(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第11話 冒険に出かけよう!②

 王国の外は自然があらゆる土地を支配していた。

 

 王国内の人工物溢れる息が詰まるような場所とは違い、外に出ると空気が澄んで美味かった。木陰があったら横になって寝たい程には心地いい場所だが、もしそんな事をしたら、たちまちお陀仏だ。なぜなら……

 

「ビイヂャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 外は危険がいっぱいだからだ。

 

「おっ、ビージャか。威勢がいいねぇ。不細工な顔が一層目立つぜ」

 

 ビージャとクッソ汚い声で泣く事からビージャと名付けられたこの哀れな不細工怪鳥モンスターは嘴から涎と舌を垂らし、雄叫びを上げながら今俺達に襲い掛かろうとしていた。

 

「さて、研修の時間だぜお前ら。誰でも良いからこのビージャを倒せ」

「確かに不細工な鳥じゃな。整形してもどうにもならなそうじゃ」

「無茶振り過ぎませんか!?」

 

 アリーシアが目を見開きながら俺に問いかける。俺は彼女のその態度にハァとため息をついて首を左右に振った。

 

「俺達がやる事は言っちゃえば犯罪、危険な事に首突っ込むのがお仕事だ。多少は戦えないとダメだろ?」

「だからってこれはないでしょう!?事前に伝えてくださいよ!」

「俺はサプライズで人が驚いて喜ぶ所を見るのが大好きなの。気に入っただろ?」

「いいえ!?」

 

 俺とアリーシアが言い合っていると、痺れを切らしたビージャが俺達の元に突進してきた。

 

「ほら、来たぞ。やっちゃえやっちゃえ」

 

 俺はアリーシアのケツを叩いて促した。だがアリーシアはただあわあわしながら半泣きになっているだけだった。

 

「ヒィィィィィィィ!!」

 

 アリーシアは悲鳴を上げ遂には泣き出し、腰を抜かしてデカいケツを地面に落とした。このままではビージャの突進をまともに喰らってしまう。

 

「ファイアパンチ!」

 

 突如アリーシアの後ろから巨大な拳の形をした炎が飛び、ビージャにクリーンヒットした。

 

「ビジャ!?」

 

 頭から喰らったビージャは炎に包まれながら後ろに吹っ飛び、鬱陶しい悲鳴を叫んだ。

 

「ビジャアアアアアアアアアアアア!!!」

「今のは……魔法か!?」

 

 俺は後ろにいた、魔法でビージャを撃退した人物を見やった。その人物とは……

 

「アリー、大丈夫!?」

 

 タマリ、あのタマリが放ったのだ。正直言ってガキだしただのチームのマスコット程度の扱いをしようとしていたあのガキが、魔法を使った張本人だった。タマリはアリーシアに近づき、アリーシアの手を掴んで引き上げた。

 

「ビィィィ……!」

 

 炎の一撃を喰らい、顔に火傷をもらったビージャは俺達を睨みつけ、飛翔し、この場を後にした。不細工の癖に頭が回る、愛すべき怪物だ。

 

「お主、魔法を……!」

 

 おっとしまった、ライラが見てしまった。魔法を使う所を。

 なぜそんなにも魔法を敵視しているのか未だ分からんが、さすがにガキ相手にマジギレするようなら、俺も止めなければならない。

 

「……まぁいいわい。アリーシアを助けたのじゃ。人を助けるために魔法を使った。お主は誇って然るべきじゃ」

 

 ライラはタマリの頭をポンポンと優しく叩きながら複雑そうな表情で言った。唇をプルプルと振るわせ、そして、

 

「ヨシ!実技試験も終了したし、これから採取する材料の名前と特徴を説明していくぞ!」

 

 ライラは態度を一変させ明るく振る舞う。俺は怪訝な表情で彼女を見たが、当の彼女は

 

「聞くな!」

 

 とだけ言って話を進めた。

 

「これからワシ等が集めるのはガッデスハーブという植物じゃ。このハーブこそがワシが作るポーションのメイン素材となっておる。特徴は真っ白なハート型の葉っぱじゃ。見た目はわかりやすいからすぐ見つけられるはず。どこにあるかは目星がついておる。ワシについてきてくれ」

 

 ライラはそう言って先導するかのように1番前に立ち、ふんふん鼻を鳴らしながら気分良さげに前を歩き始めた。俺達三人も彼女の後をついていく。

 

「あの、サビターさん……」

 

 アリーシアが疲れた様子で俺を呼び、俺は振り返る。

 

「もう、サプライズは勘弁してください……」

 

 彼女の言葉に俺はにっこり笑ってこう言った。

 

「俺はできない約束はしない主義なんだ」

「そ、そんな……」

 

 アリーシアはまたしても項垂れてしまった。そこにタマリが彼女の肩に手を置き、

 

「こういうこともあるよ」

 

と励ました。

 

「ありがとうタマリ〜!」

 

 アリーシアは泣きながらタマリを抱き抱え、抱擁した。子供に慰められる成人女性、なんとも不思議な絵だ。

 

「気になってたんだが、お前ら一体どういう関係なんだ?」

 

 俺は元々聞きたかった彼女らの関係を聞いた。見たところ血が繋がっているかと言われると髪の色からして違う。どうやって出会ったのか、興味本位で聞きたくなった。

 

「私達はかつて同じ放浪の身で、偶然出会ったんです。野盗に襲われた時に一緒に戦って、話しているうちに仲良くなって、今ではもう年の離れた親友なんです」

 

 アリーシアはタマリを抱きしめながらそう言った。タマリは強く抱きしめられ過ぎて「ん〜!」と少し嫌がっていたが、アリーシアは構わず続けた。

 

「一緒に戦って、て…お前戦えるのかよ。だったらなんであの時ビージャに襲われた時戦わなかったんだよ?」

「私、あるルーティーンをしないと戦闘のスイッチが入らないんです。もし襲われても勘、というか本能で避けれたんですけど」

 

 俺はアリーシアの言葉に怪訝な表情で疑いながら聞いていた。別に後からいくらでも言い訳できるしなぁ……

 

「しかし、何故ライラちゃんは魔法使いがお嫌いなのですか?何か嫌な思い出でもあるのですか?」

 

 アリーシアはふと気になった、とでも言いたげに、はたまた話題転換のつもりで聞いた。俺も知りたいところだが、アイツはまともに答えない。だから俺は理由を聞くのを諦めていたが、

 

「ああ、ワシの師匠のサイラルク様は大の魔法嫌いでの、ワシもそれに倣って魔法使いを忌み嫌っておるのじゃ」

「は?お前ここで唐突に答えるのかよ?なんで俺と一緒の時は教えてくんなかったんだ?」

「アリーシアはいいのじゃ。優しいし親切だからの。だがお前はガサツでぶっきらぼうで皮肉屋じゃ。口から何が出てくるか分からん」

「テメェの朝飯ひり出させてやろうか」

 

 俺がそう言うとライラは後ろ歩きしながらステップを踏んで臨戦態勢に入った。「シュシュ」と口で音を出してシャドーボクシングをしていた。

 

「そんな事してたら転んで怪我すんぞ」

「ふん、そんな親切なフリをして襲い掛かろうとしても無駄じゃぞ。貴様は卑怯者じゃからの。目を離した隙にいつ来るか──」

 

 とライラが全て言い終える前に、俺の予想通りアイツは足を滑らせて転んだ。

 

「っ〜〜〜!」

 

 ライラは後ろから尻餅をついて転んだ。頭を打たなかったのが幸いだった。

 

「だから言ったじゃねぇか。ほら、立てるか?」

 

 俺は駆け足でライラの元に駆け寄り、呆れながら彼女に手を伸ばした。

 

「えっ?」

 

 俺が親切に手を伸ばしたのに、コイツはポカンと間の抜けた呆けた顔をしていた。

 

「ほら、転んだんだろ?俺の手を掴め」

「あっ、ありがとぅ……」

 

 最後の「う」が消え入り、ボソボソ声となり、どういうわけか顔を伏せて俯いたライラ。まぁ、理由は分かる。

 

「調子に乗って転んで助けてもらって恥ずかしいのは分かるが、せめて顔くらいはまともに見て感謝しろよ」

「うっ、うっさいわ!言われんでも分かっておる!ありがとざんした!」

 

 ライラは俺の腕を掴んでグイッと引っ張って立ち上がり、大きな声で感謝の言葉を伝えると、また1番先頭に立って小走り気味に歩いて行った。そこで、ライラは微笑みながら

 

「やっぱり根っこは変わってないんだね……」

 

 と、いつもの口調とは違う言葉で囀るように言って、またいつもの明るいアイツへと戻っていった。

 

「なんなんだアイツ」

 

 俺はため息混じりに呟く。するとアリーシアは「ふーん」と感心するように言って俺の隣を着いて回った。

 

「なんだよ?」

「いえ、乙女心と朴念仁が観測できたなぁって、思っただけです」

「お前まで何言ってんだ」

 

 肝心の女性陣2人とも意味の分からない事を話し、俺は途方に暮れる。俺は唯一同じ性別のタマリを見やると、

 

「眠い〜」

 

 目を擦りながら欠伸をしていた。俺は誰かに悩みを打ち明けたかったが、どいつもこいつも曲者揃いで悩みを分かち合い共有できる人間が誰も居ない。俺は諦めて何も考えずに無心で目的地まで歩き続けた。

 

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