんでしまうとはなさけない! という名台詞。記憶はないはずなのに不思議と懐かしく思える。あとビアンカ可愛い。

 

 そんなドラゴンクエストシリーズの物語に私という異物は存在していた。所謂、転生という奴なのだろう。もしかしたら前世ではトラックに撥ねられたのかもしれない。神様転生というテンプレならチート能力を貰って無双できるのが定番だが、現実は非情である。

 

 目が覚めたら幼女。そして、森の中。チートなるものは何も見当たらない。どうして私は生きているのか。神の悪戯で転生したのか。そうだ。きっとそうに違いない。

 そう決めつけてしまうほどに理不尽だった。幸運だったのは出会うモンスターはスライムといったFランクモンスターばかりなのと、やくそうが割と落ちていたという点だろう。あ、あとは錆びてはいるが剣も落ちていた。

 しかし、神への恨みを糧に生きる私の姿は傍から見れば廃人だったに違いない。レイプ目幼女の需要はありますか?

 

 転生して何日経ったか分からない。年は経っていないと思う。

 ただモンスター(スライム)虐殺マシーンと化していた私のレベルが7(気分的に)に達した頃、不意に思った。

 

「ここって何処なんだろう?」

 

 ドラゴンクエストシリーズは沢山ある。それこそ王道を行くナンバリングからモンスターズと言った外伝的なものまで。何ならソシャゲだってある。

 

「出てくるモンスターはスライムばかりだし、景色は森。これだけじゃ特定できないよね」

 

 やはり、この場から離れて人を探すべきか。それがこの世界を知る手っ取り早い方法だろう。

 しかし、慣れたこの地を離れるのには勇気が必要だ。少し離れれば格上の魔物が現れるなんてことはドラクエシリーズではよくあることだ。

 いくら理不尽な転生をしたとはいえ、死にたくはない。どうせなら人生を謳歌したい。あとビアンカと結婚したい。

 

「よっと……」

 

 何故か走っていたスライムに襲い掛かり、慣れた手つきで二つに切り捨てた。不意を突いて申し訳ない。経験値が欲しい欲しい。レベルという概念があるのかは分からないけど……ん?

 

「森が騒がしい? って、ええぇッーーーー!」

 

 ざわつく森。生き物が慌てふためく中、困惑していると視界が真っ赤に染まった。

 それは太陽だった。普段、お空に浮かんでいる神々しいそれとは違い、どことなく禍々しい闇を感じる。機敏に動いているし、何よりも近い。森が焼き払われてしまっていた。

 私は咄嗟に近くにあった池に飛び込んだ。そして、ただ悪夢が過ぎるのを待つ。碌に息を吸わなかった所為か、物凄く苦しいが我慢する。

 

「ぷはぁっ! ぜぇぜぇ……」

 

 数十秒して太陽が去ったのを確認した私は呼吸を整えながら、辺りの惨状を目の当たりにする。

 自然豊かな森は焼き払われ、もはや火の海だ。愛着が湧いていた場所だった故に、少しだけ悲しく思い――ってレイダメテスだよね!? 今のって!?

 

 と、いうことは……この世界は……

 

「まさかのドラクエⅩですか。そうですか……」

 

 私の呟きは木々が焦げる音にかき消された。

 

―――――

 

 諸君らはドラクエⅩが好きか? アンルシアちゃんのぺったんこは好きか? 

 ドラクエⅩはオンライン前提という時点で疎ましく思う人たちもいるだろう。実際に私がそうだった。気が進まず、後回し後回し。で、漸くプレイする気になって数時間、もっと早くやっておけば良かったと後悔するほど面白かった。

 壮大で深い、作り込まれた愛を感じるストーリー。個性的なキャラ、可愛いヒロイン。また職人として武器やアイテムを作ったり、魔物を狩っては素材を集め、バザーで取引。暇があればハウジングして、余裕があれば理論値に挑戦。レアドロ理論値は無理だ。

 うん、やはり私はドラクエⅩは好きである。それなりにプレイもしていた。

 だが実際に暮らすとなると話は別だ。壮大なストーリーの裏には、何度も滅びかける世界。正直、生きていける気がしない。

 私的にはドラクエⅤが良かった。そちらの方が色々と楽そうだったし、ストーリーも分かり易かったからだ。決してビアンカに会いたいとか結婚したいとか、そんな下心満載な理由ではない。

 

「ああ、オワッタ……」

 

 さっきも言った通り生きていける気がしない。というか現状で詰んでいる。

 レイダメテス。確かバージョン1の敵である守護者ラズバーンが冥王ネルゲル復活を企み、生み出したはずだ。まあ中ボスみたいな感じだろう。それがアストルティア、五大陸を焼きにくるのだ。というか現在進行形で焼いている。

 これからどうしよう。

 取り敢えず、此処に残るのは駄目だ。その内、また焼きに戻ってくるだろうし、移動するのは確定だろう。

 ……いっそレイダメテスを斃すのは? いや、レベル的にも装備的にも無理だろう。今の私をドラクエ風に表すなら――

 

名前???

職業???

Lv7(気分的に)

HP30(気分的に)

MP0(魔法なんてなかった)

E拾った錆びた剣

E拾った布の服のようなもの

持ち物

やくそうっぽい何か×5

 

 こんな感じだろう。

 自意識過剰ではなかったら斃せて一面のボスくらいだと思いたい。

 第一、実力的にレイダメテスを斃せたとしても、それはストーリー的に良いのだろうか。それは主人公であるエックス君が成すべきことだし、破邪舟問題もある。

 それじゃあ主人公がレイダメテスを斃すのを待つ? うん、これが得策だろう。さらに言えばグレン城が安全だ。

 

「よし。それじゃあ早速……早速……」

 

 軽快だった筈の足取りは次第に重くなり、遂には止まってしまった。そして、燃え盛る炎によって赤くなった空を仰ぐ。

 

 ……本当にそれでいいのか? 主人公は歴史を改変しに過去へと訪れるが、この世界に訪れると断言できない。希望的観測だ。

 

 本当にそれでいいのか? ここを乗り切ったとして世界は何度も滅亡へと誘われる。その度に存在するかも分からないエックス君を頼るのか?

 

 私は何もしないのか? ただ、このまま死んだように生きて、ドラゴンクエストⅩが始まる前に寿命で死んでしまうのか?

 

 否、否。私は前世については憶えていないが、何となく悔いのある人生だったのだろうとは思っている。今世で繰り返す気は毛頭ない。

 

「やっぱり楽しむしかないよね……!」

 

 たった今、私は決めた。いや、覚悟がついたと言うべきか。

 私はこのドラクエⅩの世界を謳歌する。原作にあったストーリーを楽しむためにも、私は強くなる。エックス君が居なくても、この世界を救えるくらい、最強になって見せる。

 

「そのためには先ず――」

 

 恐らく、エックス君が来なかったとしても、レイダメテスはこの時代に存在するであろう四術師たちが何とかするだろう。

 だから私は走る。一歩一歩を踏み締める。

 そうして暫く走り続けて、漸く見えてきたのは光。オーロラのように輝いているそれは地面から湧き出ている。

 

「あった! 光の河!」

 

 アストルティアの大地に走っている光のカーテンの名前は光の河。女神ルティアナの身体であり、アストルティアと魔界を隔てる壁である。

 近づいてみると深い崖のようなもので、底が見えない。しかし、怖気づいている場合ではない。何故なら、私はここから飛び降りる(・・・・・)のだ。

 無論、自殺ではない。きちんと考えがあってのことだ。

 レイダメテスが居る以上、五大陸は危険である。なら安全なのは何処か? レンダーシア、それと魔界。そのどちらかだろう。辿り着くには光の河を通るしかない。ドラクエⅩ内のとあるサブクエではアストルティアの住民が光の河から魔界へ行くという内容の物があった。

 しかし、絶対に辿り着くという保証はない。もしかしたらただの投身自殺になるかもしれない。だけどやるしかない。

 

「っ……いくよー!」

 

 私は光へ向かってジャンプした。

 




お読みいただきありがとうございました。
今回の文字数は3400文字でした。平均3000から5000文字くらいにしたいと考えております。

次回は明日までには投稿したい(願望)
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