(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第69話 マジシャンズアサシン②

 

「……!」

 

 僕は振り返り、杖で防御魔法、リフレクトガードを発動した。

 

 しかし、無詠唱で即席で魔法を発動してしまったため、十分に効果は発動できなかった。

 

「……ッ!」

「ダメだろう?魔法使いを前にして油断したら」

 

 ヤーナンはそう言ってくつくつと可笑しそうに笑う。

 

 ローブを脱ぎ去った彼の姿は魔法使いにしては異様な物だった。

 

 白のタンクトップで上半身は筋肉が発達しており、茶色のレザーのズボンを履いていて、腕や胸などの露出している肌には無数の刺青が入っていた。

 

 僕は一つ見落とした。

 

 それは、奴のローブが耐魔法性の素材を使った衣服であったことだ。

 アレは物理攻撃や自然災害に対しては無力だけど、魔法攻撃には100%防御効果を発動する。

 

 この世界の魔法には火、風、水、雷、土の五大属性が特徴の自然魔法がある。

 

 それが一番ベーシックで基礎的な魔法だけど、結局魔法は魔法だ。

 

 魔法で生まれた五大属性のエレメントはこの世に存在するエレメントとは違うため、今のように奴のローブが僕の一撃を無効化してしまった。

 

「ああごめん。いつも僕の魔法は一発で敵を倒しちゃうから、君もそうなるだろうと思ってたよ」

「いや構わないさ。僕は君を知っているけど、君は僕がアールウェーンじゃなんて呼ばれてたか知らないだろう?」

「知らないね」

 

 僕はそう言って嘯いたけど、本当は違う。

 

 ヤーナンの名前は初めて聞いたけど、奴がどういう存在かは知ってる。

 

「俺はマジシャンズアサシン(魔法使い殺し)……君達みたいな魔法使いを殺すのが生業の魔法使い専門の殺し屋さ」

 

 マジシャンズアサシン……アールウェーンで魔法の才に恵まれながら、魔法使いを殺して日銭を稼ぐ卑しく愚劣な存在……魔法学校ではそう習ったけど、遭遇するのは初めてだ。

 

 だって僕まだ12歳だもん。

 

「君は運が悪い。魔法使いが魔法使い専門の殺し屋と二人きりだなんて」

「僕をその辺の魔法使いと一緒くたにしてたら痛い目見るよ」

「そうか。ところでその杖、ほんとにそのまま使って大丈夫?」

 

 そう言ってヤーナンは人差し指を僕に向ける。でも向いていた方は僕に対してではなく、僕の持っている魔法の杖だった。

 

 アールウェーンの森林で採れるカマコムの木から作られた魔法の杖が折れていた。

 

 防御魔法が発動する前に攻撃魔法で折られたのだろう。

 

「魔法使いは杖が命。折られたり盗られたりしたらそこで勝負がついちゃうけど、大丈夫そう?」

 

 そう言うとヤーナンは右腕をこれ見よがしに見せびらかす。

 

 彼の右腕には籠手のような物がはめてあった。

 その籠手は銀色に輝き、先端は円錐状の突起部分が付いており、赤黒いヤーナン自身の魔力が溢れている。

 

「これ何かわかる?」

 

 ニヤニヤしながらヤーナンはこれ見よがしに見せてくる。

 自慢したいのかな?

 

「あーいや皆まで言わずともイイ!どうせ未だに杖なんて使う頭の固い魔法使いには分からんだろうからね。これは俺が仲間と共に開発して作った魔法の杖に変わる次世代型魔法出力機、その名もマギブレーザー!」

 

 自慢したいのかな?

 

「すごい。何それ初めて見た。もっと僕に見せてよ」

 

 僕は素直な気持ちでそう言うと、ヤーナンは瞬く間に食いつき、ソワソワした表情で説明を続ける。

 自慢したいのかな?

 

「ああ良いぞ。マギブレーザーは五大元素のエレメント魔法は使わない。使うのは新たな元素、まぁ最近発見したばかりだからひとまずは裏元素と名付けた。君にも見せてあげるよ」

 

 そう言ってヤーナンは僕にマギブレーザーを向けると、赤く煌めく光線が僕の頬を掠めた。

 

 その光線は僕の後ろで爆発を起こし、ガラガラと建物の一部の瓦礫が崩落した。

 

「今わざと外したけど、凄まじい威力だろう?僕の魔力をガソリンとして扱い、裏元素を攻撃魔法に変換して放出したんだ。この武器と俺の今までの魔法のノウハウを活かしてこれまで何度も魔法使いを葬ってきた」

「だからさぁ」

 

 僕はボソリと呟いた。

 

 僕は感情の起伏が乏しいとは自覚してる。けど案外単純なんだ。

 

 師匠が錬金術を馬鹿にされたら怒るように、僕も魔法を馬鹿にされると、良い気分にはならない。

 

「僕を他の魔法使いと同じ括りで見ると痛い間に合うよ」

 

 そう言って僕は風魔法を使い、僕の周囲に風を起こす。

 

「……!?」

 

 ヤーナンは僕を見て顔を顰めて驚いた。

 

「お前、なんで魔法の杖をまだ持っている!?さっき壊したはず……はっ!」

 

 ヤーナンは気づき、焦りの表情を見せる。

 

 でも僕を見て驚いたわけじゃない。

 奴が何に驚いたのか、それは僕のローブの中にくっついている、大量の魔法の杖だった。

 

「なんだ、それは」

 

 ヤーナンは気持ち悪いものを見るかのような目で僕を見る。

 

「僕は生まれつき魔力が人より少し多いんだ。しかも乱暴に魔力を込めるせいで杖がそれに耐えきれず壊れることなんてしょっちゅーある。だからあのくらいで僕がピンチだと思ったなら、お笑い草だね」

 

 僕はそう言ってニヤリと悪どい表情で笑った。

 

 お互い隠し芸も明かした所で、本当の勝負をこれからだよ。

 

「せいぜい悪あがきしなよ、魔法使い殺し」

 

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