(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第58話 わけわかんねぇよ

 

「クソ、そんなに俺が悪いかよ」

 

 俺は一人で街を歩いていた。ライラを探す為に街中をフラフラしていたが、やはり何かがおかしい。街の住人達が不安や焦燥を顔に出して不穏な雰囲気になっている。

 

「一体何だってんだ……?」

 

 俺はあまりにも異様な雰囲気に耐えきれず、遂にその辺のヤツに聞き込みをしてみることにした。

 

「オイ、さっきから街の様子が変なんだが、何かあったのか?」

「いや、変なんて言葉じゃ言い表せない!だって消えたんだぞ!?」

「消えた?消えたって何がだ?」

「何だ見てないのか!?ニーニルハインツギルドのギルドハウスが建物ごと消えたんだよ!」

「はぁ?」

 

 俺はあまりにも素っ頓狂な話に耳を疑いでかい声で聞き返す。

 

「お前何言ってんだよ」

「いやだからほんとだって!ギルドハウスもギルドのメンバーも、全員消えちまったんだ!」

「お前そんなウソ俺が信じるとでも……」

 

 俺は与太話に付き合うつもりは毛頭なかったが、嘘をつくにはあまりにも大真面目で迫真的な反応を示す男に、これは冗談で言っているわけではないと理解した。

 

 そこで俺はギルドハウスへ向かった。おそらく何かの間違いか、またギルド連中が俺を騙くらかして面白おかしくからかおうとしているかもしれないと思いながら俺はかつての仕事場に到着する。

 

 俺は目の前にある現実に目を疑った。そこにギルドハウスはなかった。本当に消えていた。最初からなかったわけではなく、まるで空間を削り取られているような、無理やり引き剥がされた後のような消え方であった。

 

「オイオイ……マジで言ってんのか」

 

 ライラが消えたのと同時にかつての仕事場と仲間が消えたことに俺は突然頭がこんがらがり、混乱した。

 

「な、なぁアンタ確かサビターだろ?ニーニルハインツギルドの元幹部の。何か知らないのか?」

 

 男は俺と話して俺の顔を見て思い出してのか、俺に何か答えを教えろと迫ってきた。俺も今知ったばかりで何も言えることはなく「悪ィけど何も知らねぇ」とだけ言ってその場を去った。だって本当に何も知らないのだから。もうわけわかんねぇよ。

 

 ギルドの事は今は後回しでいい。いや、別にアイツ等に情が無いわけじゃない。アイツ等の事だ、何とかなる。今までだって何度も全滅の効きが訪れ、その度に機転と度胸を活かして切り抜けてきた。だからアイツ等は大丈夫だ。多分。

 

 それより今はライラを探さなければならない。ライラがどこに居るか、なんとなくだが大方予想が付く。おそらくアイツは雑草の元へ行った。パーティーの時雑草とライラの間には奇妙な何かがあった。アイツ等は多分顔見知りだ。何故、どうやって関係を持っているのかは分からないが。

 

 俺はそう考えをまとめると、雑草のいる場所に行くことを決めた。場所はグラス産業。奴はあの会社の社長だ、ほぼ確実にそこにいる。そしてライラも。

 

 グラス産業は街の中心部にある。ウィルヒル王国の中では目を見張るほどの巨大な会社だった。見た目はウィルヒルの景観にはそぐわない黒い棺をそのまま大きくさせたかのような先進的な建築物だ。

 

 そして何より……

 

「まーじででけぇな……」

 

 ビルの真ん中にはグラス産業のトレードマークである王冠があった。ウィルヒル王国という王の名を冠した国で王冠はいかがなものかと思うが。

 

 俺は改めて目の前にあるデカいビルを見てため息を漏らす。家といい会社といい、何故金持ちはデカくさせないと気が済まないのだろうか。気持ちが大きくなると建物もデカくなってしまうのだろうか。

 

 俺は会社の中に入った。建物の中はスーツを着た男と女が皆忙しなさそうに仕事に従事していた。俺は真ん中中央にある受付カウンターへと近づく。

 

「いらっしゃいませ、グラス産業へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 女性の受付従業員がにこやかに微笑みを俺に向ける。

 

「あー、実はアンタんとこの社長に用があってよ、ここ開けちゃくれねぇか?」

「アポイントは取っておいでですか?」

「取ってない」

「それでは日を改めて再度お越しください」

「いや今じゃねぇとと困るんだ、凄くな」

 

 俺がそう言うと受付の女は困ったような営業スマイルを俺に向ける。

 

「…申し訳ありませんが、セスペド様はご多忙な方ですのでアポイント無しの来訪は固くお断りを──」

 

 受付の女が何か言いかけたその時、女は左耳のインカムに手を当て、誰かと会話をし始めた。

 

「え?本当ですか?分かりました……」

 

 女は意外そうな声で言うと、再度俺に向き直って頭を下げた。

 

「申し訳ありませんサビター様。セスペド様の懇意のお客様だったとは露知らず、ぞんざいな扱いをしてしまいました。今から彼が案内をいたします」

 

 受付の女は急に態度が変わり、俺に愛想のいい笑いを向けた。言葉遣いはそのままだが雰囲気がお得意先の客に向けるような態度だ。一体今の連絡で何があったんだろうか。

 

 しかしこっちとしては都合がいい。ビルに入ってライラを見つけたら説得して一緒に帰る。それでダメだったら多少強引でも無理やり連れ帰る。どのみち連れて帰ることは決定事項だ。じゃないと俺が店に帰れない。

 

 俺はスーツを着たガタイの良い男に「どうぞこちらに」と言われ、案内された。エレベーターに乗り、上層階へと向かう。

 

 このビルはえげつない高さを誇っていたためか、到着するまでに時間がかかっていたので俺は手持ち無沙汰にしながらエレベーター背を預けて腕を組んで待っていた。

 

「なぁ」

 

 俺は暇だったので目的の階に付くまでに雑談でもすることにした。

 

「なんでしょう?」

 

「俺は会う約束もしてないのになんでざっそ……アルバアムは俺と会う気になったんだ?」

 

「ええ、私もちょうど疑問に思っていました。社長は多忙な方なので突然の来訪者は相手にしないはずなのですが……」

 

 やはりこの男も俺と同じことを考えていたようだ。

 

「俺が来るのを分かっていたのか…?」

「えっ?なんです?」

「いや、なんでもねぇ」

 

 ピンポン、と小気味の良い電子音と共に目的の階に到着した。エレベーターの開閉扉が開き、案内役の男が先に主導し、俺は再びついて行く。

 

 最上階の100階はそれはそれは大層な部屋であった。ウィルヒル王国の建築技術ではとても作れない最先端を先んじたサイバーパンクな建築方式であった。

 

 巨大なモニターが何枚、何十枚とあり、街の至る所の光景が映っている。部屋の中は青白い電子の光で照らされており、自然とは街違う美しさを感じる。明らかにこの部屋はマッドギアの技術が使われている。

 

「素晴らしい部屋でしょう?」

 

 階段から明らかに俺に向けて声を掛けてきたのは、この会社の主、そして俺の店から従業員の引き抜きをしたいけ好かない野郎、アルバアムだった。

 

「よう、また会ったなアルバアム。少し話でもしようや」

「ええ。ちょうど私も貴方と語り合いたかったところなんですよ」

 

 アルバアムやそう言ってニコリと笑った。

 

 




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