(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第25話 赤い果実の騎士

 いちご狩り。それは赤く実ったいちごを人の手で刈り取る作業。時と場合によっては採れたての生のいちごを食べることもできる。いちご狩り体験なんて行事もあるくらいだ。

 

 いちご狩りなんてのは大抵そんなもんだ。大抵は。だが中には、俺達の常識を吹き飛ばす物事が世界には溢れている。

 

「ストロベリーナイトォ?」

 

 俺は素っ頓狂な声を上げる。俺達はキングいちごが実っている場所へと向かっていた。キングいちごは手に入れるのは容易ではなかった。ライラが言っていた通り、そのキングいちごが実る土地には、とある魔物がいるという。それこそがストロベリーナイトだった。

 

「うむ。ワシも一度キングいちごを手に入れるため、彼の地を訪れたのじゃが、ある一人の甲冑を纏った騎士が鎮座しておったんじゃ。其奴は恐ろしい程早く、力強い剣撃を放ってきおった」

 

 ライラは歩を進めながら喋っている。隣ではアリーシアとタマリが手を繋ぎながら何か牧歌的な歌を一緒に口ずさんでいた。本当の姉弟みたいだな。

 

「いや、待てよ。お前って戦えるんだな。錬金術士なんていうから魔法使いみたいにヒョロガリで非戦闘員かと思ってたぜ」

「ワシをお荷物要員にするでない!独り立ちする前に師匠に仕込まれたんじゃ」

 

 ライラはキレた。だが見た目は10代のメスガキ。とてもじゃないが見た目だけ見れば戦えるとは思えない。

 

「女のガキが一人で旅に出ても絶好のカモにされるだけだ。それなら返り討ちにして殺せるくらいには鍛えてやる、師匠はそう言ってワシを鍛えた。錬金術で作った道具も使えばさらにワシは強い。お主にも引けを取らん」

 

 ライラはニヤッと笑って俺を見上げる。

 

 コイツがぁ?俺と?タメを張るぅ?

 

 俺は想像しただけでたまらなくおかしく感じて笑いが込み上げてきた。

 

「ブワハハハハハハハハハ!」

「笑うなァ!ワシを愚弄するなぁっ」

 

 ライラは遂に杖をカバンの中からマジシャンみたいに取り出して俺に鋒を向けた。

 

「この杖は特別製でのう!先端が鋭利な刃で出来てるからいつでも串刺しに出来るぞ!それを理解したら自分の立場を弁えたほうがいいんじゃないか!?」

 

 ライラはその危険な杖の鋒を俺の腹に突っつく。

 

「痛い!痛い!」

 

 俺はその危険な杖で何度も腹を刺された。だが血は出ていない。あくまで軽く突っついていただけだった。

 

「あっ」

 

 ライラの間の抜けた声と共に何か俺の腹に違和感を感じた。異物が入り込んできた感覚だ。なんだ?

 

 俺は自分の腹を見てみる。杖だ。ライラの杖の刃の部分が若干深めに俺の腹に刺さっている。えっ?刺さってる?

 

「ご、こめん。刺しちゃった」

 

 ライラが「てへっ⭐︎」と舌を出して両手を合わせたごめんねポーズをしている。俺の腹からは熱い血が少しずつこぼれ落ちている。

 

「えっ!?ちょライラさん!?何してるんですか!?サビターさんも!?呆っとしてないで早くポーションを!」

 

 アリーシアが二度見をして先ほどまでの穏やかな表情から一転、慌てふためいた顔になっている。

 

「い、痛い、痛い痛い痛い痛い!」

「今更痛みを感じてるんですか!?」

 

 俺はやっと状況を理解し、杖を抜く、抜いた瞬間血が力強く吹き出した。

 

 ライラはカバンの中からポーションを取り出して俺の腹に勢い良くぶっかけた。

 

「おい!もうちょい丁寧にかけろよ!こっちは怪我人だぞ!」

 

 俺はライラの粗雑なポーションの使い方に怒った。だがライラは「それを見ろ」と言った。

 

 俺は血が出ていた腹を見る。なんという事だろう。当初は深く刺さり、切り裂かれた腹が恐るべき速度で傷を塞いでいる。痛みが引いてきた。これでライラに刃物で刺されたのは二回目だ。コイツもしかしてジョニーに雇われた殺し屋なのではないか、と沸々と疑念が湧いてきた。

 

「ワシとワシのポーションがある限りお主等は死なん。だからストロベリーナイトと遭遇した時はどんどん挑めよ!ガハハ!」

 

 ライラはいつもの馬鹿笑いで俺にポーションの緑色の液体をボタボタとかけながら言う。あの時の俺達を心配した表情はなんだったのだろうか。演技だったのだろうか。だとしたらこのクソ女は中々の演技派女優である。

 

「ねぇ、人道って知ってる?」

 

 俺の問いにライラは「ハァァ?」と惚けた顔で俺に向いた。

 

「そんな物で錬金術が発展するのかぁ?いや、しない!」

「お前と一緒になるべきじゃなかったよ!このクソ外道が!」

 

 あまりにも極悪非道な性格のこの女に対し、俺は初めて女を本気で殴りたくなった。頬ならアウトだが、ケツならいいよな?お仕置きの内に入るよな?いいよな?な?

 

「あの、皆さん」

 

 アリーシアが俺とライラ、そしてタマリに声を掛けた。

 

「なんだよ、今俺はライラのケツをいちご色になるまで叩こうとしてたところだぞ」

 

 俺の言葉にライラは顔を青くした。血の気が引いて青と言うよりも白くなっている。

 

「ワ、ワシのプリチーなケツをどうするつもりじゃ!?」

「プリチーだとぉ!?お前みたいな性悪女が可愛いケツなんて持ってるわけねぇだろが!今から確かめてやるよ!ケツ出せ!」

「や、やめろォ!」

 

 俺はライラの履いているスカートを下に引きずり降ろすべく、力を込める。ライラはそれに負けじとスカートに手を掛けて上に引き上げていた。

 

「なんだぁ?プリチーなケツってのははウソかぁ?ホントはきったねぇケツなんじゃねぇのかぁ?ああん!?」

「失敬な!ワシのケツは綺麗じゃ!誰にも見せた事もないわ!」

 

 10代の年端も行かない女の子のスカートを引きずり降ろそうとする35歳成人男性の構図は、明らかに事案でしかないのだが、今の俺にはそんな事は露ほども考えなかった。コイツのケツを見る。俺がしたいことはそれだけだった。

 

「ケツケツケツケツうっさい!私の話を聞けッ!」

 

 俺がもう少しでスカートとパンツをずり降ろすことが出来たのに、アリーシアは堪忍袋の緒が切れたのか、敬語も忘れて俺とライラに左右の拳で拳骨を喰らわせた。

 

「「ギャア!?」」

 

 俺とライラは息ぴったりに悲鳴を上げた。頭がズキズキする。鈍器で殴られるのとはまた違う痛みだ。

 

「い、痛ェ……」

「なにするんじゃぁ……」

 

 俺とライラは仲良く頭を抱えて地面に蹲り、芋虫の如く這いつくばった。そのマヌケな姿を見てタマリがケラケラと笑っている。

 

「なんなんじゃ一体」

「店長兼オーナーを殴るなんて…いい度胸じゃねぇか。どんな理由か言ってみろよ」

 

 俺がそう言うとアリーシアは「はぁ……」と心底憂鬱そうなため息を吐いてとある方向を指さした。

 俺とライラ、そしてタマリは彼女の指の方に首を動かして見る。

 

「「「あっ」」」

 

 俺達は漸く彼女が何を言いたいかを理解した。そこには俺達が探し求めていた例のブツがあった。それも山程の。

 

「あれか?あれがキングいちごか?」

 

 俺達が見ていたのは古びた農園だった。建物は既に廃墟寸前で、所々老朽化が激しく、いつ崩れるか分からない。だがその中に眩い朱色に輝く宝石のような物が沢山あった。あれこそがおそらく、いや確実に俺達が必要としている物だ。

 

「よし、早速取りに行くぞ。あのなんとかってヤツが来ないうちにな」

 

 俺は善は急げと言わんばかりに足早に農園の中に入ろうとした。その時、

 

「貴様等に……俺の宝はやらん……」

 

 農園の中から、男の声がした。何かに声を遮られてくぐもっている。声は不明瞭でおどろおどろしい声だった。声の正体が俺達の前に現れ、光に晒された時、俺達はソイツの正体に気が付いた。

 

「……お前が、ストロベリーナイトか」

 

 いちご農園の番人、古めかしい分厚い鉄の鎧を見に纏った、全身いちご色の騎士、ストロベリーナイトが俺達の前に立ち塞がった。

 




もうちょいケツの話したかったんですけどくどくなりそうなのでやめました。女の子からケツって言葉出るとなんか穏やかではいられなくなるんですけどこれって俺だけですか?
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