(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第149話 スクラッパーズって何ですか、ロボット差別ですか?

 

 やはり寒い、俺はそんなこと考えながら椅子に座っていた、それも高度三万フィートの上空で。

 

 冷たい風が機体にぶつかり、ガタガタ少し不安にさせる音が鳴っている。

 機内は最低限の灯りがついてるのみで、内装は白い防炎、断熱用のキルティング布がや鉄骨が剥き出しになっており、機能美のみを追求したような見た目で、椅子もキャンプ用の折り畳み椅子のような布が張ったような物で座り心地は良くなく、長時間座っていれば腰を痛めてしまいそうだ。

 

 やはり地上とは隔絶された世界へいる所為か、妙に冷える。

 俺達は鉄壁の要塞であり、科学技術が詰まった研究施設であるセルデンフサク34に侵入するため、空からの潜入を決行していた。

 

「目標へ接近中」

 

 パイロットからただ一言、無駄が一切省略された情報のみ伝達される。

 輸送機に乗ってから一時間か二時間か、ちゃんと数えてはいないが体幹的にはそれくらいが経過している。

 

 施設への距離もあと僅か。

 

 この輸送機はサンズオブリバティが所有する数少ない貴重な物で、確実に成功させるために入念に整備点検をし、俺達を乗せてくれた。

 しかし先程も前述したように、高い空にいると空気が乾燥し、気温も低くなっている。

 そのため俺達は厚手の黒の軍洋服を着用し、寒さに備えていた。

 

 メルはサンズオブリバティ作戦本部で俺達を無線でサポートしてくれるため、彼女を除いた俺、ジョセフ、ミシェル、コボー、タケロウの五人が現地で作戦を開始しようとしているのだが……

 

「サビターさん、自分、パラシュート降下が怖くてうんこを漏らしそうです!」

 

 タケロウが澄んだ目をしながらハキハキとした声でそう宣言する。

 全く穢れの無い純粋な瞳が俺にクソが漏れそうだと訴えてくる。

 

「そうかーならドアを開けてあげるからそこでクソを漏らしなさい。遥か彼方の空の上からするうんこは気持ちいいぞ~」

「い、いいんですか!?」

「逆にこんな密閉空間で漏らされる俺達の事を考えろよ。いいから早くUNKO降下しろ」

「そんなHALO降下みたいな言い方……」

 

 ミシェルの小言が隅から聞こえ、俺は適当にタケロウに出すよう促しながら誘導する。

 タケロウは格闘における戦闘力とオタク知識はあるものの、冒険者や傭兵として戦った経験はないため、緊張して腹を下していた。

 

「よし、俺達が目標施設に侵入する前に、ここで俺が檄を入れる!」

「サビターさん!せめてうんこを出し終わった後でいいですか!?」

「ダメだ!そんな時間的余裕はない!クソを出しながら聞いておけ!」

「了解しましたァ!」

 

 そう言ってタケロウはブリブリ排泄音をまき散らしながら俺の言葉を待つ。

 あまりにも醜悪な絵面にミシェルは頬をピクピクとさせてドン引きし、ジョセフはヘルメット型の顔全体を覆えるマスクを装着して臭いを遮断し、コボーは「これが人間の排泄がァ~」と非常に関心を多く向けながらタケロウの眼前で彼を観察していた。

 

「俺達は即席のチームとして作戦を開始する!だが名前が無いのは少しばかり寂しい物だ!そうは思わないか!?」

「別に?」

「名前なんかどーでもいいだろ」

「僕は名前考えるのと思いまァす!」

「どっちでもいいと思うけど」

 

 過半数が名前の命名に無関心を示していた。

 

「そうか!やはり名前は必要だよな!」

「コイツ是が非でもそーいう方向に持っていくんだな」

「まぁ多めに見てあげましょうよ。確かドルソイさんも彼のこういう性格に手を焼いてたって言ってたっけ」

「俺達は傭兵が二人、女忍者が一人、ロボットが一体「一人って言ってよ」そして金持ちオタクのボンボンが一人なわけだが」

「僕の扱いが少し酷いように見受けられますが!?」

「うるせぇな、それくらいいだろうが。てかまだ終わんねぇのかよ!?」

 

 未だに排泄中のタケロウに俺は苦言を呈すが、それでも奴はまだうんこ座りを辞めない。

 一体何をどれだけ食べたのだろうか、まだ外にうんこを垂れ流しているだけならいいが、もし奴脳うんこが誰かの頭に当たったら可哀想だ。まぁ辺り一面は人間はいない海だから魚が食うかもしれん……食うか?

 

「だがオタク光線で頭をやられちまった俺の仲間も、元々は寄せ集めの問題児共だった。けど俺達は国を守り抜いた」

「もとはと言えばあなたがドラッグを売ってたせいだけど」

「うるさァい!今人が気持ちよく話してる最中だろうが!口を慎め三下がァ!」

「悦に浸って話してるって自覚はあるんだ」

「うるせぇよこのブリキノダンスが!あぁ、話が逸れたな。いいか、今この場に居る俺達なら、自分の国だけじゃなく、世界を守れるって信じてる。そーいうわけで俺達の名前は、スクラッパーズと名乗ることにする!どうだ、良い名前だろ?」

 

 俺は同意を求めて四人に問いかけるが、四人はそれぞれ顔を見合わせ、眉を下げたり首を傾げたり、「ん~……」と唸ったりと、反応が微妙だった。

 

「なんだ、なんか文句でもあるのか?」

「質問。「どうぞチャッピー君」チャッピーじゃないよ。まぁあの映画は面白かったけど、ヒュージャックマンの扱いが可哀想だったね。あぁそうだ名前の事だけど、スクラップって俺みたいな機械の事を蔑む意味で使われてるの?」

「は?いやそんな事ねぇけど……」

 

 唐突に俺に質問をぶつけてきたコボーに対し、俺は奴が何を言いたいのか意図を汲みかねていた。

 

「俺が機械だけど心は人間で、そのことに対してイデオロギーを唱えてる奴に対してスクラップ鉄くず野郎って、それって差別してるってことだよね?」

「誰もそんなこと言ってねぇだろうが!ロボットのクセに被害妄想は一人前ってどうなってんだ!?」

「サビター、それ、差別よ」

「俺も同意見だ。お前俺より若いのに人権意識が低すぎるんじゃねぇのか?」

「うるせぇよ老害クソ野郎が!オタク差別を最先端で地で行ってるジジイが何差別語ってんだ!?」

「僕も流石にそれはあり得ないと思いますよ……もうちょっと考えて発言をすべきでは?」

 

 何故かミシェルとジョセフとタケロウの三人はコボーを擁護し始めた。

 

「ロボット差別って……流石はウィルヒル出身の人間だな。あまり褒められたことじゃないぞ?」

「お前誰だよ!?黙って操縦だけしとけや!」

 

 挙句輸送機のパイロットにも嫌味を言われてしまった。

 というかよくよく考えたら今の言葉も十分差別的な発言だがそれはどうなんだと食いかかろうとしたが、そんな事をすればキリがないと考え、俺はここでグッと我慢する。

 

「くそっ……分かった。スクラッパーズはやめだ。何か別の名前を──」

「あっ!でも聞いて!スクラッパーズって喧嘩とか競争事で諦めず、挫けずに戦う人達の事を言うらしいよ!」

「へーあっそ。ならそれでいいんじゃね」

「あら、そうなんだ。素敵ね、ならいいじゃない」

「僕…凄い気に入りましたよ!サビターさんセンスあるじゃないですか!」

「なんだ、ウィルヒルの人間も案外捨てたもんじゃないな……今度酒でも飲もうぜ!」

 

 さっきまで俺を口汚く罵倒していた四人プラス部外者の一人が手の平を返し、俺を称賛し始めた。

 俺は今まで抱いていた怒りとは別の怒りが、自分でもよく分からないような怒りが湧き、コイツ等全員今すぐ銃殺したくなっていた。

 だが俺は大人なので、35の大人なので、怒りを腹の底に押し込めて、作り笑顔をクシャッと浮かべて、「あ、ありぐぅあとう……」と怒りが三割作り笑顔が七割の変な顔で応えた。

 

「俺達スクラッパーズが世界を救ってやるぜ!逆らう敵は皆殺し!」

 

 コボーが声を大きくしてテンションを上げながら叫んだ。

 

「そうよ、私の忍術で敵を翻弄して見せるわ。私達スクラッパーズは五人で最強無敵!テミナなんかに負けはしない!私達は戦う夢追い人よ!高みを目指して!」

『私も居るからね!ハッキングや道案内、サポートは任せて!テミナとかいうキモ・オタクなんてすぐにブタ箱にぶち込んであげる!』

「僕のオタク知識と空手で無双しちゃいますよォ!旧式一本背負い!」

「まぁ荒事なら任せろや!どんな奴でもこの俺がぶち殺してやるからなぁ!俺は生まれながらのキリングマシーン!」

 

 奴に続いてミシェル、メル、タケロウ、ジョセフの全員が急にテンションが上がり始め、輸送機内はクラブに居るかのような盛り上がりになった。

 ジョセフに至っては直前までスカしてたくせに何故か乗りに乗っている。

 俺は何故かむず痒くなり、鼻頭を指で擦る。

 コイツ等、本当に理解しているのだろうか。

 別に殲滅戦をするわけじゃなくて破壊工作と誘拐だけなんだけど……薬でもやってんのかな?

 

 だがコイツ等もやる気になったようだし、水を差すのもどうかと思うのでここは調子に乗らせておこう。

 

「目標付近に到達、降下の準備を!」

 

 パイロットが目標施設に着いた事を伝達した。

 それを聞き、俺は手を叩いて俺に注目するよう促した。

 輸送機の後部が開いて作動する。

 黄色いサイレンがビーッビーッとアラーム音を鳴らし、冷たい風が俺達の元へやって来る。

 

「よぉ~しお前等、そろそろ作戦開始の時間だ。各自パラシュートは背負ったな?俺から最初に行く。お前等が俺に続いて──」

「行くわよ皆!」

「「「おおっ!!!」」」

 

 俺が飛んだあと、付いてくるように言おうとした矢先、ミシェルが先導して次々にジャンプして行った。

 

 一人輸送機の中で取り残された俺は、唖然として固まってしまった。

 何故俺の仲間は誰一人として俺の指示を聞こうとしないのか、もしかすると俺の声はモスキート音なのかと自分の事を疑いそうになるが、今俺が奴等に言いたい事はただ一つ。

 

「俺の話聞けやアホタレ共がァ!!!!」

 

 俺は青筋を立てて怒声を上げると、思いっきり跳躍して輸送機から飛び降りた。

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