(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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お昼頃また投稿します。二連撃です。


第130話 お告げはちゃんと聞きましょう

「……んあ?」

 

 瞼を開くと前にも来た事があるような森の中で俺は目を覚ました。

 

「おお、起きたね」

 

 俺の目の前には前にも会った人間みたいな女神、フルエラがいた。

 俺が目覚めた場所は前にもフルエラと会った時と同じ場所、太陽が優しく照らす明るい森の中であった。

 

 切り株の上に座り、足を組みながら俺を見下ろしていて、俺は横になりながらちょうどスカートの中が見えるように視線を調整する。

 

「俺に何か用か」

「相変わらずあなたはブレないですねぇ」

 

 俺はチラチラとスカートの中を見通すため、首を上にあげたり下に下げたりしていたら、前にも見たような例の骸骨野郎が俺の顔面を蹴飛ばし、馬乗りになって俺の顔面を殴り始めた。

 

「ステイステイ!殴らない殴らない!」

 

 フルエラが指笛でピューピュー吹きながら牽制すると、骸骨野郎はスクッ…と立ち上がり、俺への攻撃をやめてフルエラの前に膝をついて首を垂れた。

 

「グッボーイグッボーイ」

 

 フルエラは骸骨野郎の顎を撫でる。

 すると骸骨は顎の部分をカラカラカラと音を鳴らし、まるで喜んでいるかのように痙攣する。

 

「きゃ〜!やっぱりあなたは良い子ねぇ〜!」

「おい、マジで何の用なんだ」

 

 俺が折れた鼻を手で戻しながら鼻血を吹き出して聞き直すと、フルエラは「ああごめんなさい」と謝って俺の方へと体を向き直す。

 

「久しぶりね、サビター。今日はあなたにありがたいお告げをするために呼び出しました。そうそう、安心してください?ここは死後の世界ではありません。あなたの意識の中の世界ですからね」

「いや何言ってんのか分かんねっす」

「そうよね、あなた頭悪いもんね」

「お前言葉には気をつけろよ。性別関係なく態度良くねぇ奴は殴るぞ俺は」

 

 俺は聞き捨てならない言葉に反応したが、骸骨野郎が俺の後頭部を拳骨で殴り、カンペで『話進まねぇから黙って聞け』と俺に見せつけてきた。

 

「痛ってぇな分かったよ!話聞いてやるからさっさと話せ!」

「こらこら。先輩風吹かしたいからって暴力はいけませんよ。めっ!」

 

 そう言ってフルエラは骸骨野郎に軽く頭をポンと叩いた。

 フルエラの手に触れた骸骨はカラカラカラと骨が揺れる音を鳴らしながら喜んでいた。

 コイツもコイツでどうにかしたほうがいいだろ。

 

「さて、あなたとまたここでお話をさせてもらったのは…これから先起こる出来事について、私の方からいくつか助言をさせて頂こうと思ったからです。今からあなたにお告げをしますから、心して聴くように」

「俺の未来について何かアドバイスしてくれるってことか?」

「イエス」

 

 俺の未来……つまりマッドギアで何か起こるってことか、と俺は勘繰る。

 本当ならただ義理を立てるために行方不明の冒険者を探すだけだってのに、さらに面倒なことに巻き込まれるのは確定したってわけか。

 まぁ、教えてもらえるだけでもありがたいか、と俺は前向きに考え、ナイーブな思考はゴミ箱にポイをした。

 

「そもそもお前って未来を司る女神だったか?」

 

 それと同時にフルエラについても疑問に思った。

 

「いいえ?私は回復と復活を担当してますが、昼休み中ランチを食べながら同期の時間担当の女神に聞いたら教えてくれたので小耳に挟んでもらおうかと」

「俺の未来OLのランチの雑談扱いで聞かされんの?」

 

 俺は自分の未来の管理の雑さについて追求したかったが、骸骨野郎に頭を軽く叩かれた。

 人差し指を口に近づけて「静かにしろ」と言葉を使わずに言われたので全く納得はしなかったが、これ以上騒いでも何も解決しないので口を閉じた。

 

「貴方はこの先思いがけない再会を果たすでしょう。それは喜ばしくもあり、疎ましくもありますが……やがて貴方は苦渋の決断をせねばならない時が訪れます。その時が来たら、悔いのない選択をしてください」

 

 フルエラは凛とした雰囲気で短く語った、

 俺は今の話を聞いて頭の中でどういう意味があるんだろうとIQ1000のシワだらけの脳みそを使って考えてみたが、結局結論には至らなかった。

 

「もうちょっと分かりやすく言ってくれねぇか?」

「ごめんなさい。詳細に話してしまうと因果律がどうたら〜で最終的に宇宙が崩壊するんです」

「あそ」

 

 俺はこれ以上は聞けないと分かると、大人しく引き下がった。

 

「あら意外。あなたって結構不安症で聞きたがりそうなのに」

「フッ、未来の事いちいち心配してたらヒョロガリのオタクみてぇに弱くなっちまうぜ」

「でも貴方つい最近オタクになってわよね」

「……」

 

 俺は痛いところを突かれ、思わず黙る。

 

「あんなに萌え系の漫画やらアニメやら嫌ってたチンピラ気質が抜けないあなたがまさかギャルゲーにハマるなんて。存外そういうのが本当は好きだったとか?」

「そんなわけねぇだろうが!ありゃ明らかに洗脳されてたんだ!」

 

 俺はそう言って否定の言葉をぶつける。

 

 そうだ、あれは明らかに洗脳だった。

 

 怪しい光を眼球に直に浴びてゲームをさせられた。

 正直ストーリーもキャラもめちゃくちゃ良かったし終始プレイ中ドキドキしたしニヤニヤしながらやってたが、別にハマってはいない。

 

「世間ではそれをハマってると言うのよ」

「クソ!そういやコイツ俺の考えてることわかるんだった!」

 

 ペラペラと実情を喋っていたことは筒抜けだったことに俺は頭を抱える。

 また奴は俺の黒歴史を指摘するつもりだと思い俺は両耳の穴を塞いだが、フルエラはシリアスな顔になって俺を見つめていたので、拍子抜けして耳の穴から指を引き抜いた。

 

「なんだ、その表情はよ」

「…さっきは曖昧な言い方をしたけど、あとこれだけは伝えさせて。あなたはこの先、これまでの人生を根本から揺るがす真実を知ることになる。その時、あなたは選択を迫られることになる。あなたにとっては辛い選択になるかもしれないから覚悟しておいてほしいの」

「そうか」

 

 俺はそう一言だけ言うと、座っていた草むらに手をついて立ち上がる。

 

「まっ、助言は助言だ。覚えておいてやるが…先の事なんて一々考えてらんねぇよ。その時になってみないと選択なんてできねぇ」

 

 骸骨野郎がカンペで「何当たり前のこと言っているんだ」とツッコミを入れていたが、肝心なのはそこじゃない。

 俺が言いたいのは……

 

「男には必ずキメなきゃいけない瞬間がいくつかある。俺は俺の決めた事に後悔なんざ絶対にしねぇ。だからお前の心配は杞憂だぜ」

 

 どんだけ俺を驚かせる出来事が待ってようと、俺がやることは変わらない。

 俺の中で正しいと思ったことをやるだけだ。

 

「それにしても、ここまで俺を心配してくれるとはな。もしかして俺のことが好きなのか?」

「う〜ん。ラブな意味かと問われると違うわね。ライクかと言われるとそれとまちょっと違う。私のアバターとしては好きといったところかしら……」

「まっ、なんでもいいぜ。俺を好きなことには変わりはねえみたいなだし」

「嗚呼、この男は常に刹那的に生きているのね……」

 

 これ以上は言っても意味がないと分かったのか、フルエラは両手を肩のところまで上げて首を横に振ると、

 

「それじゃあ私はここらでお暇するわ」

「おうまたな。次会う時はそのホネ呼ぶんじゃねぇぞ」

「それはどうかしら……ああ!それと最後にもう一つ。忠告です」

 

 フルエラは人差し指を上げて思い出したかのように言う。

 

「今あなた達が向かっているマッドギアは、あなたが最後に見た国や街ではないわ。少し驚くだろうけど、上手くやってね」

「はぁ……あぁ分かったよ」

 

 フルエラの言葉は最初から最後まで抽象的で曖昧で、よくわからなかったが、これ以上考えてもしょうがない。

 

 俺はまた微睡みを感じ、瞼が重くなり目を瞑る。

 そしてまた、眠りへと落ちた。

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