(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第67話 魔法使いのクソガキ

 

『グラス産業へようこそ。申し訳ございませんが本日の営業は終了致しました。またのご来場をお待ちしております』

 

 エントランスルームでは人間の女に寄せて作られた精巧な人形が俺達に向けて言ってきた。

 

「オイ、雑草出せよ。アイツに用あんだ」

『申し訳ございません。本日は営業を終了しました。またのご来場を──』

 

 俺は人形が最後まで何か言う前に銃で撃って穴だらけにした。

 

「人間様からのアドバイスだ、接客するならもうちょい愛想良くしな」

『ケイびを呼びマすヨ~』

 

 人形はノイズがかった壊れた声でそう言うと警報アラームが鳴り、大量の傭兵がなだれ込んで来た。

 

「アポなしは流石にマズかったかぁ?」

 

 俺はそう言うと二丁のB.B.を奴等に向け、トリガーハッピーと言わんばかりに引き金を引きっぱなしにしてそこかしこに撃ちまくった。

 

「怯むなぁっ!迎え撃て!」

「雑魚共じゃ話にならねぇよ!雑草呼んで来いやコラ!」

 

 俺は迫り来る雑魚兵士達を銃弾を放ち、銃床で殴り、グラス産業のエントランスルームで大暴れしていた。

 

 だが暴れているのは俺だけじゃない。

 

「死にたくない奴は逃げなさい!今の私は手加減なんかできませんよ!」

 

 アリーシアは黄色と黒の奇怪な戦闘服を身にまとって三節棍とい三本の棒に二つの鎖の関節部分によって繋がれているこれまた彼女の服と同様に奇怪な武器を振り回して敵を薙ぎ払っていた。

 

「お前のそれ、初めて見る武器だな。俺にも貸せよ」

「嫌です。これ結構使いこなすの大変なんですよ?」

 

 そう言ってアリーシアは目の前の傭兵の顔を両手に持った棒で打ちのめす。

 

 奴等のヘルメットは顔全体を覆うフルフェイス型の防具なのにアリーシアの一撃が強すぎたのか、ヘルメットは全壊して吹き飛び、兵士の顔が露わになった。

 

「殺意高すぎだろ……」

 

 俺は彼女のあまりにも強い一撃に恐れ戦きながら敵を討つ。

 

「ぎゃあああああ!!」

 

 今度は悲鳴が聞こえた。その声の方へ顔を向けるとタマリが炎の魔法を使って敵兵を火あぶりにしていた。

 

 奴等の装備は防火性に優れている筈だが、タマリは悪魔のような顔で楽しそうに笑いながらどの程度火力を上げれば兵士が死ぬのかまるで実験しているようだった。

 

「あ、熱ィ!あちぃよォ!」

「わはは!凄い凄い!まだ耐えられるんだ!?じゃんじゃん燃やしちゃお!」

 

 タマリは心底楽しそうに笑って炎魔法で兵士を燃やし続ける。

 

「趣味の悪いクソガキだぜ」

 

 俺がそう言うと、タマリはシュンとした表情で俺を見た。

 

 流石にやり過ぎたか、と反省しながら炎の火力を弱め始めた。

 

「だが……」

 

 俺は炎に包まれた兵士をチラリと見ながら、

 

「コイツ等は人を人とも思わねぇカス共だ!燃やしてヨシ!」

 

 俺はマスク越しに笑顔で言うと、タマリもたちまち笑顔になり、「あいあいさー!」と言って炎魔法の火力を上げ、敵兵共を燃やし続けた。

 

「ぎゃああああああああ!!!」

 

 再び悲鳴が上がり、炎の熱さと肉が焼ける匂いが出始めた。

 

「くっせ」

 

 俺はマスク越しに指で鼻をつまむ素振りをする。

 

「人を人とも思わないのは俺達も同じだな」

 

 アルカンカスがライトブレードで敵を切断しながら呟く。

 

 コイツは剣一本で多人数を一人で相手にしながら息も切らさず圧倒していた。

 

 銃で撃たれようものなら剣で弾丸を弾き、距離を詰めて斬るという人間技ではない芸当を軽々とこなしていた。

 

 俺達は王城に突入していた雑草の傭兵達を潰しにかかった。

 

 理由は俺達の薬物販売の罪を軽くしてもらうためだ。

 

 どうせ雑草がこんなバカやらかしてジョニー達に制圧されてうっかり俺達の名前出されたらこっちの首が飛んじまう。

 

 だから俺達は王様を助けましたよ、俺達は貴方の味方ですよ、という事をアピールして減刑(もっとイイのは無罪放免)してもらうために王城にいた奴等を片っ端から殲滅してきたわけだが、中にはアルカンカスが所属していたゲンジの残党兵もいた。

 

 流石にアイツ等は傭兵共と違って身体能力、剣技共に優れていたが、アルカンカスは熟練の戦士だったからか、直ぐに全員斬り捨てた。

 

 アイツは銃を持ってる傭兵達よりも率先してゲンジ達を斬っているように見えた。

 

 なぜ優先してアイツ等を斬っていたのかは知らないが、奴のおかげで苦労せずに済んだからそれ以上は考えなかった。

 

 ここまで俺は三人の活躍を述べてきたわけだが、肝心の俺はと言うと、

 

「なんだコイツ!?動きがまるで読めん!?」

 

 俺は人間が行うには不自然不条理極まりない変則的な身のこなしで敵兵達を翻弄し、B.B.で頭、胴体、脚を撃ち抜く。

 

 俺はあるパワードスーツを着ていた。

 

 生産元は勿論マッドギア、その中でも特に不動の人気と技術を誇るハセベ・コープの強化型高機動アーマースーツ、アトラク=ナクア。

 

 黒を基調とした前衛的な鎧のような見た目の外骨格スーツだ。

 

 そのプロトタイプをハセベ・コープから()()()()()使わせてもらっている。

 

 コイツは凄いぞ。

 俺がこう動きたい、こう敵をぶちのめしたい、と思ったら即座にそれを実行してくれる。

 

 ただコイツは試作品で失敗作扱いされている。何故かと言うと、

 

「くたばれこの野郎っ!」

 

 俺の背後に二人の兵士が銃口を向けて俺を撃とうとしていた。

 しかし俺は瞬時に振り向き奴等の胴と頭に光線弾を撃ち込んで風穴を開けた。

 

「い、いでえええええええ!いでえ!いでえよぉ!」

 

 俺は悲鳴を上げながら泣き叫ぶ。

 理由は俺の動体が90度回転し、背骨と筋線維がバキバキブチブチと音を立てていたからだ。

 

 このアトラク=ナキアは人間が出来ない動きをすることが出来る。

 しかしそれは、人間がしちゃいけない動きをしてしまうという意味でもある。

 更に脳に大量の情報が入り、高度な演算処理を要する事から脳味噌が蕩けちまう。

 

 この失敗作は人知を超えた動きをすることが出来るが使用者の安全など露ほども考えて作られておらず、着て戦えばものの数分も持たない事から開発が頓挫してしまったのだ。

 

「サビター死にかけの虫みたいにピクピクしてる。おもしろ」

「それ本当に着てて大丈夫なんですか?常に貴方の悲鳴が聞こえるんですが……」

 

 タマリが嘲笑し、アリーシアが心配をしながら言う。

 

「ふふ、ふ。俺を誰だと思ってやがる?俺は──」

「「「不死身のサビター」」」

「だあああクソが!またか!?俺の決めゼリフ取るなつってんだろうが!」

 

 タマリ、アリーシア、アルカンカスの三人が声を被せて言った。

 普段人の話は聞かないくせにこういう時だけ息を合わせやがって!

 

 俺は舌打ちすると、エレベーターへと向かう。

 

 既に地上一階の雑兵共は制圧した。

 

 後はエレベーターに乗って上へと上がり、雑草をボコしてライ…セアノサスをしこたま説教して連れ帰るだけだ。

 

 俺はエレベーターの前に立ち、呼び出しボタンを押した。

 エレベーターの横の液晶画面には段々数字が下降し、若くなる。

 

 チン、と小気味の良い音が鳴り、エレベーターの扉がゆっくりと開くその瞬間、俺の頭の中に警告音が発した。

 

 エレベーターの扉が開いたその瞬間、ローブを被った男、確か魔法使い殺しのヤーナンが黒く鋭い円錐状の攻撃魔法を放ってきた。

 

「うおっ!」

 

 俺は超反射で拘束バク転しながら回避する。

 タマリは「おおー」と感心しながら拍手をした。

 

「へぇ、凄いじゃん。俺の魔法を二度も躱すなんて。魔力無しにしては凄いよ」

 

 そう言ってヤーナンは俺を珍しい物を見るかのように褒める。

 

「随分と良い恰好だな。素早く動けるのは長年の戦闘経験の賜物か?それともそのスーツのおかげか?」

「両方だ陰気な魔法使い。一人で来たのか?なら袋叩きに合う覚悟はできてんだろうな?」

 

 俺はB.B,の持ち手を握り直し、アリーシアは三節棍を構え、アルカンカスはライトブレードを左手から右手に持ち替える。

 

「まって。サビターたちは先にいって」

 

 何を考えたのか、タマリは何故か俺達に向けてそう言った。

 

「ああ?俺達で囲んで叩いたほうが早く済むだろ?」

「でもサビターははやく師匠をたすけたいんでしょ?」

 

 タマリは俺を見ずにヤーナンを見ながら言った。

 

 俺はタマリの言葉に何も返さず、黙ったままだった。

 

「先に行きなよ。こいつは僕がかたづけるからさ」

 

 タマリはそう言って木の枝のような小さく細い魔法の杖をヤーナンに向ける。

 コイツ、かっこつけたいのが丸分かりなんだよ。

 

「…分かったよ。お前も男だ、かっこつけたい時もある。だろ?」

「そーいうこと」

 

 俺の言葉にタマリはニッと笑って返すと、俺とアリーシアとアルカンカスは阿吽の呼吸で駆け出した。

 

「逃がすと思ってるのか?」

 

 ヤーナンはそう言ってまた、黒いドリルのような攻撃魔法を俺達に向けてきた。

 

 しかしそこに青白い透明な膜のような物が俺達を守った。

 タマリの防御魔法だ。

 

 タマリは俺達を奴の攻撃から守り、杖から青白い光を発するとそれがヤーナンを吹き飛ばした。

 

「ぐっ!?」

「どこ見てんの?お前の相手は僕だよ」

 

 エレベーターが閉まる直前、魔法使いのクソガキことタマリは意地の悪そうなクソガキスマイルを見せた。

 

 




ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。次回、タマリが結構喋ります。
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