(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第50話 俺達はあんな女知りません

 

「パパって、このチンチクリンの?」

「ええ、チンチクリンの可愛い娘、ビリオネのパパです」

 

 俺は確認のためアルバアムに聞き返すと、アルバアムは肯定しビリオネの頭を撫でる。

 

「パ…父上、おとうさん、お父様……パチウ様!人前で頭を撫でないでくださいまし!」

「パチウ様って誰だよ。生まれて初めて聞いたぞオイ」

 

 テンパリ過ぎて全部の呼び方をごちゃ混ぜにしながらビリオネはアルバアムの手を振り払う。

 

 見た目は赤い光沢が特徴的な高級感のあるスーツを着た緑髪の中年の男だった。顎髭を生やし、顔には年相応に生きてきた証である無数の皺が刻み込まれていた。

 

「娘から君達の事は色々聞いているよ」

 

 アルバアムはニコニコしながら俺達にそう言った。

 

 俺達はビリオネに対してロクでもない事しかしていない記憶しかないな。嫌な予感がする。

 

「どうやら娘の鼻っ柱を完全に打ち砕いた上で辱めたらしいじゃないか」

「あっ……」

 

 俺はやっぱりな、という気持ちで声を漏らす。ヤバイ、俺は目を泳がせながらキョロキョロと辺りを見回す。

 

「っすぅ〜……」

 

 ライラも目を逸らし、気まずそうに頭をかきながら素知らぬふりをする。

 

「あー、おいおいライラ!お前言われてんぞ!」

 

 俺は気まずい話題をパスするため、そして責任を押し付けるため、ライラに話しかけた。

 

「ハァ!?何を言うか!お主が悪いんじゃろ!?『おい、このクソガキムカつくから泣かせようぜ』って言ったんじゃ!コイツのせいで〜す!ワシはついでに乗っかっただけじゃ!ワシは悪くない!」

「テメェ〜〜!!」

 

ライラに責任を押し付けるはずが、何故か俺に押し付けられ、俺は焦りと怒りでライラと口論に発展しそうになった。というかなっている。

 

「別に責めているわけではないよ」

 

 アルバアムは笑顔を崩さずに言う。俺にはもはやその笑顔の裏に殺意が満ちているようにしか見えないのだが。

 

「娘はまぁ…知っていると思うが少々プライドが高くてね、友達が中々作れていなかったんだ」

 

 アルバアムは少し気まずそうに話し、ビリオネは視線を下に向ける。

 

「学校でもその性格が災いして一人でいることが多いらしく、帰ってきても学校の話題は全く出さないことが多かった。君達に会うまではね」

 

「「えっ?」」

 

 俺とライラは目を点にしてアホ面になりながら間の抜けた声を出した。

 

「高圧的な態度に辟易もせず、同じ態度でぶつかってきた君達のようなタイプは初めてで、ビリオネは感動したらしい。私と会って話すことといえば、君達の事でいっぱいだったよ」

「パパ!」

 

 ビリオネは頬と耳を赤くさせながらアルバアムの袖を掴んだ。

 

「はは、ごめんごめん。まぁ、これ以上は私からは言わないけど、今後とも娘と仲良くしてくれないかな?君達は娘にとってやっとできた友達なんだよ」

 

 アルバアムはそう言って頭を下げた。

 

「ちょ、やめろよ、頭なんか下げんな。友達くらいタダでもなってやるから」

 

 俺は急に気恥ずかしくなり、鼻頭を指で擦りながら話す。正面からぶつかってこられると俺は対応に困るのだ。

 

「ククク、ビリオネちゃんはワシ等をそんなに良く思ってくれていたのかのう。ならちゃんと応えてやらねばならんなぁ?」

 

 ライラは変わらず調子に乗り、ビリオネの顔を下から覗きながら喋っていた。コイツは本当にブレないな。

 

「私は真面目に悩んでおりますのに……」

 

 ビリオネは涙目になりながら俯く。そんな彼女にライラは息を少し大きく出すと、ビリオネの肩にポンと手を置いた。

 

「商売敵だろうが友達だろうがどんと来い。ワシはいつだって大歓迎じゃ」

 

 そう言ってライラは微笑んだ。見た感じはどちらも同年代に見えるのに、なぜか俺にはライラが年上の姉さんのような物を感じた。いつもの傲慢不遜でムカつくような態度はどこにもなかった。

 

「あ、ありがとう……」

 

 ビリオネはまたしても俯く。しかし後ろ向きな感じじゃなかった。嬉しさを隠すために俯いていたような気がした。

 

「そう言ってもらえてうれしいよ。君達全員ともう少し話をしたい。できれば静かな処でね。どうかな?」

「俺は良いぜ。上手いモノと美味い酒があるならな」

「ワシも良いぞ。脚を休ませたいしのう」

「ぼくも」

「俺も構わん」

 

 それぞれ全員がアルバアムの提案を了承する。しかし、一人足りない。誰だったか……

 

「それは良かった。ところで、彼女は君達の仲間かな?」

 

 アルバアムはそう言って首を左へと向けた。彼の首が向く方には、、シックス・プリンスにスケベ顔で擦り寄る変な女がいた。

 

「あ、あ~!生クリーム胸に落としちゃいましたぁ……」

 

 黒髪で丸眼鏡を掛けた女はわざとらしく胸の谷間に生クリームを落とした。

 

「大丈夫ですか?このハンカチをお使いくださ……」

 

 それに気づいたシックスプリンスの一人がその女にハンカチを渡そうとした。

 

「あ、ああ~足を挫いちゃったぁ!このままじゃ倒れちゃう~!」

 

 しかしその変な女は転ぶ要因がどこにもない障害物皆無の床に足を躓き、倒れかける。

 

「危ない!大丈夫ですかお客様!?」

「ああ!もっと!もっと腰を近づけてもいいんですよ!?何を遠慮しているんですか!?さぁ、身体をくっつけて!」

 

 遂に本性を現した変な女はシックス・プリンスの男の身体を弄りながら自分の胸を押し付けた。

 

「お、お客様!近い!近いです!それ以上胸部を押し付けるのはご勘弁を!」

 

 シックス・プリンスの男はセクハラ案件になるのを防ぐため、青ざめながら女を引き剥がそうとする。

 

「確か彼女、アリーシアと言ったかな?彼女は君達の──」

「「「「知らない女ですさっさと行きましょう」」」」

 

 俺達は息も連携もぴったりなハモリで早くその場を離れた。

 

 あんな女、俺達は知らないなぁ、俺は現実を否定し、自らを洗脳しながら喧噪で溢れた屋敷から静かな部屋へと向かった。

 

「ふへへ……イケメン最高ォ……」

 

 知らない知らない俺はなんも知らない。

 

 




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