アストルティアを我が手に!   作:劣白

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魔障を魔瘴に修正しました。

今回はちょっとギャグっぽいかも? 頭空っぽにして読んで欲しいです。誤字とかあったら申し訳ないです。



第三話『いざ! アストルティアへ』

 テンちゃんが来て、魔仙卿という立場を譲ってから生活が一変した。先代魔仙卿は先先代魔仙卿になり、私が先代魔仙卿になってしまった。窮屈な立場から解放されて、気分は老後を楽しむおばあちゃんだ。

 

 兄弟姉妹といえば、ゲームでは第二の主人公といっても過言ではないだろう。ストーリーに複雑かつ深く関わり、その物語はversion5で完結してしまった。

 個人的にはversion5が一番好きだったので印象深いが、魔仙卿に拾われたテンちゃんはもっと、こう、闇を抱えていただろう。時渡りの呪いに苛まれ、同じ時代に長く留まれない。絶望に打ちひしがれている時、先代魔仙卿に拾われ、結果的に大いなる闇の根源との契約を果たすことで時渡りの呪いから解放された。魔界が安息の地となり、同時に魔界もアストルティアと同じ、守るべき場所となった。

 そう、この時のテンちゃんは覚悟を決めて、エックス君と再び巡り合うことを夢見ていた筈だ。

 それなのに、それなのに……私への好感度が異常に高いのは何故なのか。その所為か、テンちゃんの覚悟が鈍っている。恐らく、エックス君と出会う前に私と出会ってしまったために、それで満足している気がする。料理店で例えるならメインディッシュ前の前菜、いやお店に辿り着く前の道中でから〇げ君を買って、それで満たされているようなものだ。

 

「ロトちゃんってきちんと魔仙卿していたんだね」

 

 テンちゃんは私の魔仙卿としての記録を読みながら、意外だと呟いた。

 

「我の目的は人生の謳歌。そのために安寧が必要だったに過ぎない……」

 

 まあ先代魔仙卿の気持ちを汲んだというのもあるが、やらなければ世界が滅ぶならやるしかなかろう。

 

「いつまでその口調なの? ロトちゃんはもう魔仙卿じゃないでしょ? 前みたいに話そう?」

 

「そなたが現魔仙卿である限り、それは承諾できない」

 

 飽くまで先代魔仙卿と現魔仙卿との立場を重視する。だから言葉遣いは魔仙卿のソレだし、ゴダ神殿では魔仙卿の着ぐるみを着用している。というのは建前であり、本当はこれ以上親しくなっていいのかを図りかねているだけなのだが……

 

「普段のロトちゃんの方が好きなのになぁ……」

 

 ……今まで話し相手といえばモーモン族くらいしか居なかったため、話し相手が出来たという意味では良かったのだが、如何せん距離が近すぎる。

 純粋な瞳で、あんなにも真っすぐな気持ちをぶつけられると困ってしまう。自分に身に覚えのない話だから尚更だ。

 

「……我はそなたと出会ってまだ日が浅い。前と言われても身に覚えはない」

 

「ロトちゃんって頑固だよね。思えばあの時もそうだったなぁ……って今のロトちゃんには分からないよね!」

 

 含みのある言い方をするテンちゃんに、私は素気の無い態度を見せる。

 未来の私が何をしでかしたのか。興味が無いといえば嘘になるが、知りたいとは思わない。

 知ったところで未来を変えられる訳ではないし、何よりも知ってしまったら楽しみが半減してしまう。私は私だけのドラクエを楽しみたいのだ。ネタバレはNGである。

 

「あ、じゃあ私のプロポーズも知らない……? というかまだ……」

 

 ああ、これ以上ここに居たらネタバレ砲を喰らってしまうかもしれない。

 私は後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。

 

―――――

 

「できた……ついに完成した……」

 

 ドラクエⅩといったらアレだ。

 超高難度コンテンツでは割と重要視されるというあの施設効果。

 

「温泉ができた!」

 

 私の目の前には湯気を上げる温泉があった。神殿風味に作られており、その大きさはもはやただの温泉ではないだろう。

 物凄く苦労した。一人で施工していた所為で、完成まで数十年も掛かってしまった。

 最初は出来心だったのだ。魔仙卿としての役割を終え、大いなる闇の根源との契約も切れた私はただの魔瘴の塊。もう魔瘴系の技を使用することが出来ない上、戦闘面での才能はないと分かっているため戦う気も起きず、かといってニート生活を満喫する訳にもいかない。なにか、魔界に対して有益なことをしたかった。

 

 そこで温泉に目をつけた。

 

 場所は大魔王を選別する時以外、空気である大審門付近のデモンマウンテン。そこを一人で開拓した。温泉を掘り当てたのは奇跡に近いだろう。まあその温泉は魔瘴に染まっていたのだが、私が吸収したため問題ない。ついでに付近の魔瘴は全て吸収したため、ジャディンの園のような状態である。大魔瘴期でも来ない限りは大丈夫だろう。

 

 温泉パワーで観光地として賑わう。温泉パワーでアストルティアへの憎悪が軽減される。温泉パワーで私はライフを回復するッ! まさにッ! 一石三鳥ぅ!

 あ、因みに男湯、女湯で分かれていないため水着の着用必須である。

 

「早速宣伝しないと!」

 

 この喜びを魔界の人たちと分かち合いたい。観光地化するにして、先ずは宣伝だろうが生憎私の知名度は低い。殆ど魔仙卿として活動していたので仕方ないだろう。

 大声を上げて宣伝する柄でもないし、誰かに宣伝してもらうしかない……! それが手っ取り早い!

 

「テンちゃんは最近錬金で忙しそうだし却下。ヴァレリアはあまり親しくないから却下。ユシュカは……まだ魔王じゃないだろうし、そもそも場所が分からない。アスバル……はどうだっけ? そもそもゼクレスはどうなっている?」

 

 ここ数十年はずっと温泉造りに没頭していたため、魔界の現状が分からない。いくら原作をプレイしていたとはいえ、細かい内容までは憶えていないのだ。

 

「取り敢えず、温泉の管理は大審門にいる魔族たちに任せるとしてゼクレス魔導国に行ってみようかな」

 

 私は現状を把握するため兼、温泉を宣伝するためにゼクレス魔導国へと向かった。

 

―――――

 

 ゼクレス魔導国へと辿り着いた矢先、出会ったのはどこか哀愁を漂わせるアスバルだった。路地裏で縮こまっている彼の姿はゲームと違って幼く、既に首にはチョーカーが付けられている。エルガドーラの虐待じみた教育を受け、嫌になって脱走した感じだろうか?

 

 ストーリー的にはあまり関わらない方が良いのだろうが、辛そうな子供を放置するのも酷だろう。気がつけば話し掛けていた。

 

「今日は良い天気ですね……」

 

「…………?」

 

 魔界の天気は曇りである。

 コミュ障ゆえの失言に、私は頭が真っ白になった。

 

「えっと……子供だよね? 女の子がこんな時間に出歩くのは危ないよ」

 

 アスバルの明らかに引いたような態度。そして、先代魔仙卿であり、既に二百年以上生きている私を子供扱い。

 分かっている。素肌を隠すために甲冑(闇騎士セット)を装備しているとはいえ、私は幼女だ。しかし、何だろう。こう胸の奥から悲しみが広がって、自分が惨めに思えてくる。

 

 辺りを支配するのは静寂。

 

 話し掛けたのは私からだが、気の利いた言葉が思いつかない。いくら二百年以上生きたとはいえ、人を励ませるほど器用ではない。

 そこで私は物に頼ることにした。

 

「良かったら、これ……」

 

 私は腰に差していた剣をアスバルに渡す。

 そう、これは私がこの世界に来たばかりの頃、アストルティアで拾った剣である。錆が落とされており、綺麗な刃が光を反射する。

 

 ふふふ、あのアストルティアマニアなアスバルなら食いつく筈……!

 

「剣……? ありがとう。その気持ちだけ受け取っておくよ」

 

「え? これ、アストルティア産だけど?」

 

「そうなのかい? 珍しいね」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……貴様ッ! 本当にアスバルかッ!?」

 

 あり得ない。あのアスバルがアストルティアの物に興味を示さないなんて!

 思わずつい声を荒げてしまったが、吃驚しているアスバルもイケメンである。リンベリィが惚れるのも分かる。

 

「ど、どうして僕の名前を!?」

 

「そんなことより! 私とアストルティアについて語り合おう!」

 

 私はゲームの知識を元に、アストルティアの良い所を上げ始めた。

 

―――――

 

 結局、私たちは普通に会話を楽しんでいた。勢いで一方的に語ってしまったが、アスバルは興味津々だったので無駄ではなかっただろう。

 

「アストルティアは素敵な場所なんだね……」

 

 しんみりとした様子のアスバル。

 ……慮ってみればアスバルは未だアストルティアに興味が無かっただけじゃないか? あれ? もしかして、またなんかやっちゃいました? ストーリー破壊しちゃいました?

 まあ、後か先かの話だから誤差だろう。そう思いたい。

 

「君はアストルティアから来たのかな?」

 

「ま、まあそんな感じかな」

 

 マシンガントークだったので自分が何を語ったのか憶えていないが、致命的なことは言っていない筈だ。しかし、いつぼろを出してしまうのか……ここは変に弁解せず、さっさと退散するのが妥当だろう。

 私はそっと立ち上がると伸びをして、その場を去ろうと踵を返す――

 

「アストルティアか……行ってみたいなぁ……」

 

 アスバルから漏れた本心。これが後の流浪アスバルに繋がるのだろう。

 一方で私は衝撃を受けていた。ゲームでもあったアスバルのアストルティアを旅する夢は今、この瞬間に誕生したが、私の夢は何だ。

 勿論、人生を謳歌することである。それは魔界だけで収まることではない。アストルティアを冒険するのも、また私の目的であり夢だった筈だ。

 

 ああ、忘れていた。私は視野が狭くなっていたようだ。

 

 魔仙卿だった頃は大いなる闇の根源との契約していたため、光の河を超えてアストルティアへ向かうと勇者が生まれる条件が揃ってしまう。つまり、私が魔王という立場に収まり、私を倒すために勇者が生まれるのだ。これは致命的なストーリー破壊だろう。だから魔仙卿だった頃は魔界に尽くしていた。

 だが、今、私は魔仙卿ではない。大いなる闇の根源との契約も破棄された。つまり、光の河を超えてアストルティアへ行く事は可能なのだ。

 

 その事実に私の身体は興奮から震える。武者震いというやつだ。

 

「帰るのかい? 君の名前は……」

 

「……アストルティアに興味があるなら、いずれまた会える」

 

 名乗るのを億劫に思った私はアスバルの返答も聞かずに、ゴダ神殿へと向かった。

 アストルティアへ旅立つための準備だが……何か大事なことを忘れている気がする。

 

―――――

 

「そっか……行っちゃうんだね。もうそんな時期か……」

 

 俯いたテンちゃんの手元には魔仙卿の着ぐるみ。もう使うことは無いだろうと思い、私がテンちゃんへプレゼントしたのである。これでゲームのように魔仙卿の真似をし始めるだろう。

 一人満足していた私はさっさとその場を後に――何故かテンちゃんに抱き締められてしまった。

 

「これからロトちゃんには壮大な冒険が待っている。私からのお願い……」

 

 背後から囁くように、言葉を紡ぐテンちゃん。

 

私たち(・・・)を、助けてあげてね?」

 

「……ああ、勿論」

 

 元よりそのつもりだったが、言葉の重みにその意味を何度も反芻する。

 こんなにもテンちゃんから信頼されているのだ。きっと未来の私は苦労するのだろう。

 

「あっ、そうだ! これも渡しておくね!」

 

「ナニコレ? ファッ!?」

 

 テンちゃんから渡された麻で出来た手袋に入っていたのは仙豆だった。それってドラ〇ンボールネタだよね! びっくりして先代魔仙卿としての立場が吹き飛んでしまった。

 

「エテーネルソウルフードのハツラツ豆だよ。ロトちゃんに必要だと思って作っていたの」

 

「テンちゃん……」

 

 ハツラツ豆は確か錬金釜で作れた回復アイテム。素材は特やくそう、ほしのカケラ、せかいじゅの葉だった筈だ。

 ゴダ神殿には私が収集した素材が眠る倉庫に、間違えて大量購入したやくそう類があった。せかいじゅの葉はなかったが、ゲームでは上やくそう50個から錬金できるし、不可能ではないのだろう。

 流石は伝説の錬金術師だ。私が錬金に挑戦した時は数秒で爆発事故を起こしたというのに……

 

「ありがとう……」

 

 しょっぱい追想をしながら私はテンちゃんに礼を言う。

 本当にハツラツ豆は有難い。ゲームで戦闘中に使えないためゴミみたいだったが、その性能はHPとMPの全回復の上、温泉と同じ効果が付……く……? アッ!?

 

「わ、忘れてたーッ!」

 

 完成した温泉の宣伝をすっかり忘れていた私は思わず頭を抱えた。

 




次回からアストルティアへ行きます。スローライフ風にする予定。
一応、ヴァレリア視点の番外編も画策中です。

次回は今日か、明日には投稿する予定です。







 感想、評価、お気に入り、ありがとうございますっぅ!

 期待されるとプレッシャーで逃げ出したくなりますが、それ以上に嬉しいです。モチベが維持できています。
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