(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第62話 目に染みるよォ〜!

 

「うわあああああああああ!!!???」

 

 俺は目をバチリと開けて飛び上がって走り出した。

 

 が、壁に思い切りぶつかり、床に倒れた。痛みに悶えて鼻を押さえながら辺りを見回すと、アリーシアとタマリとアルカンカスが俺を囲んで見つめていた。

 

「生き返りました!生き返りましたよ!良かったですサビターさん!」

「サビター死んだかとおもった」

「生きていることが確認できて何よりだ」

 

 3人はそれぞれ思い思いの言葉を口にしながら俺の様子を観察する。

 

 いつの間にか俺の服は脱がされ、半裸の状態でベッドの上に寝かされていた。

 

 胸に突き刺さっていたナイフは抜き取られ、近くの机にそのまま無造作に置かれていた。俺の血がべっとりとくっついていた。

 

「サビターさんを追い出したあの後、私達お店を急遽閉めてライラさんを探しに行ったんです」

「師匠、やっぱりパーティーかいじょーにいた時どこかおかしかったから、雑草と何か関係してるんじゃないかって思って最初はアイツの屋敷に行ったんだ」

「そしたらアルバアムの代わりに奴の娘のビリオネがいた」

 

 アリーシアとタマリとアルカンカスがそれぞれ紡ぐように話す。そこで3人は神妙な顔つきになった。

 

「彼女と話している時に、俺達は少し違和感を感じたんだ。何故か彼女の店のヴァリエールは店を閉じていて、彼女の家には護衛の数が尋常じゃなかった」

「そして今日貧民街で暴動が起きましたよね。そしてあの武闘派ギルドのニーニルハインツギルドが忽然と姿を消した」

「今貧民街以外でも暴動が起きてる。それを見計らったかのようなタイミングでビリオネは屋敷で守られていた」

 

 俺はそれを聞いてこいつらの言いたいことの予想がついた。

 おそらくビリオネも事情を知っている。店で菓子を売るのが趣味で生きがいのアイツが店をいきなり閉めるなんてそんな突拍子もないことはしない。

 

「それでますます疑いが強くなった俺達は雑草のいるグラス産業に向かった。バレないようこっそりとな。内部に侵入しよとしたら、お前がゴミ箱に落ちてきた」

 

 アルカンカスの言葉にタマリが「ひゅー、ずどん!」と俺が落ちた音を口で再現しながら補足した。

 

「そこで私達が急いで貴方を運んで店まで戻ってきたんです。びっくりしましたよ。突然落ちてくるし、すぐ生き返るかと思ったらずっと動かないままだったし」

「俺はどれくらい意識がなかったんだ?」

「1時間ですね」

 

 …なんだか長いのか短いのかよく分からない長さだな。だが1時間でも時と場合によってはそれなりに物事に変化が起きているはずだ。

 

「外の様子はどうなってる?」

「あ、出ない方がいいですよ」

 

 アリーシアはそう言うと外を指で示す。

 

「テメェか処女厨のユニコーンは!?その角折ってお前のケツの穴に刺してやるからケツ出せオラァ!」

「お前だろ俺の金スッたたぬき野郎が!ぶっ殺してやるよ!」

「私のつけまつ毛取ったやつ誰だよ!出てこいよ!目ん玉ぶち抜く!」

 

 周辺の住民達はわけのわからない事を言いながら大乱闘を巻き起こしていた。

 

 そこには男も女も関係ない。血で血を洗う修羅の街と化していた。

 

「まるで無法都市だな」

 

 俺は外の凄惨な光景を見ながら呆然と呟く。昨日まで子供の笑い声と鳥の鳴き声が聞こえる穏やかな雰囲気だった街が今は酷い有様だ。もはや地獄か世紀末だ。

 

「あーえと…それで、ライラさんは見つかったのですか?」

 

 アリーシアが話題転換のためか俺に聞きづらそうに聞いてきた。

 

「…アイツはもう戻る気はないってよ」

「え?」

「そのナイフ、誰が俺に向けて刺したと思う?ライラだよ。まぁ実際にはギルド時代に俺の部下だったセアノサスが化けてただけだったけどな」

「え?ライラさんが?ていうかセアノサス……?さんって誰ですか?」

 

 アリーシアは俺の要領を得ていない説明について行けずオウム返しをしていたが、俺はしっかり説明してやれる気になれなかった。

 

 アイツに迎えに行ってやるなんて啖呵切った手前だが、アイツのマジの殺意を向けられた今となっては、本当にそれがアイツの望むことなのかと疑念を抱いていた。

 

「この国ももうすぐ崩壊するから出て行った方が良いぞ。ジョニー達が消えて、しかも敵は大量の兵隊と猛者を抱えてる。もうこの国はダメだな。おしまいです!」

「何言ってるんですか!?仲間を見捨てないのが私達のポリシーじゃなかったんですか!?」

「ライラ、いやセアノサスは俺達と一緒に居たあの時間がずっと苦痛だっつってたんだ。だったらアイツのしたいようにさせてやればいい」

「サビターさん貴方一体どうしたっていうんですか?なんでそんなこと言うんですか?今の貴方、情けないったらないですよッ!!」

 

 アリーシアは怒りを露わにし、俺の両肩を掴んで揺さぶった。

 

「私はそんなこと信じませんよ。あの日々が、あの人の笑顔が全部ウソだったなんて!」

「勝手に思ってろ。アイツはもう仲間でもなんでもねぇ。ましてやお前らなんか──」

「おいサビター。その先はよく考えてから口にしろ」

 

 アルカンカスが目を鋭くさせながら俺に言って来た。俺は睨みながら黙る。

 

 流石に今の俺はライン超えの発言をした。

 

 俺達の友情に亀裂が入り始める。

 

 沈黙が流れ、後誰かが一言でも心無い言葉を言えば一気に瓦解するような、そんな空気が辺りを満たしていた。

 

「俺達もう──」

「おっ、なんだろーこれ」

 

 俺が口を開いたその時、タマリが俺の言葉を遮った。

 

「なんだよタマリ。今お兄さん達が険悪ムード垂れ流してるのが分からないのかな?」

「ナイフの柄いじってたら、なんか出た」

 

 タマリがそう言って分解したナイフの柄の中からある紙を取り出した。大きさは手のひらに収まる程小さい。ただの紙切れに思えたが、その紙切れは突然意志を持つかのようにタマリの手から離れ、テーブルの上に風に乗りながら落ちた。

 

 そして、突然紙から煙が溢れて店の中は白い靄で覆いつくされる。

 

「うおっほうおっほおえぇぇぇ!なんだよこれ!?」

「煙い!煙いよォ!目に染みるよォ〜!」

「な、なんなんですか一体!?」

「……」

 

 俺達は突然のモクモクに混乱しながら手で扇いで煙を逃がそうする。

 

 タマリは目に直に入ったようで、涙と鼻水を垂らしながら床にゴロゴロ転がって「あぁ〜」悲鳴を上げていた。

 

「ったくなんなんだよ……ん?」

 

 俺はドアや窓を開けて煙を逃すと、段々と煙は薄くなり、視界が良くなってきた。

 

「…あれ、これ映ってるかな……」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。しかしその人物はここに入るはずのない人物だ。

 

「セアノサス……!?」

 

 煙の中から出現したのは俺達を裏切ったはずのセアノサスだった。

 

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