僕はあまり他人に興味を持たない。
だって魔法の勉強とか研究してる方が楽しいし、他人と関わってると限りある時間を無駄にしてしまうから。
だからかな、僕は他人との関わり方があまり得意じゃないんだ。
誰かと会話してても、皆が不快な顔して僕から離れてく。
いつも僕は選択を間違えるけど、今僕がやっている事は、間違いだとは思わない。
「中々の防御魔法だ。一見薄い膜のような見た目の魔法障壁だが、それを何重にも重ねて圧縮し強固にする芸当、やはりアールウェーンの神童と呼ばれただけの事はある」
ヤーナンはそう言って僕を褒めた。
僕は自己紹介なんてしてないはずだけど、なんで僕のことを知っているんだろう?
「なんで知ってるんだって顔だな。実は俺もアールウェーン出身なんだ。あの国じゃ君の存在は誰でも知ってる。アールウェーン魔法学校きっての天才、そして天災……魔法の実験で学校を全壊させ、追放された問題児」
ヤーナンは僕の個人情報をつらつらと並べ立てた。
僕はヤーナンの言った事に対して否定も肯定もしない。
「ウィルヒルとは比べ物にならない程の魔法の歴史、そしてそこで生まれる人間は皆魔法の才能がある。魔法使いを志す者にとっては夢のような国だ」
ヤーナンは自分の言葉にうんうんとうなづきながら言う。
自意識過剰な奴、と思ったけど彼の言った事には納得出来る。だって事実だから。
「でも歴史とか伝統とか長く続くと、頭が硬いオジン達も多くて困るよな。魔法は柔軟な発想が大切なのに」
これもまた事実。
僕の故郷、アールウェーンは2000年以上の魔法の歴史を持つけれど、歴史が長いと家柄とか血筋とか才能とか、いろんな事に雁字搦めにされて魔法が進歩しなくなっちゃう。
「柔軟な発想と閃きは魔法使いにとっては必須な才能とも言える。例えばこんな風に…な!」
ヤーナンはそう言って右の人差し指と中指を上げた。
すると僕の足元から黒いトゲトゲが浮き上がり、僕の身体を下から貫こうとしてきた。
僕は後ろに飛んで避けた。
今まで僕が居た地面は黒いトゲトゲで埋め尽くされ、青と緑が混ざったセラミックタイルの床が砕け散った。
僕は直ぐにヤーナンに杖を向け、魔法を詠唱する。
「我が血肉の中を廻る火よ、彼の者を燃やし焦がせ、赤炎」
僕は短く魔法の詠唱を口から漏らすと、杖の先から小さな深紅の炎が猛りうねってヤーナンの元へ真っ直ぐ飛んで行った。
赤炎がヤーナンに直撃すると、小さかった炎は瞬く間に大きくなり、周囲を少し巻き込むように燃え盛った。
赤い大きな炎が彼を決して離さないと言わないばかりに包みこみ、対象を骨になるまで燃やし尽くす勢いで炎は燃え続けた。
「さっき火力調整してたから、今が一番イイ塩梅で燃えるよ」
「……」
僕の言葉に、ヤーナンは黙ったまま、躱すことも無くそのまま僕の赤炎を受け止めた。
僕の魔法の威力はそこらの魔法使いよりも威力が高い。
だから普通は受けたら死ぬと思うんだけど、どうしてアイツは避けなかったのかな?
そもそも悲鳴を上げずにまともに受けた。
僕の炎の威力が高過ぎて悲鳴を上げるヒマも無かったのかな?
炎はやがて小さくなり、辛うじてヤーナンの燃えカスの遺体が残っていた。
僕はちゃんとヤーナンが死んだか確認するため、未だ燃えてる彼の元に近づく。
「……なにこれ」
でも僕が見つけたのは、ヤーナンの燃えて灰になった肉や骨ではなく、彼の着ていたローブだった。
それを見て僕は一瞬油断したと後悔した。奴はまだ生きている。
「死んだと思った!?残念でした!」
ヤーナンの笑い声と共に、奴は僕の背後を取り、僕に攻撃を仕掛けた──!