(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第33話 怪しいお薬はいかが?

 男には破壊しちゃいけない袋が三つある。

 

 一つはお袋。母親を泣かせる奴なんざクズもいいところだ。お袋を悲しませたり失望させるのは良くないことだ。まぁ俺には母親どころか父親も見たことねぇけど。もしいたとしても俺はすでに泣かせてることになるだろうな。

 

 そして二つ目、涙袋だ。これはつまり泣くなってこと。男は簡単に涙を流すもんじゃない。そしてその涙を溜めてる部分の涙袋を崩壊させたら涙が流れちまう。上を向いても流れるモンは流れる。それが自然の摂理だ。

 

 そして最後、三つ目、金玉袋。これを破壊されると男として機能しなくなっちまう。男として生きる上で1番大事な部分だ。これを破壊されると……

 

「ダァァァァァァァァァァァァァァァ!!!痛ってェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!痛ぇよォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 

 こうなる。

 

 俺は破壊しちゃいけない袋を全部破壊していた。親泣かせのロクデナシ人生、あまりの痛みに耐え切れず泣き叫んで決壊している涙袋ダム。そして金玉。完全に砕け散っている。

 

「おっ!このモーフィーンマシーンとやら、おんらいんしょっぷとやらで追加の変装用のデータが売っているではないか!ここで選んで買ってしまおう。皆もそれで良いか?」

「は、はい。私はそれで大丈夫です…」

「僕も不細工なお爺さんよりかっこいいのがいい」

 

 悲鳴を上げている俺の近くでライラは俺のポケットマネーを使って追加データを購入していた。ライラだけでなくアリーシアもタマリも、だ。

 

「あ、あの……ライラさん。先程は吹き出してしまいすみませんでした。考えが足らなかったです」

「僕も。あんなに怒るとは思わなかった。ごめんなさい」

 

 アリーシアとタマリが態度を一変させてライラに謝る。それを見てライラは一度ため息をつくと、

 

「ワシは怒っておりゃせんよ。笑いのツボは誰も彼も持っておりそれぞれ違うものじゃ。その程度の事で怒ったりするワシではない」

 

 そう言ってライラは椅子から降りて俺の股間を全体重で圧した。

 

「あだァァァァァァァァァァァァァァ!?!?」

 

「おおなんじゃサビター。下にいたのか。床に寝転ぶのが好きだなんてお主は物好きじゃのう。そら、美少女の体重に包まれる気分はどうじゃ?最高じゃろう?」

「イデアッッッッァァァァァァァ!!!!」

 

 俺は涙と涎を垂らしながら泣き叫んだ。その光景にアリーシアとタマリは青ざめながら顔を引き攣らせていた。特にタマリは自分の股間を大切そうに押さえていた。

 

「ほれサビター、そんな所に寝転んでないで、はようウィードと取引しに行くぞ」

 

ライラは俺の悲痛な叫びなど微塵も気にも留めずに言う。俺が悪いとはちょっぴり思っているが金玉潰しといてこの言種はないだろ。

 

 だがこのままうたうだしているわけにもいかない。俺は結局自分のタマタマをなるはやで治し、変装用の人間データを新しく買わされて面会の場所へと向かった。

 

 指定した場所は建設途中の建物だった。そのおかげで建築資材や工具などがそのままに放置され、鉄骨とコンクリートが丸出しだった。

 

「随分この国に似つかわしくねぇ建物だな」

「確かにそうじゃの。文明開花というやつじゃないか?いつまでも古いままではいられんじゃろ。国が嫌々と言っても国民は便利さには変えられないじゃろうし」

 

 ライラの言うことはごもっともだ。俺はサンゼーユを他の国の文化にヘコヘコしながら受け入れるアホタレ王国と思っていたが、突っ張るだけ突っ張っても後で困るのは結局俺達みたいな旧世代の人間だ。

 

 いや、俺はマッドギアの武器を好き好んで使っているから俺も向こう側のアホタレなんだろう。

 

 だが、俺の好きだった国が変わっていくのは見ていられない。このまま目を逸らすしかないのか。

 

「もし、そこの御仁達」

 

 俺達以外の声が聞こえ、俺達は一斉に振り返り、俺はBBを向ける。ライラは杖、タマリも杖、アリーシアは拳だった。

 

「おい、エイミー。武器くらい持ってこいよ。お前だけ馬鹿に見えるだろ」

「いえ、私の武器は私自身です。それ以外は余剰に過ぎません」

「怖……」

 

 俺はアリーシアと呼びそうになったがグッと飲み込み、偽名で呼ぶ。若干アリーシアの言葉に引きながら前にいる男を見据えると、男は両手を上げて降参のポーズを取った。

 

 男は中肉中背、眼鏡をかけてスーツを着用し、七三分けの髪型をしたビジネスマンといった風貌だった。

 

「そう警戒なさらずに。我々は今日はお互い取引の為の話をしに来た。違いますか?」

「悪いな。俺達ちょっと臆病でさ、怪しい奴見つけると土手っ腹に穴を開けた後頭をぶっ潰さなきゃ夜も眠れないくらい用心してるんだ。お前がその怪しい奴じゃないことを祈るぜ」

「ふむ。用心するのに越したことはありませんが、私を撃つのはお勧めしません。周りをよく見て」

 

 男はウィンクをして言う。俺はその意味に気づいた。ライラ達も自ずと気づき始める。

 

 俺達のいる建物の中と外に、銃の光線を向けた奴らがうじゃうじゃ湧いていた。奴等は俺達に緑色の光線を向け、いつでも撃てるぞ、という警告を当て続けていた。気づかずにアイツを撃とう物なら俺達は蜂の巣になってもおかしくはなかった。

 

「ああ悪い悪い。お互い目的があるんだ。紳士的に行こう」

 

 俺は銃をホルスターにしまう。ライラもタマリも杖を下ろし、アリーシアも拳を下ろすと、俺達に向けられていた大量の緑色の光線が消え始めた。

 

「それで?アンタがウィ──」

 

「おっと、その名前は出さないでいただきたい。私は代理です。私の雇用主は警戒心がとても強く、それに予定が入っていて本日は足を運ぶことができませんでした。その代わり私がお話をお伺いいたしましょう」

「待てよ、俺達はこの日の為に色々準備してきたんだぜ?なのにそっちのボスは誠意も無し?お互い腹を割って話すべきじゃないか?」

「申し訳ございません。ですが私の雇用主は大変多忙で……ですが私の雇用主は貴方達の商品に大変興味を示しております。雇用主は是非とも取引をさせていただきたいとおっしゃっておりました。どうか今回は私で我慢していただきたい」

 

 スーツの男は丁寧な口調で謝罪をする。俺は少し不満に思ったが、これ以上駄々を捏ねてもウィードは出てこなさそうだ。それに、向こうが取引に乗り気なら、それでも構わない。

 

「まあいい、分かった。早速商売を始めようじゃねぇか」

 

 俺はライラに目線を向けると、ライラはポーションが大量に入った車輪のついたケースをスーツの男の前に移動させた。

 

 

 

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